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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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17/55

お手紙付きグローブ

 

 翌朝


 いつものように支度してリビングに向か…


 あ、そういえば…


 昨夜、母が父を詰めてた


 まぁ、予想通りそうなる


 もう寝ようかなとベッドに潜ってたら、かすかに聞こえてきた


 興味あるので、一旦起きてドアの近くで耳を大きくしてちゃっかりやり取りを聞いた



「何よあれ!そもそもなんであんな無造作に置いてあるのよ!、杏子に見られちゃったじゃないのよ!」


「え、ちょ、待ってくれ」

「待たないわよ、そんなに金髪がいいならアメリカに戻ればいいじゃない!ひ、と、り、で!」


「いや、その、あれだよ、帰国する時に、ボストンの連中がシャレでお土産だって、渡してきたんだよ!」

「ふぅーん、もっともらしい嘘ね」

「本当だって!」


「じゃあなんで捨てないのよ!なんで、丁寧に段ボールに収まってるのよ!」


「いや、それはその餞別(せんべつ)を捨てるわけにはいかねーだろ」

「はっ?捨てなさいよあんな物!」


「この前も、杏子に昔話して、バカじゃないの!」

「えっと、ほら、あれは杏子が落ち込んでたから、笑い話でもしてやろうと思って」


「はあ?あれは笑い話になるの?あなた頭おかしい?」

「いや、じゃなくてその、涼子もキレるんだよぉ的な」


 そのあともクドクド続いてたが、終わらないので私はとっとと寝ての〜朝だ

 こりゃ、雰囲気悪いぞぉ



 恐る恐るリビングへ


「杏子おはよ〜、朝ご飯出来てるわよ」


「あ、そうそうグローブの件、お父さんに話したらオーケーだって、ね、良いわよねお父さん」


 んんん?どした?

 まさかの機嫌がいいんだが


「お、おおう、グローブな、良いぞ、春樹君ってあの特大ホームラン打った子だよな?全然ノープロブレムだ!ガハハハ」


 なんだよ、昨夜散々詰められてたのに、ケロッとしてる


 しかも、母のフリにちょっと落ち着きない感じ

 大人ってよくわからん




 ってなるほど、私はもう子供ではない



 これあれだな

 想像したくもないが…

 喧嘩したあと燃えちゃった系だな


 ま、いっか険悪ムードよりはマシだ


「あ、お父さん、佐藤キャプテンどうだったの?」


「おー」


 父が読んでたスポーツ新聞を畳んだ。


「予想通りヘルニアだったよ、ちょっと重症かな、痛みが蔓延してて、背中の痛みと勘違いしてたみたいだ」


「今後どうなるの?」


「一応、内視鏡手術の適応内だから完治目指すなら手術だ、でも最後の夏に間に合わない可能性も出てくるから、本人がどうするかだな」


「佐藤君は、高校野球で終わるようなポテンシャルではないから手術はするだろう、あとはタイミングだ」


「まだ若いから、とりあえず夏までごまかす方法もある」


「そんなことできるの?」


「うん、まぁパフォーマンスはどうしても落ちるとゆうか、イニングは今までみたいに多く投げれないな」


「そうなんだぁ、でも佐藤キャプテンいないと正直厳しいね」


「そうだなぁ、佐藤君はバッティングはどうにか今まで通りに持っていけると思うけど、ピッチャーの方がどうなるか…ピッチャーがもう一人成長してくれないとあのチームはキツイな」


「だよねぇ」


「でも、トニーに昨日報告したら、なんかあいつプランがあるとか言ってて、あまり落胆してなかったんだよな」


 なんだろプランって、てっきり春樹さんをピッチャーにするかと思ったらサードだし、他の人で期待できる人いるかなぁ


 悪いけどいない気がする。


「今週の金曜日に、佐藤君の件を名取さんとトニーを交えて今後の方針を打ち合わせすることになったからな、杏子も頼むぞ、俺は立場上、同席できないからな」


「うん、わかった、もちろん佐藤さんも来るよね」

「うん、来る、佐藤君のお母さんも来るって言ってたぞ」


 マジかキャプテンのお母さんも来るのか、実はチャラいのチクってやろうかな




 火、水、木と何事なく平和な練習が続き



 そして金曜日


 会議室を借りて、ミーティングが始まった。


 事前に中学生が通訳すると聞いていたのか、佐藤ママの二度見攻撃はなかった。


 てか、佐藤さんのお母さん、シャンソン歌手だ!

