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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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42/54

証拠映像

 

 ♫ ♫ ♫ ♫


「………」


「………」


「………」


 口パクなう


 今日は中学の卒業式

 

 体育館の中に桜水中学校の校歌が流れてる。


 周りの生徒は何かを思い出しながら歌ってる。


 一部の女子は泣きながら歌ってる。


 私は歌ってるフリをしている。


 そもそも、校歌をぜっんぜん覚えてない、覚える気がしなかった。


 なので口パク…いや口パクすらしてないかも


 気持ち口を開けて何やら呟いてるレベル


 明らかに周りと違う温度差


 そりゃそう


 まず、私はアメリカでこっちで言う「中学」を既に修了している


 なので、二回目の卒業式みたいなもん


 しかも、在学期間はわずか五ヶ月


 中学の授業が終われば、真っ先に隣の高校に出勤する毎日


 これで泣けたら天才子役になれる。


 救いは、修学旅行などのイベントが終わってたこと、これでイベントに参加させられてたら、それこそ拷問


 ついこの前、卒業遠足があったがこれは自由参加、もちのロンで不参加


 行き先は東京都らしくディズニー、心を少し引かれたが一緒に回る友達がいない、てか、春休みに竜斗やリナさん達と行くので、行く意味がない。


 リナさんは、ランドなんだから行ってくれば?うちらはシーにすればいいじゃん、って言ってくれたが、やはりどうせなら、初日本ディズニーは竜斗の隣がいい


 猿くんも、友達誘うから行こうよ、と誘ってくれたが、なんも湧かないので即答却下。


 練習に参加してる方が千倍いい


 まぁそんなレベルの中学生活、やっと卒業できた!って感情しかない




 体育館の余興も終わり、みんなゾロゾロ教室へ戻る。


 この後、清水先生の能書き、いや、お別れの言葉を聞いて晴れて卒業となる、らしい



「星川!」

「ん?猿くん、いや小林くん、なぁにどしたの?教室行こうよ」


「いやその」

 辺りを見回してる、なんだよ早くしろよ


「好きでした!初めて会った時から好きでした!」


 へ?何言ってんのコイツ


「あ、あの、私には竜斗、春樹さんがいるので、サーセン」


「うん、分かってる、最後に気持ち伝えようと思って」


 おっと〜これが俗に言う卒業告白ってやつか


「あ、そうなのね、ありがとう、でも小林くん、今後のためのアドバイス」


「え、なに?」


「好きな子に気持ち悪いとか言っちゃダメ」


「あ、ごめん、じゃあ言わなかったら可能性あった?」

「ない」


「なんだよ、気持ち悪い」


 コイツ


「あ、じゃあ、制服のボタンちょうだい」

「無理」


「じゃあ、これになんか書いてよ」

 サイン帳を出してきた


 まぁこんぐらいは、いっか、よくしてくれたし

「いいよ」


「ありがとう」



 野球がんばれ!星川

 と、書いてあげた



「そういえば、通訳の件、黙っててくれてありがとうね」

「う、うん」


「あと、結局キャッチボール一回も誘ってこなかったね」

「う、うん」


 なんだよ歯切れ悪いな


「実は、春樹先輩に言われてたんだよ」

「え?」


「ほら、高校で会っただろ?あの日の夜に兄貴経由で春樹先輩から電話かかってきてさぁ、言われたんだよ」


「悪いけど、キャッチボール誘うなって、好きな子が知らないとこでキャッチボールするの我慢できないんだって、星川にも伝えたら分かってくれたって」


「星川が断りづらいのかわいそうだから、気まずくさせるの申し訳ないから、小林から誘わないでくれって言われてたんだよ」


 竜斗…


「通訳の件も、悪目立ちさせたくない、中学で浮いたら可哀想だから黙っててくれ、もし他で漏れたらフォローしてくれ、守ってあげてくれって」


「まぁ、それ聞いた時点で負けたよと思った」


 いや、それなくても無理


「んで、最後に春樹先輩がさ、学校で何かあったらすぐ言ってくれ、俺が守る!だって、でも何かあるまでは俺から小林に連絡あったこと、星川に黙っとけって」


「なんでですか?って聞いたらさ、俺が監視してるみたいで、星川が伸び伸び中学生活送れなくなるから、だとさ、ほんと負けるよあの人には」


