第17話:もう少しキムのことを知りたい
どれくらい続いたのか分からない天旋地転のあと、キムはようやく俺を地面に戻してくれたが、目がくらみ頭がぼうっとした俺はまったくまっすぐ立つ力がなく、両脚は力なく揺れ続けていた。
「先輩、今の私は世界で一番幸せな女の子です!」
俺を抱きしめたキムは顔を上げて俺と見つめ合い、瞳には熱が満ちあふれ、頭の角まできらきらと光っている。
すぐに誤解を解かなければならないというプレッシャーと、さっきまでの無茶な飛び回りの余韻が混ざり合い、強い吐き気が込み上げてきた。限界に追い詰められた俺は慌てて顔を上げ、穏やかで静かな花の海を思い浮かべ、遠くの翠緑の山並みにこの不快感を押さえ込ませる。
「キム……」
「はい!」
「えっと……さっき言ったことは、ただ……ただ君の注意を引き戻すためだったんだ。」
俺は少し力を入れてキムの両腕をほどき、一歩後ろに下がり、頬をかきながら、少し気まずそうに言った。
「はい! 私の注意は全身全霊で先輩に向いています!」
キムはまた自分から前へ出て距離を縮め、俺の両手を握って笑顔で答えた。まるで俺の意味が分かっていないかのようだった。
「つまり……あの……さっき言ったことは、本当じゃない。ただ暴走を止めるためだったんだ。」
「え?」
その瞬間、キムは目を大きく見開き、まるで石化の呪いを受けたように固まって動かなくなり、反応がなくなった。
焦げた匂いの代わりに、気まずく微妙な空気が鼻腔に流れ込む。動かずにいるキムは、騒ぎを起こしているときよりもかえって心配になるが、あの揺れ続ける高空からまだ頭が完全に地面へ戻っていない俺は、何を言えばいいのかまったく分からない。キムは俺を見て呆然とし、俺はキムを見て気まずくなり、一分一秒が火の中にいたときよりもつらかった。
「分かりました。」
しばらくして、琥珀色がようやくキムの瞳に戻った。彼女は数歩後ろに下がり、それから背を向け、背後で指と指を絡め、足元の目障りな石粒を蹴りながら、低い声で言った。
「すみません……また先輩に後始末をさせちゃいました。」
「大丈夫だ……それより、キムは平気か?」
「はい、次の仕事は何ですか?」
「シロたちの目的地はトゥコ様の領地だ。まず近くの町へ行って準備をしよう。」
キムの畳まれた翼は震えており、絡めた指はますます強く食い込んでいて、彼女の言うようにまったく平気という様子ではなかった。
彼女に冷静さを取り戻させるためだったとしても、ほかにもっといい方法があったはずだ。もし仕事をうっかり台無しにしただけなら、せいぜい金をいくらか引かれるくらいで済む。しかし部下の信頼を失えば、千金万銀でも買い戻すことはできない。
今、肩にのしかかるこの罪悪感は、見過ごすことを許さなかった。
「キム、こっちを向いてくれるか?」
俺は普段よりずっと穏やかな口調で頼みながら、同時に襟を整え、姿勢を正して立ち直った。
「先輩、私は大丈夫ですよ……」
まず頬の横に手を当てて何度かこすってから、キムは軽やかに振り向いた。顔には相変わらず笑みが浮かんでいた、すぐに俺の真剣な表情を見ると、言葉を止めた。
「本当に申し訳ない。」
俺は目を閉じて腰を折り、最大限の誠意を込めて頭を下げた。キムが慌てた妙な声を上げるのを聞いてから、ゆっくり体を起こし、一歩近づいて彼女の目を見つめると、その目の縁がまだ少し赤く腫れているのに気づいた。
「この話は本当は仕事が終わってから言うつもりだった。でも上司である俺は、すでに一度役目を果たせていない、もう一度規則を破っても構わない。」
俺は少し間を置き、唾を飲み込み、昨夜長く考えた末に整理した考えをすべて口にした。
「俺はキムのことをまだ十分に知らないから、何度も仕事を言い訳にして避けてきた。それに、うっかり君の譲歩を当然のもののように受け取ってしまい、ずっと何の返事もしてこなかった。考えてみて、これは未熟で礼を欠いたことだと思った。確かに俺は仕事の時間に男女の私情を持ち込むべきではないと言った。だからキムが気にしないなら、仕事が終わったあと、あるいは休みの日に、少し時間をくれないか。最初から改めて君のことを知る機会をくれ。」
「私が先輩を好きなのは、私自身のことです。先輩には関係ないですよね?」
キムのこの一言を、俺は返事をしなくてもいい合図だと誤解していた。だが、その一言一言が本心からの宣言だったことに気づいていなかった。どうして俺がそれを適当に流していいはずがあるだろうか。
たとえ……たとえ俺がキムに男女の感情を抱いていなかったとしても、上司と部下の関係を言い訳にしてごまかし、この関係を真剣に受け止めないのはよくない。
夜、屋内まで届く蛙の鳴き声が、このことに気づかせてくれた。最後にキムの気持ちに応えられるかどうかは分からないが、少なくとも仕事以外の時間にきちんと一緒に過ごさなければ、相手を裏切らないとは言えない。
「先輩……本当ですか?」
キムはまばたきをして、信じられないという様子で俺を見つめて尋ねた。
「ああ、仕事が終わった時間だけでいい。もう少しキムのことを知りたい。」
「あ……あああ……」
変な声を上げたキムは耳まで赤くなり、両手で頬を押さえて数歩後ろへ下がると、そのまま地面にぺたりと座り込んだ。翼まで力なく脚の上に垂れている。
「キム? 大丈夫か?」
「ううううわああああああああ! だいじょぶでずううう! ただ……ただ、うううう、すごくうれじいんでずううう!」
耳をつんざく泣き声に、俺は思わず耳を塞ぐしかなかった。足取りも重くキムに近づきながら、嗚咽にかき消される言葉をどうにか拾って彼女を慰めようとする。
だが近づいた瞬間、タコのようになったキムがすぐに俺に絡みつき、俺も一緒にバランスを崩して地面に転がった。耳を守る手も空かず、歯を食いしばって恐ろしい騒音の攻撃に耐える。
スパイにとって一番大事な技能は何だ? 俺は頬を赤くし、体裁も構わず大泣きしているキムを横目で見ながら、申し訳なさを感じつつ、自分に言い聞かせた。自分が招いた結果は自分で背負わなければならない。ここで逃げ出すわけにはいかない。
部下が我慢を知らないなら、上司は二倍の努力を払わなければならないのだ。