 

 このミーティングのあとはディナーショーに行くので、メイクや格好が半分出来上がってて、格好いい、最初はオペラ歌手かと思ったらシャンソンだって!


 でも正直、違いがわからん


 それは今はいいか


 佐藤さんのお母さんが野球好きで、その影響で野球を初めたキャプテン

 お母さんの想像以上に野球が上手くなっていく息子が、本当に自慢だったらしい。


 ただ、その期待が息子を苦しめてたのだと、猛省してた

 病院行くと言われるまで、全く気付かなかったらしい


 今回は、お母さんも息子の治療に家族として協力したいと思い、同席することになった。


 家族の協力はありがたいね、キャプテン


 ホントにどうでもいいんだが、二人顔ソックリ

 お母さん髪の毛ベリーショート

 もうね、マジで笑いそうになるくらいソックリ



 さて、肝心の今後のこと

 手術をすると、夏に間に合うか間に合わないかホントに微妙


 医師が進めてきたのは、若いからオフシーズンの間にある程度回復は見込める、その状態を見ながら調整していく方法だ、そうこれは父の言うごまかしってやつ


 これだと、故障してる部位的にピッチャーのパフォーマンスは多少落ちるが、バッティングは保てるとの見通し


 佐藤さんが選んだのは、ごまかし


 やはり、夏に間に合わないのは本人が一番辛いしチームにも迷惑かけるからだ。


 トニーも名取監督もこの選択には同意した。


 ただ、夏が終わったら手術しようとトニーは進めた

 そう、佐藤さんが高校野球で終わるような選手でない


「佐藤、今まで無理させて申し訳なかった、でもこのチームには佐藤の力が必要だよろしく頼む」

 と、名取監督は謝罪するが、チーム状態の本音も漏れる


 今後の方針が決まったので、トニーが分厚い書類を佐藤さんに渡した

 そこには、事細かに練習メニューや身体のケアがびっしり書かれてる。


 トニーが出したが、書類は日本語なので、これはおそらく父が作った書類


 立場を考えた上での策


 いつのまにか、こんな分厚い書類を用意している父は本当に尊敬出来る


 熊だし、喧嘩のあと燃える系だけど


 物置きにエロいやつポン置きする人だけど


 過去に母をカチキレさせた理由が気になるけど



 高校野球は十二月から三月までオフシーズン

 練習はもちろんするが、対外試合は一切ない

 この間は完全別メニューで佐藤さんは治療にあたることになった。


 メニューの内容で、特に重要な部分をお母さんにも説明して、このミーティングは終了。


 呼んであったタクシーに乗り込むと、お母さんはディナーショーに向かった。


 これで、佐藤キャプテンの件はひとまず落ち着く、とゆうか順調に回復するのを祈るだけだ。


 いや、祈るしか出来ない



 このキャプテンの件は、その日練習していた部員みんなにも伝えられた、覚悟はしてたのか動揺はなく、今までノブに頼りすぎてた、俺達もっと頑張らないと、と士気は高め


 でも、私同様に不安もあるだろう


 ここからは、トニーの出番だ

 そのプランとやらに期待するしかない!




 そして、運命のプレゼントフォーユーの土曜日


 メッチャ早起きした


 高校で春樹さんを待ち伏せするためだ!


 作戦としては、駐輪場で待ち伏せして、捕獲したら人気(ひとけ)のないとこに誘って襲う…じゃなかったグローブを渡す!とゆう、なかなかのミッション!


「じゃあコレ渡してね」

 と、母から例の(ブツ)「渡す物」を渡された


 それは……手紙だ!


