恋の壁
明けて月曜日
昨日は、疲れが残ってたので、考える暇もなく
チーン
寝てしまった
からの、ホームルーム前の貴重なグッタリタイムを返上して考える。
って、あ、あー!また竜斗に連絡先聞くの忘れたぁ
リストバンドに浮かれて忘れた
てかさー、これって、私から聞くの?
昨日あんなことあったんだからさ
「杏子、今後また危ないめにあわないか俺、俺心配だから連絡先教えてくれ!杏子!杏子!愛してる!」
とかないわけ?
もう!
それはさておき
昨日、学校に戻ったあと、竜斗からみんなに説明があった。
私が囲まれたのはまた別の話として
注目は工藤さんが、試合を見に来てたことだ
純粋に未練があるのか、それともなにかやらかしてぶち壊したかったのか
みんな、それぞれ意見が出る中
竜斗が
「ゴー、これからカゲさんとこ行くから付き合ってくれ!もう大人を介入させないと無理だ、言い方悪いが先生達はアテにならない、工藤が一番堪える方法で解決する!」
「純粋に見に来てるだけならいいけど、こればっかりはわからない、先手打つ!今後誰かを傷つけたくない」
竜斗は、工藤さんがやる悪さは全部自分のせいだと思っている。
「わかった、そだな、目黒の車屋か、行くか」
カゲさんとは、工藤さんのお父さんのこと
このカゲさんが、竜斗と工藤さんを子供の頃にプロ野球の観戦に連れて行き、そこで感動した竜斗と工藤さんが同時期に野球を始めてる。
そのお父さんを使って、工藤さんを牽制するとのことだ
ゴー君の話だと、めっちゃ怖い、とゆうかコワモテらしい
どっからどう見ても反社だって言ってる。
逆に見てみたいわ
「私も行く!」
反社を見てみたいだけじゃない、どうなるのかをこの目で見たいからだ
「ダメ、ゴーと二人で行く」
あ、これだめなやつだ
最近、わかるようになった
このキッパリ顔の時は何言ってもだめだ
諦める
って昨日の流れ
なので、工藤さんの話はもう私がどう思案してもしょうがない
ただ、気になることがある
そう、過去に竜斗と工藤さんに何があったのかだ
二人は中学時代に事件を起こしてるのは、私もわかってる
しかし、その事件の内容を私は知らない
他の野球部員はみんな知ってる、桜水ラインじゃない人もリナさんも
もしかしたら、野球部だけじゃなくて桜水高校全体的に知れ渡ってるかも
それが、竜斗がなぜ学校内ではモテないのか案件とリンクしてる気がする。
野球部の人達は、私に隠してるわけではなく、根本的に、口にしてはいけない、タブーに触れてはいけないって感じ
気になる、知りたい
好きな人の秘密を私だけ知らないとか、ありえない気がする。
もしかしたら今後、竜斗自身の口から聞けるかもしれない
でも、それはいつだ
待てない
竜斗に直接こっちから聞いちゃう?
いや、どうかなぁ、私から聞くのはなんか違う気がする。
昨日のキッパリ断られたのもあるし
もう少し時間が必要かな
野球部員の人はアテにならないからなぁ
頼みのリナさん?
リナさんはたぶん教えてくれる、でもリナさんはゴー君からのまた聞き、知ってても、完璧に内容は知らない。
それだと、なんか不完全燃焼
桜水中学出身でその場に居合わせてる人から話が聞きたい!
そうなると絞られてきちゃうんだよなぁ
うーん、うーん…んん!
あ!そうだ!
ある作戦を思いついた!
ナイスアイディア!
ちょっと背伸びして演技しないと、相手は手強そうだ
「なんだよ朝から、考え事してると思ったら、急に上向いたり、忙しいやつだな、気持ち悪い」
は?
横の猿くんだ
てかお前、その気持ち悪いって言う口癖やめろ!
