星川家包囲網
私の自爆祭りから数日経った平日の夕方、今日は練習日だが、私と竜斗それからトニーの三人で竜斗行きつけのジムに向かう。
トニーが竜斗のジムのトレーニング内容を少し変えると言ってきたからだ。
ジムで、変えたトレーニング内容を説明しつつ、トニーが指導するみたい。
ジムに到着
ん?どこかで見た事ある熊が…
あれれれ
「お、お父さん!」
「おー、来たな、今日はよろしくな!」
「な、何?なんか用?」
「ハハ、サプライズだ!喜んでくれたかいキョーコ」
外人うっさい、黙ってろ
「今日は!俺が指導する!」
「え?」
はにゃ?顔の私と竜斗
「え?なんの?」
キャバやメイド通いの指導だったら殺す
「なんの?ってバカかお前、俺が指導するってことはトレーニングに決まってるだろ」
「えーーー、平気なの?」
そう、プロ野球のコーチ、コンディショニングといえど高校野球の規定に引っかかるんじゃ…
「おー、技術的な部門は色々ハードルがあるらしいが、ケガ予防や正しいトレーニングなどの指導はオーケーなんだってよ、最近は高校生の無茶なトレーニングや怪我が多いらしく、改善するためにもどんどん指導してくれだとさ、しかも高校側から依頼が来たら講師とかもやってくれないか、だと」
「おー、凄いじゃんお父さん」
「まぁな、でも来月からキャンプ始まっちゃうとそんな暇ないから無理だけどな」
「そっかぁ、そうだよね」
「ま、そんなわけで、名取さんのチームくらいは面倒みたいから、今日春樹君が終わったら、後は暇見ながら、他の選手も見るつもりだ、周りきらなかったら、メニューだけは作ってトニーに任す、もちろん無償だ、無償なら届出もいらないらしいぞ、とは言っても、あとあと面倒になっても嫌だから、一応名取さんからは届出を出してもらった」
「わお!じゃ、大手を振って指導出来るじゃん!」
「そうゆうことだ」
これは凄い、もちろんトニーもある程度は出来る、でもこの専門分野は父のが優れてる。
日本人が、選手のバーターではなく個人でメジャーに十年いたのだ、しかも帰国してもすぐに買い手がつく、説明しなくても凄いのはわかる。
「それから、今日はベタつくなよ杏子」
「はい?うー、すんません、了解です」
父親からこんな注意をされる中三女子は他にいないと思う。
「任せてください!」竜斗
何をだ
父の指導が始まる
子供の頃は、よく一緒に球場に行って見てきた父親の仕事っぷり
大人になりつつある今、こうして見ると本当に凄い
わかりやすいし、それぞれのトレーニングの意味もしっかり伝えるし、伝わる
トニーから、少しの変更と聞いていたが大幅な変更だ
現状からの更にパワーアップ、しかもこれから起こりうる成長痛などの予防にもつながるメニュー
父の熱心な指導は二時間かかった
凄い期待しているのがわかる
トレーニングが終わると
「春樹君、杏子ミーティングするぞ」
父の呼び掛けで談話室に向かう。
あのチューしまくった談話室でミーティングが始まる
ある意味ウケる
トニーはとっとと帰った。
父が、机の上にノートパソコンとファイルを置く
「今日説明した、トレーニングメニューは杏子のタブレットに今送った、見てみろ」
バックから取り出してタブレットを開く
トレーニングメニューが送られてきてる
「春樹君はこのファイルを見てくれ」
「はい」
「二人とも見ながら聞いてくれ、このメニューを全部一度には出来ないから、こっちで計画表を作った、それも確認してくれ
「わっ!凄い!なるほど!」
計画表には、トレーニングの順番や時間や回数、効果等が詳しく書かれている
「春樹君」
「はい」
「どうだ、このメニューに変えるか?これは君のモチベーション次第だ、今の現状で満足するなら、怪我予防メニューを追加するだけでいい、ただもっと高みを目指すならこのメニュー全てをやってく必要がある、自分の将来や今の自分の状況等考えて答えを出してくれ」
「やります!高みを目指したいです!」
即答
「そうか、わかった!じゃあ杏子、お前はタブレットを見ながら二人で相談して、トレーニングに付き合ってやれ!」
「うん、わかった!ありがとうお父さん!忙しいのに」
