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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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54/74

スリーウェイ

 

 ゴーー


 飛行機が地面を離れ、空に旅立った。


 俺は日本を離れて、遠い地のアメリカの西海岸に向かう。


 まずは、球団との面接があるからだ



 空港の展望台が見えなくなった

 杏子はあそこで見送ってくれてたのかな


 お互い涙は見せなかった。


 俺は杏子とまた再会するんだ

 そこで泣いてしまうと、もう二度と再会出来ない気がしてきた。


 単身赴任の別れで泣く人はいないから



 ポーン


 飛行が安定してシートベルト外していいよサインが出る


 ビジネスクラスは快適


 国内線の一般席は乗ったことあるが、ビジネスクラスなんてもちろん初


 高校卒業したばかりの俺には生意気すぎる


 もちろん自分で買えるわけがなく、祥子さんが用意してくれた。


 ビジネスクラスのペアシートの隣には派手な女性が座ってる。


「祥子さん、本当にハイヤー置いてきてくれたんですか?杏子わかるかな」


「あん?へーきだよ、お母さん付きで来たから、今頃お母さんが迎えに行ってる」


「良かったぁ、杏子はアホなんですかね?帰り方なんも聞いてこないんですもん、特急の乗り方とか切符の買い方わかるはずないのに、どうやって帰るつもりだったんだろ」


「あはは、竜ちゃんと別れるのが辛くて頭いっぱいだったんだろ」


 別に祥子さんと、浮気旅行をするわけではない

 あの呼び出された日

 メイドカフェの後にスターリバープロモーションに行った日を思い出す。




「竜ちゃん、ようこそー」

「あ、はい失礼します」


「小山さんと、アンソニーの話聞いたよね、で、納得して、うちに電話しろって言われた、で、合ってる?」


「はい、その通りです」


「オッケー、今さ、世間に騒がれてるから、少し杏子と距離とってるでしょ?」


「はい」


「だから杏子に内緒で会うのは今しかチャンスないから、心して聞いてね、アイツとまた距離戻るとベタベタで、バレちゃうから」


「そ、そうですね、しかもなんでか勘がいいので厳しいと思います」


「オッケ、じゃあ竜ちゃん、ビジネスの話もあるからちゃんと聞いてね」


「はい」


「まず、杏子の話からね、アンソニーから杏子と別れてくれって言われたよね?」


「はい、言われました」


「そう、それはしょうがない、やはり甘い道ではないのは、私も一応は野球人の娘だからわかる、だからそれでいい」


「ただ、ここからが、重要」


「竜ちゃん、どうするつもり?すぐ別れちゃうの?まぁ竜ちゃんは、真面目だからそうするか」


「え、はい、だいぶ辛いですけど、でも、杏子と別れるのが嫌で夢を捨てたら、杏子が嫌だと思うので」


「うん、わかった、でもすぐ別れるな、まだ渡米まで半年ある、その間しっかり妹を愛してくれ、それは姉からのお願い」


「え!でも、それって都合良すぎませんか?」


「うーん、そうだけど、残りの半年同じ学校に通うんだろ、近くにいるのに、嫌いじゃないのに、二人離れ離れはちょっとアイツ耐えられないぞ、壊れるかも、壊れられたら困る」


「いや、実は俺も同じ気持ちなんです」


「だったら、自分なりの言葉で気持ち伝えて、なんとか別れずに渡米まで愛し合え」


「え、はい…」


「大丈夫、杏子は付いてくる、間違いなく付いてくる、私の妹だ、私達、歳は離れてるけど似てる、色々似てる、だから付いてくるよ」


「わ、わかりました!やってみます」


「子供だけは作るなよ、全て吹っ飛ぶよ、ちゃんとサックしろよサック、ゴム!」


「りょ、了解です」


「それに、再会出来るよ、あんたらまた再会出来る」


「え?」


「竜ちゃん、杏子とは別れるけどビックになって再会するんだ、杏子を迎えに行くんだ!と、思って頑張ってみん、やる気出るから」


「杏子は、別れ話に納得する、そしてさっき言ったみたいに、渡米までの間は付いてくる、そして…その後も竜ちゃんのこと待つよ、いや、待ってくれてるかもしれないと思って頑張ってみん」


「はい…」


「竜ちゃん、杏子のこと大好きだろ?簡単に忘れられないよ、忘れなくていい、もちろん時間が経って気持ちが変わって、どうでも良くなるかもしれない、でも今はそう考えて頑張るしかない、モチベ上げていくしかないよ」


