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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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奇跡のバトンミス

 

 トンテンカンテン


 教室から第一グラウンドを眺める。


 体育祭の準備が始まってる。


 テントを設営してる。


 ふぁ、ねみ


 英語の授業なう


 高校の英語は実戦的なので、私にはもってこい、勉強などせずに余裕でいける。


 英語教師は、もちろん私が通訳やってるのを知ってるので、授業中は一切絡んでこない、私と絡むと英語力の差が露呈するからかな


 中学とは違い、高校ではなにも隠す必要がない今の環境は楽だ


 中学時代は、アメリカからの転校生でかなりアウェーで浮いてたが

 高校からはみんなも一緒でフラット、アウェーではなくホームだ!


 友達出来るかな?


 なぁんて、思ってた


 思ってたんだけど


 入学して二か月…完全に浮いてしまってる


 中学時代と変わらない、友達出来ない

 いや、作る気ないんだ私


 てか、そりゃそう


 野球部が忙しいせい、からの、私のおかしな行動がいけない


 授業の間の休み時間は、グローブ磨いてるか、ミット磨いてるか、スパイク磨いてるか、ノックバット磨いてるか、タブレット叩いてる


 まず、これが異様な光景、女子なのに?だ


 今日もそう、私の机の横にはピンクのノックバットが立てかけてある


 そう、普通のバットではなくノックバット

 女子はわからないが、男子は野球部じゃなくてもわかる


 そこにまずドン引きされてる。


 そして、昼休みは真っ先に三年生の竜斗の教室に行き、お弁当を食べる。


 受け入れ先の竜斗の教室は、野球部の人じゃなくても、私が誰なのかはだいたいご存知なので、もうビックリもされない、うん、楽


 そして授業が終わると、ノックバット担いで、さっさと出ていく


 そりゃ浮くわ


 そして、極め付け、入学してすぐに竜斗が私のクラスに様子を見に来た、それも何回か


 なんで、入学早々で先輩の彼氏がいるの?状態

 今でも、竜斗が先に終わると、迎えに来たりする。


 あの竜斗が一年生のクラスに来る


 女子は一瞬、目がハートになるが、私との交際に気づき、ガックリからの私に対して、アナタ何者?んで、男子はビックリしてる。


 そして、毎朝一緒に通学してくるのも見られてる。


 まぁ、おかけでお互いに変な虫は付かないから、いいんだけどね


 あと、たまにリナさんが、冷やかしにくる、それをコラー!って、追いかけまわす


 ハタから見たら、一年が二年の先輩を追っかけまわしてる図


 更に更に、私のこの老け顔、これがトドメだと思ってる。


 同じクラスなのに、間違えて敬語で話されることがチョイチョイある


 私が、クラスの子の落ちたペンを拾ってあげたら

「あ、すいません、ありがとうございます」


 だとさ、もしかして留年してると思われてる?


 入学式いたよね?


 もう、悲しい


 まぁ、これだけ条件揃えば浮くわけよ


 なんなら中学時代の倍浮いてる


 友達はいなくて浮いてるけど、嫌われては無さそうなので、話かけてはくれる…女子だけね、男子は全然来ない


 英語のわからないとことか、よく聞かれるね

 満面の営業スマイルで丁寧に答えてるから、嫌われてないのかな


 だけども、恋バナはされない…わけでもない、竜斗との関係をよく聞かれる、お泊り五百円とか間違っても言えないので、適当に答えてる




 体育祭!


 アメリカでも似たような行事はあったけど、「体育祭」とゆうものは初めて!


 テンション上が…ってはなかった

 当初は休み気マンマン


 野球部で運動はお腹いっぱいなので、正直休むつもりだった、親にも了解は得てた


 あと、私は浮いてるので、仲間意識0の私は欠席した方がいいと思った


 なんだけども、竜斗が変なこと言い出した!


