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『蛇座は曇った空のむこうに』
レグは、BARの帰り道に聞かされた王命に驚きを隠さない。
「ドラゴン種保護条約違反が、ガカンの郊外で!?」
ザイルの顔色が悪いのはピリカのあの酒のせいだけではない。
白騎士の怒りが凄まじいのだろう。
「じいさん先生、むっちゃくちゃ、怒ってた。──眼が、真剣っうか。キレちまってた」
ザイルの肩が震えていることに気付いたが、レグは目を逸らす。
「伝説がキレる程、あの条約は重要だったのですね」
『ドラゴン種保護条約』。
貴重な素材となるドラゴン種を狩ることはコレによって、禁止されてきた。
しかし、法律を破って罪を犯す者はいる。
近年出回っていた違法薬の原料も……ドラゴンの血肉から骨、内臓と聞く。
ただし、こちらはすでにヴァルクル伯爵に製造元をつきとめられ、裁かれた。
『煉獄の魔狼』によって、犯罪の証拠と主犯以外は、燃やされ、灰に変えられた──と、噂されている。
──じいさん先生。
オレは、怖いのはやだよ。
あん時みたいになったら、オレ。
「無理やりでも、止めてやるよ……。オレだって、騎士なんだ」
ベルトを握りしめて、ザイルは夜空を見上げた。残念ながら、曇っていたから、星のひとつも見えなかった……。




