はづきの詰め
「ありがとうございましたー!」
両チーム、シメの挨拶を完了して試合終了
春樹竜斗デビュー戦は
春樹劇場と化し終演を迎えた。
12ー4で快勝
練習試合とはいえ、やはり勝つと嬉しい。
プチスタンドにもお礼の挨拶をしたら、拍手を送ってもらった。
お疲れ様の拍手とゆうよりは、今後の期待の意味合いが強い、みんなそんな表情に見える。
学校創設以来、一番の甲子園チャンスかも知れない、しかも廃部前のラストチャンス!
偶然が重なり、レベルが高い選手が集まっている。
しかも、育成のプロがコーチとして来ている。
あとなんといっても、竜斗だ
補欠計算の選手が、大化けした。
大化けどころの騒ぎではない、強豪私立のエースと四番が転校してきた!と言っても過言ではない。
本当に、名取監督はトニーにオファーして良かったと思う。
トニーと…そうね私!私がいなければ竜斗の覚醒は見れなかった!エヘン
名取監督は、父の最初の言葉通り、育成下手
下手とゆうか、自由主義、あまりとやかく言わないで、あとは自慢の勘ピューターで選手起用していく感じ。
これだと、アピールが下手な選手はまず試合に出れないし、自由にさせるのはいいが、間違った練習方法をさせてしまうリスクもある。
それに、普段から選手をしっかり見てないが故に、工藤さんに簡単に騙される。
まぁ、今更だから、そこについてはもういい、この野球部は余命あと一年もない、トニーが来たんだから、あとは振り返らず前に進むしかない。
ただ、名取監督は試合が始まってしまえば、作戦面は上手い、今日はなかなかの名将だったね
トニーも、その辺はリスペクトしてる。
有望な選手、試合だけ名将、外人コーチ、力を合わせて頑張れば夢ではないと思った。
挨拶が終わると、トニーが竜斗を呼んだ。
「ハルキ、今日のパフォーマンスは素晴らしかったオメデトウ」
「ありがとうございます、アンソニーさんと杏子さんのおかげです」
えへ、ちょっと照れるね
「ハルキ、パワー解放のピッチングは来年の春まで一切しないプランでいく、今まで通りこのキョーコと投球練習をしてくれ」
そうなんだぁ、なんかもったいない
まぁ、今まで通り夫婦の共同作業が出来るのはうれしいけどね
「はい!わかりました!」
即答で竜斗が返す
普通なら「なんでですか?」とか聞いてきそうだが、
竜斗はトニーを信頼しきっている。
あなたが言うならオーケーです!って目をしながら答えてた。
トニーとの話も終わると
「麦茶とお茶用意したからよかったらどーぞ」
名取監督がギャラリーに向かって呼びかける。
いつもの恒例のことなのか、慣れた感じでギャラリーのみんながグラウンドのバックネット前に設けられた、ドリンクコーナーに集まって来た。
トニーもドリンクを取りに向かった
麦茶とか緑茶飲めんの?
と、思ってると
「ねえ」
ん?竜斗が呼びかけてきた
「付き合って」
は?へ?いきなり?
変な声、出る暇なかった
「もももももももちのロンです!オーケーです!喜んで!はい!」
そりゃあんた!こんなところでいきなり言われりゃ慌てる
「おっし、ここはみんないるから、じゃあブルペン脇に行こう」
は?え?チューのこと?え?なんか積極的!悪くないけど!
「ででででも、ブルペンやきでも、みみみ見えちゃうよ」
やべっ噛んだ、ブルペン焼きってなんだよ、なんか美味しそう
「ん?何言ってんの?ほら早く行こう、あ、そこのボール持って来てね」
ん?ん?ん?なぜボール?
グローブを持って、ブルペン焼きに小走りに向かう竜斗
あ、これあれだわ、クールダウンに付き合えの 「付き合って」だわ
アホすぎて、恥ずかしくもないわ
どうせポンカスですから
バッグからミットを取り出し追いかける
軽めのキャッチボール
なんか、一人興奮して残念だったけど
今日は竜斗とキャッチボール出来ないと思ってたから、それはそれで嬉しい
今日の余韻を楽しむかのように、そしてフォームをチェックしながら、軽く笑顔で綺麗に投げてくる。
私も、それに答えるかのように少し笑顔で投げ返す。
みんなはドリンクバーにいるので、ここだけは異世界みたいだ。
クールダウンのキャッチボールも終わる頃に、コバさんがアイシングパッドを持ってきてくれた。
肩と肘にはめるやーつ
「コバ、サンキュー!その辺にぶん投げといて」
ふふ、私のぶん投げワード使ってる
コバさんは、ブルペンのフェンスの前にある木の足掛けにポイっとして、ドリンクバーに戻って行った。
コバさんなりのぶん投げかしら?
竜斗は、木の足掛けにぶん投げてあるアイシングパッドを拾い、装着しようとする。
ん?あれ、固まってる
「春樹さん、もしかして付け方わからないんですか?」
「うん、付けたことないから」
「なるほど、じゃあそこに座ってください」
足掛けをベンチ代わりにして座ってもらう
付けてあげるのに立ったままだと、届かない
「私が付けてあげますね」
「わ、マジか!ありがとう」
この時ばっかりは父に感謝だ
コンディションニングコーチの父をもつと、アイシングパッドなんて子供の頃から知ってますわ
「じゃあ脱いでください」
するとガバッと上半身一気に脱いだ!
わお!意外と早く拝めた!
素晴らしい上半身!
この顔にこの上半身!
筋肉好きではない私だが、ウットリする、興奮する!
