デジタルビデオカメラ
「大人の階段のーぼるー♪」
「君はまだシンデレラっさ♪」
誰の歌かわからないが、昔聞いた歌を思い出しながら口ずさむ
部屋にある鏡を覗く、それに映る自分の顔
うーん、少しは大人の顔になったかな
いや、変わってないな
今は二月の下旬
私は十五歳と十ヶ月のほぼ十六歳
そして…
竜斗と出会って四か月
竜斗と付き合って一か月
とうとう私は大人になった
大人になった!
アメリカ帰りの私は中三を二周してるような感覚だが、十五歳の中三女子には変わりはない。
これって、平均的に早く経験した方だよね
うん、早い
私自身が、もっと先だと思ってた。
でも、竜斗と付き合ってからは、私、早く経験しちゃうかも?いや、早く経験したい!と、思い始めた。
他の人はどうなのか気になったので、経験後にリナさんに報告ついでに相談した。
リナさんは、普段イジリ倒してくるタイプだが、真面目な顔して真面目に相談すると、しっかり真面目に相談に乗ってくれて、しかも絶対に口外しない人
だから、リナさんの事は好きだし、私は親友だと思ってる。
リナさんは、高校に入ってすぐゴー君と付き合ってすぐに経験したらしい、お互い初めてだったとのこと
なので、まぁ中学生と高校生の差はあるが、さほど変わらない、五月って言ってたから三ヶ月差くらいかな
でも、リナさんの誕生日は三月の二十三日
そう、四月二十一日の私と一ヶ月も離れてないのだ!
ほぼほぼタメだ
そう考えると、身体の成長的にはリナさんのが早く経験したことになるのかな?
にしても、一ヶ月差がないのに先輩後輩に分かれるって、面白いよね
他のカップルはどうなんだろうか
おそらく学生カップルは、経験したくても「場所」がないのが現実だと思う
だが、私達は違った、その「場所」がある。
私んち?ノンノン
そりゃ、チャンスはあるよ、だって合法的に竜斗はうちに泊まれるんだから
でも、さすがにそれは親の好意を踏みにじるみたいで勇気が湧かない、それは竜斗も一緒だと思う
じゃあどこ?
んと、竜斗の部屋、とゆうか竜斗の家
これが、全くのノーガード
まず両親が帰ってこない、竜斗の両親が営むお店の上は住居になっているらしく、今はほとんど家に帰ってこないで、そこに寝泊まりしてるらしい
その方が楽なのと、おそらく、竜斗の世話がもういらなくなったから
星川家に丸投げしたからだ
さおりさんは専門学生だが、最近はバイトの方が忙しく全然帰ってこない、バイト先の寮で寝泊まりしてるみたい
もしかしたら専門やめてそのバイト先に就職するかもって竜斗が言ってる
なので、竜斗の家は空っぽ状態
私達的には、はるきホテル状態
最初に部屋にお邪魔した時に、私の方がムラムラした
んで、私から半分襲ったようなもん
たぶん竜斗は、私が中学を卒業するまで待つって決めてたと思う
でも、私が無理だった、我慢出来なかった
竜斗と二人っきり…もう無理!って感じ
淫乱とか思われるかもしれないが、決してそうではない!
行為に興味があったとかではなく、竜斗の事が好きすぎて我慢ならなかった
何もかもが、初めてだった私
さかのぼれば、チューもだし、手を繋ぐのも、そして経験するのも、あーんなことや、こーんなことするのもぜーんぶ初めて、ぜーんぶ初めての相手が竜斗
あ、子供の頃のおでこにチューや、お手手をつなぐはノーカウントね
竜斗が初めての相手で良かった、この先そのまま結婚するなら、他の男性を知らないことになるが、全然それでいい
ムラムラするのは相手が竜斗だからだ!
でも、竜斗は初めてだったのかな?
最初は、所作的に竜斗も初めてかな?と思ったのだが…
思い出すと、行為をしてる最中の振る舞いが、なぁんか初めてじゃない気がしてきた
竜斗に初めてだったのか聞こうか悩んだけど、やめた
雰囲気を壊すようで嫌だったから
オノマリさんとは無いのは分かってる、正月のカラオケの時に、聞いてもないのに教えてくれた
「安心して〜私達はアハーンどころかチューもしてないよぉ〜」
って、言ってた、オノマリさんは嘘をついてるとは思えない
じゃあ誰?