「あー、ごめんねー、私忙しい人だから、気にしないでー」
嫌味女ギリギリのラインを攻める
「ふぅーん、まぁいいけど」
いいならチャチャ入れるな
ってあれ、この猿君、そういえばキャッチボール誘ってこないな
社交辞令?
そんな感じではなかったんだけどな
ま、いっか、私は竜斗と指切りゲンマンしてるからキャッチボール出来ませーん
ん?そういえば、私の通訳ネタも黙っててくれてるみたいだ、お連れのなんだっけ、名前忘れたけどあの人もだ
誰にもつっこまれないもん
口は悪いけど良い奴だ!
「なんだよ、人のことジロジロ見て気持ち悪い、まだなんかあるのか?」
「ねーよ!」
あ、やば、つい心の中の声が出ちゃった
中学では優等生で通ってるはずなのに
「お、おう、そそうか」
猿君焦る
ウケる
あれ、なんかみんなに注目されてる
あれ、清水先生来てたわ
サーセン
ボロが出る前に早く卒業したい
勝負に打ってでる!
清水先生を放課後呼び出した!
そう!作戦とは清水先生とのリターンマッチだ!
この前呼び出されたので、逆に今度は私が呼び出した!
会議室?貴賓室?
いつものお部屋で、清水先生とテーブルを挟んで対面に座る
よし頑張るぞ
「なぁに?話って?」
「はい、今日は時間を取っていただきありがとうございます、まずはお座りください」
「座ってるわよ」
「あ、はい」
やっちった、出鼻自分で折った、落ち着け落ち着け
今日はポンコツ変態娘の星川杏子ではない!
今日は、えっとそうだな生徒会長星川杏子!
いや違う、うーんと謎解き探偵星川杏子!
謎解きは放課後のあとで!
なんか、違う
雰囲気作りで眼鏡持ってくればよかったかも
「どうしたの?」
清水先生が不思議そうな顔してる
「あ、はい、では、いきます」
「先生、この前私に色々質問されましたよね?」
「質問?そうねぇ、そうなるかしら」
「今日その質問に答えます!まず!」
「はい、どうぞ」
「春樹さんの事ですが、私は春樹さんの事が好きです、お互いい雰囲気なので、近々交際に発展すると思います」
ん?この言い回し合ってるかな
「わかりました、お二人お似合いなので良いと思いますよ」
「あざす!」
「それはさておき、工藤さんの事です!」
「え?はい、どうぞ」
私が体験したり知ってる事を、昨日の分まで含めて全て清水先生に報告した
「以上です」
「ふぅ、工藤君もみんなに迷惑かけて困ったものねぇ、話してくれてありがとう星川さん」
「いえ、それで先生!」
「春樹さんと工藤さん、何があったんですか?今の話を推測すると中学時代に二人は何かトラブルを起こしてると思います、先生はもちろん知ってますよね?教えてください!」
「え?星川さん、それは無理な相談よ、私からは説明出来ません、知りたかったら春樹君本人から聞きなさい」
うん、そうくると思った、想定内
「なんでですか先生、教えてください、春樹さん本人からではなく、第三者の客観的な話を聞きたいんです」
「だめよ、星川さんわかって、私には教員とゆう立場があるの、そんな簡単に他の教え子達の話をするわけにはいかないわ」
「じゃあ先生、先生は先生とゆう立場を使って、放課後の貴重な時間を私から奪い、呼び出し、私から話を聞き出そうとしましたよね?」
「まぁ、それはそうだけど」
「私は、一度は知らないフリをしました、春樹さんの事もごまかしてました、でも私は先生に嘘はまずいなと思い返して、今日正直にお話をさせていただきました、なので私は生徒として筋は通してます」
「………」
黙り込む清水先生
「なので、先生、今度は先生が筋を通してください、工藤さんの事に関して、私の質問に答えてください、先生は聞けて、生徒からはダメ、なのであれば、最初から私を呼び出さないでほしかったです」
