中世から来た魔女は、約束を果たす。――8
続いて向かったのはトンネル水槽だ。
「魚がいっぱい泳いでる!」
「海のなかを歩いてるみたいだな」
「あのおっきな魚はなに?」
「あれはイルカだ。魚っぽく見えるけど哺乳類――俺たち人間の仲間だ」
「鳥が泳いでる!?」
「あれはペンギンだな。海で暮らす鳥だ」
「わたしが知らない生き物がたくさんいるんだね!」
あちこち走り回るエリーが、両腕をパタパタ振って興奮を表している。
トンネル水槽は、文字通り、周りを水槽で囲まれた道を歩くものだ。
水槽ではイルカやペンギン、銀色の小魚や、熱帯魚と思しきカラフルな魚たちが泳いでいる。
頭上からは、水槽の水で青みを帯びた、太陽の光が差し込んでいた。
「水族館ってスゴく面白い場所なんだね!」
エリーが笑い声を上げながらクルクル回り、ワンピースの裾と艶やかなゴールデンブロンドが広がる。青い光のなかで回る様は幻想的で、さながら妖精のダンスのようだ。
俺が目を奪われていると、エリーがくるりと振り返った。
「こんなステキな場所があるなんて知らなかった。知らないまま死んでいくはずだった。養一は、わたしにたくさんの幸せを教えてくれるね」
後ろ手を組みながらエリーが微笑む。まるで大輪の花が咲くように。
ドキッと胸が高鳴り、俺の口から呟きが漏れた。
「……キレイだ」
「うん! とってもキレイな光景だよね!」
俺の『キレイ』はエリーを示すものだったが、トンネル水槽のことを言っていると勘違いされたようだ。
ニッコリ笑ったエリーが、再び水槽に目を向ける。
楽しそうなエリーの横顔を眺め、俺は口元を緩めた。
「本当に、キレイだな」