じゃねーわ
「ちょ、ちょっ春樹さん!ユニフォームだけ脱げばいいんですよ!アンダーシャツの上から付けますから!」
ガッツリガン見したくせに、一応手で顔を隠して恥ずかしがってみる
「え?そうなの?ごめんごめん」
と、言って、アンダーシャツだけ着る
「じゃ、付けますねえ」
付ける際に手が誤って竜斗の両サイドの胸筋の間、ようは胸の真ん中にあるくぼみに、軽くだが私の手が垂直に突いてしまった
「ふわ〜〜、ちょっダメ」
なんか、竜斗が力ない声を出してくる
ん?どした、ちょっと触っただけだぞ
「俺、そこだめ、胸のくぼみ触られるとダメなんだよ、特に突かれたりすると、すると、するともう、うわ想像しただけで気持ち悪くなるぅ」
「病院行って聴診器とか当てられるじゃん、あれだけも無理」
「この前のメディカルチェックの時、心電図測るのに身体中にさぁ、変なやつ貼り付けてくるんだけど、ちょうどくぼみに貼り付けやがってさぁ、死ぬかと思った、これでまともな心電図測れる訳ねーじゃんって思った」
っことは?
「弱点ってことですか?」
「うんガッツリ弱点、自分で触るのも嫌、お風呂で洗う時にはコツがいるんだよ」
「ヘェー、チョップ!」
「はひっ」
そんなこと言われてドS心に火がつかない訳がない
「チョップ!」
「ヒーン」
馬かよ
「チョップ?」
「わお!ってこないんかい」
まぁ、これ以上やるとさすがにかわいそうだ
でも、いいこと知ったわ、合コンに行ったら、チョップ死させてやる!
サクッと付けてあげた
「あ、見てなかった、もう一回付け方教えてもらっていい?」
「うーん、毎回私が付けてあげるんで!春樹さんは覚える必要ないですよ」
チョップしたい訳ではない、本気でそう思ったから
あと、春まで付ける機会ないのだから、今教えても絶対忘れてるハズだ
「チョップしたいだけじゃ」
目をウルウルさせてくる、カワユス
「違いますよ、安心してください」
「やったね!ありがとう」
本気で嬉しそうな竜斗
こっちまでニヤける
「星川!おい星川!」
誰だ、私達の青春を邪魔し、尚且つ、呼び捨てにしてくるやつは!
声の方向に顔を向ける
うーーーーそ!え?なんで?猿くんじゃん、もう一人いるが、そっちはわからん
「こ、小林君!なんで?なんでいるの?」
「え?春樹先輩が試合出るって兄貴が教えてくれて、しかも対戦相手は俺が受験考えてる学校だからさ、川島と一緒に見に来たんだよ、したら星川いるんだもん、ビックリしたよ」
「春樹先輩お久しぶりです!めっちゃ体大きくなってるじゃないっすか!」
「おー、小林に川島じゃん久しぶりだな!って、あーそうか、お前らとキョウちゃん、同じ中学の同級生だもんな」
のんきだな竜斗!私らのイチャコラ見られてるかもなんだぞ!
あ、そか、別に竜斗はヤリ逃げでもいいんだもんね、学校で会わないから
クソ、あのリナさんが言ってたやつ、逆にこっちがやばいことになってるやん
さぁ、どうする
その間、私は脳内の中を整理する
山ほど尋問したいこともあるが、まずは…
「え、えっといつからいるの?」
初回のアレ見られたかなぁ
「え?最初からだよ当たり前じゃん」
うわちゃ、どうすっか
あ、そだ、なんか言われたらアメリカじゃあ普通だよ作戦で乗り切ろう
「てか、二人付き合ってたんすね、それもビックリっすわ」
え?え?いきなりそこ突いてくる?
「ちょっ、こここ小林君何言ってんの?つつつ付き合ってないよ、まだ付き合ってないよ」
「え、まだ?」
うわ、やった、ポンコツやらかした
「おいおい小林〜」
お、竜斗、後は頼む、なんとか処理してくれ
「いいいいきなり何言いだだだだすんだよ!付き合ってあってててないよ、まだまだ付き合ってないよ」
ダメだ、私以上にポンコツだった
「なんか二人キョドってて気持ち悪いな」
コロス
「いや、ずっと見てたけど、二人いつも一緒にいるし、仲良さそうで雰囲気も良かったから、テッキリ付き合ってんのかと思いましたよ」
「まぁ、これからって感じですか?星川こっち来てまだそんな経ってないっすもんね、出会ってまだ浅そうすもんね」
「星川、春樹先輩めっちゃ良い人だよ、お前良い人選んだな」
「あ、うん」
あれ、返しこれで合ってるのか?
否定はしたくないからいっか
まだ付き合ってはないが、好きなのは間違いない
てか、なんか上からでムカつくんだが
「そうだ!星川、お前通訳やってんだな、すげえなぁ!さすが帰国子女、あと野球も出来るの?さっき春樹先輩とのキャッチボール見てたけど、普通に出来るんだな」
「小林、キョウちゃんは上手いぞ、たぶんお前より上手い、冗談抜きで!」
「マジすか!なんだよ早く言えよ星川、じゃあさ今度休み時間キャッチボールしようよ、な!」
「え、う、うんわかった」
めんどくせーー、なんで貴重な休み時間を猿回しに付き合わなきゃいけねーのよ
まぁ、しゃあないかこの流れ
「にしても、ホームラン凄かったすね、いつの間にか左バッターになってるし、あとピッチングも痺れました、感動しましたよ!」
「まぐれだよまぐれ」
「まぐれで二本も打てませんて!あ、今日工藤さんいないんすね、まあ正直いなくて良かったですけど」
おー、ここまで工藤嫌いが浸透してるのか、やばいわ
「ん、うん、今日は途中で帰ったんだよ」
「そーなんすね、じゃあ、自分達これから用事あるんで、春樹先輩失礼します!」
「お、おうじゃあな」
「星川はまた月曜日話そうぜ、じゃあな」
「う、うん月曜日ね」
お猿とその連れは立ち去った
くっそ、月曜日からどうする、どうする
熱出しちゃうか、それともずっと寝たふりするか
「小林と同じクラスなの?」
ん?なんか落ち込んでる?