「ありがとうございます!」竜斗
温泉旅行で忙しいだけかと思ってたら、こんなに考えてくれてたなんて…すまん
「まぁな、前からある程度作ってあって、月曜日にトニーから聞いた現在の春樹君のメニューと照らし合わせながら作成したんだ」
少しドヤる父
「ま、杏子は出来る範囲でいいから、このジムでトレーニングメニューを上手く管理してやれ、ジムには俺から話通しておくから、会員じゃない杏子がいつでも出入り出来るようにしとく」
「そんなこと出来るの?」
「俺を誰だと思ってるんだ!ガハハハ」
「ヘェー」
「それから春樹君、食事は変わらずコンビニか?」
「はい、そうです」
「じゃあ、これ参考にして選んで買って、まぁコンビニだ、限られてはくると思うがな」
父がおすすめメニューみたいなのを渡す
「高校生はまだ、質より量でもいいんだけど…春樹君には出来れば食事もちゃんとして欲しいんだよなぁ」
「はい…」
「食事代はどうしてる?その都度もらってるのか?」
「いや、一日二千円計算で月に六万円もらってます、足りなくなったら説明して追加を頼む感じです」
「月六万か、わかった、こっちでもいい方法ないか考えてみる」
「わかりました」
「じゃあ、俺は帰るから、杏子は春樹君の水泳終わるの待つのか?」
「うん、そうする」
「じゃあ待ってる間は勉強しろ」
「えーーー」
「えーじゃない!学生の本文は勉強だ!」
言ってることがアベコベのような気がする
「わかったな!じゃなきゃ今から連れて帰るぞ」
「わかったよぉ、今日は勉強道具持ってないから今度からでいいよね?」
「しょうがない、今日は勘弁してやる」
「すみません、そろそろ予約の時間なので失礼します!」
「おーじゃあ春樹君またな」
「はい!」
竜斗が水泳に向かった
「お父さん、竜斗のプレーそんなに見てないのに、凄い期待してるね」
「ん?あー、それでも目の前で計三本の特大ホームラン見せられてるんだぞ!じゅうぶんだろ、あんなの見せられて黙ってられるかっ!ガハハハ」
「ヘェー」
「ま、あのトニーが連れて帰りたいなんて言ってるんだ、凄い選手確定だ!」
え、連れて帰りたい?初耳
でも、連れて帰ったら私達離れになっちゃうじゃん
「おし、帰るぞ」
「う、うん、あ、そだ、お母さんと仲直りしてね」
昨日、父が温泉旅行から帰宅してから口を聞いてない両親
まだ燃えてない
原因はもちろん飲み屋の女の子の名刺出てきちゃった事件だ
「お?何言ってんだ、こっちは三十年夫婦やってるんだぞ!任せておけ!作戦はある!」
そうかい、早く燃えてくれ
留守番してるから
さくらホテル行ってこい
父が先に帰り、私は談話室に残りタブレットと睨めっこ
これからどう管理していくか思案中
「ロビーにフリードリンクありますから、よかったらどうぞ」
女性スタッフさんに声をかけてもらった
父が話を通してくれたんだな
ロビーにある紙コップ式フリードリンクを頂戴する!
迷わず、QOOの白ブドウ!
ボタンを押そうとすると、少し小太りのおばさんが入ってきた
言い方悪いが、ジムに用があるとは思えない
ポチッ、ガラガラガラ、ジャー
ジュースを持って、さっきのおばさんの後ろを通り、談話室に戻る
「どうも〜春樹です〜、来月の料金お願いします、え?会員番号、知らないわ、春樹でわからない?そちらから呼び出したんでしょ、時間指定までしてきたじゃない、この時間に来れば割引するって言うから来たのよ、え?あそう?あらやだ、来月無料?ありがとうございます〜、あら?無料なら、私、来た意味ないような気がするんですけど、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ」
え?えええええええ?
竜斗のお母さん?
ジュース、少しこぼれた
え、どしよ、話しかける?聞こえなかったことにする?
いや、竜斗がいないから逆にチャンスかも!
「あらやだ〜そうなのねぇ、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ」
なんかマシンガントークしてる、入る隙がない
いいや、いったれ!
