隠し事
スヤスヤ クークー
杏子が横でスヤスヤ、いや爆睡かましてる。
まぁ、ほぼ徹夜でウノと大貧民してたからな
杏子くそ弱かった
てかさ、だからって発車してすぐ寝るなよ
窓際譲るのもうやめようかな
寝る率ヒャクパーだもんな
でも寝顔かわいいんだよな
他の人に見せたくないから、窓側でいいか
鼻をツンツンしてみる
ハハ、起きねー、この鼻だけ少し変な形してるんだよな
顔が整いまくってる杏子なんだけど、よ〜く見ると鼻だけ面白い形してる、面白いけどかわいい鼻
怒ると、この鼻が広がる、これがまた更にかわいい
この顔好きすぎる!
ふぅ〜、後ろのリナ達も爆睡を始めたので、シートを全開に倒して物思いタイム
いやぁ、まさか優勝しちゃうなんてなぁ
ヤス(工藤)のホームランはマジで嬉しかった、あんなドラマあるか?
もう限界だった、野球で初めて辛いと思った
そんな時に出た神風、あれは絶対神風吹いたよ
でもあの時、泣いてる俺の横にスっと杏子が来てくれた、そして何も言わずただ横にいてくれた
そうゆうところも大好きだ
バッティングの不調の原因を見つけてくれた
メガホンで一生懸命、俺にジェスチャーでグリップの位置を教えてきた
あれさ、俺じゃないと絶対わからないから!ジェスチャー下手すぎる
でも、おかげでホームラン
夫婦で打てたホームラン、付き合ってたからこそ打てたホームラン
みんなは俺の活躍を賞賛してくれる
テレビや新聞、みんな俺をほめてくれる
でも、みんなは知らない、杏子がいてくれたから活躍出来たことを…
杏子がいてくれたから、チームが優勝出来たことを…
いつか、世間に知ってもらいたい
杏子がベンチにいてくれてよかった
マウンドで滑った時に説教された
図星だった、知らぬ間に一人で背負ってた、元補欠のくせに生意気すぎるわ
その説教のおかげで、冷静になって、延長まで投げ抜くことが出来た
んで、俺の球速、自分で失神しそうになった
俺のボールが160キロ?マジで騙された気分だった
けど、それからの俺はある決意を固めた、アンソニーさんの元でメジャーを目指したい
このスピードがあれば勝負できるんじゃないかと…
日本で野球を続ける気はない、野球続けるならアンソニーさんに指導してもらいたい
だいぶ前からそんな気持ちになっていた、ただ渡米してやっていける自信がなかった
それが、このスピードならイケるかもに変わった
そして、アンソニーさんから誘われた
こんなチャンス逃したくない
でも、そうなると杏子との関係がどうなるのか…
杏子は付いて来てくれる…
本当にそれでいいのか?
杏子の大事な人生を俺の夢物語のために、渡米させてまで…
俺にベッタリの人生だけでいいのだろうか
これがいい大人だったら、まだわかる
でも、杏子はまだ高一だ
今後通訳として活躍できるんではないか?
祥子さんの後を追って女優の道もある
この美貌だ、それに祥子さんのプロデュースがあれば、活躍間違いないとも思う
これは、ちゃんと考えなければいけないかもしれない
せっかく、アンソニーさんから誘われたチャンス
杏子と離れるのが嫌、とゆう理由で断るのは杏子に悪い
それだけはハッキリしてる
杏子と星川家の恩に応えるためにも、上を目指したい!