「あ、はい、隣りの席なんですよ」
「てか、コバさんの弟さんなんですかね?」
「いや、バヤの弟だよ」
うわぁ、やっぱりそっちかぁ
「え、でもバヤさんは中学は桜水じゃないですよね」
「あー、親がマンション買って引っ越してんだよ、バヤが中三になる前だっけかな、距離そんなに遠くないから転校しなかったみたい」
なるほどぉ…って
ちょっと!この学校、コミュニティ狭すぎ!
「キャッチボールするの?」
ん?
「はい?」
「小林と休み時間にキャッチボールするの?」
え?ま、まさか
母譲りの女の勘ピューターが作動した
竜斗の横にちょこんと座る
「まぁ誘われちゃいましたからね、断る理由が今のところないですから」
そう、今のところない、今のところ
「そうなんだ、なんか、うーん」
「え、なんですか?」
ほれ、早く言えよ、嫉妬しちゃいますって
「いや、なんでもない」
チッ、しゃあないこれならどうだ
「もしかして春樹さんは、私に他の男子とキャッチボールしてほしくないんですか?」
「いや、その別に」
あーもう!
「ふぅーん、わかりました、ならいいですよね、月曜日楽しみだなぁ小林君とキャッチボールするの」
「嫌だ」
ボソっとしてきた
「え?なんですか?聞こえませんけどー」
隣りに座ってるので、もちろん聞こえてる
「なんか嫌だ、キャッチボールして欲しくない」
「本気で言ってます?もしかして、やきもちってやつですか?」
「う!それは、その、とにかく嫌なんだ!本気で言ってる!」
「わかりましたよ、しません、誘われても断ります」
「あ、なんかごめん」
「じゃあ、春樹さんも他の女の子とキャッチボールしちゃダメです、おあいこ」
「も、もちろん、てかキャッチボール出来る女の子ってあんまいないよね」
「出来る子いたらするんですか?」
「しません」
「ヨシ」
「でも、春樹さん、私は他の部員みんなとはキャッチボールしてますけど、それはいいんですか?」
そう、他の人とキャッチボールしたことある
やはりグラウンドに出てるとそうゆう場面が起きる
コバさんもそうだが、大さんとか羽堂さんとかガブさんともある、ドリさんとも
「うん、それはいい、続けて、アンソニーさんの指導する時にも必要だろうし、そこはなんとも思わないから」
「じゃあ小林君とが嫌なんですか?」
「小林どーのこーの、じゃなくて、俺の見てない所でキャッチボールしてるのがなんか嫌だ」
フムフム
「みんなとは、練習の流れでお互い真剣だし、そうじゃなくても、俺が見えてる範囲だからいい」
うん、なるほど
「小林とのは見えないし、楽しむ前提じゃん?それに席が隣りってことは普段一緒なのに、更に休み時間まで一緒だなんて、なんか嫌だ!」
うん、良く言い切った
「よーく、わかりました、私は今後春樹さんが見えない所で、キャッチボールしませんし、似たようなこともしません!お約束します」
「わかった!俺も約束しちゃう!」
しちゃうってなんだよ
すると、竜斗が小指を出してきたので、私も小指を出して指切りゲンマンした
ニタニタし過ぎて、ヨダレ出るかと思った
アメリカ育ちの私は指切りゲンマンはお初
現地の日本人の友達もいたけど、したことはない
初ゲンマンの相手が竜斗だなんて、なんか運命感じちゃったりして
てか、この会話…もう付き合ってるのと変わらなくね?
ただ、不安だった竜斗の私への気持ちが、しっかり確認出来た事は凄い嬉しいね
「おーい、ハルー!」
サッカー部やテニス部の男子達が近寄ってきた
さすがにこれは譲るか
「じゃあ、私は麦茶飲んできますから、お友達と楽しんでください、あ!そのパッドはあと10分経ったら外してくださいね」
と、言ってスクッと立ち上がる
「え、これどうやって外すの?」
「そのビリビリ外せばいいだけですから、自分で出来ますよね?」
「あ、うん」
なんだよ、外して欲しかったのかよ!
甘えたか?まぁ、悪くないが、今日はご自分でどぞ
「じゃっ」
手をぱちくりさせてバイバイを作ると竜斗も返してくる
男子達とすれ違い、ドリンクバーに向かう
「おい、ハル!今の通訳の子、可愛いなぁ!どうゆう関係なんだよ、教えろ!」
背中越しに竜斗への取材が聞こえてくる
まぁ、どう対応するかはお任せします
ヤリ逃げヤリ逃げ
麦茶っ♫ 麦茶っ♫
なんか、楽しかったからルンルンで青空ドリンクバーに向かう
あ!
例の抱かれ隊がこっちに来る
あれ、しかも二人増えて五人編成だ!
方角的に竜斗の所に行くんだな
このままだと、正面衝突するので、ルートを少し外れる。
すると、あれ?向こうもこっちに合わせてくる
もしかして…囲まれる感じ?
こうゆう時はリナさんに守ってもらお!どこだ、どこだ!
あれ、全然いない
あ!もしかしてオシッコ?
マジかよぉ、てかよく我慢出来たな
って、人のオシッコの心配してる場合じゃない
どしよ、思わず立ち止まる私
キタ
「あの、通訳さん!うちのジャージ着てますけど、この学校の生徒じゃないですよね?」
親玉っぽい背の高いバトミントン女が詰めてきた
てか、謎に敬語
「えっと、これは、もう卒業した人から譲っていただきまして、ケイさんって人なんですけど、私がグラウンドに入りやすいように気を使ってくれたんです」
「あの、ケイ先輩のご友人ですか?失礼しました」
ん、まさかケイさんとタメだと思ってる?