「俺、借り人コンテンスト出るからね!」


 なんやねんそれ


 こうゆう時は竜斗本人より、情報屋リナ氏に聞くが一番


 聞いてみた


「あは、それ、その名の通りだよ、あ、キョウちゃんわからないか」


「ぜーんぜんわかりません」


「体育祭にはさ、借り物競争ってのが、だいたいどの学校にもあんのよ、出場者がお題言われてそれを探すの、例えば坊主の人!って言われたら、坊主の人を早く連れてきたら勝ち!」


 ふむふむ


「丸い物!って言われたら、とにかく丸い物、ボールとかを誰かから借りて、早く持って来た人が勝ち」


「ここまでわかる?」

「あ、はい、オッケーです」


「でもね、うちの学校は少しテイストが違うの、元々は借り物競争だったんだけど、段々進化したみたいね、それが借り人コンテスト」


「ほほー」


「ルールはね、三年生限定で出場、出場者は箱に入ったクジを引いて、そのクジに書かれてるお題にふさわしい人を、誰でもいいから連れてくるの、だけど競争じゃない、連れてきてから、審査投票されて勝敗が決まるの」


「例えばね、好きな人って書かれてたら、ハルちゃんは、当然キョウちゃんを連れて、とりあえずゴールに向かうの、全組ゴールに着いたら、順番にインタビューされて、そのコメントと、あとはそのお題にふさわしいかとか、お似合いとかが、審査員十人に審査されるの」


「なるほど、って、わお、もしそれなら恥ずい」


「まぁね、で、審査投票が終わって、一番票を稼いだら勝ち、勝つと新聞部に撮影されて、後日晒される」


「うわー」


「このコンテストのお題なんだけど、好きな人、は、絶対一枚入ってるの、あとは毎年なにが入ってるかわからない、でも、他のお題も恋愛に絡むお題ばっかり、だから別名カップルコンテストとかも呼ばれてる、まぁ三年生の思い出作りだよね」


「わお!」


「過去に、好きな人、を引いた男子が、意中の人にそのまま告白して玉砕したこともあったみたい」


「わー、気の毒!公開玉砕」


 ん、あれ待てよ


「あ、じゃあ、もし私が休んでて、竜斗が好きな人、引いたら?」


「まぁ、誰かしら連れてくまで終わらないからね、誰か他の人選んじゃうかもねー」


「えーー!」


「はは、でも男選ぶのもアリだから、無難にノブさん辺り連れてくんじゃん、ハルちゃんは他の女を選ばないから安心せい、疲れてんじゃん?休みたかったら休め」


「むー、出る!張いつくばってでも出る!」

「そうか、思い出作れ!」


「うん!」


「連れてかれての、インタビューの時のポンコツ期待してるから!頼むぞ」


「もう!」


 インタビューかぁ…ま、いっか


「あ、あとはハルちゃん、部活リレーのアンカーだから、楽しみだね!部活リレーはメインイベントだから、めっちゃ盛り上がるぞ」


「あ、そんなこと言ってた!そんなに盛り上がるの?」


「うん、ぶち上げ!特にアンカーはめっちゃかっこいいよ、まぁトップ争いが出来てたらの話だけどね」


「絶対体育祭行く!台風来ても行く!」

「えっと、それ中止だから」




 とまぁ、そんなわけで、やる気ない顔しつつも、ワクワクして体育祭に参加してる





 種目が続き


 三年生の演舞になった


 お!マリさんが出てる!踊ってる!

 カックイイ!


 ドリさんも出てたけど、なんかでっかい旗持ってるだけだった

 ウケた





 借り人コンテスト


 このカップルコンテストが終わると部活対抗リレーがあり、体育祭は終了する


 なかなかの演出



 軽やかなBGMがグラウンドに響き渡る


 ついに始まった

 さて、竜斗はどんなお題を引いてくるのか


 お題関係なく、必ず連れてくからと言われてるので、私の出場は確定済み



 ん?あ、ドリさんも出てる!なんでよ!



 竜斗がクジを引いて、ニヤっとしたのが見えた!


 こ、これはー「好きな人」引いたか?引いちゃった?

 キャーー


 一目散に私の方に向かって駆け寄ってくる!



「1年C組星川杏子さん!ご一緒によろしくお願いします!」


 竜斗が手を差し伸ばす

 えっとこれ、ルールです

 事前に聞いてました

 ちなみに断ることも出来ます


 周りが、ヒューヒューと騒ぎ立てる


 いつも一緒にいる私達を見てるのに、あえて場を盛り上げてくれる


 そうとなっては、半分アメリカ人の心が騒ぎ出す


「はい、喜んで!よろしくお願いします!」


「オーー」と歓声に変わる


 二人で手を繋いでゴールへ向かう

 ちなみに手を繋ぐのもルールです



 ん?え!