もし、メジャーリーガーになれたら、記者会見で言いたい
「自分がメジャーリーガーになれたのは、星川杏子さんのおかげです、そして星川家のみなさんのおかげです!」
って、言いたい、それを言いたいために頑張れるかもしれない
その時、例え杏子とは別々の人生を歩いてたとしても…だ
あ〜でも、もう先発ピッチャーやりたくね〜
ペース考えて投げるとか、球数とかめんどい
1イニング限定でガンガン投げる方が性に合ってる、連投でも全然オッケー
先発の疲れのが俺にはキツイ
まぁ、アンソニーさんはクローザーって、言ってくれたからよかった。
アンソニーさんと監督のお別れ会も終わり、数日が経った。
家で暇してる
見たところ、家の周りには報道陣らしき人も、ファンみたいな人もいない
意外と平気そう、そろそろご褒美もらうかな…
あ、やば、想像した
ムラムラ
こんな不純な動機で完投頑張ったなんて絶対言えない
甲子園番組の取材で、あの耳打ちの内容って教えてもらうことできますか?って、聞かれた
戦略的内容なのでお答えできませんと答えた
ある意味、戦略的内容だ!
♫ ♫
携帯の着信音が鳴る
誰?ん?知らない番号だ、記者?気持ち悪いけど出る
俺は知ら番ガンガン出ちゃうタイプ
「もしもし」
「春樹竜斗さんで間違いないでしょうか?」
ん、記者か?
「はい、そうですけど」
「初めまして、小山といいます、アンソニークラインの代理で電話してます、お分かりになるでしょうか?」
「はい、アンソニーさんから聞いてます!」
「あーよかった、突然なんですが、三十一日って空いてますか?」
えっと、プールの前の日か、杏子はリナと渋谷に水着を買いに行くって言ってたよな、ってことは大丈夫だな
「はい、空いてます」
「でしたら、ご足労おかけしますが、十時位に秋葉原に来ていただけませんでしょうか?」
なぜ秋葉原?ま、いいか
「はい、大丈夫です」
「クラインが帰国前にどうしても会って話がしたいみたいです、あ、ご安心ください、私は通訳を仕事としてますので、当日は私が同席して通訳します」
どうゆうことだ、話があるなら杏子を同席させて、通訳させればいいじゃないか
「えっと、もしかして…」
「あーはい、星川さんとこの杏子ちゃんには内緒でお願いします」
「はい、わかりました…」
「あ、はい、では三十一日、よろしくお願いします、では失礼します」
どうゆうことだ、なぜ杏子に内緒?小山さんは、星川家の知り合い?
で…なぜ場所がメイドカフェなんだよ!
メイドカフェで、何を話すんだよ…
メイド…カフェ…?
ちょっっと楽しみなんですけど!
いや待てよ、これは、相手が嫌がることしない法律に触れる?
いや、ぶっちぎりで触れる気がする
でも、仕方がない、アンソニーさんの話を聞くためだ!
こ、これは仕方がない!うん!仕方がない!
あれ?メイドカフェって18禁じゃないよね…
あ、記者さんとか、メイドのお客さんに顔バレしたらどうしよ
仕方がない!水着買いに行くついでに変装キットも買いに行く!
運命の八月三十一日
キャップを深々被り、伊達眼鏡をかけマスク装着!
これで大丈夫
杏子は渋谷に向かう、リナは小田急大好きだから、小田急の駅は避ける!
安牌の京王線で行く
駐輪場到着!
「あれ?ハル?」
え?わっ!
は、はづき…しまった!こいつの存在忘れてた
でも、会いすぎだろ、俺のこと張ってんじゃないか?
そして、なぜ変装に気付くんだよ!
「ひ、人違いででです!じゃ」ササササー
「こら、私が見間違うわけないでしょ!待ちなさい!」
「はい」
「なに、変装なんかして、あ!そっか、今や有名人だもんね、買い物したくても声かけられて大変だもんね」
いや、意外と平気なんだが、ここは乗る
「まぁそんなとこ」
「ふ〜ん、どこ行くの?」
ドキッ
「えっと、そう!渋谷、水着買いに行くんだ」
「あ、そう、私も付いてっていい?水着持ってるけど新しいの買おうかな?」
いいわけないだろ!んなことしたら修羅場だ修羅場
渡米前に、足が使い物にならなくなる!