嘘でしょ、四歳差だよ、学生の四歳差ってありえなくね?そこまで老けてるのか私
「いや、その、私は中学生です、中学三年生です、桜水中学校です、サーセン、あ、いや、すみません」
「え!冗談でしょ?こんな大人ぽい中学生見たことないんだけど!」
五人で顔を見合わせて驚きまくってる
なんか、この囲まれてからの、これから何を詰められるのかより、老けてる案件のがショックでつらい
「いや、その、アメリカで育ったので、もしかしたら老けて見られるかもです」
「あーね、アメリカ人は日本人より大人ぽく見えるもんね」
そうかもしれんが、私は純日本人だ
「わかったわ、じゃあ聞くけど、ハルとは付き合ってんの?」
うわ、キタ
「いや、付き合ってないですよ、アメリカの距離感で接してしまったので勘違いさせてしまったかもです、サーセン、あ、いや、すみません」
この手の質問に免疫がついたのか、スラスラと嘘が出てきた!ポンコツ卒業!
「ふぅーん、アナタはともかく、ハルのあんな顔見たの初めてかもしれない、小学校からの付き合いだけど」
「さぁ、それは私に言われましても、私はまだ知り合って一カ月くらいですから」
乗り切ったかな
でも、一つ気になることがある
さっきから、私を詰めてくるこのバトミントン女の後ろに隠れてチラチラしてくる人、さっきから心配そうに私を見てくる…
なんか直感が働く、たぶんこの人、竜斗のことが好きだ
たぶんじゃないな、確定だな
身長が高い、バトミントン女も高いけど、その後ろで隠れきれてない、おそらく175くらいあるのかな
髪はボブで、前髪をまとめて巻いて横にピン止めしてる
バレーボールいや、バスケット部かな
顔はかわいい方、目がくりっとしてるけど、ほんわかタイプではない、私と一緒のキリッとタイプ、でも優しそう、キリッとしてる中でおっとり感もあるからだ
バトミントン女が、このバスケ女の為に詰めてきてるってとこかな
「そうよね、こんなことアナタに言ってもしょうがないわね」
よし、乗り切った!さぁ麦茶飲もう、緊張で喉かわいた麦茶飲みたい
「じゃあアナタはハルの事なんとも思ってないってことでいいのね」
「はい?」
「だから、アナタは好きではないのね、ハルの事」
うっ、そうきたか、どしよどしよ
「えっと…そのぉ…」
「どうなの?どうなのよ?」
やばい
ここで、はいそうです、なんて嘘ついて
からの
やっぱり付き合いましたー!は、まずいよね
でもここで、好きですだと、今までの言い訳がおかしくなる
「こら、はづき何してんの!」
ん、なんだ?
あ!ケイさんと義理姉のさおりさんだ!
「その娘中学生だよ、みんなで囲って!怖がってんじゃない!」
「あ、ケイ先輩、あれ、さおりさんもいたんですか?ケイ先輩いるのは知ってたんですけど、さおりさんも来てたんですね、お久しぶりです」
「はづき、その娘に何してたの?イジメ?」
「いやその、ちょっと聞きたい事があって聞いてただけです、イジメなんてしてませんよ、でも本当にこの娘、中学生なんですね」
「うんそうよ、私もビックリしたけど、うちらとタメでもイケそうだもんね」
ショックだわー、これで私、歳重ねていったらどうなるのよ
「で?もう話は終わったの?さおりが杏子ちゃんに話があるんだけど、この場変わってもらっていい?」
「え、えっと、まだ終わってはないんですが…」
ケイさんがどけっていってんだからどいてくれ
「はづきちゃん、竜斗ならあっちにいるから行って、私ねこの娘にお礼を言いたいの、もしこの娘が困るようなことを聞いてるなら竜斗にチクるわよ、わかるわよね?はづきちゃん、竜斗の性格知ってるもんね」
「はい、さおりさん、すみません、うちら行きます、失礼します!」
「えっと、はづきちゃんとそのお友達さん、この娘イジメたら、春樹家が許さないから、わかった?」
「すみません」
抱かれ軍団が逃げるように立ち去った。
未来のお姉さんすげえ、大人しそうな顔してるのに怖っ!竜斗と一緒で怒らせてはいけないタイプだ!
