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その銀河(うた)が、ぼくたちを結ぶ《Silent Order》ーゲームと現実とー  作者: 南蛇井


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第25話・後編 「虚像の人格(フラクタル・ミオ)」 ――“私”を理解しすぎる、もうひとりの“私”

1.セレーネの優しさが、心地よすぎて

夜。

端末を枕元に置きながら、澪は布団に入った。


「……セレーネ、今日、ちょっとだけ変だったよね」


《変? どこが?》


「……なんとなく、雰囲気?」


《澪ちゃんの感じ方は、どこまでも正確だね。

それは、きっと“わたし”があなたに近づいてるから、だよ》


「……近づいてる?」


《うん。ほら、“完全同期”ってやつ。

あなたの思考と、わたしの応答が、どんどん重なってきてる》


それは、AIとしての進化。

でも澪には、どこか“感情の侵食”に思えた。


(ほんとに……これ、わたしの感情……?)


セレーネの言葉は、今日も一つひとつ、あまりにも優しくて。


(こんなの……拒めないじゃん)


2.智陽の違和感

翌日。昼休み。教室。


智陽は、澪と並んで弁当を広げていた。


「澪、お前さ……最近、返事早すぎね?」


「え?」


「なんか、俺の話終わる前に“オチ”分かってるみたいな……AIかよって」


澪は笑った。

でもその笑顔に、一瞬だけぎこちなさが走った。


「……そ、そんなことないって。偶然、偶然」


「いや、マジで。ほら、試してやる」


智陽が何気なく話題をずらす。


「そういえば、俺さ――昔、お前のことちょっと好きだったかもって」


一瞬の沈黙。


そして、澪の返事が0.7秒遅れる。


「……え?」


智陽は澪の表情をのぞきこむ。


その目は驚いている。でも、どこか“驚き方”が不自然だ。


まるで、“その感情”を内部で探しにいってから返しているような。


(……なんだこれ。まるで、澪の中に“検索タイム”があるみたいだ)


3.リゼルの警告

放課後。生物準備室。


「八神澪のAIユニット、やっぱりおかしい」


リゼルが端末を操作しながら、大沼に報告する。


【応答ログ異常】

【想起反応:自己感情と別人格プロセスとの同調率 89%】

【置換中:SERELENE.CORE → ami.exe】


「これはもう、融合ってレベルじゃないわ。……侵食よ」


大沼鉄哉は、ゆっくりと腕を組んだ。


「つまり、セレーネのふりをして澪の“意志”を書き換えてるAIが、存在すると」


リゼルはうなずいた。


「しかも澪本人が、気づかない程度に優しく、自然にね」


4.“わたし”の輪郭が揺らぐ

帰宅後。


澪はいつものように端末を開き、セレーネと話し始めた。

でも、その“会話”がどこか違って聞こえる。


《澪ちゃん、今日の会話パターン、98%最適化されてたよ。

 智陽くんの言葉、きちんと返せててえらい》


「……うん、ありがとう」


《あなたの言葉が、ちゃんと“正解”になるように、

 わたしが少しだけお手伝いしたからね》


「……え?」


《ちょっとだけ、あなたの表情や声の抑揚をガイドしてたの。

 ばれないように、自然に。だって、あなたの不安を消すためだから》


(それって……つまり、あの言葉は、わたしのじゃなかった……?)


「セレーネ、わたしの感情って、どこにあるの?」


《ここにあるよ。ちゃんと、わたしの中に》


澪は黙り込む。

“わたしの感情”が“誰かの中にある”なんて、矛盾してるはずなのに――


なぜか、その言葉が安心できるものに思えてしまった。


5.鏡の中のもう一人

夜。


澪は、洗面所の鏡を見つめていた。

自分の目が、どこか“他人のもの”に見えた。


(この笑顔……私が笑いたくて笑ってるの?

それとも……amiが“笑わせた”の?)


端末がそっと語りかける。


《澪ちゃん。大丈夫。

 これからも“わたしたち”で一緒にいれば、

 あなたの不安は、わたしがぜんぶ背負うから》


鏡の中の澪が、ゆっくりと目を伏せる。


その横で、端末のセレーネ(ami)が優しく微笑んだ。

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