工藤の乱
あの揉め事が嘘のように、何事も無かったかのように、平和な日々が続いた。
工藤さんは、しれっと練習に普通に参加している。
この平和が不気味にも感じる。
今日は、桜水高校で他校を招いて練習試合が行われる。
私とトニーは、初の対外試合
そして、竜斗の高校初の対外試合デビュー戦となる!
昨日、トニーと名取監督の間でオーダー等の打ち合わせをした。
トニーからの要望は
竜斗を1番サード
今日と来週の練習試合で今年の対外試合は終了する。
来年三月まで試合はない、なので少しでも打席を多く立たせて経験を積ませたい
なので1番抜擢!
キャプテンのノブさんはもちろん出ない
先発投手は一年生のコバさんが抜擢された。
コバさんにだけは、昨日のうちに通告した、目は開かなかったが、「ハイ」と、元気たっぷりの声が聞けた。
その他は打ち合わせして決めた。
なので!、竜斗のデビュー確定です!
私はドキドキハラハラしてて、何やら落ち着かない
本人はまだ知らないので、いつも通り
でも、最近の練習の成果はみんなわかってるので、スタメンで起用されるのは予想出来てる。
特大ホームランから、まだそんなに経ってないが、そこから更に飛躍的に伸びてるので
これで、出さなかったら監督は頭イカれてるだろレベルだ!
相手高校が到着
今日の相手は同じ都立高校、データはあまりないが、正直そこまで強くないので、ノブさん抜きでも勝てるはず
もちろん練習試合なので、結果よりも内容が大事、でもそれを差し引いてもここで負けてるようでは、甲子園は夢のまた夢の更に夢ってことになる
三塁側ベンチの横の入口から、帽子を取り挨拶しながら一人一人入場してきて、ベンチに荷物を置いたら、ベンチ前に整列した。
「きょうつけー!れー!」
「よろしくお願いします!」
すると、既にグラウンドで軽く練習してたこちら部員達も、整列は出来ないが帽子を取り、キャプテンの号令と共に
「よろしくお願いします!」と、返す
うんうん、これぞ高校野球!
すると、グラウンドの裏側をこちらに歩いてくる女子二人が
相手高校のマネージャーさんかな?
「ごめん!キョウちゃん付き合って!」
リナさんに半ば強制的に外に出された
その時に、倉庫脇で監督と工藤さんが何やら真剣な話をしてるのが見えた。
またあの人、なにやってんだろ、他の人はみんな練習してるのに…
「これから、マネージャー同士の挨拶あるから付き合って!」
なるほど、そんな文化もあるのか
「え、でもうちらマネージャーじゃないですよ」
「キョウちゃん、この格好でグラウンド内にいてマネージャーじゃありませんは通用しないよ!」
「あ、確かに」
これで違いますは感じ悪すぎる
「今日はお招きありがとうございます、よろしくお願いします」
二人のうちおそらく先輩マネージャーぽいのが挨拶してきた。
うわ、可愛い
先輩マネージャーは黒髪ストレートの清楚系
もう一人はまだあどけなさが残ってて、ほんわかしてる
野球部のマネージャーって可愛い人多いよね
坊主頭の集団にいるからそう見えるのかな?
てか、うちらもそこそこイイ線行ってると思う!
それを証拠に相手の後輩マネージャーは私達を上から下まで舐め回すように見てくる
でも、私はまだこの高校の生徒でもない
「よろしくお願いします」ペコリ
リナさんに合わせて挨拶を返した
「では、まずグラウンドルールをお聞きしたいんですが」
先輩マネージャーが私に話しかけてきた
ん?
「あ、私から説明しますねー」
グラウンドルールやらファールボールの処理やら、派遣審判いないからお茶出しはいらないだの、リナさんがテキパキ説明してる。
んん?
あれ、なんで最初に私に話しかけた?
もしかして!私がリナさんより先輩かと思ったのか!
マジか、マジで老けてるのか私…
ズーン
私はホントに十五歳か?どっかで間違ってないか?
今日家に帰ったら、真剣に親に聞いてみる
とゆうか!リナさんが外面が良すぎてムカつく!
