表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/55

中世から来た魔女は、楽しむ。――7

「養一、これはなに?」


 俺に渡された機器を、エリーが興味深げに眺めていた。


「それはコントローラーといって、ゲーム機で遊ぶための道具だ」

「『ゲーム』は『遊び』のことだよね? そっちはわかるけど、『機』ってどんな意味?」

「機械のことだ。現代では機械を使い、テレビでゲームができるようになったんだよ」


 テレビ台にしまっていたニン○ンドースイッチを取り出し、テレビに接続する。


 テレビにホーム画面が映り、俺はソフトのなかから、ぷよ○よを選んだ。


 ぷ○ぷよを選んだのは、暴力シーンがないからだ。


 魔女狩りに()ったエリーは、異端審問官(いたんしんもんかん)に殺されかけている。あの頃の記憶を呼び起こさせないため、アクションや対戦は避けるべきだろう。


「これからするのはパズルゲームだ。とりあえず、俺がやるのを見ててくれるか?」


 頷くエリーの隣で、俺はひとりプレイをはじめる。


 CPUとの対戦が開始され、ぷ○ぷよが上から落ちてきた。


「この丸っこいやつを、色が合うようにくっつけるんだ。同じ色が複数くっつくと、こうやって消える」

「ふわわっ!? これ、養一が動かしてるの!?」

「ああ。コントローラーを使ってな」


 エリーがテレビ画面と俺の手元を交互に見る。好奇心が刺激されたのだろう。エリーの目はキラキラ輝いていた。


「で、丸っこいのが消えたら、相手のエリアに丸っこいのが追加で落ちる。自分のエリアにある丸っこいのが、てっぺんまで届いてしまったら負けだ」

「なるほどー」


 その後、連鎖(れんさ)(これの説明もエリーにした)を駆使(くし)してCPUに勝利した俺は、エリーにコントローラーを渡した。


「エリーもやってみないか?」

「う、うん」


 緊張した様子でコントローラを握り、エリーがCPUとの対戦をはじめる。


「え、えっと、この棒で丸っこいのを動かして、同じ色をくっつけて……」


 俺が教えた操作方法を呟きながら、エリーがぷよ○よを操る。


 エリーの体は、スティックを右に倒せば右に、左に倒せば左に傾いた。初心者がよくやる、コントローラーと体が連動して動くあれだ。


 レースゲームとかアクションゲームとかでは見かけるけど、ぷ○ぷよでなるとは思わなかったな。


 思わずクスクスと笑みを漏らしてしまったが、ゲームに夢中になっているのか、エリーは気づかない。


 やがて、エリーが一連鎖をしてみせる。


「や、やった!」

「上手いぞ、エリー! その調子だ!」


 俺とエリーは、パチン! とハイタッチした。





 五分後、イージーモードながらもCPUに勝利し、「やったーっ!」とエリーが万歳した。


「ゲームって面白いね! 丸っこいのを連続で消せたら、なんでかわからないけど気持ちいいよ!」

「はじめてにしては上出来(じょうでき)だったぞ。次は俺と対戦してみないか?」


 俺が言った瞬間、紅潮していたエリーの顔が一気に青ざめる。


「よ、養一と対戦!? わたし、いけないことしちゃったの!? 養一と争うなんて嫌だよ!」


 どうやら、対戦を『争い』――『ケンカの(たぐ)い』と勘違(かんちが)いしてしまったらしい。心優しいエリーゆえの考え方だ。


 俺は苦笑して説明する。


「ここで言う対戦は『争い』じゃなくて、鬼ごっことかと同じ『じゃれ合い』だよ」

「怖いことじゃ、ないの?」

「怖くもつらくも痛くもない。勝っても負けても楽しいだけだ。対戦ってのは、仲がいいからやるものなんだ。一緒に楽しむものなんだよ」


 エリーの表情から怯えが消え、代わりに明るさが現れた。


「じゃあ、わたし、養一と対戦する! 養一とわたしは仲良しだもんね!」

「今日も俺の天使が可愛い……っ」





 それから二〇分が経ち――俺は愕然(がくぜん)としていた。


「バ、バカな……!」


 連呼される『ばよ○~ん』のボイス。次々と消えていくエリーサイドのぷ○ぷよ。


 おじゃ○ぷよが雪崩(なだれ)のように降ってきて、一瞬で俺のエリアが埋め尽くされる。


「やった! 勝ったーっ♪」


 無邪気(むじゃき)に喜ぶエリーは、なんと二〇連鎖を達成していた。プロでも目が飛び出るレベルだ。


 はじめは手加減していたが、途中から本気を出さざるを()なくなり、それでもここ三戦は俺がボロ負けしている。


 エリーの才能を俺は身をもって感じた。学習力と成長速度が桁違(けたちが)いだ。チート能力と言ってもいい。


「俺では、もはや手も足も出ない……!」

「ふわっ!? か、勝ったらダメだった!?」


 コントローラーを落として天を(あお)ぐと、エリーがアワアワと慌てる。


「養一、わたしのこと、嫌いになっちゃう?」

「そんなわけあるか。ビックリしているだけだよ」


 心配そうに上目遣(うわめづか)いするエリーに、俺は笑いかけた。


「エリーはもっと自分を誇っていい。ゲームをはじめたばかりなのに二〇連鎖できるやつなんて、きっとエリー以外にいない。スゴい才能だ。エリーは俺の自慢だよ」


 優しく頭を撫でると、エリーはホッと息をつき、ニパッと破顔(はがん)する。


「養一にそう言ってもらえて、わたし、嬉しい! ゲームって楽しいね!」

「俺も楽しかったぞ。いい息抜きになった。またやろうな」

「うん! 約束!」


 俺とエリーは笑い合い、小指と小指を絡ませて、指切りげんまんした。


 ポケットのスマホから通知音が鳴ったのは、そのときだ。


 スマホを確認すると、LINEのアイコンが映っている。


 LINEのチャット画面を開き、俺はハッとした。


清香(きよか):そちらに用事があって向かうのですが、よかったら、明日、お茶しませんか?』


 メッセージを見て、俺は呟く。


「清香先生、こっちに来るのか。久しぶりだな」

「清香先生って、誰?」


 頬を緩める俺に、エリーがコテンと首を(かし)げる。


 俺は答えた。


(ひじり)清香(きよか)さん――俺を救ってくれた、恩師だよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