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目覚めたら、魔王に転職!? ~底辺スタートから世界統一はじめました~  作者: ふじなみ


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第54話 ―― 商人の仕事と、眠る回路

休日は少なめ


翌朝。

魔王城の周辺は、さらに慌ただしくなっていた。

「木材こっちだ!」

「石材は南側だ!」

「宿の基礎を先に作るぞ!」


昨日までは仮設小屋ばかりだった平地に、杭が打たれ始めていた。

新しい建物の場所を示す縄が張られ、職人たちが忙しく動いている。


その様子を見ながら、フェリが目を丸くしていた。

「……早くない?」


隣のセレナが肩をすくめる。

「ミレナの仕事よ」


少し離れた場所では、ミレナ・ヴァレストが指示を出していた。

「宿は三棟」

「まずは作業員用の簡易宿から建てます」

「食堂も併設してください。人は必ず集まります」


職人の一人が聞く。

「市場は?」


ミレナは少し考えてから答えた。

「まだ早いですね」

「ですが、露店の場所は確保しておきます」


彼女は地面に簡単な図を描いた。

「宿がここ」

「食堂がここ」

「そして――」


少し空間を開ける。

「将来の市場は、ここです」


職人たちは顔を見合わせた。

「本気で町作る気だな」

「この商人……」


その様子を見ていたフェリが、小さく笑った。

「なんか……すごい人来ちゃった気がする」


ミリアスが頷く。

「商人とは、ああいうものです」

「町の匂いを嗅ぎつけるのが、仕事ですから」


セレナがくすっと笑う。

「黒薔薇商会とはまた違うタイプだけどね」

「でも優秀よ」


そのときだった。

遠くから声が聞こえる。

「フェリちゃーん!!」


聞き覚えのある声だった。

フェリが振り向く。

「……ルナ?」


ルナがこちらへ走ってくる。

帽子が揺れている。

「大変!」

「回路見つけた!」


ミリアスが眉を上げた。

「昨日のか」


ルナは大きく頷く。

「うん!」

「たぶん結界の回路!」


フェリが首を傾げる。

「結界?」

「城を守るやつ?」


「たぶん!」

ルナは自信満々に言った。


「古代魔導のやつ!」

レオンが腕を組む。


「動くのか?」

ルナは一瞬だけ黙った。


それから笑う。

「たぶん!」


「たぶんか……」

ミリアスが呆れた顔をする。


「でもね!」

ルナは続ける。

「回路、半分残ってる!」

「石の中に埋まってるだけ」


フェリが少し興味を持つ。

「直せそう?」


ルナは頷いた。

「簡易版なら!」

「おじいちゃんに教わった」


そして指を立てる。

「ただし!」

「魔力がない!」


フェリは苦笑する。

「だよね」


魔王城の魔力炉は空っぽだ。

この城を動かすだけの魔力は、今はない。


ルナは少し考えてから言った。

「でも」

「微量なら流せる」


リリが静かに口を開く。

「自然魔力ですね」


ルナはぱっと振り向く。

「そう!」

「空気とか地面の魔力!」


ミリアスが少し驚いた。

「そんなことが可能なのか」

「回路がちゃんと繋がれば!」


ルナは胸を張る。

「ちょっとだけなら動く!」


フェリが笑った。

「じゃあやってみる?」


「やる!」

ルナは元気よく答えた。


数時間後。

城の奥の廊下。

昨日ルナが見つけた石の床の前で、彼女はしゃがみこんでいた。


隣には、昨日の若い石工の青年がいる。

「本当にやるんですか?」


青年が不安そうに聞く。

ルナは頷いた。


「うん」

「ちょっと石削るだけ」

「回路つなぐ」


青年は工具を握った。

「……魔導の手伝いする日が来るとは」


ルナは石の線を指差す。

「ここ」


「ちょっとだけ削って」

青年が慎重に石を削る。


カン、カン、と軽い音が廊下に響く。

やがて、薄く刻まれた線が姿を現した。

ルナの目が輝く。


「やっぱり!」

「続いてる!」


フェリたちも後ろで見守っていた。

レオンが小さく言う。

「本当に回路だな」


ルナは指で線をなぞる。

それから、小さな石片をはめ込んだ。


「これで……」

彼女は少しだけ真剣な顔になった。

「つながる」


そして――

床に手を置く。


「……動け」

静かな声だった。


しばらく何も起こらない。


ミリアスが小さく呟く。

「やはり魔力が――」


その瞬間。

床の回路が、ほんの一瞬だけ光った。


「!」

全員が目を見開く。

淡い光が、廊下の石の線を伝って流れる。

だが次の瞬間。


ぱちん、と音がして光は消えた。

ルナが後ろに倒れる。

「わっ!」


青年が慌てて支える。

「大丈夫ですか!?」


ルナは天井を見ながら言った。

「……失敗」


フェリが苦笑する。

「でも光ったよ」


ルナは起き上がった。

帽子をかぶり直す。


そして、にやりと笑う。

「うん」


「やっぱり動く」

彼女は床の回路を見つめた。


「この城」

「まだいっぱいある」

フェリは少しだけ驚いた顔をする。

崩れた魔王城。

ただの廃墟だと思っていた場所。


けれど。

もし、この城に――

まだ動く古代魔導が眠っているのだとしたら。

その価値は、想像より、ずっと大きいのかもしれなかった。

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