『BAR.under』
はあ、とカウンター席に突っ伏しているザイルの前に、カクテルグラスがトン、と置かれる。
「はい。当店限定の一杯、『玉ねぎ騎士』と」
もうひとつのグラスは隣の席へ。
「どうぞ、『レオン』です。スライオン卿」
「いやいや、ピリカさん。レグでかまいませんよ。ロッゾ卿、とりあえず呑みましょう」
「んー」
グラスを鳴らして、ザイルは一息でカクテルをあおる。
レグは味わいながら、ゆっくりとまずは、一口。
「ザーイル。レグさん見習って、味わいなさいよ」
「えー、ちゃんと味わってるし」
赤毛の蛇とBARの店主であるピリカのやりとりを、レグは黙って見守る。
ザイルは、剣選の後に故郷の農村を拝領した。しかし、畑仕事以外のことは、てんでわからない。
そこでレグが家臣にすえられ、代理統治を任されている。
レグは元々、高位の貴族家所属の騎士だが……主人であった『ぼんくら』が、女性の敵と分かるや、即座に荷物をまとめて辞表だけ置いてきた。
代理統治の為に訪れた地は、自然豊かな場所だった。
村長にザイルの話をすると、口をあんぐりと開けて「あの悪ガキが王剣になって、この村の領主になった!?」と大変驚いていた。
ザイルの家族に挨拶をして、野良仕事を手伝っていた子供たちにせがまれて、剣選の話をした。
のどかに一週間ほど過ごした村から、王都に一時帰還して、レグは家族にガカン村に居を構えることを伝えた。
両親も妹も快く、了承してくれた。
ただ、ザイルは。
「いーのッ!? 一面、野菜と、玉ねぎ畑だけど!!?」と、渋られた。
「良い田舎暮らしができそうな村です。開拓の手伝いもお任せを」
「いもーとさんは!!?」
「この機に、婚約者の方と挙式することになりました。村への正式赴任は、そのあとになりますので、ロッゾ卿に御了承いただきたく」
「おめでとう!? ゆっくり、お祝いしてッ!!」
◇◇◇
そして、昨日。
結婚式が行われ、妹の晴れ姿をレグは涙で潤む瞳に、なんとか焼き付けた。




