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目覚めたら、魔王に転職!? ~底辺スタートから世界統一はじめました~  作者: ふじなみ


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第41話 ―― 帰還準備と、城の現状

本日1本目


霧の残滓が完全に消えた頃、

街道の空気はようやく落ち着きを取り戻していた。


だが、誰一人として気を抜いてはいない。

「移動するなら早めに動け。

 帝国の連中、あれで終わるとは思うなよ」


エルドリックの忠告に、

フェリは小さく頷いた。

「……はい。ありがとうございます」


軽く頭を下げる。

その仕草を一瞬だけ眺めてから、エルドリックは肩をすくめた。


「礼は無事に離脱してからにしてくれ。

 こっちも、いつまでも国境警備の真似事をしているわけにはいかんのでな」


軽口の形。

だが――やはり腹の奥は読めない。

フェリはそれ以上踏み込まず、小さく息を吐いた。

「レオン、リリ」

「「はい」」


二人の視線が揃う。

フェリは街道の先――屋敷のある方角へ目を向けた。

「一度屋敷に戻るよ。必要な準備と、人員の整理をしたい」


「承知しました、フェリちゃん」

リリが柔らかく頷く。


レオンも短く言葉を落とした。

「妥当な判断だ」


フェリは小さく肩の力を抜いた。

「……さすがに、このまま全力移動は疲れるしね」


ぽろり、と本音が漏れる。

リリの口元がわずかに緩んだ。

だが次の瞬間、フェリの瞳がわずかに細まる。

「それと――」


二人が静かに続きを待つ。

フェリはいつも通りの調子で言った。

「屋敷組は待機で。今回は城の立て直し優先」


理由は多く語らない。

だが、その一言で十分だった。

「……承知しました」


リリが静かに頭を下げる。

レオンも異論は挟まない。


フェリはくるりと踵を返した。

「じゃ、行こ。まずは屋敷まで――ちゃんと足で帰るよ」


わざとらしく肩を回す。

「転送なんて便利なもの、持ってないし」


エルドリックの視線が、一瞬だけ鋭くなった。

ほんの刹那。

だがフェリは、気付かないふりで馬へ向かう。

(……やっぱり、この人、油断できないな)


胸の奥でだけ、小さく呟いた。


街道を離れ、三騎の馬が屋敷へ向けて走り出す。

夕陽はすでに傾き始めていた。


その背を見送りながら、エルドリックは低く息を吐く。

「……“故郷”ね」


誰にも聞こえない声、口元は笑っている。

だがその目は、まったく笑っていなかった。


「さて。どこまで本当やら」

風が、戦場の匂いをさらっていく。

疑念だけが、静かに残った。


――同刻。

魔王城、王の間。

「……以上が、本日分の修復進捗です」


静かな声で報告したのはセレナだった。

玉座の間には、選抜された五名の修復メンバーのみ。


崩落の激しかった区画は、まだ手付かずのまま残っている。

修復が完了しているのは――


王の間。

そして、王の寝室。

それだけだ。


「……思った以上に、進みませんね」

一人が苦く呟く。


セレナは否定しなかった。

「人員不足は想定内です。焦って精度を落とす方が問題でしょう」


冷静な判断。

だが、わずかに疲労の色はある。


別の魔族が天井を見上げた。

「フェリ様が戻られる頃までに、形にはしたいが……」


沈黙が落ちる。

その時。セレナが静かに言った。

「……やりましょう」


全員の視線が集まる。

「今は、我々に出来ることを積み上げるだけです」


声音は穏やか。だが芯は強い。


「フェリ様がお戻りになった時、少しでも整った城で迎えられるように」

一拍。


「――魔王城は、我々の手で立て直します」

その言葉に、五名は無言で頷いた。


瓦礫の残る王の間に、静かな決意が満ちていく。

だが――その帰還が、想定より早まることを。

この時、まだ誰も知らなかった。



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