94/95
『Lonely night』
「我が女王よ、我等が系譜に安らぎを。我に赦しを。──尊き約定を守らなかった者共に我等がいかなる存在か。知らしめてくれよう」
スプルスは、真夜中の暗闇を駆け抜けていた。足場は道ではなく、屋根や壁。
踏みつけた箇所が割れ砕けても、気にも留めず、石片をかぶった通行人は怪訝な顔をして、汚れを払い落とす。
人間め。人間め。──約束を守らぬ我等と異なる種には、理解できまい。
我等は、約束を遵守する。
我等は、約束から逃れられない。
我等は──、私は、そんな在り方が。
心底、嫌で嫌でたまらない。
なのに、胸を怒りが煮詰めて、焦がしてしまう。
『竜種』の理を護れ、と。
踏み割った屋根瓦の音に驚いたのか、赤ん坊が泣いていた。
──長老。
私も泣きたいほど、とても悲しい。
この寂しさを、理解してくれる貴方も仲間も、もういない。
孤独な世界で。私はどうして──。




