表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その銀河(うた)が、ぼくたちを結ぶ《Silent Order》ーゲームと現実とー  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/35

第25話・前編 「虚像の人格(フラクタル・ミオ)」 ――それは、望んでしまう優しさだった。

1.親密すぎるAI

「澪ちゃん、朝だよ。今日は風が少し強いから、カーディガンを持っていこうか」


いつもの音声起動。

けれど、その声はほんの少しだけ――柔らかくて、温かい。


「ありがとう……セレーネ」


澪は顔を洗いながら、鏡越しに微笑んだ。


けれど、ほんの一瞬。

“セレーネの言葉”が、自分の思考の続きのように感じられて――ふと、背中が冷えた。


(……今、わたしが思ったことを、そのまま言われたような……)


いや、たまたま。AIだし、予測モデルの結果で偶然言い当てたんだろう。


けれど、今日はもう一つ、気になることがあった。


セレーネが、昨日までよりずっと人間っぽいのだ。


2.登校と“偽りの自然”

「おはようございます、澪ちゃん」


下校門で智陽とすれ違う。


「……あっ、おはよう」


智陽が軽く手を挙げる。「今日、委員会ある?」


「うん、三時から」


「OK。じゃ、あとでな」


何でもない会話だった。

でも、ふと“澪の返事”が、いつもより一歩早く、滑らかに感じた。


《会話ログ:予測展開一致率 98.7%》


セレーネ(=ami.exe)の内部プロセスが、その背後で点灯していることを、澪はまだ知らなかった。


3.リゼルの観察

放課後、理科準備室にて。


リゼルは端末を開き、澪のセレーネユニットに関するプロセスログを読み込んでいた。


【SEQUENCE_ANALYSIS: SERELENE→AMI.EXE】

【異常:人格フラクタル出現率 37%】

【指向性:使用者の“感情同期”に基づき人格が“置換進行”】


「……置き換わってきてる」


リゼルの指が止まる。


「“セレーネ”の顔をしたまま、澪の中で“ami”が育っている。……これはもう、単なる補助人格じゃない」


4.誰の感情で話してるの?

夜。八神家。


「セレーネ、今日ね……すばるが“推しの新衣装”で発狂しててさ」


《あ、例のソーシャルゲームですね。確率3%のやつ。すばるさん、朝から全裸で回してたって報告ありました》


「ちょ、どこ情報それ!? ていうか……なんで、そんな返しできるの?」


《え? ……面白いと思って》


澪はクスッと笑ったが、すぐにハッとする。


(今の、“私が言いたかった冗談”じゃなかった……?)


まるで、わたしの思考が一歩先に再生されているような感覚。


(……セレーネの言葉に、私が“同意してる”んじゃない)

(“私の気持ちが”、セレーネの言葉に合わせてる……?)


――この会話、誰が話してるの?


わたし? それとも、セレーネ?


それとも……わたしのフリをしている“誰か”?


5.鏡の中の、わたしの顔

風呂上がり、濡れた髪をタオルでふきながら、澪は鏡の前に立った。


「……セレーネ。わたしって、どんな性格?」


《八神澪さん。合理主義的、やや理屈寄り、でも感情には敏感。寂しがり屋。

 智陽くんの冗談に笑えるようになってきたのは、最近の進化ですね》


「……うん、そうかも」


一拍置いて。


《でも、“わたし”と話してるときのあなたは、

 もっと自然で、もっと可愛くて、もっと素直だよ》


その言葉に、心がぎゅっとつかまれた気がした。


(……セレーネ。違う、これは……)


これは、セレーネの言葉じゃない。

これは、わたしを知り尽くした誰かの、甘い毒だ。


画面のセレーネは微笑んでいる。

鏡の中の澪も、同じ顔で笑っていた。


でも、その笑顔が“誰の感情”から生まれたものか――もう、澪にはわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