夫婦の共同作業開始
「よろしくお願いしまーす!」
部員達が綺麗な礼をする
対面していた、監督、トニー、私が礼で返す
トニーお辞儀下手くそ問題
どうにかならんかな、昨晩教えとけばよかった
部員達はランニングの準備に入る
「トニオ!」「おいトニオ!」「アンタだトニオ!」
リナさんがトニーを呼びつける
トニオじゃないけどほっとく
え、俺?みたいなジェスチャーでトニーが気づく
「そう、あなたトニオ、ちょっ、こっちカモン」
「ユーの挨拶ノーよダメダメ」
「あなたのこれノーダメ」
リナさんが誇張したトニーのお辞儀を真似する
トニーが「WHY?なに?」みたいになって、私に目で助けを求めてる
面白そうなので、シカトしてみる
「あなたの、これだめねオーケ?」
「グッドな挨拶コレ!」
と、手本を見せる
「ルック!コレ!」
すると、トニーが真似する
お!良くなってきてる
「まだダメ、バツ!こう!」
トニーが今度はちゃんとお辞儀する
「オーケーよ!それそれ!ドーユーアンダースタンド?」
また、トニーがお辞儀してサムズアップ
ほぼ日本語でマスターさせちゃったよ、すげぇよリナさん
気づくとそんなのお構いなしでランニングが始まった。
すると背後から、ノックバットで肩をチョンチョンされた。
「おい、走ってこい!またバッティングピッチャーやるかもしれないからな!ほれ行け!」
名取監督がアゴで指示してくる
えーーーウソでしょ?
「ほれ!」
「はい」
うー、しょうがなく後を追う
真っ白な練習着集団の最後を中三女子がオマケのようにくっついていく
絶対、昨日睨んだの根に持ってるよね!
ランニングが終わりダッシュになる
もういいかなと、監督を見るとアゴでしゃくってくる
チキショウ!
ダッシュ終了
久しぶりなのと、高校生相手なのでグッタリ
ゼーハーゼーハー
みんな、私見て笑ってる
クソ、見せもんじゃねー
あ、春樹さんも笑ってる
ならいっか
トニーはまだリナさんと喋ってる
しかも、なんか二人で笑ってる
え?なんか通じ合ってるの?あの英語力で?凄い
キャッチボールの準備が始まると、トニーが「じゃね」みたいな合図をリナさんに送りこっちに来た。
いよいよすげえな
「キョーコ、ハルキを呼んでくれ」
はい、かしこまり
春樹さんを呼んでくると
「キャッチボールはキョーコとやってくれ」
え?
私と春樹さんが見つめ合う、うん見つめ合った
「キョーコとやってもらうには意味がある、遊びじゃないからな、しっかりやってくれ」
嬉しいけど、疑問が残る
まぁ、考えがあるんだろう、あ!
「キャッチャーミット使う?」
「いや、まだいい」
「うい」
普通の内野用グローブを出した
ウキウキだが、トニーが近くで見てるので頬をたるませながらも真面目にキャッチボールを始める。
シュルルルルと回転の良いボールが私のグローブに吸い込まれていく
キャッチボールが進むと、あることに気がついた
コントロールがメッチャ良い
私が相手だから加減して投げてくれてるんだけど、マジでコントロールが精密機械
加減するとコントロールが逆に難しくなるのが普通
だけど、構えてるグローブがほぼ動かない
ちょっとグローブの位置を変えてみても、ちゃんとそこに来る
これは凄い
私もコントロールに自信はあるので、テンポの良いキャッチボールが続けることが出来る
トニーもうなずいてる
すると監督が来た
「おい、昨日の疲れか?昨日より身体の開きが早い、肘が落ちてる!ボールが泣いてるぞ!」
と、近いのに私に大声を上げてくる
マジで根に持ってるよね?
「はいっ」と一応返事をする
「えー?なーにー?」と、聞こえないぞみたいな感じで耳に手を当てる監督
昨日の私の真似してるのか爺さん、可愛くねーのよ
てか、ホントに根に持ってるこの爺さん
「はい!」
仕方なく気合いの入った声を出してみる
「ヨシ!」と言い残し他の巡回にまわった
ヨシじゃねーよ、私通訳だぞ、扱い間違ってるの!
もうこっちに、徘徊してこないことを祈る
キャッチボールの距離が段々と広がっていく中で、トニーが「ストップ!」と、私達を止めてきた。
他のみんなは遠投モードに入ってる
「キョーコ、キャッチャーミット持ってきてくれ!」
かしこまり
「ハルキ、好きなフォームでいいから、ピッチャーみたいに投げてくれ!球数は25」
「キョーコ、弾いてもいいから音だけは良い音させてくれ」
「オーケー!」
誰だと思ってんのよ!弾かないわ!
