中世から来た魔女は、約束を果たす。――5
昼過ぎ。俺たちはサービスエリアである道の駅に寄り、休憩することにした。
道の駅には特産品コーナーがあり、エリーは並んだ特産品に目をキラキラさせている。興味津々だ。
「このおっきい瓜みたいなものはなに? はじめて見るよ」
「それは太キュウリっていう、この地域で作られてる野菜だ」
「キュウリって、あの細長い野菜!? かたちがぜんぜん違うよ!?」
エリーが目を丸くした。
太キュウリは手で握れないほど太く、ずっしりと重い。普通のキュウリとは似ても似つかないので、驚くのも無理はないだろう。
「紛れもないキュウリの一種だ。味はちゃんとキュウリだし、結構うまいぞ? おっ! 太キュウリを使った奈良漬けも売ってるみたいだ」
「奈良漬け?」
「漬物って料理があって、その一種だよ。お酒の絞りかすに野菜を漬け込んだ品だ」
「ピクルスみたいなものだね!」
ふんふんと頷いたエリーの目は、特産品コーナーの棚にある、太キュウリの奈良漬けに釘付けになっている。
「気になるなら買っていこう」
「いいの!?」
「ああ。夕飯のときに食べような」
エリーが「うん!」とワクワクした様子で頷いた。
特産品コーナーを見回ったあと、俺たちは昼食をとりに食堂を訪れた。
俺が頼んだのは塩ラーメン。エリーが頼んだのはアイスクリームを挟んだメロンパンだ。
はじめはラーメンに興味を示していたが、俺が「アイスクリームメロンパンは甘くておいしいぞ」と説明すると「甘いもの!」と食いついてきた。
いつの時代も、女性は甘いものに目がないらしい。
「ほわぁ……!」
アイスクリームメロンパンを手にして、エリーが顔を輝かせている。見るからに期待している様子に、俺は笑みをこぼした。
「じゃあ、食べるか」
「うん!」
「「いただきます」」
俺たちは手を合わせ、エリーが小さな口をいっぱいに開けて、メロンパンにかぶりつく。
モグモグと咀嚼して、エリーが目を丸くし、ふにゃんと幸せそうな顔をした。
「甘くておいしい――っ!」
ハグハグハグハグとエリーが夢中でメロンパンを頬張る。
頬を膨らませる姿が、ハムスターみたいで癒やされる。
ほっこりしながら、俺も塩ラーメンをすすった。
特産品の塩で引き立てられた魚介だしのうま味が広がり、芳しい風味が鼻を抜けていく。文句なしにうまい。
うん。これは当たりだな。
舌鼓を打っていると、エリーの頬にアイスクリームがついているのを見つけた。
エリーはメロンパンに夢中で気づいていない。
「アイスが頬についてるぞ?」
「ふぇ? どこ?」
エリーが頬をペタペタ触るが、残念ながらアイスクリームは拭えていない。
俺は苦笑して腕を伸ばす。
「ここだよ」
指先でエリーの頬についたアイスクリームを拭い、パクリと口にした。
「ふわっ!?」
途端、エリーの顔が茹だるように染まる。
「どうした?」
「な、なんでもないよっ!」
そう言う割りに、エリーの目は泳いでいた。
なぜそんなにも動揺するのだろうか? と俺は首を傾げる。
「えっと! その……あ、ありがとう」
「どういたしまして」
「お、お礼に、メロンパン食べる? 養一のお金で買ってもらったものだし」
いまだに赤らんだ顔のまま、エリーがメロンパンを差し出してきた。
「いいのか? 気に入ってるんだろ?」
「気に入ってるから、養一にも食べてほしいの」
おいしさを共有したいらしい。本当にエリーはいい子だ。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は身を乗り出し、メロンパンを一口。
ふかふかのパン生地にサクサクのクッキー生地、冷たいアイスクリームがアクセントとなり、舌を喜ばせてくれる。
これも絶品だ。この道の駅、レベルが高いな。
「あ、あぅ……」
俺がメロンパンを味わっていると、エリーが酸素を求める金魚みたいに口をパクパクさせた。
「そ、そこ、わたしが食べた場所……!」
エリーの指摘通り、俺がかじった場所はエリーが口をつけた部分だ。エリーがそっち側を差し出してきたから気にしなかったのだが、いけなかっただろうか?
「嫌だったか?」
「い、嫌じゃないよ! むしろ……」
「むしろ?」
「あ、あぅ~~……っ」
エリーがプシューと頭から湯気を上らせて、うつむいた。
よくわからない反応だが、嫌じゃないのならよかった。
やけくそになったように、ハグゥ! とメロンパンにかぶりつくエリーを眺めながら、俺はホッと息をついた。