「あの!春樹竜斗さんのお母さんですか?」
「ぺちゃ……はい?そうですけど?」
「あの、私、星川杏子と言います、えっと…」
「はい?杏子さん?あ!杏子さん!竜斗の彼女ね、まぁ〜かわいいわね〜さおりから聞いてたけど、ほんとかわいいわね〜」
えへへへ嬉しいぞ
「竜斗にどんな人?って聞いても全然教えてくれなくてね〜ほんと会いたかったのよ〜でね」
「あの!」
キリないので話折る!マジマシンガン
「はい?」
「少しお時間いただけますか?」
「はい、大丈夫ですよ」
竜斗母を、チューしまくり談話室にエスコート
二人がけのテーブルに向かい合わせに座る
「あ、どぞ、座ってください」
「座ってるわよ」
「わっ、えっとその、改めまして星川杏子です」
交際相手の母親なので緊張しまくり、竜斗はよくうちで告ったわ、尊敬するわ
「どうも、竜斗の母の春樹亜沙子」です」
マシンガンは撃たずに、ニコニコゆっくり喋ってくれる
「あの、さおりさんから、お父さんとのこと聞きました、お父さんが反対するのも無理ないと思います、でも、でも今は、竜斗さんは、前とは別人の活躍を見せてます、活躍どころか、将来大変な選手になるかもしれません!」
「ふふふ」
「私から、こんなこと申しあげるのはどうかと思いますが…ご家族、いやお父さんの協力はまだ難しいんですかね?」
「えっと、協力ってどんなことかしら?」
「竜斗さんは、自分で野球用品を買ってるって言ってました、時にはお母さんやさおりさんに頼んで買ってもらってるって、聞きました」
「ただ最近限界がきてまして…まだ成長期らしく、サイズがあるものはどんどん小さくなってしまってます、スパイクはボロボロ、あとバットを新しくしたいみたいです、けど最近は練習が過密でバイトに行けなくて、買うのが難しいみたいです」
「お父さんから援助していただくのは…この前試合に見てきくれたみたいです、野球にあまり詳しくないお父さんでも、あの活躍はビックリしたはずです、どうかお母様からもお願いしていただけないでしょうか…?」
「ふふふ、さおりの言う通りね、本当真っ直ぐ、普通中学生がそんなことお願いしてこないわよ、それだけどうにかしてほしかったのね、あ、グローブありがとうございました」
「あ、いえ、そんなぁ、色々と出しゃばってすみません」
「野球用品は、全て用意します、ご安心くださいね」
え?あっさり
「確かに、私やさおりからも援助してました、でもね、それぜーんぶお父さん知ってるし、お父さんがお金出してるの」
「え?」
「確かにお父さん、反対したわ、高校生になってまで何やってんだと、どうせ試合に出れないのに何やってんだと、それで竜斗と衝突した、もう野球用品なんて買わないからな!って」
ふむふむ
「でも、そんなの最初だけ、いや最初からお金出してる、高校の野球部入って最初に揃えるのに、私に竜斗がお願いしてきたの、お金足りないから、貸してくれって」
「もちろん私から出したわ、でもねうちの家計のやりくりはお父さんがやってるの、だからお父さんに言うしかないじゃない?私はね、すぐお金使っちゃうの、だから私は一文なし、そんな私だからお父さんが家計を管理してるの、ウフフ」
まさかのお母さんがダメな人?
「その最初の時にお父さんは黙って出してきた、私言ったのよ、だったら仲直りの意味もこめて自分で渡せって」
「そうしたらね、お金を大切にするいい機会だから、お前がなんとかした感じで渡せって…なぁんて言ってるけど、ただの意地っぱり、引っ込みつかないだけ、本当バカよね」
「この前の試合なんて、さおりから試合出るって聞いたのに、ぜーんぜん知らん顔、なのにね仕事先でソワソワ、もうアホくさって思って、蹴飛ばして行かせたのよ」
マシンガンが止まらない
「あとね、さおりも竜斗もお父さんの知らない顔があるの」
「え?なんですか?」
「お父さん、野球大好きなのよ、竜斗の竜の字あるでしょ?」
「はい」
「あれね、プロ野球のドラゴンズから取ったのよ」
「えー!」
「お父さんがそのチームの大ファンでね」
「え、なんで隠してるとゆうか、言わないんですか?」
「お父さんは、好きなことやらしたいんだって、自分の思いを言うと、半強制的に野球やるしかなくなるのがかわいそうだって、だからね、竜斗が野球やるって自分から言った時はまぁ喜んでた、子供達が見てないとこで飛び跳ねて喜んでたわ」
「でもね、竜斗が小学生の時、見に行ったら……なのよ、そこからお父さんプロ野球も見なくなっちゃって」
「なるほどです、全て納得いきました」
「だから、ご心配なく、後で私から竜斗には言う、私がどうにかする感じにするから、今の話は黙っててくれる?言うとお父さんに怒られちゃうから」
「あ、はい、わかりました、よろしくお願いします」
「にしても、あなた、葉山翔子にそっくりね!知ってる?あの人、この辺に住んでるらしいわよ、最近目撃情報が多いのよ、まぁ、この辺は芸能人多いからありえるわよね、竜斗の同級生にもね、俳優の息子さんがいてね…ぺちゃくちゃ」
「……」
「竜斗がね、まだ四才の頃、八百屋さんのもやしのバケツに足つっこんじゃって、もう本当すいませんって言って一万円札置いて逃げてきたわよ、そしたら竜斗がね、目をウルウルさせて、僕悪いことしたの?って言ってくるのよ、したら怒れないじゃない…ぺちゃくちゃ」
いや怒れよ、ん、えっと…私も怒れないかも、あの目でしょ?しかもウルウル?無理だわ
「それでね、あの子、女の子にモテるのよぉ、なのに自分でわかってないの」
あー、それわかる!てか、それ私に話すことかぁ?