「すいません、ピンチでした、助かりました」
ペコリ
そっか、ケイさんはともかく、さおりさんは中学は桜水だから、あのはづきとか言う女の事も知ってるんだな
「杏子ちゃんごめんね、はづきちゃんも悪い娘ではないんだけどね…もしまたなんかあったら竜斗に言ってね」
「はい、あざす!あ、いや、ありがとうございます」
「で、杏子ちゃん、改めて…竜斗が大変お世話になってます、ありがとう!」
「あ、いえ、そんなお世話なんて…」
「さっきね、杏子ちゃんのお母様から聞いたの、まず、グローブありがとうございました」
「いえ、そんな、兄のお下がりなので、気にしないでください」
「ありがとう、うちには事情があってね、竜斗の野球道具を買って上げることがあまり出来ないの、あ、うんとね、貧乏ってことではないの、ただちょっとした事情があったね、隠すつもりはないんだけど、私が先に話すべきじゃないと思うの…竜斗から話があったら聞いてあげてね」
「わかりました、ただこの先、道具を買えなくて困ってる竜斗さんを見たらつらいです、その時は私から竜斗さんに聞いて解決策を考えたいと思います、で、これだけは教えて欲しいのですが、私がシャシャって解決出来そうな話なんでしょうか?」
うん、これだけは聞いて起きたい、でも無理だったらどしよ
「ふふ、お母様のおっしゃってた通りね、竜斗のことになると、全力一直線で猪になっちゃうのね、とっても心強いわ…そうね、きっと杏子ちゃんなら解決してくれると思う、とゆうかもう半分解決してるかも、遠慮なく猪でいてね」
はにゃ?母はなにを吹き込んだ?猪やめてくれ、もう少しかわいい動物がいい
「良かったです!はい!猪で行っちゃいます!」
姐さんには従順です
「はい、猪さんお願いします、あとね、今日は本当に来てよかった、楽しそうに走り回る竜斗見れて感激!あ、なんか高校生に変な言い方よね」
走り回るどころか、とんでもない活躍なんだが
「昔、まだ竜斗が小六の頃にね、一度だけ竜斗の試合を、父親と一緒にこっそり見に行ったことあるの、竜斗が頑なに来るなって言うからこっそりね、私は正直どうでもよかったんだけど、父親がどうしても行きたくて、でも一人じゃ行きづらいって言うから付き合ったの、親のお店は両親のどっちか残らないといけないから、母親が仕事になり、私がお供したの」
フムフム
「で、実際に野球場に着いたらビックリしたわ、今でも覚えてる…試合に出てなかったの、でもねそれはしょうがない、団体スポーツだから、やはり溢れてしまうこともあると思うの、実際竜斗みたいに出れてない子は他にもいた、その出てない子達はね、ベンチで中腰になって元気いっぱいで一生懸命応援してたの、私と父親はそれを見るだけでも良かったかもしれない、でもね、そこにもいないの」
「え?どうゆうことですか?」
思わずビックリして、途中で聞いてしまった
まさか審判?いやいや少年野球でそれはないし、聞いてる感じだと、おそらく公式戦だ
「うん、端っこのベンチに座って、そこの前だけに用意された机の上にね、スコアブックてやつかな、それを置いて一生懸命書き込んでたの、背中丸めて、それがなんだか切なくてね」
「でもね、そのうち誰かと代わって試合に出るかもしれないと思って、最後まで見てたの、実際一生懸命応援してる子達の何人かは出てた、代わりに交代した子達はベンチで応援してる、微笑ましかった」
「でも、結局、竜斗は最後までスコアブックを書いてたの」
「竜斗はその時はまだ全然チビでね、でもそれよりも小さくて、明らかに竜斗より下級生の子も出てたの、父親は何も言わずに見てたけど、私はなんで?って思った」
「けど野球に詳しくない私達だったから、そのスコアブックを書くのもね、重要なのかなと思ったんだけど、でもやっぱり元気いっぱいにしてると思って行ったからショックだったなぁ」
「でね、ふと周り見渡すと、そこの野球場は何箇所かで試合をやっててね、どのチームも大人がスコアブックを書いてたの、もちろん竜斗の相手チームも、竜斗のチームだけ子供が書いてるの、だからね、今日はたまたまそうだったのかなって、納得はして帰ったの」
それはおかしい、スコアブックは子供がパパっと書ける代物ではない
「で、また違う日に父親だけで、また見に行ったらしいの、そしたらまたスコアブック書いてたんだって、そしたらとうとう父親が怒っちゃって…月謝払ってスポーツさせてるのに書き物ばっかりさせるのは、なんなんだ!って、とりあえず私と母親がなんとかなだめたけど、父親はそこから竜斗が野球やるのに不信感もっちゃってね」
それは酷い、少年野球でスコアブックを子供に書かせるなんてあり得ない、私のアメリカのリトルリーグは絶対にそんなことなかった。
怪我して復帰するまでとかなら分かるけど、そうじゃない
おそらく、その時の指導者は竜斗を戦力として見放した、そこで思いついたのがスコアラーだ、コツを掴むとスラスラやってのける竜斗だ、スコアブックの書き方もすぐにマスターしたのが想像につく
それに甘えて竜斗にずっとスコアラーさせてたんだ
日本の指導者は有能だと、アメリカ時代は聞いていたが、全くの嘘っぱちではないかと思ってしまう
まぁ、その中には名取監督も入ってはいるんだが
もし、諦めないでちゃんと指導してたら、竜斗の左打席も早く発見出来てたかもしれない。
これは酷すぎる、お父さんが怒るのも納得出来る。
もしこの先、私に子供が出来てそんなことされたら、ブチギレる!
でも、さおりさん…
意外と喋り出すと、止まらない人だわ
あれ?
あ、なんか、春樹家の道具買ってもらえない事情が少し見えてきた
「それでね、今日ケイちゃんに誘われて来たんだけど、そんな竜斗が、バゴーンとかパカーンとかシュバーンとか凄くてビックリしちゃった、これって活躍なんですよね?」
「もちろんです!」
えっと、擬音が独特なんだか、二本のホームランとシュバーンはピッチングだよな
「さっき、ゴーちゃんに聞いたんだけど、杏子さんがなんか発見してくれて、それからつきっきりで練習に付き合ってくれて、更に外人さんのコーチがしっかり教えてくれて、一か月で活躍出来るようになったって聞きました、本当にありがとうございます」
「いえいえそんな!」
「いいえ、杏子ちゃんのおかげ、ゴーちゃんから、審判の話も聞きました!杏子ちゃんが動いてくれたから、みんな変わったって…」
「あのね、それでね、最近の竜斗、本当に楽しそうなの、私にも野球の話をしてくるようになってね、前はどこかひっそり野球してる感じ…しかも最近はユニフォーム毎日泥んこ、それだけでね野球頑張ってる、楽しんでるのがわかるの、このまま野球を楽しんでくれれば、うちの父親も変わってくれると思うの、だから半分解決ってこと、本当杏子ちゃん、ありがとうございました、これからも竜斗をよろしくお願いします」
「はい!こちらこそよろしくお願いします、でも、竜斗さんは元々これだけ出来る能力はあったからこそなんです!私達はそこをちょこっと動かして目覚めさせただけです!なので、なので、竜斗さんを褒めてあげでください、家族皆さんが竜斗さんを応援してくれる日が来るのを、私は心よりお待ちしてます」
「ふふ、さすが猪、わかったわ、じゃあ私達これで失礼するから、それと、あんまり人前で抱き合うと、さっきみたいに敵を作っちゃうかもだから、ほどほどにね」
「え、え、あ、はい」
抱き合ってはない!けど、そう見えたのか
「じゃあね、春樹家のお嫁さんに早く来てね、杏子ちゃんのお母さんからはもうオーケーもらってるから、バイバイ」
「か、かしこまりです!」
胸の前で手を振るさおりさんと、親指を立ててるケイさんとお別れした。
お嫁さんって、まだ付き合ってもないのに、エヘヘ、イイネ、えっと、春樹杏子、うん語呂悪くない!