「変装してるから、ちょうどいいじゃん、私と一緒でも杏子ちゃんの耳に入らないよ」
「いやいやいや、違うんだよ、その杏子と行くんだよ」
「あ、そうなんだ…わかった、じゃプールで」
「あ、うん、じゃ!」
あぶねー
そんな落ち込むなよ、どんだけ暇なんだよ
でも…応援来てくれたのに申し訳ない
ふと思った、杏子大丈夫か?リナにそそのかされて変なエグい水着とか買ってそうなんだけど
リナはそうゆうことするやつだぞ
秋葉原到着
メイドカフェ到着
ドキドキドキ
あれ?まだやってねーじゃん!
営業時間お昼からって書いてある
まだ二時間あるぞ
聞き間違えたか?
「春樹君?」
ん?変装バレた?
「えっと、春樹君だよね、小山です、え、もしかして変装?」
「あ、いや、メイドカフェって聞いたから、あのその」
「ハハハハ、そっかそうだよね、ごめんごめん、ここね俺が経営してるの、副業ってやつ、いやこっちのが儲かってるから本業かな」
「あ、そうだったんですね」
「ここの俺の社長部屋なら、春樹君周り気にせず喋れるかなって思って、ここにしたんだけど、かえって迷惑だったかな?」
「あ、いえ、全然大丈夫す」
ちょっとガッカリ…してないよ、うんしてない
「クラインも来たね、じゃこちらにどうぞ」
「失礼します」
アンソニーさんと打ち合わせが始まる。
渡米するまでのトレーニング方法や、準備などの説明が中心
この内容なら、杏子に内緒にする意味が…
あと、驚愕した、小山さんの通訳と杏子の通訳が全然違う
えっと、小山さんがめっちゃ下手に感じる
でもこの人、プロ選手の通訳なんだろ…
ってことは、杏子が上手すぎるんだ!
やっぱり、子供の頃から使ってる英語力と後から覚えた英語力は違うんだな
いや、それだけじゃない気がする
杏子は通訳やった方がいい、絶対やった方がいい
「ハルキ、本題に入る、キョーコのことはどうするんだ?」
「え!いや、まだ何も…」
「まさか、キョーコを連れてこようとしてないか?」
「あ、いや、杏子が卒業するまでは…」
「ダメだ!悪いが、キョーコとは別れてくれ」
「え?」
「身軽で来てもらわないと困る」
「は、はい」
「いいか、ハルキ、何回も言うが甘い世界じゃない!この前も言ったが、年数がかかる、その間はギリギリの生活になる、バイトもしてるやつもいる、そんなハングリーな状況で女を抱えてる奴なんて一人もいない!」
「はい」
「ドミニカや、ベネゼエラ、メキシコ、いろんな国の奴らがうちにいる、みーんな、メジャーに上がるまで家族と関係を切って来てる、その中でキョーコを連れてきたりしたら、それこそ笑われるぞ」
「それに、いいか、成功する保証なんてどこにもない、その厳しい世界にキョーコを付き合わせちゃダメだ」
「……」
何も言えない
「日本に待たせるとかも無しだ、早く会いたいなどのいらない感情が入る、だからダメだ」
「ハルキ、君がもし成功したら、ベースボール界にとんでもない衝撃を与えることになる、その自覚を持って、スリーウェイに挑戦して欲しい」
「もし、それができないなら、この話は白紙だ、今聞かせてくれ、今迷ってるようでは使い物にならないからな」
「やります、スリーウェイやりたいです、全部捨てて挑戦します」
「わかった、その言葉が聞きたかった」
「コヤマ、話は終わりだ、あとは頼む」
「春樹君、ここに電話してくれないか?」
名刺を見せられる
え!ここは…
電話をかける
「トゥルルルル、ガチャ はい、スターリバープロモーションです」
「えっと、春樹と申しますが…」
「え?ヤダァ!あ、失礼しました、少しお待ちください」