「杏子も一緒、うちの妹舐めるなよ、簡単に次の人なんかにいけないよ、竜ちゃんのこと大好きすぎるからね、だから、別れた前提じゃなくて、再会前提で頑張ってみん」


「はい!」

 なんかすげえ前向きになってきた


「別れ話をする時は、下手なごまかしいらないからね、竜ちゃんの正直な気持ちを話せばいい、伝わるから、杏子はしっかり受け止めるから、遠慮いらないよ」


「わかりました」


「さっ、じゃあ、ビジネスの話入るよ」

「はい」


「竜ちゃんが、渡米した後…そうね、今回の甲子園の熱が冷める頃、来年の甲子園が終わった頃かな、杏子を芸能デビューさせようと思ってる」


「え!」

 まぁ、予想は出来てた


「あいつさ、ムカつくけど、私より売れると思う、あの顔には負ける、たぶんメイクして、演技出来たら、飛ぶように売れる」


「そ、そうですか」


「まぁ、それを見越して向こうの中学卒業のタイミングで、帰国させたんだけどね!したら竜ちゃんと出会っちゃって計算狂ったけど、逆にお金増えそうになってきたわ、ケラケラ」


「ええ?どうゆーことですか?」


「いやね、お父さんのボストンの契約、実はもう二年更新できたのよ、でもそうなると、杏子は向こうで高校生になっちゃう、そうするとこっちでの芸能デビューが遅れるし、向こうで充実しちゃって、秀太みたいに帰国しないかもしれない、だから手を打ったの」


「えええ?」


「お父さんに頼んで、先に帰国させろって私が面倒見るからって」


「したら、お父さんがちょっと待てと、日本の球団探すからそれまで待てと」


「一応、納得したけど、どうなるかわからないじゃん、お父さんのオファーなんて、あるかわからないし」


「で、小山さんとセット販売したのよ、あの人もうちの事務所所属だからね」


「え!小山さんもこの事務所なんですか?セット販売?」


「うん、元々は私の前の事務所にいたんだけどね、引っ張っていいって言うから引っ張った、本当は来日俳優とかの通訳なんだけど、あの人も野球経験者だから、それを売りにもしてたのよ、前の事務所でも野球選手の通訳をやったことあったからね、したら外国人選手の通訳のオファーが、東京の球団からタイミングよくきたからさ、ついでにうちのお父さんも売り込んじゃった」


 ま、まじかよ


「まぁ、でもその外人選手、すぐ泣いて帰っちゃったから、小山さん、今はうちの雑用やってらもらってるけどね」



「家を改築してさ、秀太の留学代半分以上出してさ、それでお父さんに何も言わせなくしてさ、杏子を芸能デビューさせるって計画だったのにさぁ、帰国してすぐに杏子に好きな人が出来たってお母さんさんから聞いた時は、マジビックリした、焦った、誰だ!私の計画を邪魔するのはどこのどいつだ!ってね」


「その、どいつがぁ」

「自分ってことですね」


「その通り、いやさ、あの杏子がまさか恋に走るとは思わなかったよ、ぜっっっんぜん、男っ気ない野球バカだったからね、したら竜ちゃんに会ってみたらビックリ!これは、セット販売すれば儲かる!って思ったね、ウシシシ、しかも野球でも将来有望、ウハウハよウハウハ」


「またセット販売?」


「あ、それは一旦忘れて」

「はい」


 セット販売好きだな…


「竜ちゃん、スリーウェイプレイヤーのスリーウェイって意味わかってる?」


 え、なんでそれ知ってるの?

 アンソニーさん…あれ小山さん?

 わからん


「えっと、投げて、打って、守ってっていう、いわゆる三刀流ってやつですよね?」


「ブー」


「え?」


「メジャーにそんな言葉はない、投手と野手両方出来るツーウェイならある」


「い、意味が」


「お父さんが、竜ちゃんは将来ツーウェイプレイヤーになる!ツーウェイプレイヤーになる!ってうるさいからさっ、じゃあ俳優も足したらスリーウェイじゃん!って思いついたわけさ、名付け親はわ、た、し」


 ???俳優?


「ちなみにアンソニー操ってるのも私でーす」

「えーーー!」


「アンソニーの竜ちゃんお持ち帰り案件に便乗しちゃうから、よろしく」


「全然意味がわかりません」


「話を元に戻すとだ、杏子が女優として売れだしたら、竜ちゃんどう思うかなー、今はスマフォも流行り出してるから、アメリカにいても情報入るもんねー、焦るよねー、どんどん可愛くなってく杏子見て焦るよねー、画面で見れちゃうんだもん、やばい活躍しないと置いてかれる!ってね」