「それはそうかもだけど、星川さんそれはちょっと強引過ぎない?」
「そうですか、じゃあ先生は工藤さん達の話を聞いて何がしたかったんですか?」
「え?」
「先生は春樹さんと工藤さんとはもう関係ありませんよね?あの二人がもし今後またトラブルを起こしても、それは高校の先生が動くことであって、中学教諭の清水先生はなにも出来ませんよね?」
「それはそうだけど」
「だとしたら、先生は興味本位で私に聞いたってことですよね?」
「そ、それは…」
「先生の興味本位で私を呼び出し、話を聞く、でも私の興味本位の質問は先生だからと、突っぱねる、これ、おかしくありませんか?興味本位の時点で先生とか生徒とか関係ありませんよね?」
「……」
「先生、お願いします、私どうしても知りたいんです、野球人として今後の春樹さんに凄い期待してます、それを工藤さんに邪魔されたくないんです、私が過去を知ってればトラブルを未然に防げるかもしれません、恋人としては春樹さん本人から話をしてくれるのを待ちます」
これが私の本音ってところね
「先生は知らないと思うんですけど、春樹さんは今やばいくらい凄いんです!もしかしたらとんでもない選手になるかもしれないんです!それを邪魔されたくないんです!」
「そうね、春樹君の活躍は私もここの野球部の生徒から聞いたわ、みんな春樹君のこと慕ってるから」
「もちろん清水先生から聞いたとは絶対に他言しません!教えてください、よろしくお願いします」
ペコリ
「わ、わかったわ、星川さん、もしかして恋人としてのあなたは少し聞きたくない話もあるけど大丈夫?」
なに?
「だ、大丈夫です」ゴクリ
「わかりました、どうせこの話は有名、私が話さなくても、そのうち星川さんの耳に入ると思う、間違って星川さんに伝わるよりはちゃんと私から説明するわ」
そう、そうなの、間違った情報はいらないの
「でも、星川さん、やはり私にも立場があるの、もし私が星川さんにリークしたことが誰かしらに知られてしまうと責任が問われる、本当に他言無用は守れる?」
「はい、もちろんです」
「私は担任としてではなく、春樹君を知る私と、同じく春樹君を知る星川さんとの共通の知人としてお話させてもらう、なので、もし、星川さんが約束を破るのであれば、私は星川さんを知人として恨みます、覚悟はいいですか?」
さすが先生だわ、しっかり詰めてきた
「はい、わかりました」
「じゃあ、ちょっと待ってね」
先生がすくっと立ち上がる
「お茶でいい?冷たい麦茶もあるけど」
「あ、じゃあ麦茶でお願いします」
これは、話が長くなるって事だ
どんとこい
「さぁ、どこから話そうかしら…そうね、星川さんも覚悟出来てると思うから最初からキッチリ話すわね」
「はい、お願いします」
「春樹君が中二の時は、私が担任だったの、それでそうね夏休み終わった位かな、同じクラスの女の子とお付き合いが始まったの、そう、両方とも私が受け持つクラスの二人」
わっ、いきなりヘビーなのきた
「春樹君は星川さんも知ってると思うけど、優しくて友達思いでね、そして真面目な子、顔はちょっと今よりかわいい感じだったわ」
今よりかわいい?超見たい
「それでね、相手の子は優しいおっとりした感じの子で、二人はお似合いって感じ…」
私をチラッと見て顔色伺う先生
嫉妬心を押し殺してポーカーフェイスを貫く!
「中学二年生、普通ならみんな冷やかすけど、そんなのほとんどなかったわね、みんなそっとしておいてたの、それだけお似合いだったのかな?私達教員は噂話とかで誰と誰がお付き合いしてるって、情報得るんだけど、それがなかったから知ったのはけっこう後ね、二人で仲良く帰ったりするの見て知った感じ」
えっと、この件いるのかな?