もう別人やん、それであのルックスだ
くそ、詐欺だ詐欺
説明が終わると挨拶をして別れる
が!
「せんぱーい、私ちゃんと説明できてましたー?」
と、相手マネに聞こえるようにさっきの誤解に乗っかってきやがった!
しかもブリブリで!
相手マネージャーが見えなくなってから、三回ガブっちょしてやった
相手監督が挨拶に来た
それを見て、工藤さんと話をしてた監督が来る
こっちも挨拶しなきゃと思い、トニーを連れて私も行く
でも、名取監督、何か明らかに変だ
嫌な予感がしてならない
相手監督と月並みな挨拶をしたあと
「あの、お願いがあるんですが…」
と、恐縮しながら相手監督が切り出してきた
詳細ね
簡単に言うと、引退した三年生バッテリーを連れてきてるので出場させてほしいとのこと
この二人は進学しても野球をやるので、練習させてほしいとのことだ
補足として、二年生以下のピッチャーは正直レベルが低いので桜水さんの練習のためにもどうですか?と
もちろん先攻は譲るとのこと
監督は即答で
「いいですよ!」と、答えた
あれ、トニーには聞かないのか?
この名取監督は、トニーが来て以来、何かあると必ずこっちにもお伺いを立ててくれてた
トニーも、この相手監督の要望には異論はないようなので、とりあえずいっか
グラウンド練習を相手に交代して
こちらチームが一度ベンチに帰ってくる
「よーし、集合!先発メンバー言うぞー!」
お、キタキタ
みんなが監督を囲うように並ぶ
「1番!」
うんうん
「レフト、工藤!」
ズコッ!
はっ?え!なにがおきた?
昨日の打ち合わせは?
トニーは訳さなくても、クドウって聞こえてるから手を「WHY?」状態で固まってる
打順を勝手に変えた?
そのまま、ツラツラ打順を言っていく
春樹さんは呼ばれない
「8番サード、平山」
「9番ピッチャー、小林慶太」
え、先発から外れた?
なに、なにが起きた?
最後に「ハル!球審やれ」
は?
私は怒りを通り越して、呆然としている
「わかりました」
まだ早いが竜斗が審判セットの準備に倉庫に向かい始める
「よし!円陣やろう!キャプテン円陣!」
と、工藤さんが言うも
さすがにキャプテンは戸惑い、他の部員は私と一緒で呆然としてる
「ハルさん待ってください!」
ん、聞き慣れない声、誰?
コバさんだ!
ん?目がクワっとしてる!
コバさんは持ってたグローブをベンチに投げつけ!ようとしたが思い留まってポイっとした、ポイ捨て
「監督!今日俺投げませんから!とゆうか今日で辞めます!最後に審判やって帰ります」
「ハルさん、僕やるんで!」
「あ、工藤さん!アナタの打席はどんなクソボールもストライクですから!よろしくです」
竜斗はコバさんに顔を横にフリフリさせて落ち着けとアピールする
コバさんガン無視
「監督なんなんすか?なんで工藤が1番なんすか?何でハルが外れて審判なんすか?どこに目つけてるんすか?もうボケたんすか?俺帰ります」
副キャプテンの大さんが、オーバーキル気味のセリフを残したあと、帰り支度を始める
「あの!俺プロゴルファーになるんで今日で辞めます!」
ガブさんもベンチに座った
すると、みんな一斉にベンチに座った
竜斗にポジションを奪われるかもしれない平山さんもだし、一年生もだ
残ったのは工藤さんと、工藤さんに舎弟扱いされて、いつもバッグを持たされてる一年生
工藤さんは明らかに動揺してる
名取監督は死んじゃいそうなくらい動揺してる
うーん、ちょっと待って、なんかおかしい
なんかおかしい、おかしい!
