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我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
NO. your fate / NO. my fate
95/95

『酒精と酔う夜』

 あの日。

 きゅうりみたいに、スパッと。

 トマトみたいに真っ赤に。


 冷たい剣が包丁みたいに、オレの身体を野菜みたいに簡単に斬りつけていた。


 左肩から胸まで、ザックリだった。


 ──それを、やけに冷静に、覚えてる。


 姉ちゃんが。大事だったから。

 守りたかったから。生きてほしかったから。

 ……オレが代わりになればいいって、あの時は無茶やった。


 あの時の。

 オレを斬った時のじいさん先生の顔、覚えてる。

 じいさん先生、泣きそうな顔だった、なあ。


 ──。何が悲しかったのか、オレは知らない。わからない。

 でも、そん時だけ。じいさん、じゃなくて子供みてえで。


「なんで、泣かない、の?」って言ったら。

「泣けるなら、泣いてる」って、わけわかんなかった。


 ◇◇◇


 酒精が完全に脳に回って、歩けなくなったザイルをレグが背負って、夜道を歩いていた。


「レグ〜、傷、もう治ったあ??」

「はい。完治しています」

「そっかあ、頑丈」


 ザイルは、ケラケラと笑った。


 彼の傷も完治しているが、傷痕は残った。


 だから、じいさん先生。

 風呂の後、裸でウロウロしてると気っまずそうにするんだよなあ。


 ギリクの旦那に、じいさん先生に斬られた傷痕って、冗談で見せたら。

 真顔で「おまえ、意外と度胸あるな。見直した」と褒めてくれた。

 ご褒美に、その日のまかないは唐揚げだった。刻んだピクルス入りのタルタルソースが抜群に美味かった。


「なー、レグー、今度さ、唐揚げたべよ」

「いいですね。どこの店にしましょうか」


 酔っ払っているザイルの言葉にいちいち丁寧に答えながら、獅子はのしのしと、歩みを止めなかった。

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