第20話:ちゃんと私を一番に考えてください!
ほとんどキムに引っ張られる形の俺は、彼女の弾む動きに合わせながら、流しの楽士の歌声に合わせるように、つま先で音符の間を軽く踏みながら跳ねるように歩き、軽快なリズムに置いていかれないよう必死についていく。
聞き慣れた曲は、一日の始まりを迎えるのにぴったりだった。近くの住民たちも、ただの聞き手でいることに満足せず、陽気な雰囲気に合わせて歌い始める。
広がっていく音楽は大通りから路地まで響き渡り、曲の中を進む俺たちの耳には、幼い子どものあどけない合唱、老人のかすれた歌声、そして歌い手の熟練した主旋律が重なって聞こえてくる。街の景色を彩り、心を晴れやかにしてくれる。
建物の間に干された洗濯物が、石畳に落ちる陽光をまだらに遮り、まるで劇場のスポットライトのようにきらきらと瞬いて、次々とキムの上に降り注いだ。
「キム! どこへ行くんだ?」
だんだん体力が尽きてきた俺は、どうにか声を絞り出し、吹き抜ける風に乗せてその疑問を前へ届ける。
「何か食べます!」
キムは振り返りもせず、迷いなく答えた。後ろの混雑した人波などお構いなしに、まるで背中に目でもあるかのように障害物を見事に避けていく。そのたびに、ひらりと長いスカートが揺れた。
そんな調子で数分ほど振り回されたあと、ようやく俺たちは一台の菓子の屋台の前にたどり着いた。息を切らした俺は思わず両手を膝に置いて休み、キムの体力に感心する。
呼吸がようやく整い、鼻で空気を吸うと、甘い香りが漂ってくるのが分かった。屋台の横に並んだ簡素な木の机と椅子には、すでに何人かの客が座っていて、満足そうな笑顔でその味を評価している。
「ギルドの受付のお姉さんが、この屋台の光梨のケーキはすごく美味しいって言ってました。先輩と一緒に食べたいんです!」
空いている机を見つけると、キムはどさっと腰を下ろし、両手で交互に机を軽く叩きながら、俺にも座るよう誘った。
「朝から甘いものって、ちょっと贅沢すぎないか?」
俺は首を伸ばして屋台の前に立てられた木の看板を確認し、値段がまだ許容範囲だと分かってからようやく安心した。
「記念すべき初デートなんですから、ちゃんとお祝いしないと!」
そう言ったあと、彼女はこっそり周囲を見回し、口元を隠して小声で続けた。
「それに、私の財力ならこのお店ごと買うことだってできますし。ケーキ一、二個くらいどうってことありませんよ。」
「でも実際、朝ごはんなんだよな。」
俺はつまらない冗談を言い、目の前の少女が本当にお嬢様だという実感を少しでも和らげながら、屋台へ注文しに向かった。
三か月前、ハンクの誕生日を祝うためにメスと一緒に焼いた失敗ケーキを除けば、最後に甘いものを食べたのがいつだったか思い出せない。
キムの顔にあふれる幸せそうな表情を見ながら、俺は光梨のスライスが乗ったケーキをスプーンですくい、静かに口へ運ぶ。その甘さで、しばらく何も考えないでいようと思った。
果物の甘みは少し遅れて口の中に広がり、その風味はアヴィ村の名産である茄梨を思い出させた。馬車の出発に間に合わせるため、あのときシロたちと半日必死で収穫したものだ。目標を達成したあと、全員そのまま果樹園に倒れ込み、丸一日眠り続けた。
ハンクは果物を食べない。ジェシーが好きなのは象梅。メスは……たしかティミ瓜だったか。
シロは……シロは……何だったっけ。
「先輩、どうですか? 美味しいですか?」
目の前のキムは身を乗り出し、頭の上のお団子を揺らしながら、感想を聞きたくて仕方ないという顔でこちらを見ている。その様子に、俺は物思いから引き戻された。
「わっ……なんでそんなに食べるの早いんだ? 俺はまだ一口目を飲み込んだところだぞ。」
「だってすごく美味しいんですもん。先輩はどうですか?」
「うーん……人に勧められる理由は分かる気がする。」
「え? それってどういう意味ですか? 美味しいのか美味しくないのかどっちです?」
キムの問い返しに一瞬言葉が詰まる。舌を動かして口の中に残る甘さを確かめ、少し考えてから正直に言った。
「俺、甘いものってあまり分からないんだ。好きとも言えないかもしれない。たぶん……嫌いじゃない、ってくらいかな。」
「最初からそう言ってくれればいいのに。先輩ってほんと素直じゃないですね。さっきもきっと仕事のこと考えてたんでしょ?」
俺の反応でキムががっかりするかと思ったが、彼女は笑うだけでなく、考えていたことまで見抜いていた。
「それじゃダメですよ。今日は休みなんですから。それにデートですよ? ちゃんと私を一番に考えてください!」
情けない話だが、こんな大事なことを後輩に言われて気づくとは。普段、仕事のプロだと自負している自分としては面目が立たない。
確かにキムの言う通りだ。いつもの仕事の重圧や悩みはひとまず脇に置いて、目の前のケーキをちゃんと味わうべきだろう。
「ああ……悪い。」
気が緩むと、思わず苦笑が漏れた。後頭部をかきながら、少し照れくさそうに言う。
「お詫びに、ちゃんと覚えておくよ。キムが甘いもの好きだってこと。」
「きゃっ! 先輩のそういう無自覚な口説き方……大好きです!」
両手で頬を押さえて激しく首を振るキムが大声を上げ、周りの客の視線が一斉にこちらへ集まった。ようやく落ち着いていた気分が、また少し張り詰めてしまう。
「じゃあ、次の場所に行きましょう。」
いくつか違う味のケーキを食べたあと、キムはお腹を軽く叩き、背伸びをして気楽に言った。そしてこちらに手を差し出す。
「食べたばかりなんだから、さっきみたいに走るのはやめてくれよ。」
俺は素直にその手を握る。細い指が指の間をすり抜け、しっかりと絡み合ったまま、次の場所へ向かった。
気のせいかもしれないが、掌の温もりは、さっきより少し熱を帯びている気がした。




