中世から来た魔女は、約束を果たす。――3
洗濯が終わるまで、俺はエリーの勉強を手伝った。
今日から中学で習う内容に入ったが、相変わらずエリーの学習力は規格外で、次から次へと俺の教えを吸収していった。いつまで経っても驚きを禁じ得ない。
洗濯が終わってからは、サンルームに移動して洗濯物を干した。
手分けして干したのだが、その際、エリーは俺の下着を見て顔をトマトみたいに染めていた。
「代わりに干そうか?」
と提案したが、エリーはふるふると首を横に振った。
「い、いつか毎日やることになるから、慣れないといけないの!」
確かにエリーは、俺の手伝いができるようになりたいと言っていた。『毎日やる』とはそんな意味だろう。
一通りの仕事を終えると、時刻は一〇時過ぎになっていた。
俺たちはリビングダイニングのソファに並んで座り、テレビで動画を眺めながら一息つく。芸人が釣りをする動画に興味津々なエリーに、俺は頬を緩めた。
「明日は学校があるから、エリーには留守番をお願いしないといけないな」
動画が終わったタイミングで俺は口を開く。
サファイアの瞳が俺に向けられた。
「朝から夕方まで、エリーをひとりにしてしまうわけだが……」
「大丈夫!」
エリーは、俺の心配を吹き飛ばすような明るい笑みを咲かせる。
「これから養一はずっと側にいてくれるんだよね? だから平気!」
エリーの無邪気な笑顔が愛おしい。「ありがとうな」と頭を撫でると、エリーは心地よさそうに目を細めた。
健気なエリーにお返しがしたい。連休も今日で最後だし、思い出を作りたい。
思い立ち、俺はエリーを誘う。
「この前、水族館に行きたいって言ってたよな? 今日はどうだ?」
エリーが目を丸くする。
「覚えててくれたの?」
「エリーとの約束を忘れるはずないだろ」
苦笑すると、エリーの瞳がじわりと潤んだ。
「エ、エリー? なんで泣くんだ?」
「嬉しいの」
戸惑う俺に、エリーが涙ぐみながらも微笑む。
「養一から離れようとしたとき、わたし、もう約束を果たせないって思ってたから……水族館に行けないと思ってたから……」
ツキン、と俺の胸にトゲが刺さった。
俺は心のなかで誓う。
二度とエリーをひとりにしない。させない。この子の側にいて、いままでの悲しみを拭ってあげようと。
俺はエリーの涙を優しく拭った。
「これからたくさん約束していこう。たくさん約束を果たしていこう。大層なことはできないけど、エリーの行きたいとこに連れていくぐらいならできるからさ」
エリーに微笑み、小指を差し出す。
「ふたりで思い出を作っていこう。約束だ」
「うん。約束」
エリーが小指を絡める。
タンポポみたいに愛らしい笑顔が、俺の網膜に焼き付いた。