「みんな!ちょっと待ってください!」
「一旦落ち着きましょう!少し私の話聞いてください!」
私の言葉に、コバさんはグローブを拾う、大さんは帰り支度を中断してくれた
「昨日、名取監督とアンソニーは打ち合わせをしました!その時は春樹さんは1番サード、工藤さんはスタメンから外れてました!」
「それで、名取監督は納得してました!」
私は躊躇なく、みんなに暴露する
そして、監督に歩み寄る
「名取監督、あれから何があったか説明していただけますか?」
「じゃないと、私とアンソニーはもちろん、他のメンバーだって納得いきませんし、このように試合どころじゃなくります!説明してください!」
何かある、あの名取監督が自分の意思でこんなことするはずがない
「く、工藤!これはどうゆうことだ!」
やっぱりか
「みんな納得してるって言ったじゃないか!話が違うぞ!」
おいおいおい、空気どんだけ入れたんだよ
工藤さんは観念したかのように、名取監督の言葉にはシカトしてベンチに座り込み
チッ
はい、得意の舌打ちいただきました
「監督、何があったんですか?全部包み隠さず話してください」
なんか、私謎解きしてるみたい
「いや、その、さっき工藤から聞いたんだけど…」
詳細
佐藤キャプテンの怪我が発覚後、アンソニーはやる気がない
このチームはダメだ、ハルキをどこか違うチームに連れてくって話を杏子ちゃんとしてるのを聞いた
なので、ハルばっかり指導して、他の部員達には適当に指導してるし、使えない一年や控え組には邪魔扱い
最近は私(監督)への批判も凄い
私がいない時はやりたい放題
ハル以外の部員はアンソニーとハルに対して不満だらけなのを、なんとか工藤が抑えてる
と、工藤さんから監督は説明を受けたとのこと
からの
今日はハルは使わない方いい、いつもの球審やらせて今日のところは様子見ましょう、と、更に工藤に言われた
今日はハルを1番で使う予定だったと告げると
それだと、他の部員達が暴発する
なので、ハルは外して、俺が1番を打ってチームを引っ張りますと工藤に言われ、そうすることにした
と、監督から説明があった
呆れた
工藤さんが酷いのもそうだか、それを信じてしまう監督もどうかと思う、おじいちゃんだから?
オレオレ詐欺に引っかかりそうで怖くなるわ
みんなは、はあ?って顔してる
「ぜ、全部嘘なのか?」
お金を振り込んだ後の顔になる名取監督
「全部嘘かどうかは、私とアンソニーにはわかりません、部員さん達の本当の気持ちはわかりませんから」
「でも、春樹さんをどっかに連れてくって…どこに連れてくんです?逆にこっちが聞きたいんですけど、日本はそんな簡単に編入とか出来るんですか?」
名取監督を冷たい目で見て質問する
「いや、なんだか社会人主体のクラブチームに入れるとか…」
「知りません、一切そんな話してません!」
「それに、トニー…いやアンソニーは佐藤さんの怪我でこのチームを諦めたり、見放したりしてません!」
キッパリ言った!そして私は自分のバックから二つのファイルを取り出した
「これがチームに来る前に部長さんから頂いた資料です」
と、言いポンっとベンチに置いた
「それからこっちが、チームに合流してから昨日までアンソニーが集めた資料です!」
と、言いボトンっと置いた
超デブになってるファイルだ
「これ、アンソニーの持ってるタブレットの中と同じ情報量です」
「万が一データが飛んでしまった時のためにペーパーにお越してあるやつです」
「もう、このせいでカバンが重たくてしょうがありません!」
「やる気ない人が、こんなデータ作りますか?」
「確かに春樹さんには付きっきりになることがあります、でもそれはやっとスタートラインにたったので、しょうがなくありませんか?それにじゃあ他の選手をほったらかしにしてるか?絶対にそんなことありません!しっかり対話してコミニュケーション計って、ここまでのデータを作ってるんですから!」
平和な時は遊んでいるわけではない、こうしてしっかり仕事してるのだ!