 ど、ドリさん!ガブさんと手を繋いでゴールを目指してる!


 って、なんとなく予想出来てたわ!


 これさぁ、あの二人が優勝でよくない?



「ねえ、お題なんて書いてあるの?」


「ん?これだよ」

 紙を見せてくる

 覗く


 (素でいられる人)


 おっとーそうきたかぁ、意外だったわ

 素でいられる人ね

 トクン


 ん、なんだろ、なにか心に響く


「竜斗は私の前で素でいられてるの?」

「わかんね」

 ズコッ!


「でもさぁ、俺、杏子の前でかっこいいとこ見せたことないし、頑張って見せようとも不思議と思わないんだよね、もちろん、かっこいいと思われたい気持ちはあるんだよ、でもなんだろ、それってさ疲れそうじゃん、今の俺のままでも、じゅうぶん好きでいてくれてるなら、かっこつけるよりも、何かあったらこの人を守るんだ!のがいいんだよね」


 トクトクン


「それに、杏子には言いたいことが言えてる気がする、文句とかも言ってると思うし、あとは、例えば、鉄道大好きなんてさ、杏子しか知らないから、他知ってる人いないよ、でもまだ杏子に言ってないことや、言えてないことあるけど、それはたまたま言う機会がないだけで、そのタイミングが来たら言うつもりだし、それを考えると素でいられるてると思うよ、二人で無言で音楽聞いたり、ゲームやってても苦じゃないしね」


 トクントクン


「あ、あのさ、クジ引いたとき笑ってたでしょ?なんで?」


「ん、いやほら、杏子は素を出しまくりじゃん」

「なに?」


「え、だって、俺が頑張って取ったスライムなのに、ワタが出るまでぶん殴ってくるし、花束なんて殴って花じゃなくなってたじゃん、ただの茎だよあれ、それに蹴るし、自分んちで下着姿見せてくるし、俺んちでは下着姿でウロウロするし、下着姿であぐらかいてゲームするし、人混みで狩人歌うし、せっかくの新幹線三秒で寝るし、しかもアホ顔で寝るし、親の前で風呂乱入してくるし」


「もう!アホ顔じゃないもん!三秒じゃない!十分…?起きてたし!」


「はは、それだよ、それ、その怒り具合も素が出てるじゃん?おそらく素を見せてるの、家族以外は俺とリナだけじゃない?だからリナは親友なんでしょ?」


「う、うん」


「それでいい、杏子はそれでいい、そのままでいて、そのままの杏子のがいいよ、最初会った時より俺の好き度が増してるのは、そうゆうところが好きなんだからね」


 トクトクトクトクトクトクトクン


 なんだろ、キューーーンでもない、心の中から嬉しい感じ


「う、うん、ありがとう」



 ゴール着いた

 インタビュー始まる


「お名前教えてください」

「はい、3年Fカップ、有村翔です、ウス」


「お連れの方お名前どーぞ」

「3年D組、三沢一正でーす、ウス」

 そこは、カップで付き合ってやれよ


 てか、マリさんいいのか?浮気してるぞ浮気


「では、有村君!お題を教えてください!」


「ウス!ズバリ!ジャジャン!好きな人です!」


 ドッ


 爆笑の渦に包まれる


 マジかよ、そこ引くかね


「では、張り切って愛の告白どーぞ」


「えー、三沢さん、アナタとは何か気が合うとゆうか、波長が合うとゆうか、とにかく一緒にいて楽しいです!私は佐藤とゆうピッチャーの女房です!不倫よろしくお願いします!」


