中世から来た魔女は、約束を果たす。――2
エリーが作ってくれた朝ご飯は、初心者とは思えない出来だった。
一口一口しっかりと味わい、味噌汁も一滴残らずいただいて、俺とエリーは朝食を終えた。
続いては、新しい家事――洗濯の勉強だ。
俺とエリーは脱衣所に移動する。
脱衣所に置かれたドラム式洗濯機を、エリーはしげしげと眺めていた。
「それは洗濯機といって、全自動で洗濯を行ってくれる機械だ」
「全自動!? 勝手に洗ってくれるの!?」
「うむ。これぞ文明の利器だ」
俺が腕組みしてドヤ顔をすると、エリーは「ほわぁ……!」と目を丸くする。
エリーの反応にほっこりしながら、俺は洗濯機の隣のラックにある、ふたつのボトルを手にとった。
「洗濯する際には洗剤と柔軟剤を用いる。洗剤には汚れを落として殺菌する作用が、柔軟剤には洗濯物の手触りをよくしてホワホワにする作用がある」
「ス、スゴい! 現代ではそんなことまでできるんだね!」
エリーはいちいち驚いてくれるから、説明するだけでも楽しい。
続いて俺は、洗濯機の横にある、洗濯物の入った籠を手にした。
「次は洗濯物の仕分けだ。洗濯物には素材や色の違いがあって、全部一緒に洗濯するわけにはいかない」
「ふむふむ」と頷くエリーの前で、小さな籠をいくつか用意し、俺は仕分けをはじめる。
「これは普通に洗える。これはほかの洗濯物に色が移るから別に洗う。これは洗ってるうちに傷ついたらいけないからネットに入れる」
手早く仕分けていく俺を、エリーがジッと眺めている。
その顔が、急にボヒュッと赤くなった。
「どうした、エリー?」
「そ、そそそそれ……!」
口元を波打たせて慌てるエリーが、俺が手にしている洗濯物を指さす。
首を傾げて確かめると、俺が手にしていたのはエリーのショーツだった。
「あ」と俺の口から声が漏れる。
エリーは女の子だから、自分の下着を男に触られたら、恥ずかしくなるのも当然だ。デリカシーがなかった。
俺は下着を籠に戻し、気まずさからポリポリと頬を掻く。
「あー……その、スマン、触って」
「だ、大丈夫……恥ずかしいけど、養一ならいいから……」
変わらずの赤面で、エリーがボソボソと言った。
俺はホッと胸を撫で下ろす。
エリーに嫌がられないでよかった……もし、「触らないで」とか「一緒に洗わないで」とか言われたら、ショックで三日は寝込んでたぞ、俺。
「よ、養一は平気だった?」
「平気だったとは?」
「ドキドキしなかった?」
うつむきながらモジモジと身じろぎして、エリーが上目遣いで尋ねてきた。
エリーの言いたいことがよくわからず、俺は首を傾げる。
「いや。特にドキドキすることはなかったけど」
「むぅ……そっか」
「どうした、エリー? 落ち込んでるみたいだけど」
「な、なんでもない!」
慌てた様子でエリーがそっぽを向く。
……もしかして、俺、知らないうちに気に障るようなことしてたのか?
俺がハラハラするなか、エリーがボソリと呟いた。
「……わたし、意識されてないのかな?」
残念ながら、意味するところはわからなかった。




