中世から来た魔女は、約束を果たす。――7
俺とエリーは次々と水槽を見て回った。
新しい水槽に移る度、エリーは新鮮な反応を見せてくれる。
エリーが楽しそうで俺も嬉しい。連れてきて本当によかった。
そんななか、次に訪れた水槽にいたのは――
「なんか、ニョロニョロしたのがいっぱい生えてる」
「チンアナゴだな」
水槽底の砂地に尻尾を埋めて、チンアナゴがゆらゆらと揺れている。
何匹ものチンアナゴが同じ向きを見て揺れているのは、漂うクラゲに近い独特の魅力があった。
時折キョロキョロと辺りを窺っているのも愛らしい。
「可愛い……!」
エリーも癒やされているのか、水槽にかぶりつきでホワンホワンと笑っていた。そんなエリーがチンアナゴ以上に可愛い。
俺がエリーに見とれていると、二匹のチンアナゴが頭と頭を合わせ、ハートマークを作った。
「ふわっ! キスしたよ、養一!」
「ああ。可愛いな」
振り向いて俺に報告するエリーは喜色満面だ。
つられて俺も笑顔になっていると、水槽の横にプレートが掲げられているのに気づいた。
プレートに書かれたとある話を読んで、エリーに教えてみせる。
「面白いことが書いてあるぞ?」
「んぅ?」
プレートを指さすと、エリーはキョトンとした顔でそちらを見た。
「この水槽の前で告白したカップルがいたらしいが、そのときチンアナゴがハートマークを作ったそうだ。そのカップルは結婚して、いまでもこの水族館を訪れるんだってさ」
「ステキな話だね!」
「それで、この水槽でチンアナゴのハートマークを見たカップルは、末永く幸せになるって言われているそうだ」
「……ふぇ?」
ニコニコ顔をしていたエリーが、ポカンとした。
「確かに、周りにたくさんのカップルが集まっているし、チンアナゴはこの水族館の名物なのかもな……って、エリー? また赤くなってないか?」
「ふわっ!?」
「今日は赤くなってばかりだけど、本当に風邪じゃないんだよな?」
「だだだ大丈夫! 全然大丈夫だよ!」
ブンブンと勢いよく首を振るが、エリーの顔は赤いままだ。
ふーむ。風邪じゃないとしたら、赤面の原因はなんなんだ?
俺が顎に指を当てて考えていると、エリーがなにやら呟いた。
「……叶うといいな」
「なにか言ったか、エリー?」
「な、なんでもないよ!」
相変わらずエリーの顔は真っ赤だった。




