表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンスター協奏曲  作者: 東京小町
PR
12/47

怪しい人物

 杏子は初通訳を終え帰宅した

 

 ハァァァァ


 中学生らしくないため息が風呂場に響き渡る


 シャワーは出しっぱ


 さっきから、ため息連発


 身体の汗や汚れはシャワーで流せても、やってしまったことは流してくれない


 やってもーた、マジでやってもーた


 ガシガシガシガシ


 髪を洗う手にすんごい力が加わる


 グラウンドにいた時はアドレナリン?が出てたのか平気だったが

 家に帰り、シャワーを浴び始めたら完全に正気に戻ってしまった。


 シャワーをキュッと止め、浴槽にダイブ!


 体育座りして反省モード


 父が、たまに泥酔して帰ってきて、次の日「やっちまったー」って後悔してる時がある


 それと一緒かなぁ、でも良いよなぁ、お酒の失敗は「記憶がない!」を貫けばどうにかなるらしいから


 後悔?うーん、後悔はしてないか


 結果、春樹さんにいい方向に向いてくれたし

 でも、ちょっと調子に乗りすぎ、やりすぎ感が…


 監督を睨みつけちゃったからね!


 でも、途中、クビを覚悟したからやり切ることが出来た。


 でも、クビじゃなかった


 明日も当然行くことになる


 まず…明日どんな感じで行けばいいのか


 みんなにどの(ツラ)下げて?会えばいいのか


 普通に「おはようございまーす  エヘ」か

 それとも「昨日はサーセンでしたー!」なのか


 どっちが正解なのか、とにかく気まずい


 あと、春樹さんにドン引かれてないかな


 嫌いになってないよね、楽しそうだったもんね


 でも、春樹さんも家に帰って正気に戻って、スンッてなってたらどうしよ


 あーどしよ、熱出しちゃうか?


 一週間休めば、ほとぼり冷めるかな

 うーん、でも春樹さんとも会えなくなる

 それはそれで、生きる意欲を失う。



 お風呂を出ると、リビングで父とトニーがお酒を飲みながら軍議を開いてる。


 私はトボトボ歩きながら、空いてるソファーにドボンと座った。


 父のビールの横に置いてある、なんかヒモみたいな食べ物をつまんで口に放り込む ウマッ


 ふぅ〜


 目は一点を見つめ、口だけモゴモゴ動ごいてる


「おい、杏子!真っ白な灰になっちまってるじゃねーか!」と、父


 お、おー、なんだっけそれ、なんか昔見たなぁ、ボクシングでチーンってなってるやつだ


 って、まだ燃え尽きてねーわ!


 これで春樹さんに冷たい態度取られたら、マジで燃え尽きる


「なんだ、今日の事反省してるのか?かなりキレてたもんな」

「そういえば昔、涼子(りょうこ)にガチギレされたなぁ、あん時は殺されるかと思ったぜ!ガハハハ」


 涼子とは母のことである


 そんな母は、コロコロ……笑ってない!


 めっちゃスルーしてる

 え、今の聞こえたよね?


 なんか、何も聞こえなかったかのように夕飯の支度をしてますけど!


 地雷か?


「そんな笑い話にされるような内容ではございませんけど!」って目をしてる


 父は、気まずそうにテレビの方に顔を向けてビールを飲んでる


 おい、父よアナタはいったい何をやらかした?


 浮気?浮気か?死刑だ死刑


 落ち込んでる私を、フォローしようと思ったんだろうが、余計に場の空気が悪くなってしまった


 日本語がわからないトニーは、どこふく風でパソコンのキーボードを叩いてる


 叩いてる、めっちゃ叩いてる


 ん?まさかのゲームか?


