中世から来た魔女は、テストを受ける。――10
編入試験から三日後の夕方。校長室に、俺と黛校長はいた。
「驚きました」
試験の結果が記された書類を見て、黛校長が目を丸くする。
「全教科九五点超え――学年トップクラスの点数です」
「ということは……」
「文句なしに合格です。エリーさんの編入を認めましょう」
「――っし!!」
俺は思わずガッツポーズをとった。
やったぞ、エリー! 学校に通う夢が叶ったぞ!
我がことのように喜ぶ俺を、黛校長が微笑ましげに眺めていた。
「虐待を受けていたということは、エリーさんは劣悪な環境で育ったのでしょう。にもかかわらず、これほどの点数をとられるとは……」
「エリーは天才ですからね! 試験に向けて努力もしてきましたし!」
ここぞとばかりに自慢する俺に、黛校長が笑みをこぼす。
「森戸先生は、エリーさんに相当入れ込んでいるようですね」
「当然です!」
俺はニカッと笑って返した。
「エリーは天使ですから、入れ込まずにはいられませんよ」
○ ○ ○
「ただいまー!」
「お、おかえりなさい」
帰宅すると、堅さを含んだ声が返ってきた。
いつもより弱々しいスリッパの音がして、リビングダイニングから、紺色のワンピースを着たエリーが顔を覗かせる。
玄関まで来て、心配そうに瞳を揺らしながら、エリーが俺を見つめた。
「試験の結果が出たんだよね? ……どうだった?」
ワンピースの胸元をキュッと握って、怖ず怖ずとエリーが尋ねてくる。
俺は満面の笑みでエリーに報告した。
「文句なしに合格だ!」
「合、格?」
エリーが目を見開いて、呆けたようにオウム返しする。
「ああ! 学校に通えるぞ、エリー! エリーは合格したんだ!」
俺はしゃがみ、エリーの両肩に手を置いて、繰り返し伝える。
サファイアの瞳が潤みだし、唇が笑みを描き、エリーが俺の胸に飛び込んできた。
「やった! やったよ、養一!」
「よかったな、エリー! 本当によかった!」
エリーを受け止め、俺は包み込むように抱きしめた。
さらさらなゴールブロンドをすくように撫で、俺はエリーを労る。
「頑張ったな」
「うん……!」
エリーがグリグリと額を俺の胸に押しつけた。
「ずっと学校に通いたかったもんな。ずっと友達に憧れてたもんな」
「うん……っ」
「いまから叶うぞ! エリーの夢が叶うんだ!」
「うん……っ!」
エリーが潤んだ瞳で俺を見つめ、幸せそうに微笑む。もらい泣きしながら、俺も微笑みを返した。
「養一が助けてくれたおかげだよ! わたしを幸せにしてくれるのは、いつも養一なの!」
甘える猫のように、エリーが頬をすり寄せてくる。
「俺も、いつもエリーに幸せをもらっているよ」
一層強くエリーを抱きしめ、慈しみを込めて頭を撫でた。




