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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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新しい生活

 

 父が運転席で待つ車に、母と一緒に後部座席に乗り込んだ。

 

 十月上旬の朝、日差しが強くまだまだ暑い

 父が車のエアコンのスイッチを入れながら車を走らせる。


「日本の十月ってこんなに暑かったか?」

「なんか、四季が無くなったなんてニュースで言ってたわ」

 

 父の質問に化粧をチェックしながら受け答える母の何気ない会話を、歳とると健康と季節の話ばっかりなんだなぁと心の中で思いつつ、車の外を眺めた。

 

 学生服姿の中学生が、まばらに同じ方向に向かって歩いている。

 

 まだあどけない日本の子供達が、お揃いの白いワイシャツと紺のブレザーを着て登校している。

 

 ちょっとぉ!

 可愛いやん!

 

 あ、私も一緒か!

 上から目線してる場合ではない。

 

 朝、姿見に映る(うつる)自分の制服姿を見て吹き出しそうになったのを思い出した。


 登校の様子は学園ドラマで見たことある光景だったが、なんか思ってたのと違う〜

 

 この中に数名はいるはずの、髪の毛がとんがってて真っキンキンだったり、カバンがぺちゃんこのヤンキー?が見当たらない。

 

 カバンはみんな海外でも人気のブランドのリュックや、お洒落なスポーツバッグを持っている。

 

 それに、スカート超ミニのJK

 あ、JCか

 

 スカートが長くて化粧が濃いスケバン?も見当たらない

 

 あと、パンをくわえて走ってる女子もいない

 

 そっか、確かそんな風の人達は決まって遅刻するんだったな

 まだ、登校する時間じゃないよね。

 

 ま、とにかく日本の学校生活はドラマ等見まくって予習してきたのでバッチリだ!

 

 少しだけだが、スカートの腰を巻いてみた

 転校早々にあまり派手にやると、目をつけられる?らしいから少しだけね。

 

 そう、私は転校生

 

 しかもアメリカから来ました。

 

 両親は日本人で、もちろん私も純日本人

 

 私が二歳の時に父親の仕事の都合で渡米

 つい最近、また父親の仕事の都合で帰国した

 なので、十数年アメリカで過ごしたことになる。

 

 生まれて初めて喋った言葉は日本語だったらしいので、母国語は日本語ってことになるのかな

 でも、すぐに英語も話すようになり

 読み書きは両方ほぼ同時に会得した、漢字も日本人の人並みには書ける。

 

 これは…いわゆるバイリンガルってやつだ!

 

 英語は何も苦にならないので、小学校中学校は日本人学校ではなく現地の普通の学校に通った。

 

 学校とは別に、塾みたいなところでアメリカでは習わない国語と社会、歴史等を勉強したので、日本の文化はある程度把握してる。

 

 日本のアニメやマンガ、ドラマやバラエティ等、大好きでアメリカで観れる範囲だが幼少期の頃から良く見ていた

 帰国が決まってからは、更に観まくってこっちでの生活の予習を重ねた。

 

 食事は母が料理の達人なので、日本食は毎日一回は作ってくれてたし、料理の作り方やレシピ等も教わり問題ない。

 

 箸の持ち方には自信がある

 あと、ラーメン大好き!

 ちゃんとすすれます!

 

 アメリカの友達との別れは悲しく、ハグして一応泣いてはみせたが、それ以上にブッチギリで日本での生活が楽しみで楽しみで…

 

 帰国万歳!

 

 プリクラにUFOキャッチャー、カラオケボックス、太鼓の達人、ポケモンセンター

 有能なコンビニ、お洒落なドラッグストア、百均、家系ラーメンに回転寿司

 

 新幹線にも乗ってみたい

 

 この前夢で、旦那様が新幹線の運転手で私が新幹線の中でビールとお弁当を売ってた!

 

 やばいねこれ、正夢になるかな

 

 いや、この前サスペンスドラマ見たからだな

 日本の鉄道は内緒で一度おりても、新幹線で追いつくのでアリバイが崩れるらしい

 クライマックスは断崖絶壁で泣き崩れる


 なんか、旅行気分で帰国してるわ。

 

 あ!ウォシュレットは既に経験済みです。


 アメリカと日本では学年制度が違う

 日本で言う早生まれではない私は、実はもう中学校を六月に卒業している。

 

 高校は子女編入審査&試験…だったかな

 

 ネーミングは忘れたが、それらをパスしているため来春からの行く高校も決まってる

 なので、この中学校では正直やることはなく日本に慣れる意味で通うことになる。

 

 まぁ、でもテストとかは受けるけどね

 こっちでの学力知りたいし…


 

 車はすぐに中学校に到着!

 

 学生達を吸い込んでいく敷地内を、車で掻き分けて突っ込んで行く。

 

 転校初日は保護者同伴なので車で来たが

 明日…いや今日の帰りからは徒歩だ

 徒歩10分いや15分かな

 チャリ通?もだめ。

 

 めんど!

 

 車だとすぐなんだけどなぁ

 

 アメリカでは、徒歩通学なんてあり得なかった

 親の車での送迎かスクールバスが普通

 日本はそれだけ治安がいいってことだね。




 応接室なのか校長室なのか、とにかく偉そうな部屋に招かれ

 偉そうな人が二人で入ってきて挨拶が始まった。

 

 髪の毛薄くて小太りで髭生やしてる人

 はいこれ絶対校長!

