第24話:俺は……いったい何をしているんだ?
大股で俺のほうへ歩いてきたシロは、盛んに手を振っていた。その後ろをついてきたメイスも、俺の姿を確認すると微笑み、足を速めて前に出てきた。
別れてからまだ一、二か月しか経っていないはずなのに、朗らかな少年と内向的な少女を正面から見つめると、よみがえった記憶はひどく遠いものに感じられ、今の心情とぶつかり合い、最後にはただの空白だけが残った。
嬉しそうな様子のシロは近づいてきても何も言わず、足を止めると逆に口元を引きつらせ、何度か湖面に視線を向けてから、唇を結び、「久しぶりだなソウル。最近……大丈夫か?」と尋ねた。
「……」
「先輩?」
「ああ、俺は元気だ。ジェシーとハンクは?」
背後のキムにそっと背中をつつかれて、ようやく我に返り、平静を装ってシロに答えた。
「私たちはもともとゼラ魔法塔にいたの。でもうっかり転送トラップを踏んでしまって、近くの森に送られちゃったのよ。」
メイスはそう言いながら、次第に視線をキムへと移し、判別しがたい感情を浮かべていた。
「ここの魔力濃度は異常なくらい高いんだ。メイスの魔法があって助かったよ。ハンクたちは森のほうで休んでいられる。」
シロは誇らしげにメイスを褒め、彼女は恥ずかしそうにうつむいて密かに喜んだ。
「でも……ソウルは大丈夫なの? それに、こちらの方は?」
メイスは首を横に振り、肩をすぼめながら尋ねた。その間ずっとキムと視線を交わし、シロとは違う鋭さを発揮していた。
まずい……最初に尾行したとき、キムを隊の前に姿を現させたことがある。まだ変装のネックレスをつけていたとはいえ、魔族の特徴を隠していただけで、実際の顔立ちは変わっていない。このままでは見破られる可能性が高い……。
「こんにちは。私は先輩の婚約者、キムです!」
思いがけず、キムはこのとき自ら名乗り、にっと笑って二人に挨拶をし、その場を取り繕おうとしていた。
「え? 婚約者! ソ……ソウル、そんな話一度も聞いたことないぞ?」
「あ? お、俺は……えっと……」
「先輩は恥ずかしがり屋なんです。いつも私たちの関係を認めるのを照れちゃうんですよ。」
「違う、そうじゃなくて、俺は……」
「はは、なるほどな。羨ましいよ。」
シロがキムに気づいていないのは確かだが、別の誤解を生んでしまったようでもあった。何か説明すべきかと考えていると、シロはさらに続けた。
「それで、どうしてここにいるんだ? この湖は魔力密度が高い。長くいれば倒れやすいんじゃないか?」
勇者は生まれつき常人よりも強靭で、空気中の魔力に耐えられるのは当然だ。だが、弱い村人を演じている俺がここにいるのは確かに不自然だ。とっさに、もともと魔力に鈍感だということを言い訳にしてごまかし、体調も確かに悪くなり始めているから早めに離れるつもりだと嘘をついた。
シロの提案で、俺たちは一緒に森へ戻り、ジェシーとハンクに会って旧交を温めることになった。断る間もなく、楽天的なキムが自ら了承してしまい、結局彼らと行動を共にするしかなくなった。
「ごめんなさい、キム。私たち、以前どこかで会ったことあるかしら? なんだか少し見覚えがあって。あ、もし私がうっかり忘れていたら気にしないでね。ちょっと物忘れがあるの。」
残念ながら、メイスは胸中の疑問を手放さず、とても丁寧に尋ねた。
シロたちにとって、あの日突然姿を現した魔族の少女は死神同然だった。だが目の前のキムは、心に刻まれた恐怖と同じ顔をしている。どうして疑われずにいられるだろうか。
「え? そうですか? 先輩?」
「メイスの勘違いだろ。これが初対面のはずだ。」
俺は平静を装って答え、余計なことを言わずに問題を俺に任せたキムを内心で褒めた。
「そうだ、ここに神剣が封印されていると聞いて、探しに来たんだ。残念ながら成果はなかったが。」
キムが話していた伝説をとっさに思い出し、話題を逸らしつつ、ここに現れた理由に説得力を持たせた。メイスが何度も頷く様子を見れば、ひとまず危機は去ったと分かった。
「本当か? じゃあ戻って探してみるか?」
シロは目を見開き、語気を強めたが、すぐにメイスに制され、他の二人がいないときに勝手なことをしないよう諭された。
「それで、ソウルたちは神剣を何に使うつもりなの?」
先を歩くメイスが首をかしげて尋ねた。
「先輩は強くならないといけないんです。そうすればパーティーに戻れますから。」
「パーティー? ああ……そうか……ソウルはまだそのことを気にしているのか?」
シロの目に一瞬の後ろめたさがよぎり、口調にははっきりとした憂いが混じった。メイスも似た反応を見せ、足取りがわずかに止まった。
シロの一言をきっかけに、長い間見ないふりをしていた重い罪悪感が一気に込み上げ、胸を強く締めつけ、肺の空気をすべて押し出した。
俺は……いったい何をしているんだ?
