祥子の思いと計画
「ふふふ、二人とも仲良く抱き合って寝ちゃってる」
「ねぇ祥子、ここまであなたの思い通り?」
「うーん、ちょっと違う、野球がやばいのは予想外」
そう、ゴー助の話では、春樹竜斗は補欠と聞いてた。
でも、この妹が私の予想を超えることをやってきた。
この若干15歳の妹が春樹竜斗を、私とは違う角度で目覚めさせた。
私は春樹竜斗のデビュー戦を見に行ってる
アンソニーと親父がうるせーから
とんでもない逸材が眠ってたとかうるせーから
しかもそれが、春樹竜斗
そりゃ見に行く
おもっっっっいきり変装して
試合の中盤頃には、バレてたぽいけど!
そのせいか私の周り、人増えたけど!
そんで、試合開始直後よ
いきなり、私が見てた後ろのベンチの屋根にホームランをぶち込んできた。
私は野球をやったことがない、でも、野球人の娘
これがやばすぎるのはわかる
なぜここまで飛んでくるのよ
後に、飛距離をアンソニーにザックリだけど計ってもらった。
130メートルを楽に越えてるって
アホか
体勢を崩されてるのに?
この方向に左バッターが?
高校生が?
ちなみに、ホームランボールを拾ったのは私
これが私に対するメッセージに受け取れる
俺を世に出してくれ、ビックにしてくれって
ボールを一年生ぽい部員が取りにきた
まあ、当然だ
高校野球はボール大事にするし、ましてやメモリアル
ダメ元でおねだりしてみた
「このボールいただきたいんですけど」
ダメだったら、万券チラつかせるか、サングラス外して葉山翔子パワーでもらう!
「え?そんなボールが欲しいんですか?どーぞどーぞ」
「え?大丈夫なの?怒られない?」
「あー大丈夫す、適当にごまかしとくんで、違うボール持って帰るんでいいすよ」
マジかよ、なかなかだなコイツ
「数合わなくならない?」
「お姉さん詳しいんすね、大丈夫す、うちの姐御はアホなんで、チョチョイでやっちゃいますから、じゃっ」
アホの姐御って、リナっちのことか…
バカだなぁ、リナっちはアホのフリしてるだけだぞ、私も感心するくらいのキレ者だぞ
てか、すげえな、あの適当メンタル、良いわ
将来、うちで欲しいわ
後で、リナっちに名前聞くべ
ま、そんなこんなでお宝ボールゲット
なんで、このボールを欲しがったか…
そりゃ、このボールを見て、将来今日を思い出すため
一丁やったるかな、二人のセット販売
にしても、杏子のあんな顔見たことないなぁ
しっかり惚れ込んでくれてるわ
予想以上に惚れ込んでくれてる
そして、春樹竜斗は最終回に完璧なホームランを打った
その飛距離を見て、私の夢物語が現地味を帯びてくる
てか、どんだけ飛ばすんだよ
ハマスタなら場外じゃねーのか?
んで、シメは101マイル
遠くからでもわかる、豪速球
遠くからでもわかる、制球力
アンソニーに、101マイルと聞いた時には唖然とした
そして、一気に私の中で壮大な脚本が浮かび上がってくる
あとは、桃鉄を終えて、ソファーで仲良く抱き合って寝落ちしてるこの二人の愛が本物かどうか…
いや、本物だわ
杏子のサポートを見ればわかる
リナっちの話や、さっきの竜ちゃんからの話を聞いてわかった
このサポートは愛の力が詰まってる
そこに真面目一直線の杏子の性格とマッチして、竜ちゃんを押し上げてる
竜ちゃんもそう、杏子を守るためなら、誰だろうと楯突く
こりゃ、本物
まだまだ、子供の二人だけど、本物
「でも、やっとこの二人付き合ったわね、まぁ、今日とは思わなかったけど、祥子は駆けつけて仕事大丈夫だったの?」
「いやさ、竜ちゃんが来るってなれば駆けつけるでしょ!この前、間に合わなかったんだから」
「ふふふ、カレーいっぱい食べさせて引っぱったんだけどね」
「本当だよ、でもよかった、こいつら途中から進まねーんだもん、焦ったわ」
「まぁ、高瀬さんとこのゴー助から高校の噂聞いてたから、どっかでぶち当たると思ってたけど、まぁ乗り越えてくれてよかったよ」
「ねぇ、祥子、野球バカの杏子がなんで春樹君のこと好きになるって思ったの?」
「えー内緒」
そう、その理由は母親にも言えない、リナっちやゴー助にも
それは、私が惚れそう、いや、惚れたから
あの日を思い出す。
「翔子、こんどの五話のシーンの相手の高校生、私の知り合いだからよろしくね」
「え?コネ?ちょっと、弘美さん、いいんすか、それ?」
「ふふ、息子の同級生で、同じ野球部、甘い顔してるわよ、それにいい演技するのよぉ、もしよかったら、ほら、新しく立ち上げた事務所にいいんじゃない?私から見ても将来有望よ、あ、私ノータッチ、やまぎっちゃん使ってね」
「えー」
まぁ、弘美さんの頼みならしゃあない
てか、弘美さんがただのコネ回しするとは思えない
何か持ってるのかな
付きあってやるか
ゴー助の同級生だしな
撮影当日
顔合わせ
「春樹竜斗です、よろしくお願いします」
ズキューーーーーン!