「メンタルやられると、スポーツはやばいよね、崩れていく、そう!ズバリ!竜ちゃんの弱点は…杏子だよ」


「え?弱点って…アンソニーさんが言ってた弱点ってそれですか?」


「そう!言っておくけど、技術的には竜ちゃんに弱点はないって」


「え、じゃあ、データで丸裸にされるって」


「ん?そんなこと言ったの?まぁ言い訳だろうけど、データなんて今は当たり前じゃない?別に竜ちゃんだけじゃないでしょ?それをみんな乗り越えて一流になるんだから、弱点とは言えないよね」


「確かに」


「竜ちゃんと、杏子、お互いが弱点なのよ、お互い好きすぎて離れ離れだから弱点」


「でもね、杏子は楽、元々私の考えてたレールに乗せれば勝手に克服していく、まぁ竜ちゃんと再会した時はまた考えないといけないところもあるんだけど、それまでは大丈夫、問題はあなた、竜ちゃん」


「え?」


「弱点克服しないとダメ、野球ダメになるよ、アンソニーも言ってる、杏子と離さないとダメだけど、もし杏子が日本で活躍するとなると、竜ちゃんがメンタルでダメになるかもって、だからアンソニーも私の案に乗ってきたの、ウインウインってこと」


 そ、そうゆうことか、俺は動揺して、打たれまくりの打撃低成績になるってことか


 なんとなくわかる、今まで杏子は、いつも近くにいてアドバイスとかしてもらってた、でもこれが離れて日本で可愛い顔丸出しでドラマに出てるのを、俺は見たらどうなる?


 動揺する、いや、辛いかも


 キスシーンとか見てしまったらどうなる

 考えただけでもゾッとする


「祥子さん、弱点の克服知ってるから、自分呼んだんですよね、教えてください、俺にも俳優しろってことですか?投手、野手、俳優のスリーウェイですか?」


「その通り!さっすが竜ちゃん鋭い」


「ども」


「俳優やれば、まず女優の気持ちが少なからず分かる、んで、自分にも自信が持てる、そんで、前にも言ったけど俳優は保険、焦るよね野球しかなかったら、野球で成功しないと置いてかれるって、でも、俳優も出来たら?」


「気持ちが楽になる、焦らなくなる」


「正解」


「祥子さんの言いたいことわかったんですけど、日本じゃなくてアメリカですよ、どうやって俳優を?」


「おいおい、私を舐めるなよ、向こうにもパイプあるわ、向こうで日本人役で俳優やるの、でもね、そうなると英語力や演技指導とか大変なのよ、向こうからしたら外人だから」


「ですよね」


「アンソニーの話だと、最初は身体作りや基本プレーの育成に二年、それからルーキーリーグなどのマイナーに参戦するんだって」


「でね、その最初の二年を三年にして、英語力アップとアクターズスクールも通ってもらう」


「で、マイナーリーグに出るようになったら、オフシーズン限定だけど、俳優デビュー、だから時間かかるよってアンソニーから説明あったと思う」


「もし、俳優やらないなら、最初の三年が二年で済むからね、それがいいなら、そうしな」


「色々わかりました!でも、球団は大丈夫なんですか?」


「うん、初の試みで面白そうだからOKだって、今は野球離れで観客入れるの大変なんだって、だからそのスリーウェイが成功したら大変になことになるから、球団も乗り気だったよ」


 いつのまに?凄すぎる祥子さん


「どよ?私のプランに乗るか?反るか?」


「の、乗ります!一生ついていきます!」


「オッケー決まり、で、あなたは高校卒業したら、うちと契約して、いや契約するの命令、竜ちゃんのマネジメントの全部をこっちでやる、契約金とか年俸交渉の代理人、俳優業のマネジメント、それから通訳とか、向こうでの生活のサポートもやる、だから竜ちゃんはまず何も考えずに野球やって、余裕出来たら俳優業も始める、で、うちは儲かる、どよ?ウィンウィンじゃない?」


「でも、サポートまでしたら、祥子さん儲からないんじゃ…」


「アホ、先見てんのこっちは先を、上手くいったらガッポガッポよ、大丈夫、野球は私はわからないけど、俳優は間違いなく成功する、野球ダメなら日本に帰国させてプッシュするから大丈夫、安心しな、ある意味杏子より売れるわ」


「わかりました!是非、スターリバーさんと契約させてください!」


「よっしゃ、じゃあ、こっちはこっちで話進めるから、渡米する時は私も同行して球団との面接、からの、契約に行くから」


「はい、よろしくお願いします」



「あ!祥子さん!杏子に内緒なのわかるんですけど、向こうで俳優業やったらバレませんか?」


 そう、杏子に内緒なのは俺が俳優業やったら、今度は杏子が動揺するからだと思う、でもバレるだろ


「ククク、安心して、アイツは海外のドラマなんか見ない、アメリカにいた時から日本のドラマしか見てなかったもん、それに、ここぞとゆう時までは端役しかやらせない、目立つ役をやる時は竜ちゃんと杏子は再会してるよ」


