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REVIVE  作者: Sta
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第一章【RESTART】第三話『NORMALLY,』

この作品をお手に取っていただき、ありがとうございます!

悠真の日常に少しずつ異変が起こり始めます。

どうぞお楽しみください。


まるでガラス玉のような透き通った緑色の瞳が、俺を真っ直ぐ捉えた。

それと同時に背筋を撫でるような風が窓から吹き抜けていく。


「それだけって……。」


俺は一歩、後ずさる。

バイパーは気づいているのかもしれない。


俺だけが見えている世界に。


彼になら何を言っても、きっと信じてくれる。

そんな妙に冷えきった、それでいて確信に満ちた衝動が、俺の背中をそっと押した。まるで、そう口にすることを最初から決められていたかのように、俺はゆっくりと口を開く。


「実は……ノートンと関わった人間はみんな、おかしくなるんだ。」


「おかしくなる?」


「うん。なんて言ったらいいか分からないけど…まるで、精神を削り取られたようになるんだ。」


俺は知っている。

ノートンと関わった人間がどんなふうになるのか。


校庭の隅にある薄暗い体育館倉庫。

その裏で、ノートンと女子生徒が二人でいるところを何度も目撃したことがある。

先ほどバイパーに説明したように、そのほとんどが告白される場面だ。

だが、問題はそこではなくその『後』だった。


ノートンと別れて校舎に戻ろうとする彼女達の姿は、魂を抜き取られたように生気を失い、まるで操り人形のようだった。


それだけじゃない。

ノートンを見ていると時々、黒い影のようなものが見える。

その影はとても大きく、何かに取り憑かれているみたいだった。


「まるで操り人形…それに黒い影……か。」


バイパーは小さく呟いた。


「分かったよ、悠真。俺を信じて話してくれてありがとう。」


バイパーはパッと顔を上げる。


「もし、これから何かあったら、また俺に話してくれないか、お前の力になりたい。」


「俺のこと……心配してくれてるのか?」


俺は半信半疑でバイパーに問いかけた。


「何言ってんだよ。お前は俺の友達だろ?助け合うのも、相談に乗るのも当たり前だ。それに、何かあったら俺の名前呼んでくれ。必ず駆けつけるからさ。」


「バイパー…。ありがとう。」


俺の見たことを疑うことなく信じてくれたのはバイパーが初めてだった。胸の底から湧き上がる、異常なほどの多幸感。涙が出てしまいそうなほど嬉しい気持ちを何とか押し込んで、俺はバイパーとしっかり目を合わせる。


バイパーはどこか遠くを見透かしているような、頼もしい目をしているように見えた。


「学校案内ありがとう、悠真。」


「こちらこそ、ありがとう。」


俺はバイパーに感謝を述べて別れる。

バイパーは教室とは違う方向に、軽い足取りで行ってしまった。

何処に行くつもりなのか気になったが、今は放っておこう。きっと、話したことを整理する時間が必要なのだ。


俺はそう思い、教室に足を運んだ。


──────────────────────


「「いーち!にーい!さーん!しっ!」」


グラウンドいっぱいに生徒たちの声が響き渡る。

最後の授業だからか、ところどころ疲れを感じさせる雰囲気が漂っていた。


「なあ、悠真。お前、昼休みは大丈夫だったか?五限始まるギリギリに帰ってきたから何かあったんじゃないかって、心配になったぞ。」


隣で体操をしている大輔が、小声で話しかけてくる。


「何ともなかったよ。それに、お前が気にするほど変なやつでもなかった。きっと仲良くなれるよ。」


「それは信用できないな。体育も参加してないし、今俺たちの目につかないところで怪しいことでもしてるんじゃないのか?」


大輔に言われて改めて周りを見渡すと、確かにバイパーの姿はない。点呼の時にはいたはずなのに…。


準備運動が始まった途端、どこにも姿がないのは不自然だ。それでも、昼休みに腹のうちを話した影響か、彼を疑うという考えだけは、どうしても浮かばなかった。


「そんなこと言うなら、ノートンだっていつも参加してないだろ。バイパーも何か理由があるはずなんだ。そうやって決めつけるのは良くないだろ。」


俺は、大輔がバイパーのことを頭ごなしに決めつけているように感じて、思わず強めに言い返した。


「そんなに言うなら今、確かめに行けよ。」


「今?」


「ああそうだよ。バイパーが何してるのか調べてこい。今なら、先生もこっちを見てないから『体調不良で保健室に行く』って言えばいいだろ。もしそれで、俺が間違ってたら謝るよ。でも、お前が間違ってたら、これ以上バイパーに近づくな、信用するな。」


大輔は強い口調でいった。


「わかったよ。」


そう言って俺は先生に体調が悪くなったので保健室に行くと伝え、バイパーを探しに向かった。


(いつもなら意見の食い違いだけで、あそこまで言い合いにならないのに…。それでもあいつは、バイパーのことを疑いすぎだ。さっさと見つけて証明しなきゃだな。)


俺はそう思いながら、校舎に足を運んだ。


───────。


コツ。 コツ。 コツ。


中に入ると、外で照りつけていた太陽の光が窓からチラチラと入り込み、薄暗い廊下を明るく照らしていた。あちこちで先生や生徒の声が廊下にまで響き渡っている。


俺は、見つからないようにと足音をできる限り抑えて、ゆっくりと歩く。


保健室。空き教室。トイレ。


しかし、校舎の中をあちこち探してもバイパーらしき姿は見つからなかった。


「後は、体育館裏の倉庫だけか…。」


普通なら、もうグラウンドに戻ってしまったと考えてもおかしくないだろう。でも何故か、彼は体育館裏の倉庫にいると確信していた。


普段なら、意見の食い違いだけで言い合いにならないのに。


いつもなら、あんな出会ったばかりの奴に自分の秘密をペラペラと話さないのに。


本来の俺なら……。


バイパーと会ってからは『いつもなら』という考え方が通じないように感じた。


(まあ、今日だけたまたま、変に考えているだけか。)


俺はそんなことを考えているうちに、気づけば体育館裏の倉庫の近くまで来ていた。


そのわずか数歩のうちに、あれほど照りつけていた太陽は、まるで押し潰されるかのように泥のような黒ずんだ雲に呑み込まれ、辺りは急速に生気のない薄暗闇に包まれていく。


俺は体育館裏をゆっくりと見る。


そこには確かにバイパーの姿があった。


倉庫の前に立っていて、何もない空間をじっと見つめている。

さっそく声をかけようとした瞬間、俺は思わず足を止めた。


冷たい風が頬を撫でる。


心臓が嫌な早鐘を打ち始め、冷たい汗がじんわりと首筋を伝う。一刻も早くこの場から逃げなければならないと、生き物の本能的な恐怖が胸を締め付け始めた。


(なんだ……あれ…?)


バイパーの目の前。


そこには、普段なら起こりうるはずがない、この世のものとは思えない悪夢が広がっていた。







最後まで読んでいただきありがとうございます!

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