中世から来た魔女は、決意する。――1
エリーが負った傷は翌日にはあらかた治り、ガーゼも取れた。
昼食を終え、エリーが手を合わせる。
「ごちそうさまでした! おひるごはんもおいしかったよ、よういち!」
「ああ。お粗末様でした」
「ぜんぜんおそまつじゃないよ? よういちのごはんをたべられて、わたし、すっごくしあわせ!」
エリーがニパッと、親愛度一二〇パーセントの笑顔を俺に向ける。
エリーは天使かもしれない。いや、「かもしれない」は余分だ。エリーは天使なのだ。
愛らしいエリーと嬉しい言葉に頬を緩めながら、俺は感嘆していた。
とんでもない成長速度だよなあ。
エリーはすでに、日本語で日常会話ができるようになり、今日の午前中にカタカナもマスターした。
昨日から日本語の勉強をはじめたとは、とてもじゃないけど思えない。『天才』の称号では物足りないほどの、驚異的学習力だ。
加えて、ちゃんとした食事をとり、栄養不足が改善されたためか、パサパサだった金髪はツヤを得て、荒れていた肌もしっとりしてきた。
折れそうなほど痩せていた体にもほどよい肉がついてきて、顔色も血行のよいものになっている。
健康になったエリーは、美少女そのものだった。
長いストレートヘアは金の絹糸。肌は処女雪のように白く、青い瞳には輝きが宿り、さながらサファイアのようだ。
顔立ちはあどけないが、これだけの美少女はそういないのではないだろうか? 悠莉が持ってきてくれた、ベージュのニットとカーキーのロングスカートを着たエリーは、聖女のように美しい。
たぐいまれな頭脳に、天使と見紛うほどの美貌。これは将来が楽しみだ。きっとどの分野に進んでも成功するし、ステキな恋人ができて、幸せな結婚生活を送れることだろう。
ただし、半端な男は俺が認めん。エリーを嫁がせるときは、この目で厳しく審査せねばならないな。
「よういち、さっきからどうしたの? ひょうじょうがころころかわってるよ?」
「な、なんでもないよ、エリー」
ニヤけたり、しかめっ面になったり、ひとりで百面相をしている俺に、エリーがコテンと首を傾げる。
イカンイカン。トリップしてしまったようだ。一緒に過ごすときは、ちゃんとエリーに集中しないと。
俺はブンブンと頭を振った。
「会話はかなり流暢になったし、ひらがなだけじゃなくカタカナも習得した。次は漢字を学んでみようか。漢字を覚えれば、日本語の勉強は完了だ。そうしたら、次は教科書を使って基本五教科の勉強をはじめよう」
「わかった! がんばるね!」
「やる気満々だな、エリー。偉いぞ」
「えへへへ」
俺に褒められて、エリーがはにかむ。
「べんきょうがとってもたのしいの。きっと、よういちがおしえてくれるからだね! がんばってかんじもおぼえるよ!」
「エリーが健気すぎてつらい……!!」
天使の笑顔に、俺は悶えるほかなかった。