 竜斗…これなんだよ、この竜斗独特の優しさ……ほんと大好き


 あ〜なんかムラムラしてきた、早く会って抱きしめたい、チューしたい


 くそ、やっぱりお迎えしてもらえばよかった


 卒業式お迎え行ってあげようか?て言われてた


 なんか恥ずかしいし、練習途中に申し訳ないから断った


 失敗した


 ムラムラ


 もうこれあれだ、今日練習終わったらはるきホテル直行だわ


 この前一緒にドンキーで買ったあれ着てやるか、ムフフフ、エヘヘヘヘ


「なにニタニタしてんだよ、気持ち悪い」


 殺す




 清水先生のお話も終わり、これでみんなおさらば、あれ?うちのクラス、私の他に桜水ラインいるのかな?それすらわからん



 卒業証書片手に、校舎を後にする


 あちこちで、写真撮ったり、泣いたり、後輩女子がイケメンぽいやつのボタンを欲しがってる?のかな、どうでもいいけど


 そんなの、おかまいなしでスタスタと校門に向かう


 ん?


 変な集団がいる、野球のユニフォームを着てる集団


 その集団を、みんな数奇な目で避けて行く


 そう、完全に浮いてる


 んん?


 わっ!うちの野球部のみんなじゃん!


 なにしてんの?


 思わず走り出す私


 みんなが気づく


「キョウちゃ〜ん、卒業おめでとう!」

 自慢のビデオカメラで撮影を始めるリナさん


「どうしたのみんな?」


「どうしたって、迎えにきたんだよ」

「竜斗、練習は?」


「ハハ、これ見てみろよ、みんなで来たら怖くない!ってやつ」


「え!わ!全員いる!てかトニーも!」

 ウインク、二ッ

「ヘェー」


 マジで全員集合、工藤さんも来てくれてる!

「わぁ、みんなありがとう」


「やっとその制服とおさらばか、マジえーぶいだよそれ」

「うるさいリナさん!カメラ回しながら言わないでよ!」


「はい、これみんなから」

 ごー君が色紙二枚渡してきた


 見る

 すると、みんなから寄せ書きが…


 卒業おめでとう 佐藤

 鬼コーチこれからもヨロ 剛

 ちっぱいも卒業できたらいいね 里奈参上!

 コングラッチュレーション アンソニー


 ハハ、トニーも書いてくれてる


 竜斗を探す、あった


 よく卒業できたね 春樹


 こ、殺す


「はい、あとコレ」

 竜斗が、後ろ手に隠してた花束をくれた


「わぁー、みんな本当にありがとう!」


「おっし、これ履け」

 リナさんがジャージの下だけ渡してくる


「え?なに?」

「いいからホレ、履かないとシミ付きおパンツ見えちゃうよ」

「シミなんかついてないもん!」


 とりあえず、言われるがまま履こうとすると、みんな後ろを向く


 あら、上から履くだけだからいいのに


 竜斗も後ろ向いてるのは、なんだかウケる



「はい、みんなもういいよー」

 リナさんの号令でみんな振り返る


 な、なにが始まるの?


 すると、みんなが私の近くに集まってくる


「なになになにー、わっ、キャーー」


「ワーショイ」「ワーショイ」「ワーショイ」

 私の体が宙を舞う


 キモチーーーー




 何回舞っただろうか、十回は舞った気がする


 静かに降ろされ…最後転がされた

 なぜか、ガブさんも私の横で転がってる


「ワハハハハ」

 みんなが笑う



「卒業おめでとーー!」

 パチパチパチパチパチ


「もう!制服真っ黒じゃん!でもありがとう、グスン」


「わ、またコイツ泣いてるよ、キモ」

「うっさい!でも嬉しい、本当ありがとう」


 みんなありがとう、おかげで一生忘れられない卒業式になりました


「さ、みんな練習戻るよ〜」リナさん

「へーい」「ういー」「ガブっちょ」


 何事も無かったかのように、みんなスタスタと歩き出す


「ちょ、ちょっと!みんな切り替え早すぎ!みんなB型?もう少し余韻に浸らせてよー!」


「もう!」


「ほら行くよ」

 手を差し伸べてくる竜斗


 それに手を合わせて、みんなの背中を見ながらいつものグラウンドに向かって歩き出す


 幸せ


 ん?イラッ


「竜斗、よく卒業できたねってどうゆう意味?」


「へ?あ、ホウレン走塁とか言ってる奴が、卒業できる義務教育ってやばいよねって意味」


 イライラッ


 バサッ!


 竜斗が持っててくれた花束を奪いそれで引っ叩く

「怒るよ!」


「もう怒ってんじゃん!」

「うっさい!」


 バサッ!バサバサッ!