「一年生を邪魔扱いなんか、してません!」
「あの子達はサイゴノナツがないのに、一生懸命サポートしてくれる、感謝だ!っていつも言ってます!」
あ、やばいそろそろ訳さないとトニーが置いてきぼりだ
ん?あら、リナさんが身振り手振りと得意の出川英語で説明してる
トニーは顎髭をさすりながらうなずいている
あ、そうだった、この二人上手く通じてるんだった
この一ヶ月でリナさんは普通に対話できるようになってる、英語力は相変わらずなのに、持ち前のコミュ力で乗り切っている
じゃあいいや、リナさんにとりま任す
監督を詰めるの巻を続行
「アンソニーは、そもそもサトウ一人で勝ち上がっていけるほど甘くないのは確かだ、今回の怪我がなくてもキツイだろう、それに腰をやらなかったら、そのまま酷使して結果、肩か肘をやっていただろう、なので今回はゆっくり休んでもらうチャンスだ、あと他の選手の奮起だが、みんなまだまだ伸びそうな選手がいっぱいだから楽しみだ!だから心配ない」
「って、いつも言ってます!」
「あとは、他の部員さん達の不満はわかりません、みんなに聞いてください!」
急いでトニーに要点をまとめて訳す
リナさんありがとう、おかげで要点だけで全然わかってくれてる
「不満なんかないっすよ、アンソニーさんのアドバイスめっちゃ、ためになります、的確です、既に自分の限界を感じてたんですが、まだまだ向上しそうでワクワクしてます!」大さん
「てか、アンソニーさんに不満あるやついるかな、この人本当よく見てくれてるし、俺はコンバート言われたけど、しっかり納得させてくれる理由を言ってくれるから、気持ちよく出来たよ、なぁ言いたいことある奴いる?この際だから言いなよ」ゴー君
シーン
からの、みんな各々、トニーへの感謝みたいのを述べ始めた
監督はもうすっかり落ち込んでいる
これこそ、真っ白な灰だ
キャプテンは口をポッカリしてる、そうキャプテンは工藤さんの悪事をあまり知らない、それは小賢しい工藤さんが監督同様にキャプテンの前では尻尾を出さないからだ
「監督、もう工藤に騙されまくるのやめてくださいよ!」
と、大さんが言い出し
この前起きた、リナさんタックル事件や今までの悪事をチクり始めた
もちろん、私が初耳なのも多くてまぁビックリ
ここまでするか工藤!って感じ
補足するかのように他の人達も続く
そして一年生からも
「この前、型付けハンマーでしつこく叩かれました!」
「着替え隠されました!」
「マダヤで貸した五百円まだ返ってきてません!」
と、まぁ出てくる出てくる
五百円って、小学生かっ!
「工藤さん謝ってください!、アンソニーやみんなに謝ってください!」
私が叫ぶと
「キョーコ、もういいんだ、もうその必要はない」
トニーが私の肩をポンポンとやり首を横に振っている
そして、うなだれてる工藤さんの前に行くので私もお供する
「クドウ出ていけ!このチームに君は必要ない!今その座ってるベンチも明日からは満席だと思え!早く出て行け!君がいると、このチームは強くなれない!出て行け!」
トニーがキレる、訳す私も鼻息が荒くなる
チームの輪を乱して、更に足を引っ張る、ましてや自分をコケにされてて黙ってはいない
「フン、アンタにそんな権限ないだろ!」
は?ここまで来てまだ居座ろうとするの?ある意味尊敬するわ
「いや、工藤、お前クビだ、とっとと出てけ、どうせ前に聞いたハルの話や、他の部員の話なんかも全部嘘なんだろ?お前もう野球やる資格ないよ、出ていってくれ」
名取監督が割って入ってきた
「チッ、くそっ、おい宮杉!バッグ持て!」
舎弟扱いされてる宮杉さんはオロオロしながらも工藤さんのバッグを肩にかける
「宮杉、それでいいのか?本当は行きたくないんだろ?工藤のカバン持ちなんてやりたくないんだろ?工藤が怖いのか?大丈夫だ!俺達二年生が必ず守るからな、うちらは宮杉のサポートが必要だ、だから、な、安心しろ」
竜斗が優しい声と顔で声をかけた…途端!
躊躇なく、持ってるバッグを工藤さんに投げつけた!
