表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/55

中世から来た魔女は、テストを受ける。――7

 昼休み。俺は北條と青矢を誘って食堂に向かった。


 交流のため、俺は普段から生徒たちと昼食をとっている。北条と青矢も二つ返事で俺についてきてくれた。


「今日も先生はお弁当なのですね」

「料理上手ですよねー、先生は」


 廊下を歩きながら、俺の手提げ袋を目にした北條と青矢が、感心したように言う。


 そんなふたりに、俺はニヒルな笑みを見せた。


「ふっ、今日の弁当は俺が作ったものじゃないぞ?」

「えっ? じゃあ、誰が?」

「彼女でもできたんですか? ついに茜井先生と結ばれたんすか?」

「なぜそこであいつの名前が出てくるか問いただしたいが、いまはこれで許してやろう」


 軽めのデコピンを見舞(みま)うと、「あ(いた)っ!」と青矢が額を押さえる。


 俺と青矢のやり取りに、北条がクスッと笑みを漏らした。


 ひとつ息をつき、俺は手提げ袋を持ち上げる。


「これを作ってくれたのは断じて彼女じゃない。彼女以上に大切なひとだ」

「「……はい?」」


 北条と青矢がポカンとした。





 食堂につき、北条はサワラの西京(さいきょう)焼き定食を、青矢はカツカレーを注文した。


 ふたりが料理を待っているあいだに俺は席を確保する。


 ややあって、トレイを持ったふたりがやってきた。


「さて。どんな献立(こんだて)だろうな」


 席についたふたりの前で、俺はワクワクしながら弁当箱の(ふた)を開ける。


 弁当箱のなかには、玉子焼き、唐揚げ、タコさんウインナーにマカロニサラダ、(いろど)りにプチトマトが並んでいた。


 さらに、ご飯の上には桜でんぶでハートが描かれ、「おしごとがんばって」と海苔(のり)(したた)められている。


 エリーの心遣(こころづか)いに目頭(めがしら)が熱くなった。


 ああ、頑張るぞ! エリーのおかげで、俺、頑張れるぞ!


「……見るからに愛妻弁当ですね」

「先生、結婚するんすか?」

「いや、しないぞ? どうして結婚なんて話になるんだ?」

「「この弁当を見たら誰だってそう思いますよ」」


 ジト目になったふたりが声をハモらせ、溜息をつく。


 なぜ俺は、残念なひとを見るような目を、教え子たちから向けられなければならないのだろうか?


「結局、このお弁当は誰が作ってくれたのですか?」

「知人から娘さんを預かっていてな、その子が作ってくれたんだよ」


 北條の問いにさらりと嘘をつく。


 エリーの素性も、俺が警察から預けられている状況も、生徒たちには明かせない。そこで、黛校長・悠莉と相談し、『エリー=知人の娘』ということにしたのだ。


 俺は続ける。


「それで、その子――エリーについて、ふたりに相談があるんだ」

「「相談?」」


 北條と青矢が揃って首を(かし)げた。


表沙汰(おもてざた)にしないでほしいんだが、エリーは近いうちにここに編入してくる。ただ、エリーはかなりの人見知りでな。クラスになじめるか不安なんだよ」

「なるほど。その子がなじめるよう、俺たちにサポートしてほしいってことですね?」

「ああ。頼めるか?」


 訊くと、北條と青矢が明るい顔で頷く。


「もちろんです! わたしたちにお任せください!」

「みんな仲いいほうが学校生活は楽しいですからね」

「ふたりともありがとう。助かるよ」


 ふたりが快諾(かいだく)してくれて、俺はホッと息をついた。


「お返しに、あとでジュースでも(おご)るよ」

「んー……俺はジュースよりその弁当が気になりますね。よかったら、唐揚げひとつもらえませんか?」

「……あん?」


 思わずドスの利いた声が出た。


 青矢がビクリと肩を跳ねさせる。


「エリーが作ってくれたおかずをよこせと? 青矢、きみはそう言ったのか?」

「進くん、謝ってください! いまの先生は我を忘れています! 早く!」

「すすすすいません、先生! 正直、なんで謝らないといけないのかまったくわからないけど、とにかくすいません!」


 北条がアタフタして、青矢がペコペコと頭を下げる。


 たとえ教え子であっても、エリーの手料理は譲れないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