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REVIVE  作者: Sta
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第一章【RESTART】第五話『SPECULATION AND CONJECTURE』

長く伸びた二つの影が、誰もいない校庭を横切る。

ただ、淡いオレンジ色に染まり始めた空から差し込む光だけが、俺たちの背中を照らしていた。


「特に異変はなさそうだな。」


大輔はそう言って、校舎の側から倉庫の様子を窺っている。


倉庫の周りに異常はなく、あの怪物の影も見当たらない。

しかし、扉は閉まっていて、中が見えない状態だった。


「もう倉庫の鍵は閉められちゃったかな。」


「いや、まだ校内で部活をしている連中がいるから大丈夫なはずだ。とりあえず、慎重に中を確認してみようぜ。」


大輔がそう言うと、ゆっくりと倉庫に近づいていく。

俺も遅れを取らないように大輔の後ろについていき、扉の前に立つ。


「もし扉を開けて中に怪物がいたら、倉庫の中に入らず、安全な距離を保って観察しよう。余裕があれば、ここでお前の推測を試すぞ。」


「ああ。」


「それと、これは口を酸っぱくして言うけど、絶対に無理をしないことだ。自分の命最優先でいくからな。それじゃ、いくぞ。」


「いち、にの………さん!



            で、あけるぞ。」


ガラッ!


「え」


「あ。すまん。」


大輔の掛け声に合わせて、俺は勢いよく倉庫の扉を開けた。


中は特に怪しいものはなく、怪物の影らしき姿も見当たらなかった。


「はあ…良かった。何もいない。」


「悪かったな...悠真。ところで、どうする。中に手掛かりが残っていないか探してみるか?」


空を見上げると、太陽はまだ夕暮れの光を放っていた。


天気は良好。

怪物が現れそうな雰囲気はなさそうだ。


「そうだな。手分けして探そう。」


俺たちは警戒しながら、足を踏み入れる。


砂にまみれ、使い古されたマット。

バットや、テニスラケットが大量に入ったかご。

高く積まれた三角コーン。


置かれているのはどこの学校にもあるような備品ばかりで、それらは整然と並んでいるだけだった。

倉庫の中を隅々まで見渡しても、不審なものや手掛かりになりそうなものは何一つ見つからない。


「見た感じは特に何もないか。道具をどかして探してみよう。」


大輔がそういうと、積み上げられた三角コーンやラケットの入っているかごを外に出し始めた。


俺も大輔に続き、二人で協力しながら倉庫の中に置かれている備品を次々と外に運び出していく。


_____数十分後。


倉庫内の備品はあらかた運び出され、土汚れのこびりついた床があらわになった。


「何もない…か。」


俺はがっかりしたように呟いた。


「いや、まだあるぞ。悠真、そこのマットを動かすの手伝ってくれ。」


大輔の視線の先を追うと、そこには、明らかに使い古され、黒ずんだマットが、倉庫の角の影に紛れ込むように置いてあった。


俺たちは再び力を合わせてそのマットを持ち上げ、外に運び出す。


ドサッ


マットを置いた拍子に土煙が宙を舞う。


「これでやっと、全部出せたか。」


俺はそう言って改めて倉庫の中を見渡す。

すると、俺の目に異様な模様が飛び込んできた。


「おい、これって……。」


マットが置いてあったであろう場所には、幾度もの円が重なり合い、その隙間を埋めるように、見たことのない文字や記号が複雑に、隙間なく刻み込まれていた。線は細部まで寸分の狂いなく描かれ、不気味な存在感を放っている。