ま、いいや、もう付き合う前のことでネチネチ悩まないって決めたんだ!
まあ、なんかのきっかけで知ったら、蹴りは入れるけどね
一応は、知るまでは竜斗も初めてだった、ってことにする。
先週の月曜日の練習休みに初体験をし、それから十日近く経ってるが、既に三回はるきホテルを利用した
ノーガードなので、お風呂も二人で一緒に入りまくった
もうこれは、立派な大人の女だよね!
あと、何回か経験したことにより、二人の仲が深まった
リナさんが、ゴー君のことを「旦那」と呼ぶ理由が共感出来る
ただ、このはるきホテル…竜斗の部屋
一つ困ることがあった
それは、葉山翔子…いや、姉のポスターだ
なかなか良い位置にバーンと貼ってあった
これが困る
嫉妬とかではない
なんか…見られてるみたいで困る
竜斗に言ってみた
「ねぇねぇ、もうこれ剥がさない?」
「え?うーん」
「だって、もういつでも会えるじゃん、なんなら下着姿も見たじゃん」
「まぁ、そうなんだけどね」
「なんか見られてるみたいでなんか嫌なんだけど…」
「いやさ、なんかご利益あるような気がしてさ」
ご利益?女優のポスターにそんな願いをこめるやつは普通いない
「ふぅん、でも、ご利益願うなら、尚更見られちゃだめじゃん?」
「確かに!」
と言って、ポスターを剥がした!
お、やるじゃん
と、思ったらすぐ違う場所に張り替えた
ガクッ、おいおい
まぁ、確かにバーンって位置よりは、多少控えめになったけども…
まぁ、いいか
とりあえずは、姉の目線はズレた
これさえ我慢すれば、愛の巣は確保される
十七歳と十五歳の溺愛カップル的には恵まれ過ぎてる環境
我慢しよう
ってなわけで!
交際、恋愛順調!
野球ライフエンジョイ!
竜斗のサポートバッチリ!
順風満帆の人生を今は歩んでる私
この先何も悪いことが起きないことを祈る
で、今日は都立高校入試日
中学も、試験会場になる高校も、お休み
高校の部活も全面休業
じゃ、竜斗とどっか行こう!
では、無い、残念
今日は大事なミッションがある!
一週間位前、確か初体験した翌日だったと思う
父は沖縄に行ってるので、母と私と竜斗の三人で夕飯を食べようとしてるいると、姉が突然の帰宅!夕飯に参加!
「あれ?杏子?アンタもしかして…いや、なんでもない」
姉がいきなり意味深発言してきた
これバレたよね、顔に出てたのかな
ただ、家で行為に及んだと思われるのが嫌なので、途中タイミングを見計らって、二人で姉の部屋に入って経緯を説明した
姉妹ならこうゆう話もありでしょ
「ふっ、やっぱりそうかと思った、二人してなんか雰囲気変わったからさ、まっ、いいんじゃない?お互い好き同士なんだから、でもね、避妊だけは絶対しなさいよ、今出来ちゃったら、お互い辛いからね」
「うん、わかった、わかってる、ありがとうお姉ちゃん」
「あ、そうそう、ちなみに私は…出来ちゃった、で生まれてるからね」
「えーーー!マジ?初耳!」
「そりゃそうよ、二十歳で、産むってことは出来たの十九だよ、そりゃ出来ちゃった婚に決まってるじゃん、いつかお母さんに聞こうと思ってたら、何年か前にボストンに行った時にさ、お母さんが酔っ払ってた時に聞いちゃった」
ま、マジか
話を戻す
都立高校の入試日の休みどこ行く〜なんて竜斗と話をしてたら、姉が食い付いてきた
「杏子も竜ちゃんも休み?」
「うん、そうだよ」
少し思案顔してから
「その日さ、うちの事務所の周年パーティーなんだよね」
「お、凄いじゃん、おめでとう!」
「じゃあさ、あんたらさ、クッキー焼いてよ、チョコでもいい、なんか手作りお菓子作って」
「え?どゆこと?」
「手土産にどうかなと思って、だって私が手作りお菓子とか作って渡したら、参加者みんなひっくり返るべ!」
「確かに」私、竜斗、母
姉は手作りお菓子から、芸能界で一番縁遠いと言っても過言ではない
「でも、お姉ちゃん、それ私達に作らせたら詐欺じゃん、生産者偽造!」
「んなもん、知らん、ただ渡して、あとはご想像にお任せしますでいいべ、ま、私が作ったんですオーラはガッツリ出すけどね」
「祥子、それって当然私も込みの話なのよね?」母
「あったりまえじゃーん、杏子だけに作らせたら、私の事務所終わるべ」
なんだと!