「え、そんなぁ、困っちゃう〜、じゃあまずはお友達から!ウス」


 もう、何やってんだよ、どっちが男でどっちが女だよ、ごっちゃになってんじゃん、設定しっかり作ってこいよ


 しかも、不倫に友達もくそもねーだろ


 ………


 気が合う、波長が合う、楽しい…


「はい、では次の方行きますねー、お名前お願いします…-」


 なんか、私、この恋、一歩前に進んだかも


 私は最初、竜斗のビジュアルと独特の優しさに惹かれて好きになった


 うん、確かにそうだし、今もそこは大好き


 でも、最初よりもどんどん好きになり、本気で結婚したいと思ってる、最初の恋で何言ってんだと思われる、でもそこは、その気持ちは自信ある


 その気持ちの意味が、自分でわかった気がする


 竜斗に対して、喜びも怒りも甘えもイチャイチャも思いっきり、なにも考えずに当たって行ける


 下着姿でゲームするのも抵抗は無い、今はいくらでも寝顔見てちょうだい


 親や友達に、竜斗との恥ずかしいやり取りがバレても、さほどショックではない


 なんなら寝ぼけて竜斗のシャワー乱入時、母に見られてるのに、服を脱いだ後だったため、めんどいからそのまま入ろうとしたぐらい


 別に、竜斗を舐めてるわけではない、もしかして一緒にいる時間が長くて、なぁなぁになってるだけかもしれない


 そんならそれでいい、一緒にいて気を張りづつけなければいけないよりは全然いい


 私が大胆にグイグイ行けるのは、竜斗と波長が合うから、気が合うから、一緒にいて楽しいから、楽だから、苦になることがなにもないから


 それを、竜斗は受け止めてくれる、受け止めてるのが嬉しそうに見えるから、グイグイ行ける


 そして今、竜斗からその言葉を聞けたから、自分で気づいたし、心の中の鼓動が聞こえるくらい嬉しかった



「では、次の方行きますねー、お名前お願いします……」


 まとめる


 竜斗並のビジュアルと優しさは、他でも持ってる人はいるかもしれない、でもこの先、竜斗以上に気の合う人は現れないような気がする


このビジュアルと独特の優しさを持ち合わせて、更に気が合う、もう文句のつけどころがない、だから結婚したいとまで思えてることに気づいた


「3年C組春樹竜斗です、俺が引いたお題……」


 なんかもう、それに気づいたら、また更に好きになった、やばい、心の底から好きになった、愛してる


「では、お連れの方、お名前どーぞ」


 やばい、めっちゃ好き、すぐにでも抱きしめたい、チューしたい、エッチしたい、ムラムラムラムラ


 最近野球漬けだったからかな?もう大変!


 ムラムラムラムラ


「あの、お名前を…あの?」

「杏子、どうしたの?」


 竜斗が私を優しく見つめてくる、あーもう、大好き


「好き!好き!竜斗大好き!愛してる!ねえ!チューして!チューしてって!早く帰ろ!早く帰ってさ、モゴモゴ」


 竜斗に口を塞がれて、我に返った


 私の叫び声がマイクに乗り、グラウンド内に響き渡り、今も余韻が残ってるくらい


 なんなら、近隣住民にまで届いてると思う


「へ?あれ?」


「…………………」


 みんな、固まってる

 全校生徒固まってる


 うわ!やった!


 考え事してて、自分にインタビューが回ってきてるのわからなかった!


 やば、なんて言ったっけ?


 …………


 詰んだわ


 カァーーー、顔から火が出る、今ならゴジラに負けない位の炎出せる


 やってもーた、やってもーた


 夏の大会の前に私がリタイアしそう


「えええっと、み、皆さん、これはね台本なんです、俺がどうしても優勝したかったんで、台本作ってきたんです、したらこの子、どうしたのかなぁ、緊張しちゃたのかなぁ、名前より先にセリフ出てきちゃったみたいで、サーセン」


 竜斗がフォローを入れてくれる


「うそつけー!そんな雰囲気じゃなかったぞー」


「セリフならなんで口塞ぐんだー!その先聞かせろー!」


「キャハハハ、マジウケるー、おーい、どうせ台本なら自慢のブルマ履いてこーい」


 罵声とゆうか、冷やかしの声が飛んでくる


 てか、アイツ……くそ


「そうだったんですね、台本はよく無いなぁ、審査に響きますよぉ、とりあえずお名前お願いします」


 司会の三年生が、上手いタイミングで振り直してくれる


「ああああの、すいません!本当に緊張してミスってしまいました、1年C組星川杏子です、その、帰って早くキャッチボールしたいと言いたかっただけなんです、ただこれは台本になかったんで、春樹さんが止めてくれただけです、はい…」


 全力で、台本です言い訳に乗っかる


「なんだぁ、そっかー」


「この子、バッピやる子だもんね、なるほどね」


「んだよ、台本かよー」


「おーい、みんな騙されるなー、こいつら野球部でいつもこんなだぞー!」

 あのヤロ


「この子ね、少し頭悪くて、台本覚えるのに必死だっただけですから、中学だってやっと卒業できたんですよ、この前なんて長野って何県?なんて聞かれちゃって、絶句したくらいなんですから」