どうしてキムのほうが俺よりも覚えているんだ……スパイの仕事を? どうして俺はシロに会った瞬間、自分の目標が勇者パーティーに戻ることだとすら思い出せなかったんだ?
何気なくキムに視線を向けたあと、俺は首を振り、余計な考えをひとまず閉じ込めるように意識を切り替え、スパイを演じるときの明るい笑顔を浮かべて答えた。
「村の人たちの仇を取るって言っただろ。簡単に諦めるわけにはいかないさ。俺がもう少し強くなって、お前たちの足手まといにならなければ、また一緒に行動できるだろ?」
シロの反応は予想どおりだった。後ろめたさの色は次第に消え、代わりに肯定の笑みが浮かび、少年らしい台詞を付け加えた。
「ああ、パーティーにはいつでもお前の居場所がある。戻ってくるのを待ってるぞ。」
念のため、作り話でもいいから、パーティーと別れてからの経験を適当にでっち上げて語り、本当に強くなったかのような錯覚を与える。ときおり過去の冒険の記憶を織り交ぜ、シロとメイスに俺の存在をより強く意識させる。運が良ければ、今すぐにでもパーティーへ戻れるかもしれない。
この滅多にない好機をつかめば、過ちを埋め合わせ、すべてを正しい軌道に戻せる。何があっても、二度としくじるわけにはいかない。
このとき、シロは心から笑い、メイスは懐かしむ表情を浮かべていた。過去に浸る二人は、俺があとひと押しすれば決断できるはずだ。目に感慨が宿った瞬間を見計らい、より完成度の高い仮面をかぶり、笑顔のまま口を開いた。
「せっかく会えたんだし、できれば……」
「先輩!」
だが、キムが突然俺の手をつかみ、目尻を下げ、これまで見たことのない、直感的に彼女のものではないと錯覚してしまうような表情を浮かべた。
「……あれ? ごめんごめん、話すのに夢中でキムに説明するのを忘れてた。さっき言ってたのは……」
一瞬反応が遅れた俺は、固くなった口元を無理やり緩め、より自然に見せるために何かを付け加えようとした。
「私を一番に考えてください。」
キムは短く言った。その瞬間、細い針のように鋭い言葉が胸を突き刺し、作り笑いを保てなくなった。
その場で、仕事の規範も、スパイとしての意識も、さらには自分が信じてきた信条さえも、キムのわずかな眉のひそめによって崩され、誰にも気づかれない、かすかな溜息だけが残った。
俺はスパイだ……そしてスパイは……耐えるべきなんだ。
「悪いな、シロ、メイス。」
俺は唇を結び、戸惑いを見せる二人の少年少女に謝った。
「必ずもっと強くなって、またパーティーに戻る。でもその前に、もっと大事なことを片づけないといけない。じゃあな。」
そう言って手を振り、キムの手を引いて、なぜか反対方向へ走り出した。ただ一心に、この場から早く離れたかった。
「待ってくれ……ソウル!」
「ジェシーとハンクによろしくな!」
俺とキムは周囲の森へと姿を消し、シロのことをこれ以上考えないようにしながら、理由もなくキムの手を引いて、逃げるように駆け出した。一歩踏み出すたびに胸の裂け目がさらに広がるように感じ、体が引き裂かれそうで、人の形を保てなくなりそうだった。