イライラするだけなんですけど
大人ぶって小さくうなずきながら聞くけどね
「事件が起きたのは、私の担任から外れて三年生の時、三年生になってすぐの話」
「春樹君の野球部の試合があってね、その試合にお付き合いしてた女の子が友達二人誘って見に行ったの」
もしかしてそれは、やっちゃいけないことやってる
「でも、春樹君は試合に出てなかったの、控え選手だったの」
うわ、やっぱり、最悪だ
「春樹君は、運動神経抜群でね、足も早いし、水泳は二年生の時点でかなりの記録出してたの、だからその女の子、てっきりレギュラーだと思ったのね、私も後から控え選手って聞いてビックリした」
それはわかる、私もビックリした
「春樹君もかわいそうだけど、その女の子も二人友達連れて行ってたから…やっぱりお互い恥ずかしかったのかな、そこまで順調だった交際が、おかしくなってきてね」
「今思うと、そこで春樹君が格差感じたのかなぁ、相手の女の子はバレー部のキャプテンだったからね」
え、バレー部…ふぅーん…
「ただこの話には、裏もあってね、工藤君がわざと試合に出さなかったの」
「え?、どうゆうことですか?」
「春樹君や工藤君の代が三年生に上がるタイミングでそれまで野球部の顧問をしてた先生が移動になったの、で、新しく顧問になったのは全く野球を知らない先生、その先生わからないから工藤君に丸投げしちゃってね、工藤君が監督の代わりしてたみたいなの」
「うわ、最悪ですね」
あ、つい出ちゃった
「そう、その先生は事件後、移動になっちゃったけどね」
「で、試合の時に野球部のみんなが、春樹君を出してやれって工藤君に言ったのよ、私は野球のことよくわからないけど、守備と走塁は上手いから出してやれって」
「でも、工藤君は出さなかった、みんなの話を聞くと工藤君はその子のこと好きだったらしいわね、それで逆恨み」
うわー、ほんと酷い
「それから、しばらくしてギクシャクしてた交際の方も時間が解決してきたのか、元に戻り始めてね」
「その時ね、工藤君が春樹君のことからかい始めて、春樹は女呼んでるくせに、試合出れなかったって」
ほんとゴミだ
「で、とうとう春樹君怒っちゃって、退部届け出したの、理由はいつでも工藤君をぶん殴れるように、ってはっきり言ったらしいの」
「先生達はそれを聞いて、警戒はしてた、工藤君にも注意した、でもその注意が余計に工藤君を逆撫でしたの、やれるもんならやってみろ的な感じで、そして事件は起こってしまった」
「工藤君が休み時間中に、わざわざその相手の女の子のクラスに行ってね、その子に、お前!自分より背が低くて補欠のやつと付き合って恥ずかしくないのか?しかも試合に見にきたのにハル出てないとかマジで笑えるわ!って今度はその子のことからかったの」
「そしたら、その子泣いちゃってね、しかも学校少し休んじゃって」
それは酷い、酷すぎる…ん?
「え、春樹さんの方が背が低い?ってことですか?」
「そう、この前春樹君と合ってビックリしたけど、今より全然低かったの、で、相手の子はさっきも言った通りバレー部のキャプテンだから、身長はけっこう高い方だったの」
なるほどぉ…なんだこのモヤモヤは
「で、その後、春樹君がその話を聞いちゃってね、授業中にも関わらず、教室飛び出して工藤君の教室に乗り込んだの」
ゴクリ
「もう、そこからは大変、春樹君が怒り狂ってボッコボコ、工藤君も応戦したんだけど、全然かなわなかった、私は隣のクラスで授業してたんだけど、悲鳴が聞こえて慌てて見に行った時、止めに入ろうとしてるそのクラスの授業をしてた先生に向かって机投げてたの、その先生は野球部の顧問、恨みもあったのかしらね、その先生は幸いケガはなかったけど、座り込んじゃってね、恥ずかしいけど私も怖くて動けないでいた」
「現場は壮絶、大変な騒ぎ、その後、戦意を失ってる工藤君を廊下に連れて行って今度は蹴りまくって、そのまま廊下の窓を開けて三階から突き落とそうとしたの、さすがに私と高瀬君で止めに入った、高瀬君は知ってるわよね?」
「はい、よく知ってます」ゴー君のことだ
「そこで、他の先生達も駆けつけて、春樹君を取り押さえてなんとか収まったの」