 竜斗がフォローなのか、ディスりなのか、わからないことを言ってやがる


 イライライライラ


「そんなわけで、お騒がせしましたー」

ペコリ

「ほら、杏子もペコリしとけ、ったくポンコツ頼むよ」


 マイクに入らないよう小声で話しかけてくる


 イライライライラ


「はぁー?今そんなこと言わなくてよくない?長野がなによ!こっちは帰国子女だっつーの!だったらアンタはボストンは何州か言えんの?」


「マサチューセッツ」


「うぐぐぐ、てかさ!さっきの何!まだ言えてないことがあるって何!何か隠し事!浮気!蹴るよ!」


「お、落ちつけ杏子」


「なによ!竜斗が出たいって言うから、付き合って出てんじゃん!台本?ふん!知るかっ!もっと優しくしなさいよ!フンっ」


「………」


「あ……やば、すみませーん、ついつい、いつもは私、こんなんじゃないですからねぇ、全てコイツがいけないんですぅ、ウフフフ」


 ドッ


「いいぞーやれやれー」


「え、台本じゃなくてガチ?」


「チューしろ、ここでしちゃえ、どうせ優勝だろこれ」


「好き好き言った後は喧嘩かよ、忙しい奴らだな」


「ホームランは打っても、彼女には頭が上がらないとかウケるな」


「おーい、どうせ帰ってお医者さんごっこするんだろー」

 こ、殺す


「えっとあのぉ、すみません、もうコメントはじゅうぶんもらったので、次いきますね」


「え、この流れでうちらキツくない?」

 次のカップルが当然のセリフを言う

「サーセン」

 二人で謝る





 ぶっちぎりで優勝した、満票だった


 夫婦(めおと)漫才とか言われた


 ドリさんに反則だとキレられた


 新聞部に写真撮られた、後世に残りそうなので腕組んで満面の笑みをしといた



 竜斗はリレーの準備があるので、一人トボトボ自分の椅子に帰る。


 その間も色々あちこちから、声をかけられる、冷やかされる、チューチュー言われる


 インタビュー気をつける!って思ってたのに


 やってもーた、浮かれて全部すっ飛んだわ


 救いは、うちの体育祭は保護者不参加型だから良かった、てか、親不参加だからカップルコンテストとかやるんだな


 にしても…この毎度のポンコツ具合、神様にイタズラされてる気がしてきた


 まだ、高校生活があとどのくらい残ってるんだよ、早々にやっちゃったじゃん


 また、クラスで浮いちゃうよ私


 ハァ


「星川さん!そんなキャラだったの?ウケる!」


「なんだぁ、もっと気難しい人かと思った、なんかいつも怒ってるみたいな顔してるんだもん」


「星川さん、凄いじゃん!」


 みんな、声をかけてくれた!

 さん付けとか、気になるけど、少し打ち解けたのは良かったかな





 メインディッシュ

 部活対抗リレー


 それぞれのユニフォームに着替えて走る。


 ん?ユニフォーム?

