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我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
NO. your fate / NO. my fate
91/95

『酒に溺れる蛇と獅子』

「結婚式どうでした?」

「世界で二番目に美しい花嫁でしたよ。ピリカさんにご紹介いただいたエルメーヌブランドのウェディングドレスは、とても繊細なデザインのレースをふんだんに使っているのに、軽やかで。新郎も『天の御使い』そのものと、顔を真っ赤にしていました!」


 世界で一番は、自分の未来の花嫁だ。

 実はまだ、コレという縁はないのだが、いつか、指輪とウェディングドレスを贈りたい。


 妹に付き合って、ドレスをいくつも見たが、純白だけでなく淡い色も捨てがたい。

 ヴィエッタ女史は、装飾品や髪色に合わせて、コーディネートを何通りも試していた。

 無論、新郎も。

 引き出しから、何十種類もの飾りボタンが出てきた時。

 新郎の何かを諦めた表情が印象に残っている。


 ◇◆◇◇


「そ、っかぁ。おめでと」

 先程から、ザイルの様子がぎこちないことは、目が泳ぎまくっているので、すぐにわかった。


「何か、ありましたか?」

 自分を負かした青年はギクッ、と肩を跳ね上げ、赤毛の尾までゆらし、動揺を微塵みじんも隠せていない。


 わかりやすい。


「ロッゾ卿、話せないことなら、無理にはお聞きしませんが。話して楽になることでしたら、このレグにお聞かせください」


「内緒だぞ?? 内緒だかんな?!」


 レグは、真剣に耳を傾ける。


 ……ダーイングのヤツ、婚約者にフラれた。

 ザイルが蚊の鳴くような声で告げた、とんでもない事情に。


「すいません。おかわりください。──キツいやつ」

 呑むしかない。コレは酒の力で記憶から消すしかない。

 自分で言っておきながら、早くも前言撤回したかった。


「オレも、同じの」

 ザイルも、もうヤケになっていた。


 ピリカは「アンタ達、仲良いね」と、シェイカーに度数の高い酒を注ぐ。

 手際よく混ぜ合わされる銀の容器の中身。


 ゴブレットに注がれた二杯に、ニンジンスティックを刺したピリカが「はい、キツいやつ。『暴れダークホース』、お待ちどうさま♪」


 ザイルとレグは、苦笑にがわらいして、同時に出された酒を一気に飲み干した。


 そして、同時にカウンター席に頭突きをかました。


 ピリカは「あれ、キツすぎた?」と、一口呑んだが。

「……ん〜? キツいかな、コレ? 今度、ギリクの旦那に味見させてみるか」


(※後日、改良版『暴れ馬』を呑んだギリクは椅子ごと倒れた。ほんの少し舐めただけの他の面子も撃沈した)

『暴れダークホース』を一瞥いちべつしたスプルスは、刺さっているニンジンスティックを抜くと、ちびり、とかじった。


「──……。ピリカ、これの元は『デュラハン』か?」


「え!? わかるの、おじいちゃん!」

「昔、一度だけ呑んだ。オリジナルは、黒ブドウを使っていたが、コレは?」


「黒ブドウと赤ブドウの配合種。『ゴエティア』だよ」


「知らん種類だな。しかも、コレは酒ではなく劇物だ。呑ますなら薄めたほうがいい」


「旦那が倒れるとは、思わなかったの!」


「……『ゴエティア』は、どこで栽培されている?」


「それが、市場でたまたま見つけたの。出所は、わかんない。供給が少ないのかな?」


……この独特な匂い、嫌いだ。

どこかで、嗅いだことがある気がするが。

思い出せん。

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