「工藤君は、鼻が折れて、前歯が二本なくなり、アバラ骨も折ったって聞いたわ、春樹君は殴った時に手の甲を二本折ってる」
あ、リナさんが突き飛ばされた時に聞いたやつだ
「当然警察沙汰になると思ったんだけど、工藤君のお父さんが事件を聞いてすっ飛んできて、事情を話したら、うちの息子悪いっていい始めて、そのうち春樹君のお母さんも来て、双方話あって、子供の喧嘩って事で処理したの、二人とも小学校からの付き合いだから、親御さん同士も仲良くてね、話は上手くまとまって、学校側もほっとしてたの」
「でも、事態は更に悪化するのよ、今度は工藤君が学校のみんなからバカにされるようになってね、工藤君けっこう威張ってたみたいで、それでみんなの前で春樹君にやられちゃったから、なんだコイツみたいになって、下級生にまでバカにされちゃって、結局工藤君も野球部やめちゃったのよ」
「でも、それは自業自得ですよね」
いい気味だ
「そうなんだけど、結局工藤君の矛先がまた春樹君に向いちゃってね、あろうことか他の中学のちょっと悪そうな連中三人に、春樹君がお前らのことバカにしてるとか、大嘘言っちゃったのよ、それで三人が怒っちゃって春樹君を襲ったの、しかも工藤君がその三人にお金を払ってたとも聞いてるわ、でねさすがに春樹君も三人には勝てなくて、次の日ボロボロで学校に来たの、春樹君は誰にやられたとかなんも言わないから、こちらも動けなくてね」
もう酷すぎる、でもそれと同時にさっきのモヤモヤが消えない
「そしたら、今度は春樹君がその三人を襲ったの、その相手の学校で待ち伏せして、一人見つけるとあとを尾行して、やっつけたら、その相手から残りの人達を一人づつ呼び出させてね、三人とも自分がやられた倍以上にやっつけたの、ただ相手も黙ってはいない、その学校けっこう荒れてたから、でもね、その中のリーダーが春樹君の幼なじみでね、水泳と公文が一緒だったかな、その幼なじみの子が話をまとめて、工藤君にみんな騙されてたって気がついたの」
「それで、その揉め事は喧嘩両成敗っことで、話は終わったの」
あ、それって、カズヤさんのことだ、間違いない、じゃあ、あの謎の敬語の三人が?いや、そこは初対面ぽかった
「星川さんもわかってると思うけど、春樹君はね、普段は決して暴力的でないの、ただ怒らせてはいけないタイプ、でもね、そう簡単には怒る人でもないの、だからあそこまで怒らせた工藤君が悪いと思っててね、だけど報復に走った春樹君、ヤケになってたのかなぁ」
「でもね、相手が今度、工藤君を狙って学校に来ちゃったのよ、それでその件の内容を私達は知る事になったんだけど、学校内は大騒ぎ、だけど今度は春樹君が話をつけてなんとかなったの」
「おそらく、工藤君の事よりも関係ない人が巻き込まれるかもって心配しての行動ね」
「ただ、学校側が他校との揉め事は重く受け止めてね、工藤君に厳重注意と春樹君にかかわらない、それから受験も控えてたから、春樹君とは同じ学校には受験させないって結論を出したの」
なるほど、でも
「でも、工藤さんは結局春樹さんと同じ学校になってしまってますよね、しかも同じ野球部」
「そう、卒業して別々の学校に進学したからほっとしてたんだけど、入学して三ヶ月くらいかな工藤君の高校から電話があって、イジメにあったからこの学校をやめて特例で桜水高校に編入が決まりましたって」
うわー
「一応その高校に、なんで桜水なんですか?って問い合わせたの、そしたら受け入れが桜水しかないってことだった、今は編入の受け入れが寛容の学校が少ないのよ」
確かに、私の編入も選べる都立高校は少なかった
そして、桜水は立ち位置がめんどくさい帰国子女の私を受け入れてくれてる
「工藤君が桜水編入になった話を聞いて、事件を知ってる私達教員は愕然としたわ、しかしもう卒業してしまってるので、私達は何も出来ない、だから、そこから、野球部に入るまでの道のりは私にもわからない、その辺は違う人に聞いてちょうだい、でも噂によると、イジメられたのは本当らしいけど、必要以上に騒いで、編入をもぎ取ったって聞いたわ」
なるほど全て繋がった!