 年齢考えろよ!と、ツッコミたくなるピンクの可愛い封筒


 それよりも気になる手紙の内容


「なんて書いてあるの?」

 と、まぁ無駄な質問をしてみる

「内緒よ、私と春樹君だけの秘密」

 ですよね、クソっ


 リナさんからもらったジャージに名取監督からもらった野球部の帽子をかぶり、いざ出陣


 あ、そうそう、監督が私とトニーに新品の野球部の帽子をプレゼントしてくれた!


 普通に嬉しい!


 爺よ!サンクス!




 駐輪場で待機!


 出来れば一人で現れて欲しい


 あと、リナさん先にこないで、話がややこしくなる


「杏子ちゃんおはよう!早いね」


 ん、誰?あ、大沢さんだ

(ダイ)さん!おはざいます」


 最近は部員のみんなは通訳さんではなく、杏子ちゃん、星川ちゃん、キョウちゃんとフレンドリーに呼んでくれるようになった。


 うれしいね


 私も呼びやすい人は、サン付けだがあだ名で呼ぶようになった。


 そういえば、ゴー君はまあまあ最初からゴー君って呼んでるな、ゴーさんだと変だし、そこはゴー君でしょ


 てか、大沢さんチャリ通だったの?けっこう距離あると思うんだけど…


 大沢さんちは知らないが、そんな近くないはず

 ま、いっか、すまぬ副キャップ早く行ってくれ



 そして…


 待ち人来たる!


「お、キョウちゃんおはよう」


 爽やかな笑顔で颯爽(さっそう)と登場

 そう、春樹さんはリナさんの教育のおかげで私のことをキョウちゃんと呼んでくれる。


 でも、春樹さんのことはまだあだ名では呼べてない


 恥ずかしい?


 ノンノン


 私にはちょっと野望がある

 って、今はそこはどうでもいい


「春樹さんちょっといいですか?」


「ん、なに〜?」

 と、こっちを振り向きながら、自転車を跨いでた長い足の片方をフワッと回し自転車から降りる


 クゥ〜たまらん


 ブルブル


 落ち着け、興奮してる場合じゃない


 自転車を止め、カギをカッチャン


「こっち来てください!」人気のないとこに誘う

「え、え、え」


 なんか、戸惑ってる


 もう!


 手首を掴んで引っ張る!


 グイグイ引っ張ってく…あれ、引っ張るとその手を逆に引っ張ってついてくる、ただ手を繋いでるだけみたいじゃん


 面白いなこの人




 暗いとこ、到着


 ん、あれ、この状況告白するみたいじゃない?


 もう告っちゃうか


 いや、ダメダメ


「あの、これどうぞ、あとこれうちの母からです、呼んでからその巾着袋開けてください」


 ラッピングはしてないが、グローブ用の巾着袋に入ってるグローブと手紙を渡した


「え、う、うん」


 戸惑いつつも、封筒を封してる可愛いシールを外し、中から可愛い便箋(ビンセン)を取り出す


 マジで、歳考えてくれ母上


 何枚かに分かれてる手紙を食い入るように見る春樹さん



 何度か見返してる



 戸惑ってた顔も、幸せそうな優しい顔になってきた


 終わると、便箋を綺麗に封筒に閉まって、バッグに大事そうに入れる

 続けて、巾着袋からグローブを取り出す



「おおーー!」


 思わず、感動の声が出る春樹さん


 良かった嬉しそうだ


 グローブを止めてあるバンドを外す、このバンド、実は私のやつでピンクだけど、ここだけぐらいは私の物を使って欲しくて入れ替えた


 グローブを手にはめて、挟まってたボールをグローブにパンッと投げて感触を確かめる


 今度は手でポケットを叩きながらパカパカ


「凄く良いよ!ありがとう!遠慮なく使わせてもらうね!」


 ほっ、よかった、母ありがとう

 と、思った瞬間だった


 春樹さんがハグしてきた!