てか、母よ勝手にオーケーするな、まぁオーケーだけど
さおりさんの話聞いててわかったこと、竜斗のお父さんが反対で、道具を買ってくれない説が濃厚かな
あー、今日お父さん来てくれてたらよかったのに、惜しかった、今度試合ある時なんとか誘えないかなぁ…
さっ、今度こそ!麦茶っ!麦茶飲む!
「キョウちゃーん!カラオケどよ?」
リナさんがご帰還
「え?カラオケ?」
「うん、今日これで終わりだって!だからカラオケいかない?」
「行きたい!行きたい!日本のカラオケボックス行ってみたい!」
そう、帰国してからの行ってみたいランキングにインしてるカラオケボックス!
アメリカにはショボイのしかない!
中学の同級生とはまだ行く気にはなれない、いや今後もないな、一生ないな
でも、リナさんとなら是非行きたい
「おっし、決まりね!」
「そーだ!もう!どこ行ってたんですか!こっちは修羅場だったんですからっ!」
「ん?チッコ、やばかったわ!スライディングセーフ!」
やっぱりか
「え、アウトですよ、股間少し濡れてますよ」
「嘘っ」
股間を覗き込む女子高生リナさん
「うっそーーん」
「くっそ!」ゴシゴシ
「顔に付けてやる!」
リナさんが自分の股間をジャージの上から手でゴシゴシして襲ってくる
「ヒーー」逃げ惑う私
なんか、このいつもの追いかけっこの流れが好きでしょうがない、そして、見事に捕まり顔をメタメタにされました
「で、修羅場ってなによ」
さっきの抱かれ軍団の件を話す
「あー、たぶんそれオノマリさん、小野真理子」
「うーん、私はあんまり絡みないからわからなかったけど、ポンコツコンピュータが言ってるなら当たりじゃない?」
「ポンコツじゃない!自分の態度がポンコツなのは認めますけど、女の勘はちゃんとしてます!」
「まぁ、認めるよね、自覚なかったらやばいっしょ!」
「うー」
「ま、ほっとけば?オノマリさんが好きだとしても、ハルちゃんはキョウちゃんの事が好きなんだから大丈夫、ドンっと構えておきな、軍団の事はケイちゃんに言われてるなら、もう詰めてくることないし、それでも詰められたらハルちゃんにブチュブチュすれば解決っしょ」
「私の事なんだと思ってます?」
「イチャブチュポンコツ変態老け顔中学生」
「なんか増えてません?」
それもそだな、そのオノマリさんだけではなく、他にもおそらく隠れファンはいるだろう、いちいち気にしててもしょうがない、それが「イイ男」を旦那に持ってしまった宿命だ。
はづきさんって人も、あの怯えかたから見るともう詰めてはこないと思う
「アハ、そういえばハルちゃんどこよ」
「ブルペンのところで、囲まれてます」
「あ、ホントだ!じゃあちょっと待ってて、剥がしてくるわ、キョウちゃん来ると面倒くなるから、適当に待ってて」
「わかりました、茶しばいてきます」
頼りになる先輩だ
おっし、麦茶のむ!
いざドリンクバーへ
すると、母がベンチ前で暇そうにしてる
「お母さんまだ帰らないの?」
「あー杏子、よかった暇してたのよー、お父さん、監督さんと喋ってて終わらないのよ!私ほったらかし、もう今なら誰かにナンパされても付いてっちゃう!で、春樹君とおしゃべりしたいんだけど、どこかしら?」
ナンパ待ちからの竜斗って、むしろ今竜斗待ちじゃねーか
「今忙しいと思うから、また今度ね」
うちの旦那は老若男女問わず人気だ
「あらそうなの、いくらでも待つけど」
父はどうなる
「あ、きた」
え?
振り返ると竜斗が小走りに走ってくる、パッドはもう外れてる、まさかオノマリさんに外してもらってねーだろうな
にしても、早っ
さすがリナさん仕事が早い
「あの、杏子さんのお母さんですか?」
私達のところにやってきて笑顔で母に話かけてくる。
アンダーシャツ姿なので、体のラインがくっきりしている、たくましい
帽子を逆さまに被っているので、顔の良さが際立つ
そして、この笑顔
で、「杏子さん」だ
はぁ〜〜うっとりする
ん?
母を見ると両手を胸の前で握り合わせ、目がキラキラしている。
親子でメロメロの図が完成した。
「春樹君ね、こんにちは、星川涼子です、お会い出来て光栄よ」
「こちらこそです、春樹竜斗です!にしてもお綺麗ですね、ビックリしちゃいました」
わお!ホスト竜斗、こんなことも言えるのか
ただ、あの澄んだ目で言うとなんだろ、お世辞じゃないのが伝わるし、持ち上げ感もない
「やだーもう!嬉しい事言うじゃない!冗談でも嬉しい!何が欲しいの?なんでも買ってあげちゃう!」
と、客になった母は言い、竜斗の胸をポンと押した。
気をつけろ、そこはスイッチの近くだ
「いやいや、冗談じゃなくて本当ですよ、あ!すいません、生意気な事言ってしまいました、ついうちの母と比べてしまったので…」
「コラ、それはお母様に失礼よ、でもありがとね」
「それからその、グローブとお手紙ありがとうございました!このグローブ凄く気に入ってます!」
大事そうに持ってたグローブを子供のような笑顔で見せてくる。
この無邪気さもたまらんのです
「あら、良かったわ、そのグローブも嬉しそうね、あ、春樹君ちょっと」
母が手を招いて、二人して私から少し遠ざかる
内緒話をしてきそうな母に気を使い中腰になる竜斗
母が何がささやく
「はい、そこはしっかり守ってますよ」
と、竜斗が返したら、そのまま今度は口を手で隠しながら母の耳元ではないが、近くでなにかささやいている
母もささやき返してる
終わると二人で顔合わせて笑っている!
