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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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通訳のノックバット

 

 クルックルックルッ


 私の右側で、器用にペンがクルクル回ってる


 手を開いて、シャープペンのペン先が薬指と中指の間に固定され、ペンのノックする部分は親指の付け根に当てられている


どうやって力を伝えてるのかわからないが、ペン先は中指と人差し指の間にクルッと移動し、ノック側の方は宙を舞い、一回転してまた親指の付け根に戻る


 どうやってるのか気になる


 

「うーん、これで合ってるかなぁ」

「どれどれ」


 ペンをクルクル回してる本人が、私の問題集の答案を覗いてくる

 竜斗だ


 私の答案を見つめる横顔…

 たまらんです

 そのままほっぺにチューしたいです


「お、正解!だいぶ出来るようになったじゃーん!」

「本当!やった〜、じゃあ数学はもう終わりにして歴史やろ歴史!関ヶ原の戦いやろっ!」


「だめぇ、まだ一問残ってるだろ、それを終わらせてからね」


「ブー」


 今日は、竜斗にイケナイ家庭教師…いや普通に家庭教師をやってもらっている。


 本日土曜日は、この後、我が家で軍議が開かれる。

 春樹家星川家サミットだ。



 昨夜遅くから明け方まで、みぞれ混じりの雨がけっこう降ったので、今日の練習は一日お休みになった。


 お休みと言っても、みんななんかしら練習してるはず

 体育館のトレーニングルームを使う人、ガブさんや大さんなんかは、おそらくいつもの区営ジムに行ってるはずだ。


 竜斗と私は、朝からジムに行ってきた。


 タブレットを開き、竜斗に今日のメニューを指示し、時間や回数をチェックしながら付き合う、こんな感じで管理してけば良いのかな



 そして、水泳中は父親言いつけを守り、ちゃんと勉強をする、ジムを終わらせるとお昼はマックデート


 そう、正月号泣したマック


 出禁にはなってなかった!


 マックのお姉さんは、竜斗に頼んでもない目がハートのスマイルをしてた


 竜斗はそのスマイルに、スマイルで返す


 そう、最近気づいたのだが、この竜斗、ノリがいい


 チャラそうなギャルが、私がいるにも関わらず手を振ってきたことがあった、したらよ、普通に手を振って返しちゃうのよ


「バカなの?」って言うと


「いや、挨拶は返さないと」と、真顔で返してくる


 なんか、純粋な目で言われちゃうとこっちはそれ以上なにも言えなくなる。


 他に似たような案件がちらほら


 おそらく、竜斗は女性がなんで手を振ってきたり、スマイルしてきたりしてる意味がわかってない


 こんなんで怒る私が間違ってるのか?


 ほっとくと、なんかフラフラ付いてっちゃいそうで心配…



 んで、ポテトを食べながら、なんでか勉強の話になり

 竜斗に得意な科目は何?と聞くと数学と日本史って即答で返ってきた。


 図形が苦手だと言うと、教えてくれるとゆうことになり、軍議前の時間を使って、我が家でお勉強デートをすることになったのだ!



 