やられた、マジやられた
どハマり
元カレとだぶる
あの大好きだった、元カレとだぶりまくり
芸能界にそこそこいる私だが…やられた
高校生に?
私、アラサー、一応なかなかの女優
マジかよ
そして撮影開始
「オペ疲れたー、帰り何食べよっかなー」
バタン
「ん?」
「おい!トモヒロ!大丈夫か!」
「診せて!」
「え?どなたですか?」
「安心して!私医者!状況教えて!」
「はい、診察待ってたんですけど、急にお腹をおさえて倒れちゃったんです!」
「わかった!」
「ちゃっとそこ!聴診器かして!」
「は、はい!」
「やばいな、ストレッチャー持ってきて!急いで!」
「ねえ、病院にはなんで来てたの?」
「はい、一緒に遊んでたら、こいつが急に腹痛いって言い出して、それで慌てて連れてきました」
「わかった、ありがとう」
「いえ、トモヒロやばいんですか?」
「大丈夫、ついてるよこの子、私の目の前で倒れたからね」
「でもまずいな、腹膜炎を起こしてる」
えっとぉ、一発オーケー
カメリハから、やべって思ってたけど、なんなの?
劇団員でもない、野球部員がなんで一発オーケーなんだよ!
なんなら、私だけ、顔繋がってないとか言われて撮り直しになったわ!
このルックスにこのスキル
そして、しっかりとした人間性は少しの間でもわかった
ゴー助にも後から聞いた、真面目で友達思いの良い奴だって
私は惚れた、でも無理
年齢差ではない、私は恋をする資格はない。
この私が惚れる
イコール、杏子はもっと惚れるんではないか
そして、この二人の恋はとてつもない事を成し遂げるのてはないか
歳は離れてるけど、私と杏子は似てる
だから思える、だって、私とあの人はアレさえなければ…
私のこの思い、杏子に賭けてみるか
これが、私の計画の始まり
元々、杏子を帰国するために動いてた
親父の仕事関係なく、私が面倒見るつもりだった。
高校に上がるタイミングで、芸能コースがある私学に入れるつもりだった
そう、杏子を女優に仕立てるために
ムカつくけど、コイツは私を抜いてくる
この整ってる顔がまずやばい、化粧させたら芸能受けが絶対に良い
そして、芯がある
たぶん大物になる
だけど、私が春樹竜斗と出会ってしまった
そこからは、二人セットに売り出す案が浮かんだ
桜水にとりあえず通わせて様子見るか…
だったのだが、そこに弘美さんから桜水の野球部の監督が助っ人を探してると聞いた。
そこで、親父をダシに使いアンソニーを杏子とセットで野球部にぶち込んだ
杏子はもちろん、親父もこの件は知らない
母を上手く使い誘導した
親父の事は信用してない、昔、家族のことを裏切ったことがあるから…
だから、親父には私が絡んでることを黙ってる
まぁ、とにかく、これで出会いの場は整えた
あとは、この二人がどう踊るか見守るつもりだった
恋愛を手助けするつもりはない、自然に恋が育んでくれないと意味がないし、この二人は作った恋愛は出来ない
だから、ダメだったら、各々別でプロデュースするだけ
からの
まさかの春樹竜斗、野球大化け
しかも、杏子のアシストで
そして、期待通り、二人は恋に落ちてくれた。
これで、最初の賭けに私は勝った
ポイントは春樹竜斗も杏子に惚れてくれるかどうかだった
でも、そこはなんとなく自信があった
そして惚れてくれた
なので私の勝ち、大勝ちだ
これはもう、やるしかないね
二人の将来が楽しみでしょうがない
「祥子はやはり女優ね、春樹君との共演のこと、忘れてたフリするなんて、上手かったわよ、あの演技」
「まぁね、ポスターからの流れに乗っただけだけどね」
そう、ポスター
なんで貼ってある?
そんなキャラには見えないんだけど…
ま、いっか
「祥子、明日も仕事?早いの?」
「いや、撮影無くなったのは本当だから、午後事務所行くだけ、でも、高瀬の弘美さんとこ寄ってから行くから、早めに出るよ、色々用意しておくから、お母さん、竜ちゃんに渡しといて」
「わかったわ」
リナっちにお礼しないとな
杏子と友達になってくれて、杏子の初めての恋をアシストしてくれてるからね、リナっちいなかったらやばかったかもしれない
それにリナっちとゴー助は、私との繋がりを杏子や周りにしっかり伏せてくれてる
リナっちはたまに知らないフリして遊んでるみたいだけどな
フェンディと下駄箱の件はウケたわ
ククク、懸賞って…
アホか
ま、あいつら二人には感謝感謝
なんか美味いもんでも食わしてやるかな
さてと、まずは外堀埋めるか
竜ちゃんの退路を断つ
今度は親父を上手く使って、母親には食事で協力してもらおう
星川家で全面バックアップすれば、竜ちゃんは簡単に野球を辞めれない
ウシシシシ
そう、辞めてもらっては困る
それこそ、新幹線の運転手になられたら、私の壮大な計画は終わる。
もし頑張っても野球だめだったら、なんとか俳優の道に誘導する
でも、この春樹竜斗だったら、杏子と私のアシストがあれば、野球も俳優も両方出来ちゃうかもしれない
いや、出来る
出来るよ
まずは、二人とも高校野球頑張れ。
本当の夢物語は高校野球のあと
私が本気を出すのは高校野球のあと
それまでは、青春を楽しめ。