にしてもマシンガンが止まらない
「小学校六年生の時のバレンタインデーの時なんてね、柴田はづきちゃんと、あと誰だっけ、えっとそう、太田さんだったかな?家にチョコ持ってきてね、でも、竜斗は野球に行っちゃって、ぺちゃくちゃ」
ん、はづきさん?あれ、はづきさんて苗字なんだっけ、それに太田さん?どっかで聞いたことあるような…
「母さん?」
「あら、竜斗〜終わったの?」
「うん、ってなんで、母さんと杏子が?」
「竜斗!こんなかわいい子とお付き合いしてたなんて!しかもお泊まりさせてもらってたなんて!アナタも私と似てメンクイね」
え?竜斗は、お泊まりを馬鹿正直に彼女の家に泊まるって言ってたの?普通友達の家に泊まるで良くね?てか、しかも二泊連泊
それをメールワンターンで許す親ってどうなのよ?
甘すぎる!まっ、竜斗が子供なら許してしまいそうだ
私もなかなかのダメ女
「うるさいよ母さん、話し声がだいぶ遠くまで聞こえてきたよ、もう少しボリューム下げて」
確かに
「ふふふ、照れないで」
ちげーよ、普通にうるさいぞ!
「そう、竜斗!バットとか買いたいんでしょ!買ってあげるから安心しなさい」
「え?」
私を見る竜斗
私は口笛を吹く真似をする
「う、うん、でもバットは高いから母さんに頼めないよ」
「大丈夫よ、好きなの買いなさい」
「え、だって、ついこの前バックを衝動買いして父さんに怒られてたじゃん、ってことはもうお金ないんでしょ?だからいいよ、バイトしてどうにかするから」
「………」
久しぶりに黙る姑、てか、なかなかだな姑
「あーもうー!面倒くさい!言ってやるわ!お父さんがお金出してくれます!言えばたーんとお金出してくれます!だから心配しないの!バイトする暇あるなら杏子さんをサーティワンにでも連れてってあげなさい!」
うわ!いきなりネタバレした!私に黙っててくれって言ったのに、わりかし早くネタバレさせた!
しかもなぜアイス?外は寒いんですけど!
「え?父さんが?」
そりゃそうなる
「もう面倒くさい!お父さんの意地の張りに疲れた!」
と、言うと、お母さんが私に話したことをまんま伝えた
「だから、わかった?もう遠慮はいらないの!好きなだけ野球やりなさい!」
「そうなんだ…」
竜斗の顔が少し複雑になるが、ホッとした顔になっていく
「私、そろそろ行くから!お店戻ってお父さんにブチギレてくるから!」
なぜキレるんだ
「はいこれ」
テーブルに、一万円札をピタっておく姑
「え?なに?」竜斗
「これで、サーティワンに行ってきなさい、杏子さんいい子ね、中学生なのにしっかりした子、しかも綺麗、竜斗!泣かせたらダメよ!」
「わ、わかってるよ」
てか、なぜアイス!
「いいよサーティワンくらい自分で出すよ」
え、サーティワン行くの?今日寒いよ?凍えるよ?竜斗となら行くけど!
「大丈夫!このお金…さっきお父さんの財布から黙って抜いてきたやつだから、オホホホ」
おいおいおいおい
例えそうだとしても、息子に言わねーだろそれ
心の中のツッコミが止まらない
「杏子さん!」
「はいっ!」
「チョコミントがオススメよ」
ズコッ!