 なんか、野球部不利のような気がする


 一番重たそう、いや、剣道部か

 面はおそらく外すだろうけど



 野球部の集まりに向かう


「おい!キョウちゃん!なんかやらかすんじゃねーかと、ワクワクしてたんだけどさぁ、いやぁマジウケたわ、マイクパフォーマンスかよ、腹痛くて死にそうだった」


「もう!色々事情があったんです!」


「どうせ、ポーっと妄想でもしてたんだろ」

「うっ」


「てか、それなのに、ここにしれっと来れるメンタルが凄いよ」


 くっそ


「あれさぁ、ハルちゃン止めなかったらやばかったね」

「何がですか?本気でキャッチボールやりたかっただけですよ!」


「おい、本気でそんな嘘、ワシに突き通せるとでも?」

「くっ」


「だってよ、エッチのエまで言ってたぞ」


「え!うそ!やばっ!どしよー」


「嘘だよーん、マジウケる、本気かよ!マジやべー、言っちゃってたら、もう大変なことになってたぞ!」


「もう!ずるい!誰だって引っかかるじゃんそんなの!」


「ブルマナース野郎しか、引っかかんねーよ!」


 イラッ


「あ!さっき言ったね!言ってたよね!聞こえてたんだからね!殺す!蹴り入れる!」


「チッ、聞こえてたか」

「あん?やんよ」


「まぁ、待て待て、ほらリレー始まるから、まず落ち着け」


「落ち着いてます!リナさんがいけないんでしょ!」


「リレーの下馬評、聞きたくないんすか?姉さん」


「聞きたい」


「蹴らない?」

「早くカモン」


「んとね、まず、前日のタイムトライアルで予選を抜けた六チームがこれから走るのよ」


「で、出場チームは、陸上、サッカー、硬式野球、男バス、男テニ、剣道」


「ふむふむ」


「陸上部は、ハンデで三年生は出ないけど優勝候補、でもね、うちの陸上部そんなに強くないからね、隣の高校が良いトラック持ってるから、有望選手はみんなそっちいくから、チャンスある」


「なるほどっ」


「で、剣道部は、タイムトライアルはジャージだけど、本番は剣道着着るから断然不利、まあ盛り上げ役だよね、あとはタイムトライアルの結果踏まえると、サッカー部がやっかいかな」


「サッカーは脚力強そうですもんね」


「うん、だけど、うちのサッカー部は、なんでかブサイク揃いだからね、タイムトライアルは負けてるけど、本線は抜けるかも」


「顔関係ないでしょ!」


「んにゃ、共学舐めたらあかん、女子の黄色い声援はだいぶ追い風になるぜい、うちのラインナップ見てみろ、マッキー以外は粒揃い、フフフ」


 竜斗の他は、羽堂さんと、ゴー君と、マッキーさん、確かに!


「で、うちの作戦」

「うん」


「Bダッシュ牧野がトップランナーね、これはそこそこいい働きをする」


 Bダッシュ牧野とは!

 竜斗と並びチームの俊足マッキーさん、トップスピードに乗るのがめちゃくちゃ速い、この技で練習試合で盗塁決めまくり!なので私達は影で、いや、面と向かってもそう呼んでいる


「あいつは、空気読めない性格だから緊張しない、おそらくフライングなんか怖がらずに、スタートダッシュを決めてくる、んであのBダッシュよ、二人目まではトップでイケると思う」


「なるほど!予想屋リナさんすげえ」


「で、二人目の旦那と三人目の羽堂さん、この二人がどこまで持ち堪えられるかが鍵、確かに野球部では速いが、さすがに陸上部とサッカー部がまくってくる」


「うんうん」


「で、アンカーハルちゃん、実はコイツのラストスパートが凄い、去年も二人目で出てごぼう抜きかましてる、でも、後のランナーがダメで負けちゃったけどね、ただぁし、今回はアンカー、サッカー部は抜き返せると思う、あとは陸上部をどこまで追い込めるかだな、中盤の二人の粘りに期待しよう」


「問題は!バトンの渡し方!陸上部以外はみんな下手、ここが勝負の鍵を握る!さ、応援するぞ」


「はい!」


「おい、チューしてー!は、やめろよ、力抜けてハルちゃんコケるぞ、あっ!逆にいいかも!みんなコケるかも!」


「もう!」


「ちなみに、野球部は過去に部活リレーで優勝したことはない、これでもし優勝出来たら?」


「……あっ、最初で最後の優勝だ」

「その通り」


 そう、うちの野球部は今年の夏で廃部、来年は部活リレーには当然出れない


 夏の大会同様にラストチャンス

 みんな、頑張って!




 スタートラインに馬がセット、いや、ランナーがスタートのかまえに入る


 頑張れマッキー!トップだったら今までの無礼は許してあげる



 パァン!

 号砲が鳴る!


 マッキー!好スタート!フライングギリギリ!

 そして、すぐ自らBダッシュボタンを押す!

 速い!独走!



 トップでゴー君にバトンを渡す


 うん、上手くバトンが繋がった!


 マッキー許す!



 しかし、予想通り陸上部とサッカー部が猛追してくる


 ゴー君逃げる


「高瀬せんぱーいファイトー」

「高瀬さーん、頑張って〜」

「ゴーさーん、かっこいいよー」

 ゴー君に向かって、黄色い声援が飛ぶ


「おいコラー!てめえどこの組だ!顔覚えたかんなー!ぜってーぶち殺す!」

 反社みたいな声援を送るリナさん


「リナさん、もう実質嫁でしょ?嫁の余裕を出さなきゃ」


「フンッ」



 マッキーの貯金のおかげで、なんとかゴー君は逃げ切りトップのまま、羽堂さんにバトン…うわ、バトン渡しミスってる、まぁまぁ、ミスってる!


