第10話:そんなに落ち込むなって言っただろ
夜が明けたばかりの頃、茂みの鳥たちのさえずりが絶え間なく響き、順調に昇給する夢から俺を現実へ引き戻した。
水を一口飲んで頭をすっきりさせ、背筋を伸ばして鈍った筋肉を目覚めさせてから、俺はあくびを一つつき、焚き火の残骸と地面に散らばった鍋や皿やらを片付け始めた。
手加減して静かに動く必要がない理由は、キムの雷鳴のように響くいびきが、すでにあらゆる音をかき消しているからだ。
こんな騒音の中で自分がどうやって眠れたのかもわからないし、あの心地よい鳥の声がどうやって幾重もの轟音をくぐり抜けて、俺を眠りから呼び起こしたのかも不思議でならない。
野宿しているのにここまで安らかに、しかも無防備に眠れるとはな。キムの性格を考えれば、まあ不思議でもない結果だ。
幼い子どものように無邪気な寝顔を眺めていると、口元に涎の跡がついているのに気づいた。眠っていても顔には相変わらず間の抜けた笑みが浮かんでいる。彼女の夢の中では、いったいどんな良いことが起きているのだろうか。
「先輩……私、白いウェディングドレスが好き……えへへ。」
「キム、起きろ。仕事だ。」
洗ったばかりのスープ杓子で容赦なくキムの肩を突いた。幸い彼女はわりと簡単に目を覚ましたが、目にはまだ薄い靄がかかっていて、東西南北もわからないような様子だった。
「先輩……おはようございます。」
「おはようでまた寝転がるな。仕事だ。」
「はい……あ、目を開けて最初に先輩が見えるなんて、幸せです。」
毛布を異次元ポケットにしまい、俺とキムは体についた砂埃を払う。準備が整ったのを確認してから、再び勇者たちのいる方向へ進み始めた。
ガス様が俺のためにうまく取り繕ってくれているおかげで、キムの実習を兼ねているこの期間は、これまでのように三日に一度の頻度で勇者一行の近況を報告する必要がない。
上が急かしてこないのなら、こちらも歩調を緩める。キムにスパイの技術を説明する時間にあてるほか、もっと重要なこと――会社の運営や文化についても教えておくつもりだ。
俺の健康のためにも、キムが本当に準備を整え、リスクをできるだけ下げられるようになってから尾行任務を始めたほうが、俺としても安心できる。
「だから今、会社の業務はチャックが代わりに俺の署名をしてくれてる。情報課の地下課長と言っても言い過ぎじゃない。あとで紹介するから、ちゃんと先輩として礼儀正しく接するんだぞ。」
「了解です! でもキムの先輩は先輩一人だけですよ!」
こんな調子で、せっかくの忠告もキムにうまく受け流されてしまう気がする。
とはいえ彼女は決して注意を忘れることはないので、そこまで細かく責める気にもなれない。
数日かけて歩いたり止まったりしながら、ついでにいくつかのゴブリンの巣を掃討したり、呪いの罠を解除したりと、名声を高める仕事もこなしているうちに、勇者パーティーはついに目と鼻の先まで近づいてきた。俺たちの今の速度なら、あと三十分ほどで彼らの背中が見えるはずだ。
「いいか、俺たちは尾行しているだけだ。一定の距離を保てばいい。絶対に見つかるなよ。」
「ご安心ください。足元の小石よりも存在感を消します!」
キムはささやき声で答え、足音を立てないために空中に浮かんだ。
……だが、羽ばたく音のほうがむしろ大きい。
シロたちの足跡は次第にはっきりしてきた。かき分けられた茂みを見る限り、彼らがここを通ったのはそう遠くないはずだ。前へ進めば進むほど、胸の落ち着かない感覚が強くなる。俺は呼吸のリズムをゆっくり整え、キムに目配せして、ここからは口を開かないように合図した。
「残りの食糧があまりないんだ。シロ、次の町まではあとどれくらいだ?」
「もしあの町長の言葉が間違っていなければ、たぶん明日には着くはずだ。」
「よかった……やっと風呂に入れる。」
久しぶりに見る元仲間たちは、別れた時とほとんど変わっていない。気楽に雑談を交わし、勇者の一行というよりは、相変わらず旅人のような雰囲気だった。
俺はキムに手振りで合図し、この中身のない会話にも集中して聞くよう促す。退屈な仕事ではあるが、注意を怠れば重要な情報を聞き逃す可能性もある。
「タイガ町のワインが恋しいな。ソウルがそれで作るバーベキューソースも、もうすぐなくなりそうだ。」
ハンクのしゃがれた声が皆の笑い声を押しのけ、その場の空気が一瞬静まり返った。
「い……今ごろ何してるんでしょうね。レストランで料理してる姿、なんだか似合いそうです。」
メイスが沈黙を破り、軽い口調で沈みかけた空気を引き戻した。
「うん、確かにそうだな。」
「おいおい、この話題もう何度も出てるぞ? そんなに落ち込むなって言っただろ。俺たちはただ別行動してるだけだ。魔王を倒したら、また会いに行けばいいさ。」
ジェシーがうまく場の空気を持ち直し、下を向いていた皆の顔も再び上がり、さっきまでの明るい様子に戻った。
ある程度の距離まで近づいたところで止まり、標的が離れてから再び追う。こうして進んだり止まったりする方が、歩き続けるよりも隠密性は高い。
木の幹の陰に身を潜めた俺は、会話の内容を羊皮紙に書き留めていく。速記のために崩した字は、おそらく自分にしか読めないだろう。後でちゃんと整理してから提出しないとな。
「先輩、行きますか?」
その時、キムが手に持っていた紙を俺の前に差し出してきた。琥珀色の瞳がまっすぐこちらを見つめ、きらきらと光っている。
キムの羊皮紙には文字はなく、花や草、星、剣などの幼い落書きがびっしり描かれていた。さらに、本人によく似た笑顔の顔まで描かれている。
俺は頷いて応じ、指でパーティーを追うようキムに合図する。
姿勢を正した彼女は、落書き以上に眩しい笑顔を浮かべ、手を頭に当てて敬礼した。
パーティーの後ろを追うこの仕事は、キムにとっては簡単なものらしい。相変わらずメモの内容は意味不明だが、「見つからないこと」を基準にするならば、なかなか悪くない。
配置が変わったところで、想像していたほど新鮮さがあるわけでもない。
以前、運務部に異動させられたあと、しょっちゅう事務所に顔を出して愚痴をこぼしていた元同僚の気持ちが、今なら少しわかる気がする。
「シロ!」
俺がメモを取りながらぼんやり考え事をしていたその時、ジェシーが突然弓を構え、鋭い声で皆に警告した。
「気づいた。魔族だ。みんな気をつけろ!」
シロの返答を聞いた瞬間、心臓の鼓動が一気に速くなる。俺はすぐキムの方を振り向き、彼女も同じく信じられないという表情でこちらを見ていた。
彼らと衝突してはいけない。すぐに離脱しなければならない。
その判断が指示になる前に、シロたちの行動が俺の誤解をすぐに正した。
俺とキムが見つかったわけではない。彼らが戦闘態勢を取った理由は、前方にいた――武器を持たず、明らかに緊張した様子の女性の魔族だった。
「くそ……」
俺は舌打ちした。本当の状況は、見つかるよりもはるかに厄介だったからだ。
「どうしたんですか、先輩?」
キムが身を寄せ、ささやき声で尋ねる。
「……あの魔族……営業部の同僚だ……」
一歩ずつ相手に近づいていくシロたちを見ながら、俺は思わず拳を握りしめた。