「な、なるほど」


「あ、祥子さん!」

「なによ!」


「なんで、最初からここでアンソニーさんを交えて話をしなかったんですか?おかげでメイドカフェで、オムライス食べちゃいましたよ」


「あ、それはアンソニーから、条件出されてたの、竜ちゃんの本気度知りたいから、ネタバレは後にしてくれって、だから秋葉原で竜ちゃんが渋った時点で、この話はアウトだったんだよ」


「な、なるほど」


「ちなみに!」


 ちなみに多いな、まだあんのかよ


「そこのメイドカフェも最初は私が出資してまーす」


「えーーー」


「メイドカフェでいい子いたら、スカウトできんじゃーん」


「さ、さすがです」


「ま、今は小山さんに丸投げしてる、あーゆう店はさ、グレーなことも多いから、万が一摘発なんてされたらこっちまで飛ぶからね」 


「なるほど」


「で?楽しかった?」

「の、ノーコメントです」

「楽しかったのね」

 ドキッ 


「あ!祥子さん!」

「なんだよ!」

「一つお願いがあるんですが…」






「…ってな感じで留守の間、お願いできませんかね?」


「………」


 あれ?祥子さん悩んでる?こんな顔初めて見た

 やっぱりずぅずぅしかったかな


「オッケーいいよ、大久保ね、竜ちゃんが渡米した後は、定期的に進捗具合を報告しに行くよ」


「あざす!他に頼れる人いないんで助かります」


「今、ご両親は京都なんです、数年後には帰ってくるみたいなんですが…」


「それに、他の同級生達は中学入ってから、誰も行かなくなっちゃって、俺までアメリカ行って、行かなくなっちゃったら、寂しいと思うんで、よろしくお願いします」




 って流れがあって、今は祥子さんとアメリカの球団事務所に向かってる




 アメリカの空港に到着

 入国審査も済ませてロビーへ


「あ、リリー!おひさー」


「翔子さんようこそ」

 ブランドの髪の毛の白人女性…えっとメッチャ綺麗な人


「紹介するね、この子、リリーウィリアムズちゃんね、お父さんが米軍関係の人で、子供の頃は厚木基地と横須賀基地にいたから日本語ペラペラだよ、杏子の逆バージョンみたいな感じかな」


「は、初めまして、春樹竜斗です、リリーさんよろしくお願いします」


「はーい、よろしくお願いします、ハルキさん」


 ドキドキ


「おい、可愛からって照れてんじゃねーよ!リリーもうちの事務所だからね、社内恋愛すんなよ」


「し、しませんよ!」


「リリーは、竜ちゃんの通訳と生活のサポートするから、まぁ付き人みたいな感じかな」


 ま、マジかよ、人選間違ってないか?


「ちょっと竜ちゃん」

 祥子さんが内緒話してくる


「二発いや、三発までは許してやる」

「な!なにを言ってんですか!本当ですか?」


「素敵な時計ですね、ガールフレンドからのプレゼントかな?」


「…自分で買いました!」


「サイテー」

「え、なんで?祥子さん…もしかして知ってるの?」


「サイテー」

「何言ってんすか、冗談ですよ、冗談」


「リリーさん、これは大好きな元カノからもらったんです」





 タカちゃん、とうとうアメリカまで来ちゃったよ

 悪いがしばらく行けないからな、あとは祥子さんから俺の報告を聞いてくれ


 もちろん知ってるよな、昔、俺の夢の中でタカちゃんが声真似した葉山翔子だよ

 騙しやがって


 ご本人様登場でビビりやがれ。


 昔、ファンだって言ってたもんな

 色々グッズ持ってたもんな

 ビビるんじゃなくて喜ぶかな


 ま、でも、タカちゃんが、「野球もう少しやろうよ」って夢の中で言ってくれたから、今ここアメリカにいるんだよな


 感謝しとくよ。



「あ、竜ちゃん」

「はい」


「リリーは、秀太の友達で秀太の紹介だからね」


「あ、はい」

 先にそれ言えよ

 祥子さん、俺の反応見て少し遊んだだろ


 いやいやいや、秀太さんの紹介じゃなくてもなんもないわ!


 秀太さん

 杏子のお兄さん、祥子さんの弟さん、グローブの元々の持ち主

 ここでもまた星川家が絡んでくる

 星川家すげえな

 



 よし!メジャーリーガーになって杏子と再会する!


 その時、杏子は別に好きな人がいたとしても

 メジャーリーガーになった俺の姿を見せて、補欠から引っ張り上げてくれた杏子に恩返しをする、星川家に恩返しする。


 脇目を見てる暇はない

 ガムシャラにやってやる。

 

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