「はへぇ」


 やば、変な声でた


 ギュッとしてきた


 こんな強烈なハグは初めて


 中三の私はどうして良いかわからなかったが

 素直に身を委ねた


 ドキドキ

 ドキドキ

 ドキドキ


 ハグが終わった


 そこそこ長かった、これってもうハグの域を越えて抱きしめじゃない?


 ハグが終わってもドキドキが止まらない


「じゃっ行こっか」


 ん、あれ、意外とアッサリ


 もう!もうちょっと余韻に浸るとかないわけ!


 まぁ、でも無事ミッション終了


 良かった、良かったのかな?

 てか、いきなり濃いめのハグ?

 マジでビックリした

 


 でも、これを機に私達は一気に仲良くなった。


 ストレッチを始める春樹さんが、一緒にやろうと誘ってくれる


 私の方が身体硬くて恥ずかしいんだが!


 春樹さんが背中をグイグイ押してきて、私は悲鳴を上げる

 みんな、それ見て笑ってる


 ランニング、ダッシュも当たり前のように付き合い


 キャッチボールの準備になると

「キョウちゃん!」

 と、呼んできて持ってるボールをクイックイッとしてキャッチボールしようよと合図を送ってくる


 グローブの感触を確かめながら、キャッチボールする春樹さん


 横でキャッチボールしてる、ゴー君が

「え、ハル!どうしたのそのグローブ!」

 と、気づいた


「う、うん、頂いた」

「マジか」



 キャッチボールが終わり、ゴー君がまた近寄ってくる


「見してーグローブ、うわっスラッガーじゃん!」

「ウッチャン!こっちきて、ハルのグローブ、スラッガーだよ」


 ウッチャンとは、あの女癖がよろしくない羽堂(うどう)さんだ」


「あれ、これ鳥谷モデルじゃん、いいやつだよ」

 女を見るかのようにハルさんのグローブを見つめて話す羽堂さん


「ほら、ここ、ここが俺のと違うでしょ」


 ん、え、気づかなかったけど羽堂さんもまさかのスラッガー

 春樹さんと羽堂さん、グローブメーカーがオソロになった。


 女癖までオソロになるなよ、羽堂さんには悪いがちょっと複雑な乙女心



 みんなに解放され、キャッチボール後のルーティン、25球の投球練習を初める

 この前、指示されてから欠かさず行っている夫婦の共同作業


 だか、少しトニーの追加指示も加わり、たまに動くボールを投げてくる、寸前でクイッと動くボール


 これ、一応投げる前にジャスチャーで教えてくれるんだが、意外と厄介、上手くミットを鳴らせない


 投げ始めは良かった、クイッだったから

 でも、またこれもコツを掴んじゃったのかな、エグいくらい動くようになった、クイッからグイーに変わった


 ピッチャーにしちゃえよトニー、何してんだ




 投球練習終え、春樹さんが近寄ってくる


「このグローブ凄く使いやすい!本当感謝、ありがとね」


 ドンドン近寄ってくる


 え、え、こんなとこでまたハグ?

 み、みんなに見られちゃうよ


 ドキドキ

 ドキドキ


 手を差し伸べてきて、ブンブン握手


 握手かよ


 無駄に焦ったわ


 握手でも全然嬉しいんだが、ハグに比べると物足りないので、ちょっと残念な気持ちになる



 午前中の練習はシートノック等を行った

 春樹さんはサードの守備をなんなくこなしていた


 グローブも問題無さそう


 最初の土日が嘘のように平和な練習が続く

 まあ、これが普通だよね。




 ランチターイム!


 春樹さん、リナさん、ゴー君、コバ(小林)さん、マッキー(牧野)さんと私の六人であづまやでランチ!


 ついつい、みんなのお弁当に目が行く


 リナさんとゴー君はお揃いのお弁当

 これがまた手がこんでるとゆうか、とにかく美味しそう

 これ、リナさんが作ってるんだよなぁ

 人は見かけによらない、いや、黙ってれば作れそう


 とにかく!リナさんは黙ってればいい嫁

 でも、黙れない人


 コバさん、マッキーさんもちゃんとしたお弁当


 ちょっと心配になるのが、コバさんのお弁当

 うんとね、小さい、女子か!