「わ、痛っ!きょ、杏子!家着くまでに花がなくなっちゃう!」


「ウケる〜デーブイ鬼嫁」

「ちょ!カメラ止めて!てか、ちっぱい卒業ってなに!」


「わお、逃げろ〜、ちっぱい鬼嫁やってくる〜♪」


「殺す」





 練習開始


 卒業式後に即練習に参加


 私もなかなかだよね


 でも、しゃあない、春のブロック予選の初戦が数日後に控えてる


 当然、キャプテンのノブさんは欠場する、まだノースロー調整中、でも快方に向かってるらしい


 竜斗は、ピッチングの練習は本格的に開始してない


 ただ、春の大会が終わったら、本格的に投手春樹が始動する予定


 なので、言い方悪いが投手力的に春の大会はあまり期待できない


 ま、これは想定内


 ノブさんは無理させられないし、竜斗はバッティングと守りをしっかり経験積んでからじゃないとね


 

 私の投球練習が始まる

 バッティングピッチャー杏子の準備をしている


 最近、通訳はあまり必要ない


 さすがみんな高校生、私無しでもトニーとコミュニケーションを取れるようになってきてる


 ミーティングぐらいかな、通訳必要なの


 なので、ここんとこ体張ってばっかりの私


 格好も、上から下まで全身ミズノ


 シャカシャカ、アンシャツ、下は白の練習着、ストッキングに、ポイントスパイク

 もうジャージはやめた、動きずらい、やっぱり野球やるならこの格好に限る!



 フリー打撃が始まる


 全員に投げるのは身が持たないので、主軸は私、その他はぬま子(小沼)さんが投げる


 フリーの順番を主軸と控えをミックスさせて、二人で交代交代で投げる


 ぬま子さんは、このオフにバッピになれるようにトニーに鍛えられた


 一番筋が良かったから




 私の番は、ガブさん、ダイさん、羽堂さん、ゴー君、ドリさんの順で打ち終わり、竜斗の番になる


 すると、リナさんが放送室に電話をかける



 ピンポンパンポーン


「春樹君のバッティング練習が始まります、テニス部の皆さん、また、中庭にいる人は気をつけてください」

 と、放送がかかる


 別にふざけてるわけではない、マジで竜斗の場外弾の注意を促している


 以前は練習中は場外弾は無かった、アドレナリンの問題もそうだが、私の球だと反発が少ないため、そこまで飛ばなかった


 だが今は違う、鬼に金棒を手に入れ、オフのトレーニングで身体がまた大きくなり、身長も更に伸びてる


 打球の半分が場外弾になる


 一度、中庭にいた女生徒にボールが当たった、直撃ではなくワンバンしてからだったので、大事には至らなかったのが幸いだった


 でも、学校側はネットをつけてくれない…まぁ当たり前、取り壊しが決まってるグラウンドだから


 なので、学校側は注意の放送をしてくれて、それから笛を大量に買ってくれた


 笛吹けと?アホか!と思ったら、これがなかなか威力絶大


 プロの球場でも使われるわけだ


 てか、竜斗の扱いがいよいよヤバくなってきた



 そしてホームランショーが始まる


 放送を聞いて中庭に人がチラホラ、グローブをつけてる人もいる、教師らしき人も見にきてる


「おりゃ!」ついつい声が出る私


 クァギーーン!


 耳がおかしくなるインパクト音


 はい、一本目〜

 ピー

 私がまず最初に合図の笛を吹く


 ピー、ピピーピーーー、ピーーーー

 外野を守る人たちが、一斉に笛を吹く


 打球は、笛の音に後押しされるかのように、ライト方向にすっ飛んでいく


 もうね、打球速度がやばい、本当にミサイルだミサイル


 笛に気づいたテニス部が逃げまどう


 コーン


 テニスコートで弾む


 もうね、前はテニスコート弾!とか言われてたけど、最近は当たり前すぎて、ありがたみなんてありゃしない


 テニス部からしたらいい迷惑だ


「おりゃ!」


 クァキーーン!


 はい、二本目〜

 ピー


 ピーピーーー、ピーーーー


 ゴォン!