しかし壮絶すぎる!
でも、ある意味想定内
竜斗が怒ると怖いのは私自身経験済み
「有名な話」になるくらいだから、それなりの案件なのは覚悟してた
それに、全て工藤さんが悪い、酷すぎる、怒って当たり前、もちろん竜斗はやり過ぎだ、でも、そこまで怒る気持ちもわかる
先生の言う通り、普段は暴力的ではないのもわかっている、肩がぶつかっただの、ガンの飛ばし合い?とかで喧嘩に発展する人ではない、簡単に言えば工藤さんさえいなければ喧嘩などすることなく人生を歩めたと思う
他校の三人を相手の復讐劇も結局は工藤さんが引き金、確かにヤケになってなければ、復讐はせず大人に届けてたかもしれない
ん、ヤケになって?なんでヤケになった?あ、彼女と別れることになったから?かな?
「先生、結局春樹さんとその彼女はその事件をきっかけに別れちゃったんですか?」
「うーん、そこら辺は少し分かりかねるけど、その事件を機に自然消滅みたいになったようなことは聞いたわ」
自然消滅かぁ、ヤケになったのは、春樹さんがこんな事件を起こしてしまい、彼女と気まずくなる、付き合いを続けることは困難、それでヤケになってが正解かなぁ
それだけ、春樹さんはその彼女の事が好きだったんだな
嫉妬するけど過去の事、逆にこの人は好きになったら真っ直ぐなんだな、って思う
「でも、その彼女も相当傷ついたんでしょうね」
「それがね、その子は少し落ち込んでたけど、すぐ立ち直って、バレーボールで活躍したのよ」
さすが、女は立ち直りが早い、よかったよかった
「バレーボールの名門とか、あちこちから推薦がきたの」
それは素晴らしい!
「でもね、事情はわからないんだけど、春樹君と同じ桜水高校に進学したのよねぇ」
ふぅーん…え?ええ?ちょっと待った!え?
先生ぶっ込んできた
しかも、自分のぶっ込みに気づいてない先生
いや、そんなのはどうでもいい
えっ、桜水高校?元カノが同じ高校にいるってこと?
しかも、キツイ別れ方した元カノが?一緒?
ドクンドクン
人生で初めて聞こえる胸の鼓動
手汗が出てきてる
ある事に気づいたからだ
さっきからのモヤモヤの原因がわかってきた
身長が高い、優しくておっとり
もしかして、はづき一派のあの人か
いや、確かあの人はバスケ部…
違う!私が勝手にそう予想しただけだ!
胸の高鳴りがグングン増していく
「先生、その人って…もしかしてオノマリ…小野真理子さん?」
違うと言ってください!頼む!
「あら、星川さん、よく知ってるわね、そうよ小野さんよ」
ガーン
頭の中が真っ白になった
本当に真っ白になるんだな、初めての経験
本当に真っ白
そのあとの先生との会話が全然入ってこない
もう、工藤さんなんてどうでも良くなった
「じゃ、この辺にしときましょうか、スッキリしたかしら?」
この先生はなかなかの天然だ、私の変化とやられ具合に気づいてない
「あ、はい、ありがとうございました」
残ってた麦茶を飲み干す
全然味しない
「失礼します」
下校する、途方にくれて歩く私
もしかしたら泣いてるかもしれない
それすらわからない
途中、チャリンコおばさんに轢かれそうになった
「危ないわね!どこ見て歩いてんの!」
と、言われたのでそっちを向くと逃げるように消えてった
相当酷い顔をしてるのだろう
帰宅
リュックをズルズルと引きづりながら部屋にイン
リュックをぶん投げる気力もないので、その辺にコトっと置く
そして、そのまま倒れるようにベットにダイブ
うつ伏せのまま、顔を横に向ける
パンドラの箱をサクッと開けてしまった感覚が頭の中を支配する
整理してみる
まず、竜斗とオノマリさんの関係だ
今は何もないのは分かる
竜斗は、私のことを好きでいてくれてる!そこは自信もてる
もし、これであの二人の関係が続いているならば、立派な二股だ!