「ねえねえ、この愛って兜は?」


「直江兼続、上杉景勝の右腕で、有名なのは直江状かな、徳川家康に不幸の手紙を送った人」

「ふぅーん、昔から不幸の手紙ってあったんだね」


 数学を終わらして、今は私が持ってる戦国武将図鑑を開いてる、現代風にイケメンにアレンジされたやつ


「あ、このチョッパーみたいな兜は?」

「真田信繁、別名真田幸村、大阪城に真田丸って言う出城を作って、大群を蹴散らした人だよ」


「あ、真田幸村知ってる!真田十勇士!猿飛佐助!」

「お、よく知ってるじゃん」


「竜斗は戦国武将は誰が好きなの?私は織田信長!」


「杏子は王道行くねぇ、俺はこのさっきの直江兼続、この人一推し」

「愛って兜の人だ!この兜好き!」


「はい先生、麦茶のおかわりどーぞ」


 私達の勉強姿を微笑ましく見てた母が、麦茶を持ってきて、竜斗のコップに麦茶を入れる


「ありがとうございます」

「あ、お母さん!私も!」

 残りを飲み干し、コップを差し出す


「はいはい」


「あ、お母さん!戦国武将誰が好き?」

「加藤清正公」

 即答


「築城の名主ですね」

「そ、さすが春樹君、どうせ杏子は織田信長と徳川家康くらいしか知らないからね、歴史は私と勉強しましょ、フフフ」


「はぁ?知ってるもん!豊臣秀吉!」


「あ、そうそう、大河に出てたあの人、徳川秀忠役やってた人…カックイイわよねぇ、あの顔好き」


 私の豊臣秀吉はシカトかい


「なんか、春樹君に似てるわよねぇ」

 ふん、どうせ竜斗のがカックイイに決まってる


「じゃあ、私は準備するから、勉強頑張ってね」


 母は、軍議に備えて顔の準備をするのに部屋に入った


「そういえば、お父さんと涼子さん大丈夫だったの?」

「え?あー、うん無事燃えたよ、でも時間足らなかったかも、不完全燃焼の疑いがあるけど、仲直りはしたよ」


「ええ?あ、そうなんだ、まぁ仲直りしたならよかった」

 竜斗的には、意味不明であろう


「よし!じゃあ今度は私が英語教えてあげる!」

「え、俺、なんも持って来てないよ」


「そっか、ちょっと待ってね」

 ガサガサ



「これは?これ出来る?」

 腕試し用に買った、英語の都立高校入試過去問!


「え?で、出来るかなぁ」


 ガサガサ



「じゃっじゃじゃーん、イケナイ家庭教師用メガネ〜」

 眼鏡をスチャっとかける


「ウフフ、先生がやさしく教えてあ、げ、る、ん」

 と、言って体を密着させる

 母がいないからやりたい放題


 どよ?クラクラきてんべ


「ねぇねぇ、マジでわからないから教えて」

「え?」

 普通に、英語がわかんねーよ顔の竜斗


 くそ、なんだよつまらん、まだ色気が足りなかったか


「なに?どれぇ?」

「ええ、っとこれ」

「ふんふん、何がわからない?単語?」

 と、聞いて、竜斗を見る


 あれ?モジモジしてる、ん、効いてる?

 あとから効いてくるタイプ?


 いや、これあれか、普通の方のが効くのか!


 眼鏡フェチ竜斗


「えええええっと、全部わからない」


 高校入試やり直してこい



 ブゥーン、バタンッ、ピッピ


「あ、お父さん帰ってきた」

 それを聞いて、竜斗の姿勢が正される フフ



 ガチャ


「先にお邪魔してます!」

「おー春樹君いらっしゃい、杏子!涼子のミニの鍵取ってくれ」


「はぁーい」

 壁に掛かってる鍵を取って父に渡す



 キュキュ、ブォン、ブゥーン


 父が母の愛車、ミニクーパー(姉に買ってもらった中古)を車庫から出して近くのコインパーキングに移動させる


 そう、車庫のスペースを空けたのだ


 って、じゃあ、最初から父の車をコインパに入れればよくね?

 

 

 あ!自分がミニクーパーに乗ってるって思われたくないんだ!


 確かにお母さんのミニクーパーはかわいい、色も赤


 それを春樹家に誤解されたくないんだ

 竜斗父もおそらく父と同年代


 そうなんです


 今日はなんと!春樹家側からはお父さんが参戦する


 竜斗の両親は仕事の都合上、どっちか片方の親しか来れないので、お母さんは欠席となる


 正直、それで良かったと思う


 この大事な会議にマシンガン撃たれたら、話が前に進まなくて困る


 多分、それをわかっててお父さんが自ら参戦を希望したんだな




 母の支度も整い、リビングも来客用に少し変身

 そして、お寿司の出前が届く!

 お寿司!ラッキー!