「確かにそうよね」母
おい
「ムカついた、私やらない」
「ふぅ〜ん」ジロリ 姉
「な、なによ」ゴクリ
「お母さ〜ん、こいつね、ヤッ…」
「お姉ちゃん!」
「なぁに?」
「作らせてください、お願いします」
「あ、そう?助かる〜」
クッ、こいつに相談なんてするんじゃなかった、悪魔だ!悪魔の仮面をかぶった悪魔だっ!
「しょうがないわね、祥子には色々よくしてもらってるから、頑張るしかないわね」母
むー、確かに私も竜斗も世話になってる
「あ、じゃあ竜斗は外して!」
「なんでよ、けっこうな量欲しいから兵隊必要だと思うんだけど」
「んとね、手作り作って竜斗にもあげる!バレンタインは忙しくて、その辺で買ったやつになっちゃったから、今回はついでになっちゃうけど、手作りを渡す!」
「バカかお前、それ本人の前で言っちゃ威力半減だろ、そうゆうのはサプライズで渡すから、効果出るんだろが、バーカバーカ」
「平気だもん!竜斗はそれでも喜んでくれるもん!ね!竜斗!」
「ん?別に俺はなんでもいいよ、てか涼子さん!この豚肉とインゲンの炒め物、マジ美味いすね!俺もしかしたら…インゲン好きなのかも知れない!」
殺す
「あら、ありがとう、毎日インゲンにしちゃおうかしら」
「アハハハ、竜ちゃん全然期待してないじゃん」
「うぐっ、と、とにかく、私が他に兵隊さん用意するからっ、いいでしょ!」
「まぁ、別に、私は出来上がればなんでもいいよ」
「わかった!」
私には兵隊…いやアテに出来そうな友人が二人いる
一人は頭パッパラパーだが料理の腕は確かだ
もう一人は完全未知数、使い物にならなそうな匂いはプンプンするが、袋詰めくらいは出来るはずだ!
「ってことだから、竜斗!その日は残念だけど遊べないや」
「ん?そっか、オッケー、インゲンうまっ」
なんかアッサリやん
えー寂しい〜会えなくて寂しい〜とかないわけ?
「じゃあ俺は、ウッチャンと渋谷のスラッガー行って来ようかな」
なぬ?
羽堂さんと渋谷?
「あ、それダメ、却下です、行ったら蹴ります、竜斗はゴー君とマダヤでも行ってて」
「なんでだよ!高校生が一日駄菓子屋はやばいだろ!」
「うるさい」
よし、これで手作りクッキー渡せる!
身体を許して、手作りミサンガあげて、手作りクッキーあげたら…
もう実質嫁だよね!
ってなことがありまして
現在に至るです。
ピンポーン
キタ
ダッシュ!
「あ、はーい、今開けますね」
母がインターホンの対応をする
ガチャ
「ヤッホー!青山里奈と小野真理子!葉山翔子さんの道具になるべく馳せ参じました!」
そう、とゆうか、この二人しか友達いない
「わーい、キョウちゃん来ちゃった!クッキー焼きまくりパーティ楽しみ!あれ?焼くってどう焼くの?バーベキューみたいな感じ?」
あーなんだろ、リナさんはともかく、オノマリさんは早々戦力外になるだろ
「はい、お二人いらっしゃい、賑やかになりそうで楽しみね、あらあなたが小野さんね、凄いスタイルね、祥子より背が高そうね」
ワイワイと戦場のキッチンに向かう
「マリさん、私のお姉ちゃんのことビックリしましたか?」
オノマリさん…いや最近は四文字がめんどいのでマリさんと呼んでる
マリさんには当然、姉の話をした、マリさんも友達として信頼できるから、あとある意味無頓着そうだから
「え?うん、私あんまりドラマとか見ないから正直ピンとこなかったよ、もしね川合俊一とか大林素子だったらビビるけどね」
バレーバカ女で良かった
「よし、じゃあ持ち場分けるぞ!」
リナさんが得意のしきりを始める
「涼子ママは、もちろん兵隊長でメインコックじゃん」
「で、私も手作りクッキーは作ったことあるから、涼子ママのサブにまわるね」
ふむふむ
「で、あんたらよ、スポーツバカ脳筋バカの二人」
「ちょっとリナちゃん!私先輩だよぉ、バカ二つは酷くなぁい?どっちか一個にして」
一個でも失礼だろ
「んとねー、あんたら二人はとりあえず雑用、こっちの指示を待て!それと!勝手な行動しない!っておい、オノマリさん!こらマリ!ツンツンすんな!」
用意してある材料をラップの上からツンツンしてるマリさん
「えー、雑用嫌だ!竜斗に私の手作り渡すんだもん!」
「ん?待てよ、竜斗は優しいし、補欠の気持ちがわかる…杏子!雑用だろうがなんだろうが、君が関わったことには変わりはない!だから美味しくいただくよ…とかになっちゃったりしてぇ」
「……」母、リナさん
「ねぇ、涼子ママ、どう育てたらこんな恋愛ボンクラ女が仕上がるんスカ?」
「ふふふ、河原で拾って来た時からボンクラだったわ」
「もう!ってボンクラってなに?」
準備が整った
戦場とゆうよりは、みんなの格好を見渡すと手術室みたいだ
衛生フル装備!