 エンターキーをターンと押したところで、こっちを見てきた


「キョーコ、キャッチャーミットって持ってる?」


「あるよ」


「小学生の頃使ってたやつかい?」


「いや、一年前に買ったやつだよ、試合ではもちろん使ったことないけどね」


 キャッチャーが好きだった、年齢と共にキャッチャーは諦めたが、未練タラタラで去年買ってもらった硬式用ミットだ


 父の影響で、グラブはミズノ製ばっかりだか、買ってもらったミットは眼鏡の人モデルなのでゼット


 サヨナラヒットのご褒美で、父におねだりした五万円位する代物(しろもの)


「じゃあ明日持ってきて、使ってもらうから」


 え?私に何をしろと?てかミット貸すのは無理だからな


「あと、明日はもっと動ける格好でよろしく」


 え?私に何をしろと?ただの通訳じゃなかったんすか?


「もっと」って、えー

 動くのは好きだけども

 明日は大人しく反省したかったのにぃ

 そんで、ちょっとオキニの服とかで、とかも考えてたのにぃ


 私に謎の要請をしたトニーは

「じゃっ帰りまーす」

 と言って、帰った


 近所の家具付きマンションに住んでいる

 夕飯は家でピザを食べるらしい


 トニーのマンションは、家と高校の間にあるので明日は現地集合だ、父は来ない


 夕飯の後、片付けの手伝いをしている時、今日の出来事を母に報告した。


 父はソファーでガースコ寝落ちしている


「あら、そんな事で落ち込んでたの?」


「杏子は正しいことをしたと、私は思うわ」

「だって、部員さん達は協力してくれたんでしょ?それはきっとおかしいな?って思ってたからだと思う」


「みんなは立場上、言いづらいし、何も言わない方が楽だった、そこに杏子が物申して変えてくれた」

「春樹君はもちろん、他の部員さん達も怒るどころか感謝してるんじゃないかしら」


「まぁ、監督を睨みつけるのはどうかと思うけどね」


 ですよね……


「でも、祥子(しょうこ)もそうだけど、杏子も目力強いからねぇ、ただ見ただけですーで、通るんじゃない?」


 うーん、そこはそれで乗り切れそうな気がする


「そういえばお母さん、さっきのお父さんの話って…」

 と、言いかけた途端、コロコロ笑ってた母の目がキッとなり、皿を拭く手が止まった。


 やば


「杏子は知らなくていいのよぉ」


「あ、はい」


 マジで父何をした?

 母、殺し屋の目をしてたぞ


 母は私達と違って、目力はないと思ってた。


 いつも、優しそうな目をしてるから

 でも、目力は遺伝なんだと初めて気付いた。


「で、杏子はその春樹君のことを好きになっちゃったんだ?」


 ギクッ


 今度は私の手が止まる


「え、え?なんでそうなるわけ?」

 とりま、ごまかす!


「あら、違うのぉ?私には途中途中、春樹さんだーいすき、って聞こえたんだけどなぁ」


 そんなことはもちろん言ってないし、春樹さんにキュンしてるのはバレないように話した!


 はずだ…


「いや、その好きと言うか、そのなんとゆうか」


 母は鋭い女、完全否定は無駄と思い、はぐらかす方向に向けてみる


「でも、珍しいわね、杏子が一目惚れしちゃうなんて、杏子から好きになるなんて初めてじゃないの?」


「うーん、そーかも」アレ


 あ、やっちまった、乗せられた!認めちゃった!


「ウフ、よっぽど良い男の子なのかしら、今度私も見に行っちゃおうかなぁ」


 うー、自分でも顔が赤くなってきてるのがわかる。


 会わせてしまったら、母得意の匂わせトークを春樹さんにされそうだ


 キケンだ


 あ、でも母とリナさんはどんな絡みするのかなぁ、そこは楽しみ



 

 部屋に入りベットに潜ってゴロゴロ


 はぁー、明日どうしよ


 あ、何着てくか、どう振る舞うか


 やべ、これ寝れなくね?

 って思った数秒後にしっかり寝落ちしてました。




 翌朝


 目が覚めムクっと起きた


 人生初だ、目覚まし時計と母のユサユサに勝ったのは!


