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我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
NO. your fate / NO. my fate
92/95

『ヘルハウンド』

 ファリスタはこめかみをもみながら、馬車に揺られていた。

 向かいには、感情が読めない眼をした大男。

 オズワルド・ラヴァン・ヴァルクル公爵。

「ご気分が優れませんか」

「ああ、元気いっぱいにはしゃぎ回れるような状態ではないな」


 とんでもない事態になった。

 ダーイングのことを笑っているどころではない。


 ◇◇◇


 それは、ダーイングとレイゼンが席を外した後のことだった。


 ピスタチオの鮮やかな色味が美しいマカロンを摘まもうと、指を伸ばした時。


「お楽しみのところ、申し訳ありません。ファリスタ陛下、至急お耳に入れねばならぬことが」と、公爵はいつのまにか、石の家の扉の前に立っていた。


「公爵。何事だ」

 これは、危急の事態。

 ファリスタは瞬時にそう判断した。

 ──でなければ、公爵自ら迎えには来ない。


 オズワルドは、スプルスを見つめてから、重い口を開いた。


「ドラゴンの死骸が発見されました」

 ──。

 息を呑んだ。

 放たれる圧力が室内の空気を軋ませていた。

 スプルスの瞳が爬虫類のソレに変わっている。言葉にできない怒りを孕んで。


 公爵は「遺骸は分断された状態で、埋められ、一部、白骨化がすすんでいます」と圧力に怯まず、報告を続ける。


「ドラゴン種保護条約違反か……」

 どこのどいつだ。

 建国王と白騎士が結んだ約束を反故にした愚か者は。


 そして、それを堂々と『白騎士』当人の前で知らせてきたオズワルドの心臓は何製だ?


 スプルスは無言で立ち上がって、オズワルドを見た。


「現場は、ガカン村郊外です」

 淡々と告げられた内容に礼も言わず、スプルスは出ていった。


 ◇◇◇


「え、なに、うちでなんかあったの?」

 ザイルは、首を傾げている。


「私の王剣なら、少しは学を身につけろ」

 ファリスタはため息をついた。

 ルシアスが「ドラゴン種の密猟だよ。建国時代に定められた絶対の法。そいつを破ったヤツがいるってこと。しかも、その約束を王と交わしたのが、白騎士こと、スプルス様なんだよ」と、説明する。

 その美眉は、さらに形を崩している。


「次期剣王として、第三王剣に命じる。罪を犯した者どもの所在と目的を早急に調べろ」


 白騎士が犯人どもを斬り殺す前に。

 なんとしても、法の裁きを受けさせる。


「断罪の公爵家当主オズワルド。おまえは私と来い」


「はい。陛下。──罪人の首に牙をつきたてるのは、当家の役目。貴女様の猟犬、好きにご命令ください」


 剣王国では珍しい、黒髪と黒眼には、地獄の猛火がゆらめいていた。

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