 今度はあずまや弾

 このあずまや弾も当たり前になってきてる


 もうね、屋根がベコベコ、なんなら少し穴が空いてる


 あずまやは三個あるのに、なんでかこの真ん中のあずまやばかりが被弾する


 本人に聞くと、外側の球はあの真ん中のあずまやに打ち込むイメージで打ってる…だとさ


 左バッターから放たれる左中間のアホみたいな当たり


 しかも、それを狙って打ってる


 なんかもう怖いわ


 リナさんが姉にもらった自慢のビデオカメラを持ってきて、防球ネットと私の影に隠れ、撮影を始めた


 暇さえあれば、練習風景を撮影してる


 誰か有名人になったら高く売れそうじゃん?とか言ってた


 でも、竜斗や私ばっかり撮影してる気がする


 竜斗はなんとなくわかるが、私を撮る意味がわからない


 イジりたいだけのような気がする



「トゥールールー♪トゥルトゥットゥットゥールルー♪」

 リナさんが情熱大陸のバイオリンを口ずさんでる


 あー気が散る


「星川杏子は今日も投げる、バッターに向かって投げる」


「おりゃ!」ピー


「高校生相手にバッティングピッチャーを務める彼女は若干十五歳だ、今日もピッチカウントは百球を楽に越え、今週は既に三百球を越えたことになる」


 ピッチカウント(球数)なんて言葉、どこで知ったんだ?トニーか、リナさんのくせにカッコつけやがって


「この星川さんのバッピは好評だ、これだけ投げてるのにボール球がほとんどない、しかもコースを投げ分ける技術、素晴らしい、頭の中お花畑だけど」


 うっさいなぁ


「星川さん、どうしてそこまで頑張れるんですか?」


「はい?そんなのチームが強くなって欲しいからに決まってるでしょ! オラ! ピー」


「それだけですか?今アホみたいに場外ホームラン打ちまくって、学校中に迷惑をかけまくってる春樹さんが大好きすぎるからじゃありませんか?」


「はぁ?だったら竜斗だけに投げればいいじゃん!私、ただの通訳だよ、選ぶ権利あるよ? フンッ!ピー」


「そう、この星川杏子十五歳は、このチームの外国人コーチの通訳が本業、なのになぜ?それは…もう用無しだから!ウケる!」


「もう!リナさん! オリャ! ピー」


「オホン、このチームは廃部が決まっているため、人手が足りないからだ、選手の負担も考え彼女が自ら志願して投げている、帰国子女の彼女はアメリカで野球をやっていた経験を活かして、ドヤって投げている」


「星川杏子十五歳は、今アホみたいに迷惑弾を打ちまくってる春樹さんと交際している、この二人は出会って初日から惹かれあい、えっとそれからうーんと、この二人は基本バカだから交際するまで、三ヶ月もかかった、アホか」


 そんなナレーション入れるなよ フンッ!ピー

 てか十五歳十五歳うるせーよ


「星川杏子十五歳の首にはネックレスがつけられている、これは春樹さんからプレゼントされた物だ、しかもオソロ〜、キモ!」


 ガキン!

 竜斗がミスショットした


 あ、またあの癖…


「コラーー竜斗!またグリップの位置少し落ちてるよ!トップがバラつき始めてる!疲れてきたら出るその癖、直しなさいよ!肝心な時にミスショットするよ!」


「はいっ!」

 ヘルメットを取り返事をする竜斗


 私が鬼コーチみたいやん


「同じ事で何度も注意されちゃだめ!ちゃんと意識して一球一球打たないと!惰性で打っちゃだめ!」


「はいっ!」

 撮ってるからわざとやってないか?


「見ましたか視聴者のみなさん、鬼嫁が旦那をしかる証拠映像です、最初のころは、春樹た〜んチュキチュキだったのに、数ヶ月経つとこれだ、詐欺極まりない、みなさん詐欺には気をつけましょう!」


 やめろ、くそ、オリャ!


 クワッキーーン! ピー 

 ピーーー、ピピーーー 


 グシャ!グシャシャ


 あ


 あーーー、とうとうあづまやの屋根が貫通した


「ちょっと!本当に私達の憩いの場壊しちゃったじゃーん!どうすんのよ!」


「はいっ!」

 やめろってそれ


「これはさすがにバカップル…いや夫婦で弁償することになるであろう」


「ちょっと!私も?なんで!てか、バカップルじゃない!」



「星川さん、あなたの将来の夢は何ですか?」

「竜斗のお嫁さん!」

「即答かよ、マジバカップル、マジお花畑」

「もう!」


「星川さん、春樹さんのこと愛してますか?」

「愛してますよ オリャ!」


「アナタハハルキノコトアイシテマスカ?」

「だから、愛してるって!」


「スコヤカナルトキモ、ハルキガウワキシタトキモ、アイセマスカ?」

「浮気したらぶん殴ります!てかリナさん!なんか神父になってる!」


「オーイエ」




 今度は内野ノック!


 私のピンクのノックバットが火を吹く!