「あ、もう着くみたいです」

「おー、そうか」

 父が車庫の誘導に向かう

 私と竜斗も後を追って外に出る



 家の前に白色のセダンの車がハザードランプを点けて止まった。


「ここに入れてもらいますか?」

 父の誘導で、スルスルと車庫に車がバックで収まる


 車から出てきたのは、おそらくうちの父より若く、細身で顔はキリッとしていて、髪の毛はまだフサフサで横分け、白髪見たところなし!の、いかにも真面目そうな人


 漫画で見た人に間違いないのだが、リアルの方が数倍若く見える、もっとおじさんかと思った


「初めまして、春樹です、本日はよろしくお願いします」

 スーツ姿でシャキッと礼をする


 お母さんと真反対の性格なのはもう既にわかった


「よろしくお願いします」

 助手席から、女性が降りてきた


「さおりさん、お久しぶりです!」

 さおりさんが、父親のお守りで参戦も聞いていた


 どうやら、竜斗の父親は一人が怖かったらしい


「どうも、杏子ちゃん、今日はお招きありがとうございます」



 みんなで家の中へ



「ふふ、さすが杏子ちゃんね、うちのお母さんに猪したんでしょ?まさかお父さんとこの家に来るなんて、私夢にも思わなかったよ、想像越えてくるね」


「え、いえ、サーセン」

 さおりさんが、小声で話してかけてきた

 嬉しいね



「こちらにどうぞぉ」

 家の中で待っていた母のエスコートで、急造応接室のリビングに向かう



 リビングの前で上着を脱ぐ竜斗父、そして名刺を出してきた


「改めまして、よろしくお願いします」

「あーどうも、えっと」

 母がスッと名刺を父に渡す


 おそらく、母はこんなこともあろうかと父の名刺を忍ばせていたんだ、さすが母、ポッとするだけではない


「こちらこそよろしくお願いします」

 名刺を出す父


「凄い!こうして見ると本当素晴らしい仕事にお付きですね、尊敬します」

 竜斗父が、父の名刺を見て感動しながら話す


「いえいえ、好きでやってるだけですから」


「あ、これつまらないものですが…よかったらご家族で召し上がってください」

 さおりさんが、紙袋二つを母に渡す


「ご丁寧にありがとうございます」母


 こ、これが菓子折りってやつだ!



 そして…


 春樹家三人

 星川家三人

 が、向かい合わせで座る


 これって、野球の会議じゃなかったら、結納じゃね?



 父主導の元、軍議開催


 まずは竜斗が今後いかに期待出来る選手なのかを説明する


 春樹家のお父さんは黙って、軽くうなずきながら聞いている


 人選正解!



 チケット制の話をする

 変わらず黙って聞いている


 今後のトレーニングや、野球用品の話をする

 バットやスパイク等の主要道具の具体的な値段の説明とかも入る


 変わらず黙って聞いている


「いかがでしょうか?」


「はい、是非よろしくお願いします、押し付ける感じになってしまい誠に申し訳ありません、本来ならばうちで食事はどうにかしなければいけないんですが…」


「いえ、お仕事多忙と聞いておりますので」


「はい、いえ、誠にお恥ずかしい話なんですが…うちの家内は料理があまり得意ではなくて…いや、尋常じゃないくらい料理が下手くそで…なので、こちらの仕事関係なくお願いしたい所存でございます」


「………」星川家


 えっと、ディスったよね?

 真面目そうな顔してディスったよね?


 いや、その度合いを越えてくる下手さなのか?

 やっぱりあのお母さんはなかなかだ


「あ、はい、わ、わかりました、お任せください、うちの妻はプロです、安心してお任せください」

 ポッ


「それで、チケットの事なんですが…竜斗から事前にある程度聞かせてもらってたので、こちらでチェックシートみたいなのを作成させていただきました、見てもらえますか?」


 え?