アニメでよく見るような召喚の魔法陣と、とてもよく似ているそれは、赤黒く変色したような色で描かれている。


まるで__血で描かれたような。


「これって血……?血で書いてあるのか?」


思わず後ずさる。


「……悠真。俺の憶測を聞いてくれるか。」


突然、背後から大輔の真剣な声が聞こえた。


大輔は魔法陣に近づくと、しゃがみ込んで観察し始め、魔法陣の線を指でなぞった。


「これ、血だな。この血の乾きぐあいだと随分前からあったものじゃない。六時間目の最中か、それより前に書かれたものと考えていいだろ。」


「なんでそんなことがわかるんだよ。」


俺が聞くと、大輔は血をなぞった指を俺の前に出した。


「昨夜、深夜テレビでサスペンスドラマがやってたんだ。そこで似たような話をしていてな。血は数時間経ったら、完全に乾いて黒っぽい赤褐色になるはずなんだ。でも、ここに描かれている血は少しベタついていて指に付いた。それに、茶色がかった赤色をしている。だから、少なくとも何日も前に書かれたものじゃないと推測したんだ。今日、しかも六時間目の前後に描かれた可能性が高いと思う。」


大輔は魔法陣へと身体を向け直し、続けて言った。


「一時間前後の間にここへ来られるのは、体育の授業を受けていた俺たちのクラスだけ。その中でも授業中に姿が見えなかったやつに限られる。」


嫌な予感が、現実味を帯びていくのを感じる。


「悠真、バイパーは体育館裏の倉庫で怪物と対峙していたんだよな。だったら、あいつがここに魔法陣を描いて、召喚したと考えていいだろ。」


大輔の憶測が、確信へと変わりつつあった。


「大輔。一応聞くけど、他の人が書いたっていう場合はないのか…?」


「その可能性は限りなく低いな。もしバイパー以外のやつが書いたっていうなら、体育館裏の倉庫に向かっていたお前と出会うはずだ。行く道は一つしか無いわけだし。……まあ、あくまで俺の憶測だけどな。」


大輔の憶測に反論の余地はなかった。


だが、バイパーがあの『怪物』を召喚したという確信が強まるほど、俺の中では新たな疑問が浮かび上がった。


俺は魔法陣を見るまで、あの『怪物』は以前から倉庫に潜んでいたのだと考えていた。そして、バイパーはその怪物を使って哲史の存在を消したのだと。


しかし、あの怪物がバイパーによって今日召喚された存在だとすれば、先ほどの推測と辻褄が合わなくなる。


なら、どうやってバイパーは哲史の存在を消したのだろうか。


(この情報だけじゃ、問題を解決できない。バイパーのことをもっと知らないと…。)


俺が思いついた疑問を大輔に伝えようとすると、先に大輔が口を開いて言った。


「悠真。そろそろ戻った方がいいかもしれないな。日が落ちかけてきてる。」


そう言われて俺は、倉庫の中から外を見る。

空はすでに、夕焼けのオレンジ色を失い、薄暗い藍色へと変わり始めていた。西の空にはまだわずかに明るさが残っているものの、夜の気配はすぐそこまで迫っている。


「……分かった。大輔は先に備品を元に戻しといてくれ。俺は、この魔法陣の写真を撮っておくよ。何を召喚するためのものなのか、バイパーの目的はなんなのか、調べなきゃならないことが沢山あるからな。」


俺はそう言って携帯をポケットから取り出す。


携帯の画面をタップする。


画面は暗いまま、なんの反応も示さない。


「あれ…おかしいな。」


何度か電源ボタンを押すと、ようやく携帯の画面が映った。


しかし、映っていたのは見慣れたホーム画面ではなく深夜のテレビで流れるような砂嵐の画面だった。


ザザザザザザザザ……


砂嵐のノイズ音が、倉庫中に響き渡る。


同時に、倉庫の外から、じわりと冷気が地面を這うように流れ込んできた。

足元から侵入した冷たさが、靴越しに皮膚を刺し、足首からゆっくりと体を這い上がってくる。


背筋を氷の指でなぞられたような激しい寒気が全身を駆け抜けた。


何かがおかしい。


「大輔……なんか、妙だ。」


俺は、備品を片付けているであろう大輔に向かって言った。


しかし、返事が返ってこない。


「大輔…?」


「悠真!!!!!!!!」


ドンッ!

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