「こらぁ!お前ら二遊間コンビだろ!なんでそこミスんだよー!ゲッツー取るつもりでやれよ!ったく!」

 ついつい声援に力が入る


「キョウちゃん、うちの旦那のこと悪く言わないでくれ、シクシク」


「サーセン」


 ただ、バトンミスで、一気に抜かれたのは間違いない、しかも陸上部はグングン差を広げていく


 このままじゃ、負けちゃう!


 神様!私に恥かかしたよね、私けっこう怒ってるよ、でもね、お願い叶えてくれたら、チャラにしてあげる


 竜斗に力与えて、いや、少しだけでいいよ、少しだけご褒美ちょうだい!例えば他のチームがバトンミスるとか?ね、お願い、ちょっとだけだよ!お願い!



 アンカーに、陸上部、続いてサッカー部がバトンを渡す…


「あーっと!陸上部がバトン落としたー!まさかの陸上部がバトンを落としたー!」


 放送部の実況が響き渡る!


 うそー!え、マジで!通じた?お祈り通じた?


 そしてサッカー部もバトンをミスる!


 おっっっっっし、チャンス!


 あ!


 バトンを渡した側のサッカー部員がバランスを崩して、羽堂さんからバトンを受け取った竜斗の前を塞ぐ


 なんとか、竜斗はかわしたが若干タイムロス


「オラァ!ふざけんなこの野郎!失格だ失格!審判ちゃんと見てんのか!おいサッカー部!これでうち負けたらぶち殺すかんな!」

 ついつい声援に力が入る


「きょ、キョウちゃん、ブーメランって言葉知ってる?」


「知らん、フンッ」


「サッカー部はうちらの大会、応援しに来てくれるんだから優しくね」


「サーセン」


 竜斗は、すぐにサッカー部を抜き、陸上部を追いかける


 私達のコーナーの前を駆け抜ける

 外側に膨らみそうな体を上手く内側に逃し、長い足のストライドで、一気に駆け抜けていく


 かっこいい


「竜斗ーいけー!竜斗ー!いけー!」


 野球でもここまで声援を送ったことはない


「春樹せんぱーい、頑張って〜」

「ハルさんかっこいいー」

「春樹せんぱーい、惚れちゃうよぉ〜」


 こ、殺す


「さっきの私らのイチャコラ見てそれ言ってのんか!いい度胸してんじゃねーか!オラァ!」

 ついつい声援に力が入る


「キョウちゃん、もうアナタ、私を越えたよ」

「あざす!」


 最後の直線に入る、陸上部相手なのに一気に詰めてる


 もうほとんど差がない


 陸上部員との体格差は大人と子供


「いけーーーーーー!」


 竜斗が大きなストライドでグングンスピードが上がる


 ぬ、抜いた!


「おっしゃーーー!」


 抜き去ってもグングン伸びる



 パン、パンパン

 ゴールの合図が鳴る


「野球部初優勝です!」


「やったーーー!」

 野球部みんなで、ゴール地点に向かう!





「竜斗〜凄いよ!本当凄い感動したぁ!グスン」


「怒ったり泣いたり、うるさい奴だなぁ」

 と、竜斗が言ったら


 わっ!


 私を軽々持ち上げて抱っこしてきた!


 そして、クルっクルっと回る


「えっと、こんなだっけ?映画の最後」

「ちょっと違うけど、許す!」


「はは、じゃあさっきのも許して」

「許さない!」

 ポカポカ竜斗の背中を叩く


「えー、許す流れじゃん」

「許さない!」

 思いっきり抱きつく


「うわー言葉ないわ、これはこれで絵になるわぁ」

 リナさんが自慢のカメラで撮影してた


 神様!ありがとう!チャラにしてあげる!




『アハハハハ』




 え!


 なに今の?子供の笑い声が聞こえたんだけど!