なぜ、この母親からコバさん並に大人しいさおりさんと、しっかりしてる竜斗が産まれたのかが不思議でならない
竜斗母が自分のお店に戻った
「ふぅー」
椅子にドカッと座り両足を前に放り出し、両手はブラーン、脱力してる竜斗
私は隣りから椅子をガラガラ引っ張り、竜斗の隣りにちょこんと座る
竜斗が脱力のまま顔だけ私に向ける
「バットのこと言ったんだね」
「あ、うん、ごめん」
あれ、怒ってるのかな
「てか、なんで母さんと?」
「あ、なんかロビーで春樹春樹って騒いでる人がいたからもしかして?って感じ」
「で、声かけて、ここで話を始めたのか、凄いよ」
「そんな感じ…」
「俺と父親…道具事情のこと知ってたんだ」
「え、う、うん、最初の頃、おかしいなぁって思ってて、そしたらさおりさんが教えてくれたの」
「なるほど…姉ちゃんは言葉少ない、何も言わなきゃ喋らない、きっと杏子の方から聞き出した感じかな」
「えっと、聞き出したとゆうか、私に何か出来ないかって聞いた感じかな…」
「ふっ、杏子らしいわ」
やっぱり怒ってるのかな…
「あの、ごめん、出しゃばった、竜斗怒ってる?」
「また、杏子に助けられちゃった」
「え?」
「ねえ、杏子はまだ十五歳なのに、なんでそこまで行動出来るの?」
「ごめんなさい、でも…それは竜斗のことが好きだから…その…」
「俺、杏子無しじゃもう生きていけないじゃん!アハハ」
「えええ?」
「もうやめた!もう託す!年上の男だけど、もう杏子に甘える!杏子を引っ張っていかなきゃって思ってたけど、もうその考えやめる」
少し甘えた顔を見せる竜斗
「竜斗、私しゃしゃり過ぎだよね」
「んにゃ、もうどんどん来て、あのさ、マジで悩んでたんだよ、スパイクはカバー付いてないから穴あきそうだし、練習着も試合用ユニフォームも限界だし、なんかバットはしっくりくるのないし、毎日泥んこなのはうれしいけど、ストッキングとかすぐ穴あくし、スラパンとか、アンシャツとか…とにかくもう色々限界でどうしようかと思ってたんだ、本当ありがとう、助かった」
「そっか、よ、よかった」
スクッと立ちあがり、座ってる私の前に手を膝につき少しかがんで目線をあわしてくる
「俺は甘える、今後も甘えることになるかもしれない、でも絶対…この恩は返すからね、一生かけてもね」
「うん、甘えていいよ!将来お嫁さんにしてくれればいいから!」
満面の笑みで返す私
学生の恋なんてすぐ終わるってよく聞く、でも私はこの人とはそんな軽い付き合いにはならないと感じる、他に恋は知らない私、でも感じる、もう絶対にこれ以上の人は現れない!まだ十五歳だけど…それだけは断言できる
「ねぇチューして」竜斗
「へ?」
いつもの私のセリフを奪う竜斗
顔を寄せて、目を見つめてくる
その目は優しくて、少し眠そう、そしてウルウルさせてる、これかぁ、ウルウル、なんか初めて見た、こりゃ怒れないよ、もやしに一万払っても怒れないよ
「ねぇ!私のマネしないでよぉ!」
「チューして」
「もう! んんん」
この談話室でまたチューをする私達、ジムの関係者皆様、大変申し訳ございません
「さっ、サーティワン行こ!」
「う、うん」
事後、意外とさっぱりな竜斗、将来不安、てかマジでアイス行くんかい
ピコ
あ、母からメールだ
開く
(もう帰ってくる?)
(アイス屋さん寄ってくる!あと一時間くらいかな)
アイス食べて帰ればそんくらいっしょ
(わかった、気をつけて帰ってきなさい)
(りょ!)
携帯をしまって外に出る!
わお!さぶっ!
「ねぇ、この寒さの中のアイスはちょっとキツくない?」
「え!」
ビックリして立ち止まる竜斗
「ん?」
「杏子、もしかして…コーンで外で食べるつもりだったの?」
「ち、違うの?アイスクリームってそうじゃないの?」
「ブハハハ、いや、間違いじゃないけど、この冬場の夜にそれはないだろ、どんな拷問だよ」
「え?じゃあどうやって食べる…あ、カップでテイクアウトか!」
「普通そうだろ、はは、なぁんかしっかりしてるようで、天然とゆうかなんとゆうか、ククク」
「だって!しょうがないじゃん!き、帰国子女だもん…」
「最近、それに逃げるようになったね、帰国子女は監督殴らないよ」
「殴ってない!睨んだだけ!」
「まぁね、俺のために殴ってくれたんだからいっか」
「だから殴ってない!もう!」
サーティワンでチョコミント込みで六個買った
竜斗もうちで食べてくのかな?
竜斗が家まで送ってくれる
うちに到着!