イラッ!限界
ツカツカ、オリャ!バシッ!
あったまきたので、竜斗の足にローキック決めた
「イッタ」
「コラ杏子、はしたない!」
「はしたないのはお母さんでしょ!もう!二人して何してんの!」
ダン!
私は右足で思いっきり地面を踏むと同時に両手をブンと振って体をプルプルさせる
「おーこわ、杏子、お鼻がこれでもかってくらい広がってるわよ、猪みたいに」
「え!」
慌てて鼻を隠す
「怒られちゃったから、私行くね、じゃあまたね春樹君」
母は竜斗に軽くウインクしたあと、手を振る
竜斗も手を可愛く振って返す
母が父の元に向かった
「もう!春樹さん!女性にはいつもあんな感じで接してるんですか!」
アラフィフの母に本気でやきもちを焼く
「ええ?」焦るホスト
「私、ホスト嫌い!チャラいの嫌い!」
「あはは」
「あははじゃない!」
鼻が広がらないように気をつけて、竜斗を睨みつける
「怒った顔も可愛いね」
くっ
いかんいかん、一瞬ニタニタしそうになるも踏ん張る
「ごまかさないで!」
「ごめんね、お母さんとは長い付き合いになりそうだから、仲良くしたくてね、つい」
長い付き合い…くっ、なんか嬉しいぞこのやろー
「嫌ならやめるよ仲良くするの」
うーん、まっ、母ならいっか、仲悪いよりは全然いいよね
「じゃあお母さんだけなら良いです、お母さんだけ、他の女の子にはイチャイチャしちゃだめ!」
えっと、私達まだ付き合ってないよね、なんかセリフおかしい気がするが…まぁいいや
「え、イチャイチャなんてしないし、した事ないよ、今後もしない」
「本当ですかぁ?」
「本当だよ、そりゃもちろん喋ったりはするよ、でも至近距離で会話とかした事ないよ」
「わかりました、で、何を話してたんですか?」
「内緒」
イラッ!バシッ!
ローキック!
「イッテ」
「キョウちゃん、荒れまくりスティじゃん」
リナさんが戻ってきた
「いや、これは教育です」
「怖いよキョウちゃん、ウケる、ハルちゃん何やらかしたのよ」
「浮気です」
「う、浮気なんかしてないよ!」
「二人ウケる、あ、そだカラオケ、ゴーくんも一緒でいい?」
「え、お邪魔虫じゃないですか?」
「いいのいいの、あ、ハルちゃん…は無理だよね」
「え?何?このあとカラオケ行くの?」
「うん、キョウちゃんも来るよ、でもハルちゃんは水泳行くんでしょ?無理だよね、またねー」
「え、いやその、アンソニーさんに試合後は休めって言われてるから、空いてるよ」
「ん、なによ、空いてるから行ってやるよ系?じゃノーサンクス、来なくていい」
「なんだよ!そんなこと言ってないだろ!」
「じゃあ、キョウちゃんに、お供させてくださいおにゃします!って言いな!浮気した罰」
「浮気してないって!」
「いいから早く、男でしょ」
「わ、わかったよ」
「是非ご一緒させてください、お願いします」
ペコリ
私を見つめながら懇願してくる
「よし、許す!一緒に行きましょ」
上から目線の私
本気で浮気されても、その目をされたら許しちゃいそう
「やった」
竜斗が喜ぶ
一緒にカラオケ行けて飛び上がる程嬉しいのは私もだが、ここは大人ぶって我慢する。
「良かったね、ハルちゃん、じゃあマッキーとコバにも声かけてくるからじゃっ」
「じゃあ私は一応、お母さんに聞いてきます」
「オーケー」
リナさんがキーンと走り去る
グラウンドの外に出て父を待つ母の元へ
「あ、春樹さんも一緒に行こ」
なんかテンション上がって、謎に竜斗も連れていく
「お母さーん」
「あら、もう機嫌が直ったの?単純な子ね」
ええまぁ、単純ですよ、中三ですから
「今日さ、カラオケ誘われたんだけど、みんなと行っていい?」
「ええいいわよ、行ってらっしゃい…春樹君も一緒?」
「うん、ね!」
竜斗は笑顔でコクっとうなずく
「そう…」
ん、なんか悩んでる?男女だとだめなのか
「春樹君」
え、なに説教?さっきのメロメロの顔が一変してる
「はい、なんでしょうか?」
「杏子はまだ中学生です、帰りは家まで送り届けてもらえるかしら?」
「はい、わかりました!安心してください、責任持って送ります!」
なんだよ、焦ったわ
「それでね、春樹君、そのままうちで夕飯食べていきなさい」
え?えええ?
「いやいや、ご迷惑です」
「いいの、今日はカレーにするつもりだから、どうせお父さん帰ったらお酒飲んで寝ちゃうの、あとは私と杏子だけだから余っちゃうのよ、だから遠慮しないで」
カレー大好きやった!