姉が用意してきたフル装備
まぁ、著名人がけっこう来るだろうから、そりゃそうなる、食中毒など起こしたら大変だ
ってかさ、ここまでするんだったら、出来上がってるやつ買った方が早くね?
マジ無駄な気がする
「ヨシ、準備は整った!」リナさん
「ねぇ、リナちゃん、メス!って言って」マリさん
「え?あ、うん、メスっ!」
乗るなよ
「はい!先生どぞ」
スプーンを渡す看護師マリ
「……」
無茶振りにどう落としていいかわからないリナさん
「えっと、うーん」カチャ
スプーン置く
「リミットはヒトナナマルマル、みんなやるぞー」母
「あ、涼子ママずるい!」
「マルマル?」
「ボンクラ…ってなに?」
休憩タイム
「ふぅ〜あと半分かしらね、折り返し地点回った感じね」母
「おっつ〜、疲れた、チャリで帰るのだりいね、オノマリさん、割り勘でタクっちゃう?」
「あ、そうだ、リナさんってどこ住んでるんですか?確かそんなに近くないですよね、でもチャリ?」
そう、このリナさんどこ住んでるの?謎案件を今日決着させてみる
「え?ごーくんちだよ、半同棲、いやほぼ同棲、いや、親と同居だから嫁入りみたいなもんか」
アッサリ!って…え?
「え?えーーーー?」
「たまに泊まるとかじゃなくて?」
「うん、ほぼヒャクパー」
ま、マジか
さすがのマリさんも目をパチクリさせてる
「随分、ご理解のある親御さんねぇ」
そりゃ、母からしたら当然の質問
「はい〜、一応は理由がちゃんとあるんで」
「あ、キョウちゃん、同棲って聞いてエロいの妄想したべ」
「してない!今はマジでしてない!」
「今は?」リナさん、マリさん、母
「もう!そんなのいいから!理由ってなに!」
「うん、これ話すと重い話になっちゃうけどいい?」
コクリ
みんな静かに頷く
「んとね、私、両親いないんだ、私が二歳の頃かな、両親が乗った車が高速で飲酒運転の車に猛スピードで突っ込まれて死んじゃったの、私はその時、母方のおばあちゃんの家に預けられてたんだ」
「で、そこからおばあちゃんに育てられたの、兄弟いないから二人暮らし、両親の顔は覚えてない、写真で見たことあるだけ」
「そのおばあちゃんがさぁ、去年の九月かな、キョウちゃんが来る少し前、病気で入院しちゃってさ、今も入院してる、お医者さんに、もう完治は難しいって言われた」
みんな、黙って聞いてる、マリさんも黙ってる
「入院の時にね、ごーくんのママが、なんにもわからない私に代わって色々やってくれたの」
「その時に、うちのアパートに来た時に言ってくれたんだ、ここで、女子高生が一人暮らしは良くない、うちに来なさいって」
「そこから、居候させてもらってる、ゴーくんファミリーみんな良い人でね、ママはもちろんパパも、それにケイちゃんネネも」
「私もさ、こんな良い人達の中でただ居候させてもらうのも申し訳なくてさ、得意の料理で貢献しようと思って、リーマンのパパとゴーくんと私のお弁当は私が作るようにしてるんだ!夜ご飯も出来る時は私が作ってる」
「え、偉すぎるよリナさん」
なぜか私が泣いてる
「まあね〜おばあちゃんから料理は叩き込まれたからね」
「でも、おばあちゃんの面会とか大変でしょう、野球部の練習もあるのに」母
「そうなんす、病院が遠くて、しかもアパートも解約したわけではないので、たまに郵便物とか取りに行ったりで、けっこう大変なんすけど、ナトっちゃんが手伝ってくれるから、まだなんとかなってます」
なるほどぉ…ん?ええええ?
