第25話:答えは「はい、喜んで」
定位装置を取り出して、シロとメイスから十分に離れたことを確認したあと、長距離を走り続けた疲労がようやく押し寄せてきて、完全に俺を打ちのめしきった。そのまま大の字に地面へ倒れ込み、半月と見つめ合いながら、大きく息をついた。
複雑で入り乱れた感情はまだ止まらず、制御できないまま頭の中で暴れ回っていた。幸い、心臓の鼓動が意識を奪い、今はそれらを細かく考えて整理することはできない。ただ胸の上下に集中し、大きく呼吸を繰り返すだけでよかった。
「先輩……ごめんなさい。」
夜空の大半がキムの顔に遮られた。彼女は頭の団子をほどき、くすんだ桃色の髪を下ろしている。俺は何も言っていないのに、唇を引き結んで謝ってきた。
「自分が間違えたと思ってるのか? どうしてだ?」
俺は仰向けのまま、荒い呼吸を抑えながらどうにか問い返した。
「さっきは先輩がパーティーに戻る絶好の機会でした。あのまま話を続けていれば、もう目標を達成できていたかもしれません。でも私は先輩を遮って、変なことを言ってしまいました。」
キムは愚かではない。状況判断は非常に正確だ。彼女の言うとおり、シロとの偶然の再会はまさに天からの贈り物で、うまくつかめばスパイとしての役目を続け、仕事を果たせたはずだった。
「じゃあ、どうして俺を遮った?」
だがキムは知らない。あの一言だけで、シロが俺たちをパーティーに戻すかどうかの決断が左右されることはなかった。
本当に機会を葬ったのは、俺だ。
「だって……先輩のあの作り笑い、見たくなかったんです。」
キムは俺の頭の横に正座し、うつむいて小さく答えた。子どもが妙な理由で拗ねるように、自分でも理屈に合わないと分かっていながら、感情に任せてしまい、それでもそうせずにはいられなかったように。
星が散りばめられた夜だったが、キムの沈んだ表情のせいで光を失ってしまったように見えた。俺はあえて目を合わせず、シロやメイスとの再会、そしてあのときの自分の対応がどれほど不手際だったかを思い返した。
「ありがとう。」
鼓動は次第に落ち着き、ようやく手足が言うことを聞いて体を起こす。俺も正座してキムと向き合い、肩をすくめないでくれと促した。
「正直、さっきの俺もかなり混乱してた。せっかくの好機を逃したのは事実だ。でも今日は休みだろ? 一番に置くべきなのは……仕事じゃなくて、お前だ。」
「先輩……」
涙で満ちた琥珀色の瞳が揺れていた。俺の失態まで背負わせたくはない。これまでどおり、ただ楽しそうに笑っていてくれればいい。
「うっ!」
突然抱きつかれて、不格好な声が漏れた。耳元ではキムの嬉しそうな鼻息が聞こえる。これでまた合法的に甘える口実を与えてしまったらしい。行き場を失った両手は膝の上に置いたまま、彼女が気持ちを吐き出すのを待った。
「先輩は勇者パーティーで、よく楽しそうにしているふりをしていたんですか?」
「笑ってたほうが好かれるだろ。何もなくても、できるだけ笑うようにしてた。」
「それならよかったです。」
ようやくキムは離れ、両手を合わせてくすりと笑った。
「先輩が本当に笑うときの顔を知っているのは、私だけなんですから。」
またそんな台詞を、と心の中では思いながらも、つい苦笑してしまい、それに釣られてキムは声を立てて笑った。
「もう遅いですし、先輩、帰りましょう。」
キムは伸びをしてあくびをし、町へ戻る時間を見計らったように元気いっぱいに言った。
「待て。」
立ち上がろうとするキムの手を先に引き止め、俺は正座のまま深く息を吐き、自分との約束を果たすようにもう目を逸らさずキムと向き合った。
「まだ答えてないだろ。キムがさっき言ったことについて。」
遠回りをしても、湖面に映る月光はまだ視界の端に残っている。先ほどと似た景色が、途切れた感情をつなぎ直してくれているかのようだった。だが今、俺を見つめるキムの表情はさっきとは違う。明るい瞳には、俺には判別しようのない感情が満ちている。できることなら、いつものように明るい笑顔のまま聞いていてくれればよかった。
「キムと未来を共にすることを、真剣に考えると約束する。そして答えが決まったら、必ずすぐにキムに伝える。一秒たりとも待たせない。」
思っていたよりも落ち着いた口調でそう言いながら、小指を差し出した俺の指先はわずかに震えていた。
「先輩……」
思いがけず、その小指を握る手のほうがもっと強く震えていた。ときおり震える肩と、頬を伝い落ちる数滴の涙が、喜びよりも複雑な感情を物語っている。キムは翼を広げて俺の腰に回し、少しずつ、ほんのわずかずつ、きわめてゆっくりと頭を俺の肩へ預け、耳元で小さく答えた。
「はい。ではそのとき、キムの答えは『はい、喜んで』です。」
◎
どれほど時間が経ったのか分からない。立ち上がった俺たちは体についた砂を払い、再びきらめく湖畔へ目を向け、休暇の終わりを惜しむ気持ちを全身で受け止めながら、静かに別れを告げた。
「そういえば、帰りも同じ方法しかないよな。」
俺は目を細め、ここへ俺を連れてきた張本人を見やった。彼女はまったく悪びれる様子もなくへへっと笑い、翼を羽ばたかせて答えにした。
仕方なく、俺は観念してキムにいわゆるお姫様抱っこで抱えられ、最初からいきなり最高速度を出さないように、乗客の体調を考えて飛ぶようにと念を押した。
「了解です! お姫様殿下!」
そう口では言いながら、飛行速度は相変わらず信じられないほど速い。少しずつ目まいを覚えながら彼女の横顔を見ていると、俺はふと、自分がさっきとんでもなく気恥ずかしいことを言ってしまったと気づいた……。
あああ……いっそキムに全速力で飛んでもらって、気絶してしまえばよかった。次々と浮かんでくる記憶の断片はまさに公開処刑で、顔に差す月光さえ灼けつくように熱く感じられた。




