『エピローグ』
病床にある剣王不在のまま、新剣王ファリスタ・ツァイク・フレイアルによって、三王剣に褒美が授与された。
「まず、第三王剣 ザイル・ロッゾ。望みを申せ」
ザイルはニヤッ、と笑うと、一人の若い貴族の前に歩み寄った。
「なんでしょう、ロッゾ卿?」
「ねーちゃんがお世話になりまし、たッ!!」
青年貴族の股間を思い切り蹴り上げると、もんどり打っている相手に場にふさわしくないハンドサインを贈り、ザイルはファリスタの前にひざまづいた。
「ことの理由は?」
ファリスタが平然と尋ねると、「アイツ、オレのねーちゃんを捨てたんだよ」とザイルはとても、不愉快な顔をした。
それを聞き取ったレグは、深く頷いた。
自分にも妹がいる。
それが、男に捨てらたら──。
レグは小声で「お見事です。ロッゾ卿」と呟いた。
◇◆
「次、第二王剣」
「はっ、我が望みはルディラス家の汚名挽回のみ」
「それは、もはや剣選で叶っているだろう。『ルディラスの間合いに入るな』は、いまや両腕どころか、空をも含む。誇るがいい」
「ありがたき言葉」
実際、もうレイゼンに喧嘩を売りたい貴族連中は皆無だろう。
最後にファリスタは、ダーイングに眼を向けた。
「おまえは?」
口元をニコリ、と半月状にして第一王剣は、答えた。
「石の家でのアルバイトの許可」
周囲が一斉に静まり返った。
それに対して剣王は。
「週5勤務でいいか? 残りは王剣の仕事。休みはほぼない。それでも良ければ勝手にしろ」
あっさりと許可がおりた。
内容がブラックだが、ダーイングは気にしない。
石の家には、『白騎士』がいる。
祖王物語では決着がつかなかった一騎打ち。
なら、それを果たすのは、自分だ!!
ワクワクと胸を踊らせて、ダーイングは立ち上がると、最敬礼。
そのまま、石の家に向かった。
やれやれ、とレイゼンは首を振る。
ちなみに、レイゼンはファリスタからダーイングの目付け役を任命されているので、彼もアルバイト決定だ。
◆◆◆◆
ターコイズ色の空の下、串焼き屋の前を通り過ぎて、路地へ。
その先にある巨岩のような店の扉を押し開く。
「いらっしゃいませ。石の家へ、ようこそ」
黒ぶちメガネのライアが、ダーイングを出迎えた。
応接室の長椅子には、従業員たち。
「まずは、雇用契約書にサインをお願いします」
差し出されたのは、黒い板と万年筆。
彼は、ためらわずその名を記した。
『ダーイング・ツァイラ・エルディング』と──。