「ナトっちゃん?なんで?」
「あー、ナトっちゃん、おじいちゃんだから、私と交代でおばあちゃんの世話に行ってくれてるんだ」
「はい?おじいちゃん?」
「うん、ナトっちゃんは私の血の繋がったおじいちゃん、祖父だよ〜ん、ブイブイ」
「えーーーーーーーー!」
「ほら、ナトっちゃん、たまに平日いなかったり、日曜日の午後不在の時あるでしょ?その時はおばあちゃんの病院行ってくれてるんだ」
うん、確かにちょいちょいある…じゃない、そこじゃない!
「リナさん!もっと詳しくちょうだい!」
「めっちゃ食いつくじゃん」
そりゃ食いつくだろ
「おばあちゃんとナトっちゃん、離婚…いや、結婚しないで別れてるの、うちのお母さんが出来た時に別れてるんだって、ナトっちゃんには縁談が入ってたらしくて、ナトっちゃんは縁談断るって言ったんだけど、おばあちゃんが身を引いたらしいんだ、だから昔では珍しいシングルマザー、ってやーつ」
「おばあちゃんさ、女手一つでお母さん育てて、お母さんが嫁に行ってやれやれだったのに、急に私残して死なれちゃって、また女手一つで私を育ててくれたの、それでこの仕打ちだよ、神はいねーのかと思ったよ」
リナさんの目に涙が浮かぶ、初めて見たかも
「おばあちゃんいくつなの?」母
「六十六です」
「まだお若い、あんまりだわ」
母も涙してきた
「ナトっちゃんさ、うちの両親が死んじゃった時から、心配してちょくちょくおばあちゃんと私に会いに来てくれてたの、私からしたらさ、お父さん代わりみたいなもんだから、おとっちゃん、おとっちゃんて子供の頃から呼んでてね」
「あ、だからナトっちゃん?」
「そう、一応みんなには内緒事だから、おとっちゃんは、まずいじゃん、でも、監督!って呼ぶのもなんか照れるじゃんさ、だからナトっちゃん」
なるほど、納得したわ
リナさんが監督に対するあの態度
ヘッドロックかけたり、カツアゲしたり、ロジン投げつたり、そしてあの口の聞き方、なのになんだか監督は嬉しそうだった、ドMか?と思ったほどだ
でも、祖父と孫の関係なら納得がいく
それと、リナさんが野球部を真面目に手伝ってるのはゴー君のためだけじゃない、軽はずみな行動して部員達に嫌われたら、監督が悲しむからだ
もっと言うと、リナさんがマネージャーの肩書きを拒む理由もそうだ、何か問題起こした場合に責任が監督に向かないようにするためだったんだ
リナさんの行動には、一つ一つ理由があったのが今思うとわかる
でも…
「じゃあ、ゴー君を追いかけて桜水に来たって話は嘘だったんですか?」
最初に会った時にそう言ってた
「なんでよ、本当だよ」
「え?監督が桜水に居たからじゃないんですか?」
「んなわけないだろ、普通に嫌だろおじいちゃんと同じ学校なんて、ましてや、半分父親代わりだぞ、あんたらみたいにチャリ圏内とかならまだわかるけど、わざわざ電車通学で、おじいちゃんと同じ学校行きたいとか思わねーだろ、面倒くさい」
「確かに」
「じゃ、じゃあなんで?」
「うん、私が中三の頃、学生バンドコンテストを見に行ったんよ、そこに出てたゴーくんに一目惚れしちゃってさ、歌はそこまで上手くないんだけど、曲が良くてね、参加してたバンドの大半はコピーバンド、中高生中心だから仕方ないよね、でもゴーくんのバンドの曲はガチのオリジナル、ゴーくんが作詞作曲したんだよ」
「えー凄いっ」私
「あ、それ知ってるよ、よく教室で口ずさみながら作ってたもん」マリさん
「それがメッチャ良い曲でさ!マジ感動!すぐ声かけて打ち上げのカラオケに連れてってもらったの、そしたら今度はゴーくんが私の歌を褒めてくれてさぁ、将来私の曲作りたいなんて言ってくれちゃったわけよ」
うんうん、リナさんの歌はやばすぎる
「そりゃ、惚れるっしょ」
「ポッ」
「惚れるわ」
「惚れちゃうね」