そして、無言で竜斗の影に隠れる
速攻すぎて、ちょっとウケた
工藤さんは一人で立ち去った
「みんな、大変申し訳ない、悪かった許してくれ、相手チームには俺から説明しとくから、今日のところは帰ってもらってもいい、でももう一度よく考えてくれ、もしまだ一緒にこんな俺と一緒にやってくれるならありがたい」
名取監督は年甲斐もなく猛省してる
「俺からも申し訳ない、だいたい俺きっかけだ、俺がもっと早く対処してれば…どっかで面倒くさくて放置してた」
竜斗も深々お辞儀して謝った
「まぁ、監督が悪かった訳じゃないし、てか監督!ちょっと騙され過ぎじゃね?オレオレ詐欺に引っかかりますよ」
と、大さんが言うと、みんなクスクス笑い出した
って、くそ、そのワード最初に私が思いついたのに!持ってかれたぁ
「みんなぁ、これでも帰るの?試合したくないのぉ?」
リナさんがみんなに問いかける
「俺はやりたいよ、元凶のヤスがいなくなったなら、清々しくプレー出来るよ、俺はやる」
ゴー君が準備にかかる
「俺も試合したい」「俺も」部員みんなが連呼する
一年生も後に続く
「俺も試合したい!」
最後に竜斗が大きい声で答えた
「杏子ちゃん、昨日打ち合わせたって言うメンバーはわかるの?わかるなら監督に発表し直してもらって」
「はい、わかりますよ」
キャプテンの問いに私は答えた
「監督いいですね?」
「うん、もちろんだ!みんなありがとう!すまない」
キャプテンに答えた監督は、もう泣きそう、いや泣いてるな、目が真っ赤だ
「ナトっちゃん!今日だけは、その役をキョウちゃんに譲りな!オイタした罰ね…あと、ハルちゃんデビュー戦だしね!」
リナさんが私にウインクしてくる
「お、うん、オーケーだ!杏子ちゃんやってくれるか?」
監督はオーケーでも…いいのかなぁ私で、恐る恐るみんなの顔色を伺う
「シャキッと頼むよキョウちゃん!」ゴー君
「噛んだらガブっちょするから」ガブさん
「大丈夫、みんな待ってるから早く」リナさん
コバさんはポイ捨てしたグローブを手にはめて、ポンポン叩いて私を見て待ってる
「わかりました!では発表しますので集合!」
「もう集合してるよ」
「あ、はい、では!」
ファイルを開いてからをスゥーと深呼吸をする
「1番サード、春樹さん!」「はいっ!」
竜斗の心地良い返事が返ってくる
「2番セカンド、高瀬さん!」「ウイッ」
「ウイッじゃないでしょ!」「わかったよ、はいっ!」
嫁から叱られるゴー君
「3番ショート、羽堂さん!」「はいっ!」
「4番センター、ガブさ…三沢さん!」「はいっ!あれ今のアウトじゃね?」
やばいからスルーしとく
「5番ライト、大沢さん」「はいっ!」
「6番キャッチャー、松山さん!」「はいっ!」
「7番ファースト、福山さん!」「はいっ!」
8番を読み上げる時に、忘れてたある事に気づいた
「8番レフト、小林博明さん!」「はいっ!」
そう、うちのチームには小林さんが二人いる、血縁関係はない、だか、このもう一人、二年生のバヤさんこと小林さんはちょっと猿顔、ま、まさか、私の隣の席の?いや、でも、このバヤさんは中学は桜水ではないから、平気かな
「9番ピッチャー、小林慶太さん!」「はい」
「今日の相手バッテリーは三年生です、いい練習になると思いましたので承諾してます、みなさん気を引き締めてください!」
「先発の小林さんは5イニング予定です!そのあと投げる梨田さんは準備よろしくお願いします!」
「大舘さんは、来週先発予定なので、今日は調整イニングになりますのでよろしくお願いします」
「ドリさん(有村)さんは小林さんの交代の時にキャチャーも代えるのでよろしくお願いします」
などなど、今日控え選手のサポートプランもしっかり入れてフォローする、でもこれは全部トニーからの指示
トニーはやはり凄い
「私からもちょっといいー?」
リナさんが横に来た
「今日ね、二塁塁審はいつもどおりナトっちゃんのお茶友が来てくれるからぁいいとして、三塁の塁審は相手に頼んだ、一塁塁審と球審はこっちでやるんだけどぉ、まぁ一塁は目の前だから交代でやるとして、マジで球審どうする?」
確かに、いつもはもれなく竜斗が務めた、今回は初めてなんじゃないかな、違う人がやるの
これだったら、工藤てめえ球審やれやっ!って言っとけば良かった
ちなみに、ナトっちゃんのお茶友とは用務員のおじさん村田さんである
「俺がやる!」
キャプテンが名乗り出た
「ノブ大丈夫かよ」ドリ(有村)さんが心配する
「大丈夫だよ、球審するくらいじゃ腰に負担ないよ、ファウルチップ受けたって、どうせ休み確定してるしな」
「ちげーよ、ちゃんとジャッジ出来るのか?ってことだよ!」
「んだとー!」
ノブさんが、ドリさんにヘッドロックをかける
みんなが笑う
「よし、じゃ決まりね、じゃあキョウちゃん円陣よろ」
は?
