第64話 ―― 城の地下と、はじめての探索
塔の書庫で見つけた記録。
そこに書かれていた言葉は、城の空気を少しだけ変えていた。
――本来の核は、城のさらに深部にある。
翌日。
フェリたちは城の地下へ向かっていた。
石の階段を、ゆっくりと降りていく。
前を歩くのはレオン。
その後ろにフェリ。
ルナ、リリ、ミリアスが続く。
「地下ってこんな広かったんだ」
フェリが小さく呟く。
松明の光が石壁を照らす。
この場所は、まだ職人たちもほとんど入っていない区域だった。
通路は古く、崩れている場所もある。
レオンが低く言う。
「足元に気をつけろ」
「石が緩んでいる」
フェリが頷いた。
「うん」
しばらく進むと、通路は大きく分かれていた。
三つの道。
どれも暗い。
ミリアスが壁を調べる。
「案内の刻印があります」
ルナがすぐに顔を近づけた。
「どれどれ」
指でなぞる。
「……読める」
フェリが聞く。
「何て書いてある?」
ルナは順番に指差した。
「左」
「水路制御」
「右」
「兵器庫」
トーマが後ろから聞き返す。
「兵器庫?」
レオンの目が細くなる。
「武器庫か」
ルナは最後の通路を指差した。
「まっすぐ」
「……炉心区画」
フェリが首を傾げた。
「炉心?」
ルナは頷く。
「たぶん」
「魔力炉の本体」
ミリアスが静かに言う。
「仮想核ではない、本来の設備ですね」
レオンが通路を見つめた。
「まずはそこを確認するべきだ」
フェリは少しだけ考えた。
だがすぐに笑う。
「うん」
「せっかく来たしね」
まっすぐの通路へ進む。
空気が少し冷たくなった。
壁には古い金属の管が走っている。
ルナが興味津々で見ていた。
「回路いっぱい」
「すごい」
フェリが苦笑する。
「ルナ楽しそうだね」
「うん!」
そのときだった。
通路の奥で――
かすかな光が見えた。
「……?」
レオンが立ち止まる。
「灯りか」
近づく。
そこには広い部屋があった。
円形の空間。
中央に巨大な装置。
金属と石で作られた、古い魔導機構。
そしてその周囲に、幾重もの魔導陣が刻まれている。
フェリが思わず呟いた。
「……大きい」
ルナは目を輝かせていた。
「すごい……」
装置の周りを走り回る。
「これ!」
「本物の炉!」
ミリアスが静かに言う。
「やはりここでしたか」
だが。
装置は完全に止まっていた。
光もない。
ただ静かに、長い年月を眠っていた。
フェリが近づく。
「これが」
「城の核?」
ルナが少し首を傾げた。
「たぶん」
「でも」
装置を見上げる。
「起動してない」
レオンが周囲を確認する。
「動かす方法は」
そのとき。
壁の一部が、かすかに光った。
フェリが振り向く。
「え?」
古い石壁。
そこに、細い文字が浮かび上がっていた。
――主の到来を確認。
ルナが息を呑む。
「自動記録だ」
文字は続く。
――魔王城中枢炉 封印状態。
――安全装置作動中。
――起動には鍵が必要。
フェリが呟く。
「鍵?」
最後の一文が浮かぶ。
――鍵は、三つ。
ルナが振り向いた。
「フェリちゃん」
フェリも苦笑する。
「……やっぱりそうなるよね」
レオンが静かに言う。
「城の中にあるのか」
ミリアスが頷く。
「おそらく」
「封印設備でしょう」
フェリは巨大な炉を見上げた。
この城の本当の心臓。
まだ眠ったままの力。
フェリは小さく笑う。
「じゃあ」
「探すしかないね」
こうして――
魔王城の核を目覚めさせるための探索が、始まった。




