『血の轍をたどり・・・』
不衛生なスラム街にはスプルスの痕跡が、ごろごろと転がっていた。
建物の影に隠れて、頭を抱えてガタガタ、と震えていた男の襟首を掴み上げたギリクは「こいつをやったのは、白い髪のじい様か?」と、道に転がっている犠牲者を親指で指し示した。
「そ、そうだ。財布、財布、盗もうと近づいた連中、み、みんな。あの爺さん、イカれてるッ!!」
「そりゃあ、不運だったな。嬢ちゃん、行くぞ」
ライアは怯えている男に、頭を下げてギリクの後を追いかけた。
「あんなのに、頭下げんな」
「・・・先生が、怖がらせた方ですから」
「財布盗もうとした奴らが悪ぃんだよ。自業自得ってやつだ。力量を計れねえ時点で、いつか野垂れ死ぬ」
ギリクの厳しい指摘に、ライアは口をつぐむ。
「・・・嬢ちゃん。じい様は、よ。嬢ちゃんが来るの・・・待ってると思うぜ」
「ダーイングさんじゃなくて、ですか?」
「あ? あの野郎が来たらそれこそ収拾つかなくなんだろ。──止めてほしいんだよ」
「・・・はい。先生は必ず止めます」
「その粋だ。だから、よ。──ちょっと、どいてなッ!!」
ギリクはライアを遠くに放り投げて、頭上からの剣の振り下ろしを回避した。
お返しに、魔弾を何発も叩き込み「おいおい、じい様。いや、白騎士様よぉ、相手を間違えてねえか?」と目の前の相手に吠えた。
白い鎧に身を包んだスプルスは、「我が女王の側にいる・・・おまえは何者だ」と呟いた。
おいおい。じい様、俺が分かってねえのか・・・。
嬢ちゃんも・・・我が女王って先代の女王と、勘違いしてんな──。
竜種の本能に呑まれて、狂う手前。
ギリクはそう判断し、腰の金属パーツを握って「awake」、と解放の言葉を発した。
◇◇
あれは? 女王の? あれは? ──誰だった?
──・・・おまえか? ダインスレイヴ。
スプルスは混濁した意識で、金の髪をした長身の男の幻を見ていた。
帰ってくると・・・一方的な約束をしていった・・・迷惑な・・・人間の。