 すると、またリナさんがやってきた


「今度はノックバットを手に取ってノックをする星川杏子十五歳」


 まだ、続けるのかよ


「見てください、この趣味の悪いピンクのノックバット、星川さんの頭の中の色を表してるみたいです」


「しかも、このノックバットには春樹杏子と刻印が打ってある、マジキモイ、親泣くぞ」


 もうシカトする


 カーン


「平山さん!セカンドの癖出てる!今の打球は前来ないと刺せません!思い切ってチャージしてください!」


 カーン


「オッケー!ナイスプレー!上手いです!」


「見てください、彼女の左腕にはキモいミサンガが付いています、顔に似合わず自分で作ったらしいです、しかも大量に作り、春樹さんをミサンガ漬けにしてる、なのでこれもオソロ〜キモ」


「漬けてはない!足と手だけ!」


「足もかよ、そりゃ知らなかったです、どうせこいつらバカップルのことです、二人とも将来結婚できますよ〜に〜、とか、あったま悪いお願い事をしてるに決まってる、です」


 まぁ、私はズボです


 カーン


「羽堂さん!上手いけど、カッコつけすぎですよ!」


 カーン


「ゴー君、それ左足でベース叩いて横から投げた方が早いかも!」

「オッケーじゃあ、もっかい同じのちょうだい」


 カーン


「ナイス、さすが!早い!足の早いランナーでもダブれるよ!」


 カーン


「コラーー竜斗!自分の肩任せで捌かない!球際もっと強くして!グラブ出す位置もっと考えて!わかった?」


「はいっ!」


「星川杏子十五歳、なぜか自分の旦那には厳しい、春樹さんアーメン」




 そしてシメはいつもの夫婦の共同作業の軽めの投球練習


 もうすぐこの作業も終わりになる


 なんか寂しいな


「星川杏子十五歳、今度はキャッチャー役を買って出る」


 もう、いいって、今日はフルコースで撮ってくるじゃん


「元々、彼女はキャッチャー出身、この顔でキャッチャーレガース…ウケる!とんなコスプレだよ!アハハ!アーメン」


 殺す


「トゥールールルー♪トゥールールルー♪」


 エンディングもしっかり口ずさんで、パッパラパーは立ち去った



 

「えー、オホン、視聴者の皆様、このチームは今度の夏でグラウンドと共に消滅します」


「おかげで新一年は入部してきません、現在の部員数22人と私と星川の女子2人でこれから戦っていきます、おそらく春は惨敗します」


「勝負は最後の夏です、部員数はギリギリですが、偶然が重なって、スキルの高い選手が集まり、もしかしたらラストチャンスを掴むかもしれません」


「今は全くの無名高、全くの無名の春樹、これが夏にはとんでもないことになってるかもしれません、なので、ここに記録を残します」


「春樹のとんでもないパワーを見せたいのもありますが、この15歳の少女の奮闘ぶりを皆さんに見せたいのが本音です、もし、甲子園に出れたら、間違いなく、この少女の奮闘のおかげです、そして、愛の力で、春樹の成長を加速させてます」


「おそらく、春樹は今後大活躍するでしょう、それを支えてるのは、星川杏子なのを皆さんにお届けします」

「以上、桜水高校新二年…」

「リナさーん」


「桜水高校新二年青山里奈、201…

「リナさんっ!」

「あんだよ!うるさい!邪魔すんなやー!」

「はぁ?散々邪魔しといてそれ言うかね?」

「で?なんだよ」


「いや、珍しく真面目は顔して、なんかブツブツ言ってるから、とうとうイカれたのかと思った」

「は?それだけ?てめえーおかげで台無しじゃんか!もうガブっちょの刑だ!」

「キャーー、やめろニョーモレル!」

「んのやろー!ちっぱいをもっと小さくしてやる!オラー!」


 キャハハハハ







 春の大会、ブロック予選初戦は都立高校相手に大勝


 五回までに十三点を奪いコールド勝ち


 だが、二戦目で甲子園に何度か出てる強豪と当たってしまい、負けてしまった


 投手陣が十失点、やはり投手力の弱さが露呈してしまった


 でも、打撃陣は素晴らしい、「1番」をつけた相手投手から七点奪えた、竜斗もホームランを打った


 逆に考えると、投手力が整えば充分上を目指せる


 下を向いてる暇はない、夏の大会が始まるまで約三ヶ月しっかり仕上げて行こう!



 公式戦デビューの竜斗


 全て一番サードでフル出場


 二試合で十打席

 五安打三四球三盗塁

 五安打のうち、三本のホームラン二本のツーベースで脅威の長打力を見せた


 守ってもノーエラー


 練習番長かも…なんて心配はすっ飛んだ


 トニーは、打撃と守備を仕上げてから投手の練習をさせると言っていた


 なので、やっと投手春樹が拝める


 これからが楽しみ。


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