 辺りを見渡す、そりゃいるわけない

 気のせいか…

 いやぁ、今回はハッキリ聞こえんだけどなぁ


「竜斗、なんか男の子の笑い声聞こえなかった?」


「え!」


 しばらく思案顔の竜斗


「気のせいだろ、気のせい」

「だ、だよね」


「私さっ、神様にお祈りしてたの、少しご褒美ちょうだいって、したらご褒美もらえたじゃん!なんかそれが一瞬、その男の子のおかげかと思っちゃった!エヘヘへ」


「……」


「ん?どうしたの竜斗」


「ねえ、杏子」

「なぁに?」


「将来俺らが結婚したらさ、一緒に行って欲しいとこがあるんだけど」

「え!どこ?」

「今は言えない」


「もう!また隠し事?」

「違うって〜今はまだだーめ」


「なにそれ!気になる!浮気?」

「ぜっっっっったい違うから、楽しみに待ってて!」

「許す!」




 閉会式も終わる


「では、みなさん、帰りのお支度お願いします」

 すごすごと、帰り支度を始める


 ポロン


 ピアノの音が聞こえる

 あ、BGM流すのかな


 ポロロローン


 ピアノの音がまた聞こえる

 そして、何やら演奏が始める


 ん?え?えーーー!

 電子ピアノを弾き始めたのは、ご、ゴー君


 ユニフォーム姿のまま弾き始めた!


 マジかよ、ピアノ弾けんのかよ


 優しいタッチのピアノ音がスピーカーを通してグラウンド内に響き渡る


 放送部が演出用で使ってた電子ピアノだ

 放送部がセッティングの手伝いしてるから、ジャックしたわけではなさそう


 そして伴奏が始まる!

 これ聞いたことある!


 帰り支度をぶん投げ、急いでテント内で電子ピアノを弾くゴー君の元へ走る!



 わっ!リナさんがマイク持ってる!


 え、ええ!二人の生演奏?生歌?路上ライブ?


 リナさんが歌い出す!


 すぐわかった

 宇多田ヒカルのファーストラブだ!


「最後のキスはタバコの…」


 わーお!やばい!めっちゃうまい!


 屋外なのに!やばい!めっちゃうまい!


 歌声に感動する!


 この祭りの後のバラード、ナイス選曲!



 みんな、帰り支度をやめる


 なんなら、先生達も聞き入ってる



 サビの部分に入る


 もうなんか、少し涙出てきた

 歌声で感動させるってやばい!





 歌い終える、リナさん


 グラウンド内スタンディングオベーション


「アンコール」「アンコール」


 そりゃそう


 片付けが止まってるのに、先生達も何も言わない


「じゃ、じゃあもう一曲だけね」

 外面よしのリナさん


 そして、ゴー君と目を合わすと、ゴー君が電子ピアノのスイッチをいじる


「んじゃ、頑張ってる親友のためにね」

 と、マイクで呟くリナさん

 そして、私にウインクしてくれた


 

 ゴー君のピアノ伴奏が始まる

 すぐにわかった

 イントロクイズで優勝出来るくらいの早さでわかった


 それは、私の大好きだった歌だから




 アニメ、時をかける少女

 変わらないもの




 え?なんでリナさん、私が大好きだって知ってるの?

 私、言ってないよ


 だって、私自身、帰国してから忘れてたもん


 アメリカ時代に、日本のアニメ好きの私に姉が、時かけのDVDをお土産で持ってきてくれた

 見まくった、そしてこの歌が大好きになり、姉にミュージックプレイヤーに入れてもらった


 でも、帰国してからは、すっかり忘れてた


 リナさん、マジで私の心の中読めるの?



「かーえりーみちー、ふざーけて、あるいたー」


 って、なんで知ってるの?が、どうでもよくなる歌声が、私を…いや、学校中を魅了する


 マジでやばい

 この人、マジでそのうち世に出るよ


 んで、ゴー君、ピアノ上手すぎる!

 この歌はピアノも大事

 この二人、凄すぎる



 サビに入る、もう私号泣


 大号泣



 ずるいよリナさん、普段いじり倒してくるのに…ずるいよ


 歌一発でチャラにするなんて、ずるい



 野球部のユニフォーム姿の坊主頭の男子のピアノで、歌唱力抜群で歌うちょんまげジャージ姿の女子


 この二人の将来が楽しみ


 てか、ゴー君、ピアノも弾けるのに

 ピアノめっちゃ上手いのに

 なんでアナタも野球部なの?


 そう、なんでここの野球部?だらけのうちの野球部


 この偶然の集いで、創部以来過去最強の野球部がラストスパートに入る、最初で最後の甲子園に向かって


 この偶然の集いも、もしかして神様の仕業?


 だったりして。

 

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