 なんなら、私のお弁当より小さい


 もっと心配になるのが…

 春樹さん、さっき購買でチンしてきたコンビニ弁当


 うーん、やっぱり家庭環境が謎だ


 確か、この前の土日もコンビニ弁当持ってた

 茶色いコンビニ袋なのですぐ分かった


「春樹さんコンビニ弁当なんですね、お母さん忙しいんですか?」


 失礼かもしれないが、気になるのでチャレンジしてみる


「う、うん、うちの両親はお店やってて、土日も仕事なんだよね」


 そか、それならしょうがないよね


 ふと、リナさんとゴー君のお弁当に目がいく

 私の妄想シリーズ、私がお弁当作ってあげるの件を思い出した、キャッ


 私も、お母さんに教えてもらおうかな


 いや、まだ早いか


 早いってなんだよ、将来付き合うのが約束されてるのかっ


 妄想に自分でツッコミを入れる


「ハル〜!んで、誰にグローブもらったのよ?」

 ゴー君が当然の質問


「え、うん、うんとね」


 なんて言うのかなぁ、と春樹さんの返答を水筒のコップに入った麦茶を飲みながら待つ


「あー、それねキョウちゃんからもらってたよ」


 へ?え?なんでリナさん知ってるの?


「そんときね、うんとね、抱き合ってた!キャハ、イヤーン」


「ブフォッ!」


 吐いた、麦茶吐いた


 なんなら、隣のコバさんに思いっきりかかった

 コバさんが!目がクワッと見開いている!


 え、それなんで見開いてんの?


 麦茶吐いてかけたから?抱き合ってたから?


 いや、今それどこじゃね


「ちょっとぉ、キョウちゃんマジドリフじゃん」


 リナさん、あんたも飲み物飲んでる時びっくりしてみな、マジ吐くよ


「マ、マジで?神聖なる学校で何やってんだよお前ら!ギャハハハ」

 ゴー君、言ってることはまともだけも、メッチャ爆笑してる


 おいおいおいー


 どんどん自分の顔が赤くなる


「あ、いや、抱き合ってたんじゃなくて、アメリカ式のご挨拶ハグだよ」

 春樹さんがケロっと返す


 なんだよオメェ、人のことそこそこの時間抱いといてそりゃねーだろ


 初めて春樹さんに殺意湧く


 まぁ、でもそれが一番の言い訳か

 でも、あれは…ご挨拶ハグなのか?


「何言ってんのハルちゃん!ご挨拶ハグってのはこう」

 ゴー君と向かいあい、顔を交差させて背中をポンポン


 うん、それその通りです


「でもね、ハルちゃんとキョウちゃんはこう!」


「ゴーくんちょっと腰に手を廻して、そう、そんでこう!からのこう!んー」


 リナさんが、誇張しまくりの抱き合いシーンを演じる


「リナ、それはやり過ぎだよ フハハハハ」


 春樹さん、えっと笑ってる場合ですか?


「グローブのお礼にハグしただけだよ、キョウちゃんアメリカ帰りだからね、アメリカ式の挨拶」


 そっかぁ、ちょっとショック


「本当に挨拶だけのつもりでハグ?」


 リナさんが斬り込む


「そ、そうだよ」

「じゃあさ、誰にでも挨拶でハグするのあんな濃厚に」


「え、だからアメリカ帰りだから…」

「ふぅーん、じゃあアメリカ帰りなら誰にでもするのね?ハルちんそんな男だったけ?」


「ハル、これはリナが言ってること合ってるぞ、負けを認めるしかないね、ハハハハ」

 なぜか、ゴー君も笑いながらだけど加勢


「え?ってことはハルさんハグ好きなんすか?」

 おいマッキー、いつも空気読めねーな


「どうなのよ、ハルちん!」


 どうなの春樹さん!私も心の中で問いかける


「あの、その、そ、そんなこと他の人にはしないよ!」


 キタ、言った!


