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『はちゃめちゃな幕開け』
「出禁だああああッ!!」
天候に恵まれた昼食の時間。
石の家の隣。
従業員宿舎から、ギリクの怒声が路地にまで轟いた。
◇◇◆◆
「なんで、芋が炭になってんだ!」
「オーブンの使い方がわからなかった」
「なら、聞け!!」
炭の塊と化した芋を手に、ダーイングは不満気な表情。
「おまえに教えを受ける気はない」
「レイゼンのジジイ、ちょっと面かせ!!」
厨房に申し訳なさそうに顔を出したレイゼンにギリクは詰め寄り、厨房の惨状を指差した。
オーブンから黒煙がもうもう、とあがり、まな板はズタズタ。
力まかせに粉砕したと思しき、卵とトマトが嘆きの絵画のように壁に垂れている。
レイゼンは、ダーイングを手招きする。
眉間にしわを寄せつつ、それに従い、ダーイングはレイゼンに近付いた。
「……弁明があるなら、お聞きしますが」
「──いや、ない」
頭蓋骨が砕けそうな、いや、砕けるような鈍い音がして、厨房の破壊者の苦鳴が、食卓で腹を鳴らしている従業員たちの耳に届いた。