 竜斗父が、持ってたバックからノートパソコンを取り出し、慣れた手つきで開く


 ポチポチ、タッタタ


 ノートパソコンを両家どちらからも見れる位置に置く


「これ、エクセル使ってますので、ここに例えばこうして夕飯のチェックを入れると、金額が出ます、これ月単位で計算してくれますので、ここにそちらでチェックしてくれれば、おのずと月の支払い額が決定します」


「これを共有できるようにすれば、竜斗が私や家内に連絡しなくても、夕飯ご馳走になってる、宿泊させてもらってる、が、明白になります、いかがでしょうか?」


「凄い!」私

「素晴らしい」父

「お父様はパソコンがお得意なんですね」母


「いえいえ、昔からパソコンいじりが好きでして」


「何か、共有出来るパソコンとかありますか?」


「タブレットでも大丈夫ですか?」父


「大丈夫ですよ、メアドを教えていただければリンク貼って送ります」


「杏子、出来るか?」

「う、うん」


 タブレットを持ってきて、メアドを表示して竜斗父に見せる


「ありがとうございます、少しお待ちください」

 眼鏡をかける竜斗父

 イケオジ


 するとノートパソコンを自分の前に戻す


 タタタタ、タタタタタタタ、タタタタ ターン

 見事なブラインドタッチ!しかも早打ち!


 私のタブレットに送られてきた

 開く

「おおー」


「試しに今日のところの夕飯マークをチェックしてもらえますか?」


「あ、はい、わかりました」

 ポチッとな


「はい、大丈夫ですね、共有出来てます」

「おおー」星川家


「バットなどの野球用品はいつ行かれますか?」

「一応、月曜日を予定しています」父


 野球部の休みに行く手筈になっている


「お金は竜斗に持たせておけばいいですか?」


「そうですねぇ、いや請求書払いにするようにしときます、その方がよろしいかと、限度額言ってくれれば私が合わせますので」


「いえ、必要な物でしたら限度なしで大丈夫です」


 その言葉を発した竜斗父は、今までの懺悔も含むかのような反省の顔をしている


 竜斗は終始無言を貫いてる


 さおりさんは元々無言体質である。




 その後、細部も詰め、話はまとまった


 やった!良かったね竜斗!

 常時コンビニ弁当から脱却!

 好みのバット選びたい放題!

 消耗品気にしなくていい!


 私も嬉しい!


「じゃあ、お寿司用意してますので食べてってください」


「いやいや、お構い無く、これで失礼しますよ」

「もう、用意しちゃったんで食べてってください」

「いやいやいや、いただきます」


 ん?


「今日はまだお仕事ですか?代行呼びますからビールでも飲みませんか?」

「いやいやいやいや、仕事は家内がどうにかします」


 んん?


「じゃあ、代行呼びますから飲みましょう」

「いやいや、初めてお邪魔させてもらった家でお酒なんて…でも、お寿司にはまずビールですよね」


 んんん?


 なんか、竜斗と竜斗父、似てる

 断ってるのに前向きなところ、そっくり!



 寿司パが始まる


 竜斗の隣りで食べたいけど、しゃあない我慢だ


 父と竜斗父はビール


 母は…日本酒をあおってる

 ちなみに母は酒豪

 父よりも強い、ちなみに姉も飲めるが滅多に飲まない、体型を気にしてるんだと思う。




 お酒が進む


「いやぁ、本当ビックリしましたよ、試合に出るなんて言うから、見に行ったらいきなり、パカーンってホームランですもん、スコアブック書いてるとこしか見たことなかったのに、もうビックリしましたし、嬉しかったですよぉ、打った後、お嬢さんと抱き合ってる姿みたら、涙でそうでしたよ」


 おいおい、やめろ…って、あ、そか、ここにいる全員あの件見てるんだった、ならいいや


 お酒が回り、よくしゃべるようになった竜斗父


「でね、最後!竜斗がピッチャーやってる時ですよ!白人さんがスピード測ってたから、横から覗いちゃったんですよ!そしたらビックリ!」


 あ!だめそれ、トニーに内緒って言われてるやつ、やばい!