 リビングに行くと、朝ご飯と私のお弁当を用意してた母が手を止め、驚いてる


「恋する女は凄いわね、早起きできちゃうなんて」


 チキショ、これずっとイジられらるな


 まぁ、確かにちょっと楽しみなのが勝因かと思われますがっ


 さて、何を着てこうか、「もっと動ける格好」

 前のグラブチームの練習着あるけど、それだと気合い入りすぎだよな…





「行ってきます!」


 家を出て、チャリで高校に向かう


 帰国した時に、買ってもらったやーつ


 電動欲しかったけど、若いうちから楽するなと父野郎に言われ、普通のにされた

 前にカゴがついてて、ハンドルが横一直線の普通のキャンパスチャリね。


 カゴにバッグを入れ、走り始めはちょっとヨレヨレしながら漕ぎ出す


 トニーはなんかカッコいいチャリ買ってた


 写真見せてくれたけど、「チャリ」と呼ぶようなやつではなく、マウンテンバイクとロードレーサーを合わせたようなやーつ


 高いんだろうな、大人は金に物言わしてズルい!



 高校に到着!


 用務員さんにパスみたいなのを見せて駐輪場へ


 今日は日曜日、閑散としてるかなぁと思ったけど、そこはやはり部活動が活発な学校だ、あちらこちらから話し声が聞こえ、賑やか


 駐輪場も既にけっこう止まってる



 集合時間より、三十分位早く着いた


 ちょっと早めの方がいいよね、っていう日本人の時間前行動文化

 アメリカでは、まず考えられない、むしろ早く来ると怒られることもある。


 なので、私もしっかりその米国文化が身についていた

 だけど、日本に帰国すると普通に時間前に到着したくなっている。


 時間前行動は、日本人の文化ではなく血筋なんだ!と思う


 なので、当然トニーは来てない

 おそらく、集合時間に駐輪場に到着するであろう



 バッグを肩にかけてグラウンドに向かう


 グレーのトレーニングハーフパンツに黒のスポーツタイツ、上は白に赤いラインが入った可愛めのシャカシャカ半袖ウェアに黒の七分袖ピチピチアンダーシャツ


 帽子は前のクラブチームの白いやつ

 帽子にスポーツサングラス乗っけようかと思ったけど、ちょっとイキり過ぎかなと思ってやめた


 一応、持ってる中でのベストチョイスだと思う


 グラウンドには既に部員達が揃っていて、各々ストレッチを始めてる


 ドキドキ


 勇気を振り絞る!


「おはようございます!  アハ」


 やばっ、エヘがアハになった


「おはよう!」

「おはようございます」

 等、普通に返してくれる、よかった。


 春樹さんもいる、こっちに軽く手をあげながら「おはよ」と、言ってくれた


 朝から爽やか、ごちそうさまです。


「キョウちゃん!オハザイマス」

 リナさんも来てた、「オハザイマス」とペコリで返す


 あれ、今日はちょんまげしてない


 リナさんは普通に可愛い…黙ってればだけど!


「お、キョウちゃんやる気マンマンの格好じゃん!」

「ち、ち、違うんです、これはトニー…」

「そだ、今日お昼一緒に食べよ!じゃっ」と、倉庫に走って行った


 最後まで話を聞けよ!もう!


 みんなに聞こえるように言い訳したかったのに!


 ふと春樹さんを見る


 座り込んで柔軟を始めてる

 両足を開いてクイックイッとやっている


 後ろにスペースがある!


 自然を装い、春樹さんの後ろに滑り込んで柔軟を始める


 背後から頭の上から下まで舐め回すように見惚れる、いや観察する、どっちでもえーわ


 ち、違うの、トニーに動けるようにと言われたから、私も柔軟した方がいいかなぁって思って、そしたらたまたまここが空いてたから!