「じゃあこれ、お土産ね」
竜斗にアイスの入った袋を渡される
「え?寄ってかないの?」
「いやぁ、さすがにね、悪いからさっ、ここでバイバイするよ」
あ、遠慮してる
おそらく、うちに顔出す、からの、母からの夕飯食ってけに、遠慮してる
土日連泊の後、月曜日も練習終わりに送ってもらいそのまま夕飯をうちで食べてる
昨日の火曜日は、練習がお休みだったので、放課後高校に侵入、竜斗の教室でリナさんや他の部員達とゲームして遊んだ後、やはり送ってもらい夕飯食べてけにハマってる
そう、四日連続夕飯をゴチになってる
「わかった、アイスごちそうさま」
「うん、一応俺の母親からの差し入れって言っといて」
厳密に言うと父親からだ
「了解〜じゃあまた明日ね、気をつけて帰って」
「うん、じゃ」
「え!なんもなし?」
「は?」「あ、そっか」
お別れのチューは必須との約束をしている
「んん」
「じゃね」
竜斗が見えなくなるまで、見送る
ガチャ、鍵を開けてドアを開ける
「ただいまぁ」
ん?あれ?誰もいない?
両親どこ行った?
ドタバタドタバタガサゴソガサゴソ
両親の部屋から物音が聞こえてくる
おやおや〜ニヤリ
これはどうゆうことでしょう〜か〜
あ!そっか、さっき帰るのに一時間って送った!
でも、テイクアウトにしたから三十分も経ってない!
サプライズ帰宅してしまった私
あ、じゃあさっきのメールは探りかぁ
うん、三十年経っても仲が良いのはいいことだ!
別に悪くない、ただ、私が寝るまで待てなかったのかよぉ
私、まぁまぁ早く寝るタイプなの知ってるよね?
それでも、我慢出来ないうちの両親
竜斗のお母さんもなかなかだが、うちの両親も負けてないわ
さて、ここは娘としてどう振る舞うか…
とりあえずゆっく〜り靴を脱ぐ
早く、この間に服着ろ
ガサゴソガサゴソ
もういいかな?リビングにわざと足音を立てて向かう
「あれー誰もいないのー」
土産物を冷凍庫にしまう
「早くほら!なにモタモタしてんのよ!」
小声が漏れてくる
パタン
「あら、はっ、杏子早かったわね、ふっ」
平静を装ってはいるが、焦って着替えたからなのか、ギリギリまで頑張ったからなのかはわからないが、息づかいが多少荒い
これで、子供にバレてないと思ってるんだから、親はアホだ
「あれ、お父さんは?先に帰ってるはずだし、車止まってたけど?」
当然の質問だが、半分イジメも入ってる
「え、あーお父さんね、うん、今お父さんにマッサージしててあげたのよ、だから、今休んでる」
口も聞いて無かった夫婦がなぜいきなりマッサージなんだよ
「え?温泉入ってきたのに、マッサージ必要なの?」
「あ、うん、なんか向こうでマッサージはしなかったみたいよ」
「お母さん、マッサージなんか出来たっけ?」
「そりゃね、少しは、で、出来るわよ」
もう、この辺にしといてあげよう
いつ、逆になるかわからないからなっ!エヘへ
「杏子、早くお風呂入っちゃいなさい、祥子も後一時間位したら帰ってくるみたいだから」
なぬ?
なぜ神出鬼没の姉の帰りを知っている?しかも時間まで…
ははーん、これ姉にも探りいれたな
姉はなかなか寝ない、しかもさすがに姉にバレたら洒落にならない、で、私に探りを入れて、チャンスは今だ!って感じでGOしたな
じゃあ、明日まで待てよ!
姉はまず連泊はしないんだからっ!
安全日は明日だろ!
風呂場の脱衣所に到着
洗濯物を確認
ふむふむ
両親二人分の洗濯物が既に入っている、お風呂はシャワーを使った形跡あり
少し時間の経過を推測する
父が土産をどこかで買い帰宅、母キレる、父土産を渡す、母受けとらない、父言い訳かます、さらに母キレる、父もっかい謝りながら言い訳する、母そっぽむく、父あやまる、父あやまる、母まだ納得いかず、父抱くそぶりを見せる、母少しなびく、父仕上げに入る、母落ちる。
姉に電話、私にメール、GO!
この時間と、私がジムを出るタイミングが合う
メールのタイミングがそうだからだ
でも、ここから猶予は予定では一時間
あまり余裕がない
これ…一緒にシャワー浴びたな
ふふ、私、探偵になれるかも
「あれ?春樹君は帰ったの?」
風呂場に顔を出す母
ふっ、焦ってたから竜斗のこと忘れてたな
「うん、送ってもらって玄関先でバイバイしたぁ」
てか、あぶねー、竜斗いたらやばかったじゃん!