「101キロ!101キロですよ!さすがにあのスピード101キロなわけないじゃないですかぁ!壊れてるとゆうか、ちゃんと球場についてるスピードガンじゃないとダメなんですかね」


 ほっ、あぶねー、さすがトニー、こうゆうの見越して切り変えてたんだな


「101?」


 父固まる、からの箸で掴みかけてたイクラちゃんが、ポトっと落ちて横に倒れ、イクラちゃんが雪崩を起こす


 ん!あ!やばっ、父も知らないんだ!しかも気づいた!


「そ、それ、ち、違いますよ!…マイ」

「お父さん!」


「ん?」私を見る父

 首を軽く振り合図を送る

 父思案顔…からの


「あ、それは壊れてますね」

 さすが父!


 竜斗を見る、うん大丈夫、話に飽きて眠そうな顔してる


「ズバリ!星川さんは何キロ位出てたと思いますか?」

「そ、そうですね140は出てたかなと思いますよ」

 うーん、妥当な答えか?いや遅くね?


 いや、速いよ高校生で140は速い方だよ

 でも、あんだけの球でそれは…


「やっぱりそのくらい出てますか!いやぁそうですよねぇ、凄いなぁ」


 ま、そか、昔の竜斗を見てるから、それでもじゅうぶん満足なんだな


「マジすか!140出てますか!ヤッタ、めっちゃ嬉しい!ちょっと自信ついたかも」竜斗


 ズコッ!ズボッ!


「こら、杏子!お行儀悪い!玉子焼きを箸で刺さない!」母

「え、いや、そんなつもりじゃ、サーセン」


 ビックリして、持とうとしてた玉子焼きを箸で刺しちゃったよ


 てか、マジかよ、どんだけ自分を過小評価してんのよ


 本当のスピード言ったら、投げた本人が失神しそう



「あ、そうだ、そうでした、今までのご飯代と宿泊代お支払いさせてください」竜斗父


「いえいえ、それは受け取れません、私からお誘いしましたのでお気になさらないでください」母


「そ、そうですか、申し訳ないです」竜斗父


「気にしないでください、体験入店みたいなもんです」父

「体験入店?」母


「なんか、女の子のお店みたいな言い方ですね!」竜斗父


「……」私、竜斗

「あ、ワサビきた、ツーン」さおりさん


「ガハハハ、この後いっちゃいますかー」父

「いいですねー」竜斗父


 ダンッ!


 母のコップがテーブルに叩きつけられ、グラスの中でクルッと日本酒が踊る


「子供達の前でやめてもらえますか?」母


 シーン


「海老の尻尾食べちゃう派」さおりさん


 母の機嫌を損ねるなよ、頼むよ


 てか、さっきから我が道を行くさおりさん


 竜斗父はやべって顔してる

 そのやべって顔、竜斗のやべっにそっくり


「涼子!冗談だよ、冗談」父

「ふぅーん、じゃあ私、熟女パブの体験入店に行こうかしら」当然母


「……」私、竜斗

「軍艦巻きは上から醤油垂らす派」さおりさん


「りょ、涼子〜」父

「たぶん人気でます」竜斗父

 おい!


「冗談よ冗談、でも冗談のうちに終わらせてもらいます?」母


 シーン


「でも、きゅうりってなんでカッパなんだろうね、本当に河童がきゅうり好きだったのかな?って、じゃあどうやって河童はきゅうりを見つけたんだろ」当然さおりさん


 おい、誰かさおりさんのコップに酒入れたか?


「ガハハハハ」


 またしても、リビングに父のごまかしの笑い声が響き渡る。





 月曜日


 学校からダッシュで家に帰る!

 今日は竜斗の野球道具を買いに行く!


 試合用ユニフォームと練習着は、昨日練習後にサトスポに二人で買いに行った


 その他のやつを買いに行く!メインディッシュはバットだ!


 野球用品フェチの私は、自分の物でもないのに楽しみでしょうがない!



 家着く!

 玄関バン!


