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我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
NO. your fate / NO. my fate
86/95

『婚約者』

「エルディング様、誠に申し訳ございません。姉との婚約を破棄してください!」


 ──と。

 突然現れ、突然そう言ってきた相手は、リティア・ リア・ルイーシャとその姉、エスティナ・ファラ・ルイーシャ。


何故なにゆえに婚約破棄など……?」

 レイゼンは怪訝な表情を浮かべる。

 それに対して、エスティナは唇をかんで、うつむいてしまう。


 代わりに妹のリティアが長机に身を乗り出して発言した。

「姉は、『真実の愛』を見つけたのです!!」


 ──その場にいた全員が固まった。


 ◇◇◇◆


 翌日。


「いまどき、『真実の愛』か」

 手土産の焼き菓子をつまみながら、お忍びの服装で石の家に来店した次期剣王ファリスタは、笑いを堪えられずにいた。


「真実の愛、って」

「いつからか流行り、いつのまにかすたれたはずなんですが」

「まだ、残ってたんだね〜」


 庶民にも、貴族にも、『真実の愛』は古臭い恋愛観である。当時は支持されることもあった、が。


「私は、アレ嫌いなんですよ。親に決められた相手だからって、それをなかったことにして、『僕は彼女と幸せになるんだ』って」


 ファリスタの前に、ストローを添えたアイスコーヒーを置いたルシアスは、美貌の眉を寄せている。


「だが、子爵。あのルイーシャ嬢だぞ? あのご令嬢が『真実の愛』などでダーイングとの婚約を一方的に断るか?」


「そこなんですよね〜。あの妹の方ならまだしも、エスティナ様が?……って、私も同じ考えです」


 両者は社交界で、彼女の話を耳にしているし、軽い挨拶くらいは交わしている。

 正直な感想は、『ありえない』。


「ルイーシャ伯爵家でお家騒動でも起きているんでしょうか?」


 ウィスタードが直立不動の姿勢で、眼鏡に手を添える。


 今回の一件は、どうにもおかしい。

 特に、妹のリティアの態度が。


 ──なんせ。


「お姉様に代わって、私と婚約してください、とおっしゃっていましたね」


 ライアは、紅茶の杯のふちを指でなぞる。

 ミルクティーの乳白色には何もうつらない。


「……その妹君は、頭がお花畑なのか? 蝶ちょでも、とんでるのか?」


 ファリスタは、心の底から呆れていた。

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