でも、羽堂さんじゃあるまいし、竜斗はそんなこと出来ない、そうゆう人だから私は好きになった
じゃあ、オノマリさんは…
そう、ここが問題なんだ
たぶん今でも全然好きだと思う
推薦蹴ってまで同じ高校にくる、そしてあのデビュー戦の時に会ったときの私への眼差し、間違いなく好きなはず
私、せっかくここまで我慢したのに、この子に春樹取られちゃうの?みたいな心配な眼差しだ
あの時はそうは思わなかったが、話を聞くとそんな解釈ができる
竜斗の活躍を一番喜んだのが、オノマリさんかもしれない、中学の時の苦い思い出を払拭するような活躍だ
そこから、なぁ〜んにも知らない私がサクッと奪っていくのはどうだろうか
なぁーんにも知らずに竜斗にのぼせ上がってた私はホントお花畑屋さんだ
伝説的な別れをした元カノ捕まえて、上から目線で、コイツ竜斗の事好きかも、でも私のもんだもんねーみたいなアホさ加減
ホント馬鹿らしくなってきた
あ!これだ、竜斗が学校ではモテない案件
こんなの聞いたら、竜斗の事を好きになってはいけないってみんな思うんだ
そう、知ってりゃ遠慮するんだ、それに、例え好きになったとしても、いつその伝説的な別れをした恋が復活するかもしれないと、ビクビクしなくてはいけない
なんか、納得
んで、確か、竜斗の代は歴史的な数の桜水ラインが出た世代だって竜斗が言ってた
ってことは、高校に入ってすぐに噂は回ったのは推測出来る
なるほど、これで高校入って彼女が出来たことない、告白されたことないが、うなずける
この話、聞かなければよかったのかな
いや、付き合う前に聞いてよかった、今ならまだ竜斗から、ただスッと身を引けばいい
でも、私はどうしたいんだろう…どうするべきなんだろう
これを聞いて、このまま思いが冷えていくのかな
………
そんなわけない
これを聞いても全然好きだ、好きで好きでたまらない
だからこんなに落ち込むんだ
もっと、最悪なことも考えてしまう
高校内では、恋愛面で浮いてしまってる竜斗
彼女欲しくても出来ない、そこになんにも知らない半分部外者の私が色目を使ってきた、これはチャンスとばかりに私に近寄ってきた
ってことも考えられる
竜斗に限って、そんなことないと思う、思いたい、けど、その辺は私の勝手な美化で、本音はそこかもしれない
だってまだ、出会って一か月ちょい
全部わかってると思う方がおかしい
全然頭ん中ぐちゃぐちゃ
とりあえず、今日明日は野球部が休み
それだけが、私にとっての救いだ
連絡先聞かないでよかった
それと、今は会いたくない
竜斗が悪いわけじゃない、元カノの話なんて普通する必要ない、そこに勝手に踏み込んで、勝手に落ち込んでる私が悪い
会いたくないのは、どう接していいかわからないから
私の本音は、そんなの関係なく突っ走りたい
でも、そうするにはそれなりの勇気と覚悟が必要な気がしてならない、それに耐えられるのか…
それとも、これはだだの嫉妬で、元カノと同じ学校に通ってるのが許せないだけか?
もうわかんない
気づくと、フラれてもないのに涙が出てきた
ここまで、順調に恋を育んできた私
しかし!ここにきて大きい壁にぶち当たった
この壁は越える事が出来るの?
この壁は越えていいの?
この壁は越えない方がいいの?
教えて神様
私はどうしたらいいの?
『大丈夫ハルを信じて』




