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目覚めたら、魔王に転職!? ~底辺スタートから世界統一はじめました~  作者: ふじなみ


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第52話 ―― 修復の広がりと、城が目を覚ますとき


紋章を直してから、数日後。

魔王城の朝は、以前よりもずっと騒がしくなっていた。


石を削る音。木材を運ぶ掛け声。

通路のあちこちで、若い職人たちが行き交っている。


「そっち支えてくれ!」

「まだ固定してないぞ!」

「石灰どこだー!」


フェリは王の間の入口から廊下を見渡し、小さく目を丸くした。

「……人、増えたね」


隣に立つリリが頷く。

「はい。昨日も新しい職人の方が数名来ていました」


少し離れた場所では、レオンが腕を組んで作業の様子を見守っている。

ミリアスは搬入された資材の確認をしていた。


フェリは行き交う職人たちを見ながら言う。

「なんかもう、完全に工事現場だね」


リリが少しだけ笑う。

「城を直しているのですから、間違ってはいませんね」


そのとき――

廊下の奥から、聞き慣れた声が響いた。


「フェリちゃん!」

帽子を揺らしながら、ルナがこちらへ走ってくる。

「ちょっと来て!」


フェリが首を傾げた。

「どうしたの?」


ルナは手招きする。

「この前の紋章、また変なんだ」


フェリとリリは顔を見合わせ、そのまま後を追った。

案内されたのは、城の奥の古い通路だった。


石壁の一部に、例の紋章が刻まれている場所。


数日前、崩れた石をどかしたことで見つかり、

ルナと若い石工たちが修復した魔導紋章だ。


今は表面の欠けた部分がきれいに整えられている。

その中心が――かすかに光っていた。


「……あ」

フェリが思わず声を漏らす。


紋章の線の一部が、ゆっくりと淡い光を流している。


ルナが腕を組みながら言った。

「昨日まではこんなんじゃなかったんだよ」


隣では若い石工の青年が頭をかく。

「俺たちは普通に削って整えただけなんですけどね……」


「魔導具とかは、触ってないよな?」

レオンが低く確認する。


「はい。石を直しただけです」

ミリアスが紋章をじっと観察していた。


「おそらく……」

少し間を置く。

「構造が復元されたことで、魔力回路が繋がったのでしょう」


フェリが首を傾げる。

「でも、魔力なんてほとんど残ってないんじゃないの?」


それは事実だった。


この城の魔力炉は空だ。

だからこそ、リリですら完全な姿に戻れていない。


ミリアスは頷いた。

「ええ。ですが――」


紋章の光を指差す。

「完全に止まっているわけではなかったようです」


レオンが小さく息を吐く。

「残り火、みたいなものか」


「その表現が近いでしょう」

ミリアスが続ける。


「城の魔導機構は、完全停止ではなく“低出力の休眠状態”だった可能性があります」

ルナが少し楽しそうに言った。


「つまり?」


ミリアスが答える。

「修復すれば、少しずつ動き出す可能性がある、ということです」


フェリは紋章を見上げた。


淡い光が、ゆっくりと線をなぞって流れている。

「……なんか、ちょっとワクワクするね」


その瞬間だった。

紋章の光が、ふっと強くなった。


そして――

城のどこかで、かすかな音が響く。

低く、静かな振動。


「……今の」

ルナが周囲を見回す。


レオンの視線が鋭くなる。

ミリアスがゆっくりと頷いた。

「簡易結界が起動しました」


フェリが瞬きをする。

「結界?」


「はい」

ミリアスは壁に触れた。

「城の外周を覆う、ごく弱い警戒結界です」


レオンが腕を組む。

「防御力は?」


「ほぼありません」

ミリアスは正直に答えた。

「ですが――」


一拍置く。

「侵入者の魔力を感知する程度の機能は残っているでしょう」


フェリは少しだけ目を丸くした。

「じゃあ、ちょっとだけ“城らしく”なったってこと?」


ミリアスが静かに頷く。

「そういうことになります」


ルナが嬉しそうに笑った。

「やっぱり直して正解だったじゃん!」


そのとき、後ろで若い石工の青年が言った。

「他の壁にも似た紋章ありましたよ」


フェリが振り向く。

「ほんと?」


「ええ。崩れた石の裏とかに、ちらほら」


ミリアスの目がわずかに細くなる。

「……なるほど」


フェリが聞いた。

「なに?」


「この城は、おそらく各所に魔導補助機構が配置されています」

ミリアスは静かに言う。

「一つ直るたびに、機能が少しずつ戻る可能性があります」


フェリは少し考え―笑った。

みんなを見回す。

「直せるところ、どんどん直していこう」


レオンが小さく頷く。

ルナはもう壁を見回している。


職人たちは「また面白い仕事になってきたな」と笑っていた。

魔王城はまだ壊れている。

だが――確実に、少しずつ動き始めていた。


その頃。

はるか遠く、ヴェルディア魔王国。

高い塔の一室で、黒衣の男が窓の外を見ていた。

覇王の側近。


そして、フェリの元へ使者を送った張本人――

カティアの上官である男だ。


その背後で、部下が報告を告げる。

「例の城周辺で、微弱な魔力反応を観測しました」


男の目が細くなる。

「……始まったか」


「はい」

部下は続ける。


「まだ極めて小規模ですが、

 城全体の魔導機構が徐々に再接続されている可能性があります」


男は小さく笑った。

「面白い」


窓の外には、広大な魔王国の領土が広がっている。

「覇王様は“調和の魔王”に興味を持っておられる」


静かに呟く。

「ならば――」


視線が遠くを射抜いた。

「その城がどこまで目を覚ますのか、見届けようではないか」


魔王城は、まだ眠りから覚めたばかりだ。

だがその変化は、すでに外の世界にも届き始めていた。


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