「で、仲良くなってビックリしたのが、まさかの桜水高校、しかも野球部、バンド見に行って惚れたのがバンドマンのはずなのに、まさかの野球部、坊主頭は好きでやってるのかと思ったら、ガチの野球部、桜水の野球部、監督はおとっちゃん」
「うわー、凄い偶然ですね」
「最初、マジかよーって思った、同じ高校行く気満々だったからさぁ、まだ野球部じゃなかったら良かったのに、よりによってだよ」
「でもさ…」
真剣な眼差しになるリナさん
「こんな偶然って不思議じゃない?なんかさ、死んだお母さんが導いてるのかな?って思えてきてさ、そんなら一丁とことんイッたろ!って思ったわけさ」
「…ヴエーン、リナざーん!それ絶対天国のおがあざんが、ヒック、見てくれでんずよぉ!ヴエーン」
「おい、キョウちゃん、そのすぐ号泣するくせやめろ!」
「んで、ナトっちゃんにお伺いたてたの、私は隠し孫って存在、当然同じ高校に入ってそれがバレれば、ナトっちゃんに迷惑がかかるからね、ナトっちゃんには別の家族がある、今病院だって来てくれてるの、家族に内緒で来てくれてる」
「したら、遠慮すんな好きにしろだって、孫が余計な遠慮すんなだってさ、そんな流れで今に至る、まあ、とは言え、内緒にする方が楽だから…だから、内緒で頼むね」
「がんどぐーがっぐいいー」
「了解だよ」
「ふふ、亡くなったお母さんのお導きね、素晴らしい、杏子、リナちゃん、そして小野さん、あなた達の出会いも、もしかしたら、リナちゃんのお母さんのお導きかもね 」
「え?お母さんどゆうこと?」
「名取監督がうちのお父さんにオファーしてきた本当の理由はね…」
「え?本当の理由?チームの強化じゃなくて?」
「うん、もちろんそれもあるみたいだけど、リナちゃんのおばあ様の容態を考慮してのことなのよ」
「え?えーー!」
そうだ、九月だ!九月だ九月にオファー来たんだ
「トニーと杏子が野球部に参加してちょっとしてからかな、名取監督がうちに挨拶に来たのよ」
初耳だ
「リナちゃん、おばあ様の病名はご存知よね」
「はい、膵臓癌のステージ4です、余命一年って言われてます」
「え!」
「うん、それでね、名取さん言ってきたの、昔の恋人が病に倒れた、余命は一年、その一年、出来る範囲で病院に行きたいって、身寄りは孫だけ、孫はまだ高校生だから、任せっきりにするわけにはいかないって、でも今年の野球部は強い、このまま野球部をおろそかにするのは申し訳ないし、勿体ない、だからオファーさせてもらった、って流れ」
「その時は孫がリナちゃんとは監督さん言わなかったから、今聞いてビックリしたんだけどね」
「だからね、まずリナちゃんと杏子の出会いは、おばあ様の病気があったからなの、そこの野球部で杏子は恋をして、リナちゃんが杏子の恋のピンチを助け、そのピンチのおかげで、リナちゃん、杏子、小野さんの三人が仲良くなれたってこと」
「誤解しないでね、おばあ様の病気のおかげって言いたいわけじゃないのよ、おばあ様が病気になって困ってる、更に、この先一人になってしまう、そんなリナちゃんに何かしてあげたい、素敵な仲間に出合わせてあげたい…って天国のお母さんが思ったんじゃないかしらね」
「小野さんも、うちの杏子も良いお友達でしょ、ね、リナちゃん」
「はい、ヒック、はい、私は他に友達いないんです、入学早々ゴーくん虫退治してたから、友達いないんです、キョウちゃんは親友、オノマリさんだって先輩だけど、もっとどんどん仲良くなって親友になりたい!涼子ママ!お母さん見てくれてるのかなぁ!私のこと見てくれるのかなあ!」
リナさんが号泣
私も号泣
マリさんはケロってしてる、さすがバレー女子、メンタルお化け
「そうね、幼いリナちゃんを残して亡くなるのが無念で仕方なかったと思う、でも、今は名取さんの元で彼氏と野球を楽しみ、お友達とこうして仲良くクッキーを作ってる、きっと、きっっっと、天国で喜んでるはずよ」
「うえーーーん」
リナさんが母に抱きついて号泣
私にも何か言えることないかなっ!