じゃねーだろ、マジか
「さっき、春樹君のお姉さんから聞いたの、ご両親忙しくて、毎日コンビニなんでしょ?だったら、ついでなんだから、うちで食べていきなさい」
「え、でも…」
思わず私を見てくる竜斗、てか毎日晩ご飯もコンビニなのか
「うん、お母さんもそう言ってるし食べていきなよ!お母さんのカレーめっちゃ美味しいよ」
ドキドキしてるが、ここも大人になる
「で、では、お言葉に甘えさせていただきます」
「じゃあ決まりね!苦手な食べ物とかある?」
母がお決まりの質問をする
「えっと、はい、たけのこの水煮だけだめです」
そこは、なんでも食べれますだろ、なかなかだな
「わかったわ、じゃあ後でね、お父さん来たから帰るわね、あ!春樹君、一応親御さんに了解得てね」
「わかりました!後ほどお邪魔します!」
母が熊を連れて帰っていった。
わお、急展開!どしよ、竜斗がうちに来る!
どしよ、あれ?部屋片した方がいいのか?
部屋にも来るのかな、キャッ
嬉しさと緊張でどうにかなりそう!
「おーい」
リナさんが戻ってきた
「なんかね、マッキーとコバは二人で用事あるんだって、だから四人ね」
え、それって…
思わず、竜斗と見つめあう
「うわ、意識してるこのバカップル!そうでーす、いわゆるー」
「だぶりゅ〜デイト〜」
いいなぁその響き、エヘヘへへ
「おい、また変態になってるぞ、そのだらしない笑顔どうにかならんかね」
「もう!」
「アハハ、あ、キョウちゃんちどこ?」
「運動公園のすぐ近くです」
「オーケー、じゃあハルちゃん迎え行ってあげて、たぶんキョウちゃん場所わからないから」
「小田急の方のカラオケだよね、迎えオーケーだよ、どうせ後で行…」ボカッ
リナさんに見えないように軽く足を殴る
「イッタ」
私、ここんとこ竜斗に殴る蹴るしまくってる気がする
でも、ここはリナさんにイジられたくないのでしょうがない
てか、わかれよ!
「ん?まぁいいや、じゃあ後でね、帰り支度始めちゃうわ」
「じゃあ俺は親に連絡してくるね」
ふぅー、こりゃ色々楽しみだ!
あ、麦茶飲も!麦茶飲みまくる!麦茶の口になってる!
よし、行くぞ
「杏子ちゃーん」
今度は誰だよ!
あ、大さんと彼女さんだ!
「杏子ちゃん紹介するね、俺の彼女の太田裕子ね」
「こんにちは、星川さん、あのねもらって欲しいものがあってね」
スケッチブックを出してきた
なんか絵を描いてくれたのかなぁ
「はい、これね、邪魔だったら捨てちゃっていいから」
スケッチブックに挟まれてたでかい封筒を渡された、覗くとなかにはスケッチブックから外された紙が入ってる
「見ていいですか?」
「はいどうぞ」
出す、うわっ、めっちゃ凄い
三枚あるんだけど、一枚八コマ漫画になってる!
めっちゃうまい!
ホームラン二本と最後のピッチングをそれぞれ三枚に分けて漫画を構成させてる
「うわ、凄い!めっちゃうまい、春樹さんそっくり!写真みたい!」
「気に入ってくれたみたいね、良かった」
「あの、でもこれ私がもらっちゃっていいんですか?春樹さんにあげた方が…」
「大丈夫よ、ハルにはまた別で用意してあるから、それは星川さん用だよ」
「やったぁ、ありがとうございます!ごっつあんです!」
「面白い人、じゃまたね」
二人が立ち去ったあともしばらく漫画を眺める
竜斗のバッティングシーンやピッチングシーンがリアルに描かれている、変に着色してないのがまたイイ、お母さんに額縁買ってもらお
ん、あれ、なんか変な人が描かれてる
初回のホームランのシーンでは、三塁側ベンチの後ろで飛び跳ねて喜んでる人
もちろん、他のギャラリーも忠実に描かれてるのだが、この人だけめっちゃ喜んでるので目につく
二回目のホームランでは、同じ場所で座りこんでいる人、なんか顔を拭ってる、泣いてるようにも見える
この二つは竜斗が三塁を回るシーンの時に描かれている
そして、ピッチングのシーンでは、最後の三振を取った時に、ピッチャー目線に切り替わった時だ、たぶん意図的に私を描いている、もちろん綺麗に、ウフ、じゃない、トニーもスピードガンを持って描かれているんだが、その後ろからスピードガンを覗き込んでる人、そう全て同じ人だ
こんな人いたんだ、全然気づかなかった
たぶん、太田さんが目についたので強調して描いたんだろうな、ってことは学校の先生かな
てか…本当に漫画だったんだ!ビックリ!
普通、そこは絵だろ
画用紙を綺麗に封筒に戻して、ベンチに置いてあるバッグにしまった
ヨシ!麦茶!今度こそ麦茶
無事、青空ドリンクバーに到着
緑茶はまだけっこう残ってるが、麦茶はあとわずか
ふぅーあぶねー
「よし、もう一杯麦茶飲も」
マッキーの野郎が横からきて、既に持ってる紙コップに最後の麦茶を注ぐ
そして飲む
イラッ!
バシッ!ブフォ!
マジであったまきたので、渾身のローキックを決めると、飲んでる麦茶を吐き出すマッキー
「それ、わたしが飲みたかったの!」
「え、え、まだ緑茶残ってるよ」
ユニフォームを拭きながら答えるマッキー、本当に空気読めない奴だ、今までの空気読めない行動のイライラも乗っかってくる
「麦茶が飲みたかったの!」
「えーわがままだな」
プッチーン
バシッ!
「イタッ!ちょやめて」
もう一丁!バシッ!
「ちょっと待って、俺年上、先輩だから」
「うっさい、麦茶の恨み、オリャ!」
バシッ!
「ウヘヘヘへ」
うわ、やっぱりこいつドMだ
あれ、そういえばトニーはどこだ?
いない、帰ったな、ま、いっか
本来の仕事を忘れしまう中三女子でした。