 

 もう一人は白髪七・三分けで眼鏡で細めの人

 はいこれ教頭!

 

 ビンゴでした、予習バッチリOK!

 

 こちらの挨拶も終わり

 みんな座り、お茶が出された

 厳密に言うと大人はお茶だが、私は水

 水かよ、お茶じゃないのはわかるがそこはオレンジジュースとかにしてよ

 水って、まぁ日本の水は美味しいが! 

 

 お茶菓子も出された

 ザルみたいな皿にお煎餅が乗ってる

 このタイミングで誰が食うんだよ!

 と思っていると…

 

 父がバリボリ食べ始めた。

 

 マジかよ


「あら、そんなガッツいて、私が朝ごはん作ってないみたいじゃないのよぉ〜」

 と、母がコロコロ笑いながらツッコむ

 

 大人達の緊張がこれで一気に和みだす

  

 母は、普段オットリほんわかしてるが、実はキレ者だ

 頭の回転が早く、人の気持ちを察知して動くのが長けている

 しかも、娘の私から見ても綺麗でスタイルも良い

 年齢的に考えたら、かなりのハイスペック!

 

 父は、まぁ豪快一直線で性格も容姿も熊みたいな男

 

 母が、昔はイケメンだったのよとうるさいので、写真を見せてもらったら、ホントにイケメンだった。

 

 他人しか見えん

 

 でも、よーく見ると確かに面影はある

 そんなデコボコな夫婦だが、仲は良い

 デコボコだからいいのかな。

 

 そして私は…

 

 性格は自己分析出来てないが、容姿はまぁまぁだと思う

 目鼻立ちははっきりしてるし、まだあまりメイクしたことないがキッチリメイクしたらかなりイケんじゃね?って自負している。

 

 スタイルも悪くない…よね

 

 一応は、両親の良いところ頂いてるのかなって感じ。


 

 そして、またもう一人ノックして入ってきた。


「失礼します、3年A組担任の清水です」

 

 見るからにおばさんだが、細身で短髪でシュッとしてるせいか、カッコよく見える。

 

 おっとー

 

 トラックにむやみに突っ込むロン毛が担任の3年B組期待してたわー!

 

 なんて、心の中で笑ってると


「そろそろ時間ですけど、よろしいですか?」

 と、うながされ貴賓室を後にした。



 

 スタスタ進む先生の後を、リュックのショルダーベルトを肩の辺りで両側を少し引っ張りながらテクテクついて行く。


「この街にはもう慣れた?」

 質問を背中越しにしてくる


 いやいや、街どころか日本にまだ慣れてねーわ

 とは、言えず


「えぇ、まぁ」

 と、とりあえず相槌で返しとく。


 

 教室の並びに入り廊下を歩いてると緊張してきた

 窓ガラスが割れてたり、芸術的な落書き等ない

 それどころか、マジ綺麗

 

 ジャパンクオリティー凄っ!

 

 トイレ綺麗そう、ウォシュレットついてるのかな?

 

 ん、なんだこの巨大なエレベーターは!

 

 後から聞いたら、給食を運ぶ専用らしい

 

 凄すぎる

 

 そんなんで、和らいでいた緊張も

 教室の前に着くといよいよMAX

 先生と入ると、騒がしかった教室内が一気に静まり返った。


 

 私は教壇の前に晒される

 先生が後ろの黒板に

   

      星川杏子

 

 と、書いて、手についたチョークの粉をはらいながら

「ホシカワキョウコさんです」

「アメリカのボストンからの転校になります、慣れない点が多々あると思うので皆さん助けてあげてくださいね」


 一瞬、いや三瞬くらい間があった後


「はーい」

 

 と、まばらに返答が返ってきて

 パチパチと拍手がチラホラしてきた。

 

 みんな固まってる?

 

 特に男子は、固まりまくってる

 私の美貌に見とれてるのか?

 女子は、オロオロしてるように見える

 大丈夫、あなたの好きな人は取らないよ。


 

「よろしくお願いします」

 

 ペコリと慣れないお辞儀をしながら挨拶すると

 拍手が盛大になった。


 

 先生に、席を指定されてリュックを前に抱えて向かう

 転校生お決まりシート、通路側の1番後ろの席だ。

 

 席に向かっていると

 女子特有の聞こえるか聞こえないくらい

 いや、ガッツリ聞こえるヒソヒソ声で


「帰国子女ってこと?」

 はい、そうです。


「英語ペラペラなのかなぁ」

 ペラペラどころの騒ぎじゃありません。


 と、心の中で返事をしとく。

 

 席に付き、通路一列分離れた隣のお猿さんみたいな男子にペコリとして着席した。

 

 お猿さんは他の男子に冷やかしを受けている。

 

 座ってからも


「めっちゃ可愛くない?」

「めっちゃ綺麗」

 

 女子のヒソヒソ話が鳴りやまない

 

 うんうん、みんな良い人


 先生が手をパンパンとして

「ホームルーム始めまーす」

 

 自分の机を見ると、落書き彫りが賑やかにある

 それをニマニマと見たあと顔を上げた。

 

 さぁ、いざ日本の中学校

 新しい学校生活のスタートだ!


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