「ただいまぁ」

「はいはい、相変わらずバタバタね、もう注意する気も無くなってきたわ」


「おー思いのほか、早かったじゃん」

 竜斗がリビングにいる


 今日は竜斗の方が早いので、先に家で待っててもらってた


「ねえ!二人変なことしてないよね!」

「変なことって何よ」


「わかんない!でも、お母さんってけっこうアレじゃん?」ニヤリ


「な、何言ってんの!ポッ」


「って、大人をからかうんじゃない!ほら、早く支度してきなさい!お父さんになる早で来いって言われてるでしょ!」


「はぁーい」



 速攻で支度


 竜斗は動きやすいように、上下スエット系セットアップだった、私もそれに合わせよう。




「じゃあ行くわよ」

 母がミニクーパーで駅まで送ってくれる

 帰りは父の車なので、チャリが邪魔になるからだ


「ねぇお母さん、どうせだったらお店まで連れてってよ」

「嫌よー、首都高迷子になりそう、着く頃にはお店閉まっちゃうわよ」


 それは困る




 今回は小田急線の方の駅に到着!


 ホームで電車を待つ


 ん?なんか変な物体がホームに滑りこんでくる


 プワーン!

 ビューン、ガタン、ガタン、ガタン


 うわ何これ!カックイイ!

 そして、お決まりの通過された!


「ねね!竜斗なに今の!ウォーズマンの顔みたいなやつ何!」

「杏子、キン肉マンも知ってるの?凄いね」


「うん、で、何!新幹線?」


「はは、ロマンスカーだよ!新幹線ではないよ、有料特急電車、箱根に行ったり江ノ島に行ったりするよ」


「ろ、ロマンスカー!」

 うん、ネーミングがロマンス!


「え!箱根!温泉行こ温泉!混浴ね混浴!」

「杏子、ちょっとはしゃぎすぎ、みんな見てるよ」

「あ、う、サーセン」


 そして、反対側は快速が通過してる


「え、この駅は快速も止まらないの?」

「あれは快速急行」


「はい?快速と急行が合体したの?強いの?」

「ま、まぁそんなとこ」


 うわ、めんどくさがった!絶対めんどくさがった!



 電車に乗る

 案内図を見る


 なんだかなぁ、複雑

 快速急行やら、急行やら、準急やら、区間準急


 区間準急?なんやねんそれ


「竜斗〜、私日本の電車嫌い、複雑すぎる」

「何言ってんだ!日本の鉄道はな!うんちくうんちく」




 途中地下鉄に乗り換え、父に言われたショップに到着


 店内に入る


 父は先に着いており、スタッフさんと談笑してる


 うおー!品揃えやばっ!


 大興奮!




 バットフィッティングが始まる


 とりあえず父が、竜斗に合いそうなバットを持ってきて、スイングスピードを測る


「じゃ、お願いしまーす、どうぞ」

 スタッフさんがGOサインを出す


 ブンッ!


「……え?えっともう一度お願いします」


 私も一緒になって計測スピードを見てるが、正直早いのかどうなのか、わからん


 ブンッ!


「こりゃ、参った、どえらいぞこれ」父

「も、もう一度お願いします」


 ブンッ!


