『Side dishes』
従業員宿舎では厨房の生ゴミ処理用にスライムが一匹だけ飼われている。
時々、オヤツをやって可愛がっているスプルスは、「よく働く良いスライム」と評している。
スライムも、彼に懐いており、棲家として与えられた瓶の中で、彼が近付いてくると喜びを表しているのか、『プルプル』と元気にふるえる。
ちなみに、名前も『プルプル』だ。
命名したのは言うまでもない。
◇◇◇
ダーイングが散らかした諸々(もろもろ)を片付けているうちに、石の家の従業員はザイルとカミュが急遽、買い込んできた惣菜をテーブルの上に並べて、好きなものをつまんでいた。
ライアはたっぷりとサラミがトッピングされたピッツァと白ブドウ果汁の炭酸割りを。
スプルスは、フライドポテトを一本ずつ、ゆっくりとかじる。
一番長いのだけ、置いてあるのは……オヤツだろう。
ザイルとカミュは、買い出し役の特権として、昼から休みをもらったので、この後は知り合いのBARに飲みに行くという。
他の面々も、黒オリーブのサラダや魚介のフリットをもりもり、と食べている。
それを、大部屋の隅に正座させられたダーイングは黙って眺めていた。
時々、レイゼンが見てくるが。
怒り心頭の巨漢が硬パンを噛みちぎりながら、睨みつけると、しぶしぶ、食事を再開した。
「ダーイングさん。うちのまかないはギリクさんがメインで、他は順番に回しています。だから、貴方もそろそろ、何かまともなものを作ってください」
ウィスタードの眼鏡のレンズが光る。
ようは──次、まかないができなかったら、バイトを辞めてもらう。という、最終通告だ。
嫌な汗が背中ににじむ。
書類仕事は即合格。接客や掃除はなんとかなった。
だが、料理は……。この始末だ。
厨房は、ギリクが整理整頓している。
いわば、奴の縄張りでもある。
広さは充分あって、狭くない。
調理道具も大小そろっている。
──環境は、悪くない。
足りないのは、己の知識と技術。
そして、経験。
この苦境を打破しなければならない。
白騎士との一騎打ちの為。
女王を失望させない為。
ダーイングは、料理の修行の為にレイゼンの妻に手紙をしたためることを決意した。
◆◆
──そんな矢先。
思わぬ来客が、石の家の扉を開いたのだった。