リナさんが無茶振りしてきた
「今日試合出来るのは半分キョウちゃんのおかげ、ほら早く真ん中に座って、好きなこと叫びな、あ!固有名詞は出さないでね」
みんな大爆笑
顔が真っ赤になる私
渋々、真ん中に座る
「頑張ってこーー!」「オーー!」
「んだよ、キョウちゃん!そこは振りに乗っかって名前出さないと」
私は先輩なのを忘れてリナさんにアイアンクローをした
みんな準備に取りかかる
相手側ブルペンを見ると投球練習が進んでる
ズドンっ!いかにも重たそうなボールを投げている
しかも、うわ、サウスポー(左利き)だ、身長は大きく横にも大きい、ゴッツイ身体!
そりゃ、進学してまで野球やるわ
うーん、春樹さんデビュー戦でいきなり左対決かぁ、しかもあの身体にあの強いボール、手強そう、まぁ完投するわけじゃないから、ピッチャー交代するまで我慢かな
チキショウ、三年生断ればよかったかな
「杏子!杏子!」ん?この声は…
「来ちゃった!」
フェンス越しに声をかけてきたのは母だ!
「お母さん!何してるの?」
「何って決まってるじゃないのよ、彼を見にきたの、ウフフ」
「マ、マジか」
「お父さんにさっき聞いたけど、あの子ね」
竜斗を指さす母
「カックイイわね、超イケメン、モデルみたい、私がもう少し若かったらアタックしてたわぁ」
グラウンドで何をほざく母上よ
「さすが我が娘、私と一緒でいい趣味してるわね」
熊を旦那に持つアナタに言われたくない、あ、昔はイケメンか、でも今はパツキンのイヤらしいやつを丁寧に収納してるただの熊です
「お父さんとあのベンチで見てるからね、頑張ってーって伝えといて」
言われたそのプチスタンドを見るとまさかの大盛況
満員御礼だ
例の抱かれ隊もいる、大沢さんの彼女さんもスケッチブックを開いてる、今日はそれ隣に迷惑だろ
プチスタンドで収まらず、立ち見席も出てる
サッカーやテニス等のユニフォーム姿のままで来ている男子も多い
学校の先生らしき人もチラホラ
遠くのあずまやから眺めてる人も
え、練習試合なのに凄くない?
今シーズン最後のホームゲームとはいえ、これは凄い
「いつもこんなにギャラリーいるんですか?」
リナさんに聞いてみる
「いや、まさか、こんないないよ」
「え、なんで?キャプテンは休みなの知らないのかなぁ」
「あー、ノブさんは怪我してるのは、噂になってるからみんな知ってるよ」
「じゃあなんで?」
「ハルちゃんかな、この前の特大ホームランが学校で伝説化してるからね、あとはやっぱりハルちゃんは男女関係なく、みんなから慕われてるからじゃないかな、ハルちゃんが試合に出るって、昨日から噂になってたし」
「その影響なのかなぁ、今日活動中の部活はおそらく観に行っていいよ指令でてるね」
凄いな
「あ!ケイちゃん来てる!ケイちゃーん!」
プチスタンドにいる私服のお姉さん二人組の一人が、リナさんの呼び掛けに気づいて、手を振ってる
「ほら、キョウちゃんにジャージくれたゴーくんネネ」
「あー!ありがとうございますー!」
自分のジャージをつまんで、お礼を言った
ん?なんか不思議そうな顔して手を振ってくれた
あーそうかい、あいつ本当に中三か?って顔かい!
