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『マッシュポテト?』
茹でて皮を剥いた芋を「潰してください」と手渡されたので、ぐしゃりと素手で圧搾したら。にこやかに笑ったベルニカが、ダーイングにかがむよう手を動かし、次の瞬間。
握り込まれた拳が頭頂部に激突した。
──・・・痛い。ものすごく痛い歯を食いしばって耐えていると、新しい芋が差し出された。
「お料理道具を使いませ?」
「はい」
ベルニカが口元に笑みを浮かべると、年相応のしわが寄る。
彼女はレイゼンの奥方で、ダーイングの育ての母だ。
夫はもちろん、ダーイングも頭が上がらない元侯爵夫人。
ルディラスの名に恥じぬ、拳は健在。
そのことには、元気そうで何よりだ。とダーイングは頭部のズキズキとした痛み加減から判断した。
◆◆
「ベルニカ、今度はどうだ?」
「はい。よくできてございます」
今度の芋は、芽をとってから、茹でて、皮を剥き、器具を使って丁寧に潰した。
『マッシュポテト』というらしい。
初めてまともにできた料理に、あとはバターとミルクを加えたら完成。
──先は長い。まだ、感覚がつかめない。
ダーイングは、こっそりと小さなため息をついた。