「……星川さん、今のうちにサインもらっておいていいですか?」


 冗談かと思ったら、おもいっきり真顔のスタッフさん


「このスピード、プロでもトップレベルですよ」

「だ、だよな」父


 ま、マジか




 色々試し、ミズノ製の二本のバットに決めた


 一本は予備ではない、左投手用に少し長さと重さを変えてある、竜斗は実戦不足、更に経験不足が露呈されそうな左の好投手との対戦を考慮しての代物だ


 これで文字通り、鬼が金棒を手に入れた。



 そして、スパイク


 金具の位置や重さ等、父がスパイクを一つ一つ取りながら、竜斗に説明をする


 でも、私は違うことにウズウズしてる


 さっきのバットコーナーに後ろ髪をおもいっきり引っ張られてる



 スパイクが決まる、Pカバーを付けてもらう



「お父さん!」

「なんだ」

「ノックバット買って!」

「は?」


「ノックバット欲しい!買って!」


 その声を聞いて一番驚いたのはスタッフさんだった


 ま、そりゃそう



 前の、ポケモン二個買ってもらう!の時に、ノックバットに変えてもらおうかと思ってたが、結局私が勘違いでグレてしまったので、そのままポケモンを買ってもらった


 なので、まだノックバットない


 毎回コバさんに借りられない


 今なら父もテンション上がってるから、買ってくれるかもしれない


「お願い、ノックバット買ってぇ ウルウル」

 竜斗のウルウルを真似する


 スポーツショップで、ノックバットを懇願する中三女子は……おそらくこのスポーツショップがオープンして以来始めてだと思う



「しゃ、しゃあないな、丸川君、コイツにノックバット紹介してやって」


「やったーー!」


 ふっ、竜斗ありがとよ、おこぼれゲットだぜ!


「え!娘さんにですか?」


「あーそうだ、コイツは力はないけどバットコントロール上手いから、ノックは上手いはずだ、なんか合いそうなやつ紹介してくれ」


「わ、わかりました」


 丸コメさんが、ノックバットを紹介してくれる

 なんでか、竜斗もついてくる


 色々吟味




「決めた!」

 ピンクのバット!インパクトマークは白!ミズノ製


「あの、ネームって入れれます?」

 父に聞こえないように小声で丸コメさんに聞く


「やっちゃいましょう、サービスしときますよ」


「わ〜お、あざす!」



 春樹杏子


 と、木製バットの刻印らしく漢字でお願いした


「また、リナにいじられるぞぉ」竜斗

「いいもん!今更なんとも思わないもん!」

「確かに」


 確かにってなんだよ


 どうせ、竜斗が卒業したら使わないんだ、だったら思い出のつもりで好きにさせてもらう



 鬼に金棒

 姫に愛のマジカルステッキ


 エヘヘヘへ



 その後、竜斗が持つカゴに、竜斗のアンシャツやらなんやら小物やらボンボコ入れてく私


 そう、あとは私が全て選ぶ!


 楽しいー


「杏子、父さんには必要な物なら、って言われてるんだけど…」


「あん?全部必要です」




 買い物終了


 私が一番満足してるかも!


 帰り際、さっきの丸コメさんが本当に色紙とサインペンを持ってきた


 店には、プロ選手のサインがズラッと並んでる

 なので、日頃から色紙とかストックしてあるんだな


 戸惑いながらも、竜斗がサインする



 RYUTO HARUKI



 もちろん初のサイン

 ローマ字で署名しただけのサイン


 これが現状出来る、精一杯のサインだと思う


 でも丸コメさん、このサイン、十年後にはとんでもない値段がつくかもよ、絶対に捨てちゃダメだよ。




 三人でウチに帰宅すると、竜斗の部屋…もとい!兄の部屋に高級ベッドが届いてた!


 姉が買ったお高いベッド、アスリート御用達ベッド


「一番のりー!」


 竜斗より先にベッドにダイブ!


 やばい!こりゃやばい、朝起きれなさそう


 竜斗がいない時、ここで寝ちゃうか

 いや、いても寝ちゃうか一緒に…エヘヘへへ



 てか、もうこれ、竜斗は自分んちに帰る意味がないような気がする


 ボフ!


 竜斗もダイブしてきた

 そして、私の手を握ってきた

 辺りを見渡す、扉は閉まってる

 チャーンス!


 モゾモゾと近づく

 ん?わっ!

「んんーんー?んんんー?んんんー」

 ブハッ!ワオ!

 

 初めて濃厚なチューした


 ビックリした!そして、なんでか感動した


 竜斗も濃厚チューは初かなぁ?


 てか、お父さんお母さんごめんなさい


 いや、いっか、うん、しょうがない、流れだ


「好きだよ」

「え?」


 あらビックリ、告白以来かも

 てか、毎日言え!


「うん、もちのロンで私も好きだよ!」

 

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