 もう、抱き合ってたのがバレたのが、どうでも良くなってきた


「ふぅーん、じゃあキョウちゃんだからハグしたのね」


「そうだよ!」


 ヨシ、欲しかったやつ言った!


「おっけ、じゃあこの話おーわり!」

 リナさんはさすがだ、良いとこで話を終わらせる


「ん?ってことは春樹さんは杏子ちゃんのことをす…」

 バコっ!


 相変わらず空気の読めないマッキーさんに肩パンを入れるリナさん


 そう、その先は二人だけの時にしてほしい


 てか、嬉しくて今なら空飛べそう!


 リナさんの公開処刑から始まったこの話が、いつのまにか、私には良い話になった!


 リナさん、一生ついて行きます!


 ふと、コバさんを見る

 えーー、目が眠たそうに戻ってる!

 この流れつまらなかったの?

 第三者的には面白い話なんだが!


 じゃあ、さっきのクワッ!は、麦茶ぶっかけの方?



 落ち着いたあと、私からみんなにグローブの経緯を説明した


「そっか、キョウちゃん俺からもありがとうな、ハルは事情あって、好き勝手道具買えないからさっ、ナイスタイミング!」

 ゴー君からもお礼言われた


 うーん、でもやはりなんかあるのかぁ


 

 ランチタイムが終わってグラウンドに戻る

 リナさんに手を繋がれ、ブンブン振りながら二人で歩く


「よかったねキョウちゃん!ハルちゃん好きだって!」

「いや、そこまでは言ってないですよ」

「んにゃ、言ったようなもんでしょ!」


「んでね、あのハグはさっ、多分最初はホントに挨拶のつもりだったと思うのよ、でもねハグしたら最後、気持ち乗って抑えられなかった感じだったね、ギュッてしてたときのハルちゃんの顔は恋する男の顔だったな、挨拶の顔じゃない、うん」


 そうなのかぁ エヘヘへへ


「キョウちゃんのニタニタまたいただきましたー」


「もう!ん?そういえば、なんでリナさんあの場に…あ!覗いてたんですか!」


「アハ、だってさぁ学校着いたら、キョウちゃんがハルちゃんの手を引っ張って連れ去るの見えちゃったんだもん!そりゃあ尾行するでしょ!もう探偵になった気分だったね、名探偵リナは尾行が得意であります!」


 敬礼のポーズを取ってドヤってる


 探偵は敬礼しない


 たぶん、刑事と間違えてる


 でも、確かに尾行うまいかも

 私は散々、周りを気にしながら春樹さんを暗がりに連れ込んだ


 リナさんの気配には全く気付かなかった


「でも、私ナイスキューピットじゃね?これで関係が一歩先に進んだっしょ」


「確かにそうですけど、リナさんのキューピットの矢は曲がってません?どこ飛ぶかわからなくてハラハラするんですけど」


 ホントそう、どこから矢が飛んでくるのか分かったもんじゃない


「確かに!メッチャ曲がってるかも!でも他の人に当たることはないようにするわ」


 そう言う意味じゃない


 私達の応援の仕方が危なかっしいってことだ!


「他の人に当たっても私は春樹さん以外行きません!」

「わおーキョウちゃん言うねぇ、最近積極的じゃん!」


「でもさぁ、ハルちゃんの手を引っ張ってる時のキョウちゃんの顔がさぁ」


 なんやねん


「マジど変態の顔 ウケる」


「しかも!抱かれてる時のさぁ、キスしてもいいですよーの顔 ウケる ンー、みたいな?」


「もう!そんな顔してない!」


 先輩の胸をポカポカする私


「やめろよ、セクハラすんな変態中学生!」

「あったまきた!モミモミの刑リベンジ!」


 先輩の脇腹をモミモミする

「やめろー!キャハハハハハ」


 ふと思った


 これ、ランチタイムに抱き合ってたのバラされての、この流れ

 全てリナさんの計算だったんだな


 やはり、この人が放つ矢は怖すぎる。



 じゃれ合いが終わり、また手を繋ぎ、私は少しリナさんに寄りかかりながらグラウンドに向かって再び歩き出した。


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