 と、自分の覗き行為を正当化する


 確かに、ストレッチシートは余り広くない

 でも、全然他も空いてたのはわかっている


 しかしまぁ…春樹さんの背筋とゆうか、肩周りが凄い筋肉


 練習着越しからでもそれが凄いのがわかる


 しかも、グニャングニャンと柔らかい


 これはもしかして水泳やってるからなのかな、他の部員、中心選手の人達でもこんな身体してない


 身体全体も凄い柔らかい


 ベターって、なってるし


 だから、あんなレーザービームを投げれるのか

 ってことは、ピッチャーも出来るんではないか?


 トニーも昨日、触ってたから気づいてるはずだ


 いや、まぁそこまで期待するのはまだ早いか

 まずはバッティングだよね


 てか、この人こんだけの身体しといて、補欠とか…

 他のスポーツとか考えなかったのかなぁ




 監督が登場


 ん、その横には工藤さん、なんでだ?


 なんか談笑してる

 ってか、みんな柔軟やってるのになんでだ?


 その後ろから、一人一年生が追っている

 ん?バッグを二個両肩に担いでる


 うわ、工藤さんのバッグ持たされてる


 元々高くない工藤さんに対する私の評価は大暴落だ


 その更に後ろからトニーが来た。


 サングラスが似合ってる


 まさかの時間前到着!父から何か言われてるな

 トニーが、来たのでスクッと立ち上がると、それに気がついた春樹さんが振り向いた


「星川さんもストレッチしてたんだ、ごめんちょっと引っ張ってくれる?」

 身体を捻って両手を伸ばして待っている


「え、あ、はい喜んで!」

 やば、居酒屋やん


 手が汗ばんでないかチェック!


 ん?


「あ、俺やりますよ、星川さんアンソニーさん来ましたよ」

 と、横から牧野さんがシャシャってきた!


「あ、あ、あ、じゃあよろしくお願いします」


 空気読めよマッキー!くそがっ

 とは、言えず引きつったスマイルでお願いした



 後ろ髪引かれる思いで、トニーに合流


 監督と、今日オフで指定ジャージ姿の佐藤さんを交え、今日のメニューについて打ち合わせ

 その間、部員達はポンチョをまた付けてくれている。


 一応、今日まで付ければもう大丈夫とのことだ

 リナさんは既に30番を付けている、気に入ったみたい


 監督は今日の午後は所用があるので、任せると言ってきた

 わからない事があったら佐藤さんと相談してくれとのこと。


 すると


「それならば、午後はこちらでピックアップした選手で内野のノックをやらしてほしい」

 と、トニーが申し出た


「もちろん良いですよ、好きにやってください、そのために呼んだんですから」


「私がいないとサボる部員もいるかも知れませんが、遠慮なく叱ってください」

 監督が私とトニーを交互に見ながらしっかり区切って話をしてくれる


「選んだ部員以外の世話はこの佐藤がやってくれますので、よろしくお願いします」

 それを聞いて佐藤さんはコクっとうなずく


 佐藤さんは休んで良いと言われたが、それでもやれることはあると、投手陣などの練習の手伝いに来てくれたのだ


 さすがキャプテン!


「それから、15番ハルキの育成を今日からでも始めたいので、午前中も任せてもらいたい、他にも興味ある選手が多いが、ハルキに関しては試したいことが多いのでよろしくお願いします」

 と、トニーが更に願い出た


 監督はすぐに

「オーケーです、私も春樹には期待したいので是非よろしくお願いします」


 すると、佐藤さんも

「ハルはここから大いに伸びてくると信じてます、アンソニーさん、俺からもよろしくお願いします!」


 みんなで握手をし、打ち合わせを終えた。


 春樹さんチャンスきたよ!頑張って


 で、ベンチを見たら工藤さんがこっちを睨むような眼差しで見てる、支度しながらチラッチラッと


 なんだアイツ、なんか嫌いだあの人



 監督から集合の合図がかかり

 選手が一列に私達の前に整列した。


「よろしくお願いしまーす!」


 今日は平和で終わりますよーに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