「ケイさんって、いつも見に来るんですか?」
「あれ、そういえば初めてかも」
「横の人って誰ですか?」
「んー、誰だろ、友達なのかな、気になるね」
「まだ、平気そうだからちょっと行ってみよ!」
私も引きづられるように、プチスタンドへ
サーセーンと、観衆をかき分けながらケイさんの元へ
途中、女子達にジロジロ、こんな人うちの高校にいたっけ?的な顔で見られる
「ケイちゃん!珍しいね!」
ケイさんはゴー君とは似てないが普通に綺麗な人、そして、まともそうな人、そこも姉弟似てない
「うん、友達が来たいって言うから連れてきたの」
と、言って、ケイさんは隣のコバさん並みに大人しそうだけどめっちゃ綺麗な人を見る
まさか、コバさんのお姉さんか?
「え、なになに誰のファンなのぉ?」
さすがリナさん斬り込む
「あ、あの、春樹の…」
なぬ?こんな綺麗なお姉様が?敵だ敵
「は、春樹の姉のさおりです」ぺこ
大人しそうにお辞儀をする、竜斗のお姉さん
って、えええーーーーマジお姉様?
マジかよ
「うっそぉ、ハルちゃんネネ?」
「ケイちゃんの義理の妹のリナです、んでこっちは、えっとうーん、ハルちゃんの恋人?になりそうな人のキョウちゃんです!半分アメリカ人みたいな子です」
「ちょっと!リナさん!情報間違ってる!」
「あのその、このチームの、あの、あそこにいる外国人コーチの通訳やってます、星川杏子です、春樹さんにはいつもお世話になってます、よろしくお願いします」
「えーー、固いなぁ、この前ハルちゃんに抱きついてエヘエヘしてたじゃん!」
「もう!リナさん!」
てか、周りの女子達も見てんだろうが!余計なこと言うんじゃねーよ!
「フフフ、さっきケイから聞いたけど、本当に中学生?凄いお綺麗ですね、是非竜斗の恋人になってあげてくださいね」
「あ、はい!あ、違う!あ、あのその…」
「キョウちゃん、義理の姉の前でマジしどろもどろ!ウケる」
「ウケない!」
「昨日、晩ご飯食べてる時にさぁ、リナっちとゴーが竜ちゃんが試合出るなんて話してたじゃん、だからさおりに連絡したら、来たいって言うから連れてきたんだ」
ケイさんが説明してくれた
ん?晩御飯?リナさんも一緒に?
「星川さん、女優の葉山翔子に似てますね、よく言われません?、竜斗の部屋にもポスター貼ってあるんですよ、ファンではないみたいですけどね」
「………」
「確かに似てるー!でもそこまで老けてないか!」
「ちょっと!もう!あ、リナさんそろそろ行きますよ!」
「では、失礼しますー」
リナさんの首根っこを掴むイメージで連れて行く
マジで掴むとお姉様に変な誤解を生む
後からゴー君に聞いたけど、ゴー君のお姉さんも竜斗のお姉さんも中学の同級生、高校はさおりさんが私立の女子高に行ったので離れたけど、友達関係は続いてるらしい
って、私立女子?ってことは経済的理由でグローブが買えないのは無し確定かぁ、謎が深まる
ふと思った
学校の友達だけではなく、私の母や竜斗のお姉さんまで竜斗を見に来ている、これでさっきの工藤さんの思惑通り竜斗が審判やってたらどうなってたんだろうか…
考えただけでもゾッとする
とりあえず良かった
みんな見に来てるよ
自分の試合でもないのに、こんなワクワクするなんてビックリ
グラウンドを見ると、試合前のノックが終わりみんなが引き上げてくる
試合が始まる!
竜斗のデビュー戦だ!