「お、お母さん!リナさんのおばあちゃんの病気、お姉ちゃんなら治せないかなっ、だって癌ならいつもチャチャって切ってるじゃん!」
「きょ、杏子?」
「おい、お前が私より取り乱してどうすんだよ、それドラマの話だろがっ!」
抱きつきながら、振り向いてキレるリナさん
「あ、そか、現実とごっちゃになった」
「おっとーやば、休み過ぎた、作業復帰するぞ!」リナさん
切り替え早っ
「ねえ、リナさんってB型?」
「そだよーなんか文句あっか?」
「やっぱりー」
「え、私もB型だよー」マリさん
「ま、マジか!」
「ふふふ、私もB型だから、杏子だけ仲間外れね」
うわー私の仲間、B型だらけ
なんなら、竜斗も姉もB型
どうなのよこれ
「キョウちゃんは何型なの?」マリさん
「こいつ、ヘービー型だよ、蛇型、キャハハハハ」リナさん
「え、蛇型?意味不明」私
「ネチネチしつこく絡みついて、焼きもち焼きまくりのソクバッキー!」
「リナちゃん!正解!」母
「ひ、ひどい!お母さんもひどい!私もう大人になったもん!もう余裕のある大人の女だもん!身も心も大人になったから、もう余裕あるもん!」
「それ、どうゆう意味?」母
「あっ」
「アハーンじゃん!」
オペ終了
「あー疲れた、やり切ったね」リナさん
「腰痛い」母
「なんか、アタック打ちたくなってきた」マリさん
「ソクバッキーじゃないもん」
ガチャガチャ バタン
「おー兵隊ども!ごくろー」
葉山翔子登場
「わお、モノホン葉山翔子さんだ!かっこいい!こんちはです、青山里奈です」
「えっと、そのあの、小野真理子です、女医さん初めまして」
おい、意外と緊張してるし、なんならドラマ見てんじゃん
「こんにちは、星川祥子です」
竜斗とのやりとりが頭にあるのか、本名で名乗る姉
「わお、本名だ、星川って言われると、ホントにキョウちゃんのお姉さんなんだって思うね」リナさん
「おっし、ブツ見せてみろ」
テーブルの上にズラッと並べられたクッキー祭りを拝む姉
「凄いじゃん!よく頑張った!ありがとう」
って言うと、電話をかける姉
「なべー取りに来てー」
すると、マネージャーの渡辺さんとあともう一人、姉と同年代ぽい女性がクッキーを取りにきた
「よし、リナちゃんにマリコちゃん!褒美をあげる!ついてきな!」
「え!私に褒美は?」
「は?いつもくれてんだろうが、今日はおとなしくしてろ」
「はい」
兄の部屋兼、竜斗の部屋兼、姉の衣装部屋にエスコート
バーン!
姉が扉を開けて親指を立て、部屋の中の方にその親指をクイックイッとしてからの
「持ってけドロボー!好きなのいいぞ」
「マジー!」リナさん
「えー」マリさん
恐る恐る部屋に入る二人に、私も後に続く
部屋の中はブランド物のバックや小物、服などがわんさか
さて、この二人は何を選ぶだろうか
「わー、私このベッドがいい」マリさん
ズコッ!さすがアスリート
「あ、ごめん、それは手間かかるから、別のがいいかな、どうしてもなら手配するけど」
「アハ、冗談です」
マリさん、本当に冗談だったのか?