「ヤッホ〜竜ちゃん!甲子園やばかったね、みんな感動してたよ〜今電話出た子なんて泣いちゃってさぁ、大変だったんだから〜したらね、もうファンになっちゃってさぁ」
「あの祥子さん」
「あ、ごめんごめん、んとさ、今からうちの事務所来て!あ、これ命令だから、断れないよ」
「え?は、はい、祥子さんの命令ならば、どこにでも行きますよ」
「嬉しいこと言ってくれんじゃ〜ん、じゃあ迎えの車出すから、ちょっと待って、ナベ〜あきばに何時に行ける〜?……オッケ〜、あ、竜ちゃん1時半に着くから、ちょっとそこで待たせてもらって」
「了解です」
「それから!このこと杏子に内緒で!トップシークレット!わかった?これも命令!」
「え!はい、了解しました、では、後ほど」
「どうなったかな?」
「1時半に迎えの車がくるそうです」
「1時間ちょっとあるね、じゃあうちの店で待とうか、もう開店してるし」
「え!いやいや悪いです、でも高校生でも大丈夫なんですか?」
「あ〜よく聞かれるけど平気だようちは、安心して、角のテーブルなら顔バレしないよ、もちろんお金はいらないから、クラインと楽しんで」
「いやいやいや申し訳ないですよ、角のテーブルいいですね」
「うちの、オムライス美味しいよ、大盛りで出しておくから、お昼ついでに萌えキュンしてもらってね」
萌えキュン…萌えキュン?
「いやいや、すいません頂きます」
って、おい〜これはいいのか?いっか、最初はそのつもりで来たんだし
喫茶店に、オムライスを食べに来ただけだ!
祥子さんも杏子に内緒の用事…
なんだろ?
なんか、隠し事が一気に増えていくんですけど
あ、帰り、墓参り行こう
甲子園の報告しないとな。
今度はメイドカフェの後に墓参りか…
いい加減タカちゃん、怒りそうだ。
高めの花買っていくか、掃除もガッツリやって勘弁してもらおう。
いや、なに悠長なこと言ってんだよ、俺
杏子と別れるんだぞ
初めてのメイドとなんで祥子さん?で、頭がいっぱいだった
段々、実感湧いてきた
このまま、結婚する、したいと思ってた
二年の我慢だと思ってた
それが破綻する
でも、やはり杏子を理由で夢は捨てたくない
悲しいけど、夢を捨てたら杏子はもっと悲しむから
それに、やはり杏子の人生を縛りたくない
これは覚悟決めるしかない
こうやって、みんな学生時代の恋を思い出に変えていくんだ
別々の道を歩んで、俺が渡米したら二度と会う事はないかもしれない
ならば、将来、絶対にメジャーに上がって、テレビで応援してもらおう
杏子の新しい家族に、春樹竜斗は私が育てたんだよって自慢してもらおう
あれ…なんだろ、心臓がバクバクしてきた
俺はただ綺麗事言ってるだけではないか?
これが本当の俺の気持ちか?
杏子がいない野球…耐えられるのか?
もっと言うと、渡米までの半年間、当たり前だが杏子は同じ高校にいる、近くにいる
杏子は、俺と別れたらすぐに新しい彼氏が出来るかもしれない、あの美貌だ、おそらく出来る
耐えられるのか?
アメリカに行くまでの間は地獄だな
でも、どう考えても、どう色々考えても、どうにもならない
自分の気持ちを封印して、耐えるしかない
逆にそこさえ耐えれば…
あとは、きっと時間が解決してくれる
アメリカに行って環境変われば、解決してくれる。
アメリカに行けば、杏子の情報は遮断される
そうすれば段々思い出に変わる
いや、自分の気持ちに嘘ついて強引に思い出に変えるしかないんだ
でも、アンソニーさんにアメリカに行くと即答出来た自分の気持ちは嘘じゃない
その気持ちだけを頼りに、前に進むしかない。