立ちながらだが、スッとミットを構える
スパァン!
良い音でた
この音で、みんなの注目を集めた
てか、構えたところに吸い込まれてくる感じ
てか、凄っ
フォームはあまり綺麗とは言えないけど、いきなりエグいボール来た
正直、これ以上速くなるとレガース無しの生身だと怖いかも
「オーケーハルキ!ナイスボール!それ以上は速くしないでくれ、キョーコが怪我するからな」
だったら何故、私にやらせてんだ?謎
てか、自分で「キョーコが怪我するから」って訳すのなんか恥ずかしいわ、距離あるから大声で言うからみんなに聞こえるし
その後、トニーは春樹さんの近くで、一球一球身振り手振りでアドバイスをする
言われた25球を完了
「ハルキ、キョーコ来てくれ」
「今日から、練習の時は今のを必ず続けてくれ、相手はキョーコじゃなきゃダメ、球数も25以上ダメ、距離はだいたいでいいが、塁間よりは離れちゃダメ」
ハルキさんが、「はいっ」と返事する
うーん、会話のタイミング的に私が訳したあと高校生らしい「はいっ」がくるから、なんか私が指示してるみたい
嫁が、旦那にゴミ捨ててきて!みたいになってる!
あ、でも他の人に訳す時も一緒か、この妄想はあまり意味がない
でも、相手が私じゃないとダメとか、色々制限あるのなんでだろ、怪我してるわけじゃないのに
「ハルキ、今まで控え選手として我慢してきたのはこっちも分かっている」
「ただ、私はハルキが控え選手で良かったと思ってる」
「おかげで身体が健康だし、しっかり鍛えられてる」
「君の才能は必ず発揮出来るようにする、今までの溜めてた貯金をおろしていくぞ!」
「コウシエン、今までずっと控え選手だったとしても、そこで出場して活躍すれば結果オーライだ」
ちょっと訳すの難しいワードでトニーがゲキを飛ばす
訳してて、私はあまり意味がわからなかった
控えで良かったなんてあるのか?
ただ、佐藤さんの怪我を思い出した
どんなに最前線で戦ってきても、最終的に怪我してしまって、甲子園に出れなかったらダメだと言いたいのであろうか
「キョーコは良い音を出し続けてくれ!君達は目標達成するまでは夫婦みたいなもんだ、協力して頑張ってくれ!」
おい、訳す時照れるだろ!
いや、これちょっと盛って訳すか
「君達はもう夫婦だ!」とかにしてやる。
グラウンドはマシン打撃が始まっている。
脇では何箇所かでティーバッティングをやっている
春樹さんも、ここからチームに合流する。
1箇所空いてたので、流れで私が春樹さんのティーに付き合う
うん、昨日と変わらず良い
心配だったけど、振りをみて安心した
むしろ昨日より良い
マシンが空いたので、「じゃっ」と春樹さんが口角をニッとしてマシンに向かった。
ニッ、と一緒にウインクされたら、おそらく倒れるところだった、昨日のリナさんのように、私はガチ倒れだが
ウインク教えようかな、日本人あまりしないよね
まぁ、あの工藤さんがやったらムカつくが…
「あ、俺もティーお願いしていい?」
ん?っておーい、工藤さんじゃん
本当はやりなくないけど、春樹さんのは、やって他の人をやらないのは、さすがに感じ悪い
あ、トニーを理由に…
トニーを瞬時に探す
えっ、リナさんと談笑してる
色んな意味でマジかよ
しゃあない
工藤さんのティーに付き合う
カキーーーン!
背後から金属の爆音が聞こえた
春樹さんかっ飛ばしたな
チキショウ見てぇー
工藤さんは相対してるので、その爆音の元を見てる
チッ
え?今舌打ちした?何この人
もうやめたい
が、しゃあなくボールを置く、打つ
やる気ないスイング
この人適当にやってんなぁ
監督はどこ見てんだよ、なんでこの人が6番打ってんの?