ん、あ、逆に竜斗も燃えたりして、エヘヘへ
「また、変な笑い方してる、キモいわよ」
お前らのがじゅうぶんキモい
風呂を済まして、部屋で髪を乾かしリビングへ
姉が既に帰宅していた
テーブルの王様席に姉が長い足を組んで座っている
そして、父と母は対面に向かい合わせで座っている
誰が家長かわからん
姉は父のビールのお供の柿ピーをバリボリ
てか、父はしれっと部屋から出てきてるじゃん
私は母の隣りに座ることにした
どうやら、竜斗の食事問題の会議を開いているぽい
「涼子、春樹君の食事作ってあげてくれないか?」父
「いいけど、春樹君本人が遠慮しちゃうでしょ?今日だって察して、上がらず帰ってるし」
上がってたら大変だったんすけど
「うーん」父、母
「じゃあお金取れば?月六より安くやれば問題ないじゃん」姉
「まぁ、そうだな、それもいい」父
「そうね、それだと、建前はビジネスになるから、春樹君も遠慮しないで済むか…」母
「でも、そうなると私はプレッシャーよね、必ず作らないといけないじゃない?私だった用事あって無理な時はあるわよ、それにお弁当はどうするの?作るの?それともお弁当は全く無し?なんか色々線引きが大変じゃないかしら?」母
確かに
「うーん」父、母
「じゃあさ、チケット制にしたら?」姉
「チケット制?」父、母、私
「そそ、例えばぁ、夕飯チケット一回五百円、お弁当チケット一回三百円、それを最初にある程度まとめて買ってもらうの、で、無くなったらまた買い足す!って感じ」
「おー、それはいいな!それなら涼子にも負担はかからない、出来る時にやってくれればいい、それだけでも春樹君の食生活はだいぶ良くなる」父
「そうね、それなら私も杏子のご飯のついで感覚で出来るからいいわね、でも…土日はいいとして、平日は遅くならない?今でさえ、けっこう遅いのに、春になったら更に遅くなるんでしょ?」
母が私を見てくる
「うん、みんなの話とトニーの話とか聞いてると、三月からは時間目一杯、しかもたまに平日でもナイターで練習試合するんだって」
「そうなると、うちでご飯食べたら何時に家着くのよ、しかもそれにジムとかも絡んでくるんでしょ?」母
「そうだな、ジムは最低でも週三は行く感じになる」父
「うちでの夕飯が逆に春樹君の負担にならない?」母
確かに
「うーん」父、母、私
「じゃあさ、遅くなった時はもう泊まらせちゃえ!お泊まりチケット五百円朝食無料!どよ」
とうとう力技に出てくる姉
「朝食無料って、東横インみたいね、フフフ」
コロコロ笑う母、機嫌良いな
「まずさ、基本的な話をしていい?」姉
「うん」
「いいわよ」
「基本?」
「竜ちゃんが、杏子の彼氏だから、お母さんが夕飯作ろうか?って話になってるわけね、だってそうでしょ?もし、杏子がなんとも思ってなかったら、杏子がかわいそうじゃない、毎晩年頃の好きでもない男がやってきて、夕飯一緒に食べなきゃいけない、これは可哀想だし、私が許さない」
「確かに」父、母、私
「でしょ?杏子の彼氏で将来有望な選手、もうめんどくせーから泊めちまえ!なにも障害ないんだから!で、良くない?」
力技が大好きな姉、そのメンタルを少し分けて欲しい
「それもそうだな、でも向こうの親御さんがなんて言うか」父
「あ、平気、今日竜斗のお母さんと会った、うちに泊まったの知ってたし、全然平気そうだった、あ!サーティワン冷凍庫に入ってるよ、そのお母さんからの差し入れ」
「なに!サーティワン!」
スクッと立ち上がる姉
「祥子〜まだ話終わってないから後にして」母
「はぁい」
「え?杏子?春樹君のお母さんと会ったの?」母
「え、うん、偶然、ジムでお金払いに来てたから声かけた」
「あらそう…杏子はやっぱりもってるわね」母
「え、春樹君、と、泊まったのか?」父
「そうよ、何か問題でも?ソファーで杏子と抱き合ってたけどね」母
「だ、抱き合って?」父
「うっさいオヤジ、そこ食いつくな」姉
やめてくれ、父には知られたくなかった
せめて、下着姿とチューして案件は頼むから言わないでくれ
「でも、毎回ソファーってのもねぇ…」母
「しょうがない、秀太の部屋少し空けるわ、荷物は引き続き置かしてもらうけど、私がベッド用意してボン置きするわ、まぁ元々秀太が帰国したら買ってやろうと思ってたから問題なし、この際だからアスリートに人気のベッド買ってやる!」
「お、お姉ちゃん」
「杏子、新しく用意したとか言わないでよ、竜ちゃん恐縮しちゃうから、懸賞で当たったとか言っておいて ププ」
ん?なに笑ってんだ?ま、いっか
「わかったぁ、お姉ちゃんありがとう」
「竜ちゃんにはとてつもない金の匂いがする、ベッド代なんて鼻くそみたいな金額がリターンしてきそうな気がする、投資よ投資」
さすが社長
「杏子、竜ちゃんがこの前、野球道具買うためにバイトしてるって言ってたけど、親からの援助は無理なの?」姉
「え!うん、それなんだけど…」
竜斗とお父さんの関係、野球道具買ってもらえなかった理由、んで、竜斗のお母さんと話をして解決した事を報告した
「だから、もう大丈夫、野球道具を買うためにバイトしなくて良くなったよ、良かった良かった」
「杏子!」姉
「え?」怒ってる?