「じゃあこれにする!これいいですか?」
「え、そんなんでいいの?」
「はい、種違いの妹が喜ぶので」
マリさんが、父親違いの妹に選んだのは、テディーベアのぬいぐるみ、くそデカいわけでもなく、普通のぬいぐるみ
「種違いか…うん、そうだね、種違いだろうが、腹違いだろうが、兄弟はかわいいよね、血が繋がってるんだもん…」
ん?なんか一瞬遠く見たな、しかも少し寂しげに…初めて見たかも、姉のあんな表情
なんだろ…
「はい、めっちゃかわいいです!」
「わかった、どうぞん、ついでにこれ持ってきな、マリコちゃん、私と身長近いからサイズ大丈夫だよ」
ぬいぐるみだけだと可哀想に思ったのか、見かねて、まだ袋に入ったままのコートを差し出してきた
「わぁ、ありがとうございます」
「あ、じゃあ私これー」リナさん
なんと!てっきりブランド物のバックをチョイスすると思ってたのに、手に取ってるのはデジタルビデオカメラ
ま、マジか
「お、リナちゃんセンスいいじゃーん、これ私のCMのやつだからね、高性能間違いなし!あ、ちょっと待ってね」
クローゼットと小さいカラーボックスをガサゴソする姉
「はい、これ、オマケね」
「わお!ありがとうございます!」
カメラを立てる三脚とメモリーカードをゲットしてるリナさん
「じゃ、私行くから、今後も杏子と仲良くしてあげてね、今日はありがとう!」
「はい、ありがとうございます!」
「ああああありがとうございました!」
「リナさん、カメラでいいの?バックとかのが良かったんじゃないの?」
「アハ、バックは将来自分で買う、でも今の思い出…このカメラで思い出を撮って残したいじゃん、でもこのカメラ、それでも高くて今の私は買えない、だからチャンスじゃん、今しか出来ないことをしたいなら、このカメラ一択っしょ」
リナさん、一生ついていきます
「私もね、バックなんかいらない、妹が喜ぶ顔の方がバックよりお値打ちだもん」
マリさん、カッコいいです
リナさんのお母さん見てますか?
あなたの娘さんはしっかり育ってますよ
私はそんなリナさんに助けられまくってます
リナさんを産んでくれてありがとうございます
この二人、普通ならブランドバック一択の高校生
でもね、この二人は違う
この感覚の持ち主の二人
本当にこの二人と友人になれてよかった
てかあれ、私…竜斗にあげるはずのクッキーどうした?
やばっ!忘れてた
リナさんネタで吹っ飛んだ
まっ、しゃあない、これは忘れてもしゃあない
この無駄に思えたクッキー製造大会
でも、このおかげで、リナさんの事情を知る事が出来た。
そして、この日のリナさんの行動は、私は将来、最大のピンチを助けてもらうことになる
「ねぇ、リナさん、ゴー君が作詞作曲した歌って聞ける?」
「お、携帯に入ってるよ、音質あまり良くないけど、聞く?」
「是非!」
「じゃあほい、音量MAX」
リビングに置いて、みんなで聞く
心地よい、程良く乗れる曲
スポーツ飲料とかのCMに合いそう
でも、なんだろ、歌詞が今の竜斗にリンクする感じ
目を覚ましたモンスター♪
これから、俺達にどんな夢をみせてくれるんだモンスター♪
ゆっくり、ゆっくり、羽ばたいていくモンスター♪
俺達はお前が目覚めるのを待っていたんだー♪
俺は歌うんだぁ、このモンスターの活躍をみんなにぃ、世界中のみんなにぃ、知ってもらうためにーー♪
「リナさん、この歌の曲名はなんて言うの?」
「んとね」
「モンスター行進曲」
私と竜斗の出会いはたまたまの偶然だと思ってた
うん、偶然なのは違いない
でも、一つ一ついろんな歯車が噛み合って出会えたのが分かった
ただの運命の出会いではない、誰かに導かれるように出会った感じもする
私はモンスターと出会った
このモンスターはどんどん進化という道を行進してる
でも、一人で行進させたくない
私はその進化をサポートする、ずっと見届ける
モンスターと一緒に
野球と愛の楽器を持って
二人で音を奏でて進化していきたい
そう、夫婦二人で奏でる曲
「怪物協奏曲」
将来、ゴー君に作ってもらいたいな。
『二人じゃないよ、四人で奏でるんだよ』
ん?あれ?
なんか子供の声が聞こえた…気がする
あ、テレビか、テレビだね
でも…どっかで聞いたことある声…
うーん…
あ!
兄の子供の頃の声に似てるわ
いや、ちょっと違うか…
ま、いっか
疲れた、早く竜斗と会いたい。