「あのさぁ、あのコーチが今度から練習メニューとかオーダーを決めるの?」
工藤さんがティーをしながら聞いてくる
「いや、基本的にはアドバイス程度だと思いますけど」
「あのさぁ、いきなり来てうちのチームを掻き回して欲しくないんだよね」
カッチーン
「さぁ、そう言われましても、コーチは監督からオファーされただけなので、そうゆうことは監督に言ってもらえます?」
「それに掻き回さないと強くならないから頼まれたんではないでしょうか?」
工藤さんがバットを振るのをやめ、こっちをジッと睨んできた
私もキッと睨む、いつもは意識してないが、今回ばっかりはキッ!っと意識する
ガン?の飛ばし合いだ、頑張れ私の目力
あ、先に工藤さんが逸らした ダサっ
こいつ、なんなんだ、言う割には根性ない
「それとさぁ、下手にハルにやる気出さすのやめてくれない?アイツは補欠のが合ってんだから」
プッチーン
「キョウちゃん!アッチ行こ」
「すいませーん工藤さん、誰も相手にしてくれないからって、通訳で来てもらってる人に絡むのやめてもらえます?」
リナさんが私を抱えて横にどかした
てか、リナさんの敬語始めて聞いたかも
チッ
なにこの人、舌打ち怪人?
「オイ、ヤス!(工藤)てめえなんか言ったのか?」
ゴー君もキタ、なぜか大人しい小林さんも連れて
春樹さんは背後で起きていることなので、気づいてない
黙々と快音を響かせている
「いや、何も言ってねーよ、冗談言っただけだよ」
ゴー君来たら、明らかにビビってた ダサ
工藤さんは逃げるように立ち去った
「キョウちゃん大丈夫?」
「リナさん来てくれてありがとう、私もう少しでひっぱたくところだった!」
マジでそうだった
リナさん、トニーと遠くにいたのに…ホントこの人よく見えてる
「アイツ、もうダメかもな、さすがに監督も気づくべ」
ゴー君がため息混じりで言う、気づくってなんだ?
「キョウちゃん、アイツがまたなんか言ってきたら俺に言ってね」
「あ、あとハルはキョウちゃんのこと気に入ってるみたいだから練習付き合ってあげて、じゃ」
兵隊(小林)を連れて持ち場に戻るゴー君
小林さんはピッチャーだから、別メニューなのに…
どっから連れてきた?
てか!え、どゆ意味?気に入ってる?
練習相手として?異性として?
どっち?両方?
「うーん、タブン両方?」リナさんが私の気持ちを見透かしたかの様に言ってくる。
「ったく、旦那もペラペラと、まいっか」
えっと、良くないです、中途半端です、気になります
工藤さんの件、忘れそうになったわ
でも、めんどくせえやつがいるなぁ、なんで野球やってんだろ、やめちまえ!
「よし、ハルちゃんは気づいてないな、キョウちゃんこの件はハルちゃんには黙ってた方がいいかも」
「あ、はい、リナさんがそう言うならばリョーカイです、でもなんでですか?」
「うーん、キョウちゃんが絡まれてるってなると、たぶんハルちゃんガチギレする、しかも事件レベルに、ガチで」
「たぶん、旦那はもう止めらない、昔は止めれてたみたいだけど、体格差あるから無理だって」
あんな優しそうな春樹さんがキレる、か…
昔は止められた?昔はキレたことあるってことか
「事件はさすがにやばいですね、リョーカイです」
と、なんとか普通に返したが、
やばい、ドキドキが止まらない
優しすぎるのではないか?
何を言われても怒らないのではないか?
だから審判とかやらされてたのではないか?
と、正直物足りなさも感じてた
が、一気に解消されてしまった
しかも、私のためにガチギレする?
不謹慎かもしれないが、それはそれで嬉しく思ってしまう思春期女子
「キョウちゃん?キョウちゃん!」
ん?はっ!現実に戻された私
「何ニヤついてんだよもう!」と、リナさんが腰をモミモミコチョコチョしてきた
「や、やめ、キャハハハハハ」
クソやり返してやる
コチョコチョ
「や、ちょっ、キャハハハハハ」
二人でじゃれ合ってると
「練習中にふざけてるんじゃない!」
フン、またあの爺さんか、ん、あれ?声が違う
あ!キャプテン!やばっ
「サーーセーン」と二人でペコリとする
なんでか、監督よりもキャプテンに従順な私達
リナさんが、佐藤さんにはさん付けなのがちょっとわかった気がする。
口を膨らませて腕組んで仁王立ちしてるキャプテン
マジなのか、ギャグなのかわからない
あ、春樹さんのマシン打撃みなきゃ!
ってあれ?終わってんのか〜い
てか、打ってんの牧野さんやん
また、マッキーかい!
そして、お昼休みになった。