「あんた、やっぱり凄えわ、本物だわ、よくやった!期待通り!」姉
「ん?あ、ありがとう」
んだよ、焦らすなよ、てか、期待通りってなんだよ
「あ!お父さん!竜斗がバット欲しいんだって、相談に乗ってあげて、今はチームのバット使ってるんだけど、しっくりきてないんだって」
「そうか、それであの飛距離か…」父
「うん、しかも、あのデビュー戦の最初の打席は緊張で間違えて、違う人のバット使っちゃったんだって」
「どえらいな」父
「マジかよ」姉
なぜ姉が反応するんだよ
「まぁわかった、任せておけ、ショップに連れてく、スパイクも作った方がいい、あの身体支えるんだから、スパイクも大事だぞ、春樹君に伝えといてくれ」父
「うん!お父さんありがとう!」
「あら、これなんか色々話まとまった感じ?」母
「そ、そうだな」父
「杏子、あなた達が別れたら、うちでの食事の話はオジャン、残ったチケットを回収して終わり、そう、あなた達の別れを私達は干渉しなければならない、その覚悟と責任はあるの?」姉
「ある!とゆうか、別れないもん!一緒のお墓入るんだもん!」
「でた、脳内チンチクリン」姉
「だから、チンチクリンってなに!」
「じゃあ決まりね〜サーティワン食ーべよっと」姉
「俺は来週からキャンプで沖縄行きだ、今週で話を決める」
「杏子!今週の土日のどっちでもいいから、春樹君と春樹君の親御さんをここに呼んでくれ!」
「う、うんわかった」
「よし!今度の土日どっちか!ここで!春樹家、星川家の今後の軍議を開く!みんないいな!」
「それ言いたかっただけでしょお父さん」
「フフフ」
「チンチクリン…ってなに?」
「あ、祥子は来るなよ、まずそこの説明が面倒くさくなる」父
「ふぁい」
「きょ、杏子抱き合ったって本当か?」父
「え!いや、寝ぼけてそうなっただけだよぉ、意識ないもん」
「だからうるせーつーのオヤジ!あんたらだって、今日時間場所考えずにヤッてんだろうがっ!」姉
へ?
「……」父
「ポッ」母
おいおいおいおい
姉がぶっ込んだよ
そっか、私が気づくんだもん、姉にも当然バレバレだよね
アホな両親
「ガハハハハハー」
「ポッ」
父のごまかしの笑いが我が家のリビングに響き渡る
にしても、母の料理サポートはでかい!
母は栄養士の資格を持っている、とゆうかそれ繋がりで、父と母は結婚してる
父のトレーニングサポート
母の料理サポート
姉のベッドとモデル受け皿サポート
兄のグローブサポート
私の愛のサポート、んと、あと愛のバッティングピッチャー!あと、んと、愛のノック!
とにかく!これで、竜斗を囲む星川家包囲網が完成する!
あれ、包囲しちゃだめか
星川家全員の後押しで竜斗を大海原へと送り出す!
って感じかな
本当に大きい世界へ行ってくれそうな気がする。
竜斗は、まだ公式戦出た事ないから気が早いかもしれない。
でも、きっと、きっと活躍してくれる。
私達のサポートがあれば、この規格外の選手は絶対に活躍してくれる。
竜斗、新幹線は、運転するんじゃなくて、一緒にグリーン車に乗ろうね。
グリーン車って…なに?




