表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/55

中世から来た魔女は、テストを受ける。――6

 土曜、日曜と勉強に取り組み、エリーは高一の二学期で習う範囲を修めていた。


 このペースなら、テストには余裕で間に合うだろう。


 あとはエリーがクラスになじめるかどうかだ。以前、スマホを買いにいったとき、店員と一言も話せなかったから……難しいだろうなあ。


 溜息をつきながら、俺は月ヶ丘高校の廊下を歩き、二年一組の教室のドアを開けた。


「みんな、おはよう。(せき)着いてくれー」


 思い思いに雑談していた生徒たちが「「「「はーい」」」」と返事して、それぞれの席に戻る。


 この二年一組が、俺が担任を務めるクラスだ。


 教壇(きょうだん)に立ち、俺はホームルームをはじめる。


「みんな、休みは楽しめたか?」


 そこかしこから、笑顔や「はーい」との声が上がった。


 俺はうんうんと頷いてから、ニヤッと口端(くちはし)を歪める。


「それはよいことだが、勉強からは逃れられないぞ? 木曜日に実力テストを行う。先生、張り切ってテスト作ったから期待しててくれよ?」


 それまで楽しそうにしていた生徒たちが、一斉(いっせい)に「うげぇ」と言いたげに顔をしかめた。


「くっ! 先生! あんたには血も涙もないのかよ!」


 ひとりの男子生徒が立ち上がり、拳を握って芝居がかった口調で言う。


「安心しろ。俺とて鬼じゃない。きみたちを見捨てるつもりはないさ」

「せ、先生……!」

「補習にはみっちり付き合ってやる」

「鬼ぃ――――っ!!」


 男子生徒が頭を抱え、教室内に笑い声が広がった。


 二年一組の雰囲気や、生徒たちの仲は良好だ。カーストやグループは存在するが、イジメや差別はない。


 だから、エリーがイジメを受けることはまずあり得ないんだが……。


 などと考えていると、ひとりの女子生徒がキョトンとした顔で尋ねてくる。


「先生? 黙り込んでどうしたんですか?」

「ああ、悪い悪い。ちょっと考え事をしててな。気にしないでくれ」


 女子生徒の不思議そうな表情は変わらなかったが、コクリと頷き、話は流れた。


「さて。俺からの連絡事項は以上だ。きみたちからはなにかないか?」


 生徒たちからの反応を待ち、誰も手を挙げないことを確認。


「じゃあ、ホームルームはここまで。一限目の準備をしてくれ」


「「「「はーい」」」」と返事が上がり、生徒たちが席を立ちはじめる。


 俺もまた、一限目を行うクラスへ向かおうとして――


「っと、その前にノートを運ばないとな」


 足を止め、(きびす)を返し、教卓(きょうたく)に積まれたノートを抱えた。生徒たちから提出された、宿題用のノートだ。


「先生、わたしたちもお手伝いします」

「結構重そうですからね」


「よっ」とノートを持ち上げたとき、ふたりの生徒が俺に声をかけた。


 ひとりは、黒い(つや)やかなミディアムボブに、優しげな黒い目をした、中肉中背の女子生徒。


 もうひとりは、ライトブラウンのちょっと癖のあるショートヘアに、アーモンド状の茶色い目をした、長身細身の男子生徒。


 女子生徒の名前は北條美優(ほうじょう みゆ)、男子生徒の名前は青矢進(あおや すすむ)。このクラスの中心人物とも言える生徒だ。


「おっ、悪いな」

「それは言わない約束ですよ、おとっつぁん」

「先生も歳っすからね」

「失敬な、俺はまだアラサーだ」


 半眼になってみせると、北條と青矢はクスクス笑い、それぞれノートを手にとった。


 北條と青矢はともに陽キャで、スクールカーストの上位。かといって威張(いば)り散らすことはなく、誰とでも分け(へだ)てなく付き合う気さくなやつらだ。


 そんなふたりを見ながら、俺は(ひらめ)いた。


 北条と青矢に、エリーと生徒たちの橋渡し役になってもらうといいんじゃないか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